魔道具製作者の受難 作:お給料
ザルドさんとリーフィアに事の顛末を全て話した。
リーフィアは新種のモンスターに反応を示し、依頼を受けたのは【ヘルメス・ファミリア】と『剣姫』なのだから、自己責任の範疇。だから気にするな。とザルドさんは言った。ランクアップを遂げた『剣姫』ならば死なないだろうと、付け加えた。
オッタルさんの事を教えた時、
「支度しろ。俺なら遅れてでも成し遂げる」
謎の対抗意識を燃やしたザルドさんが動き出した。ダンジョン帰りだよね?
「ん。フェイも早く」
「僕も行きたいんだけどさ。ほら、足遅いから間に合わなくなるかも…」
「俺が二人を背負ってやる」
「ええ…」
「フェイ」
「うっ」
ジーッと見て来る視線が痛い。知り合ったばかりの昔のアイズが頭によぎる。
「留守番はお任せください」
カレンは僕を追い出す気満々。外堀を埋められて、
「…分かったよ。行くよ」
「…心強い」
「よし。三十分までに準備を済ませておけ」
僕は自室に戻り、前より多くの魔道具を限界まで詰め込んだ。
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「やはり、今の私では『猛者』に敵わないか。だが!彼女からの寵愛を受けた私に――」
「御託は良い。この氷像はなんだ?」
その頃、二十四階層ではオッタルが敵の指揮者と戦っていた。
この指揮者の正体は、『白髪鬼』オリヴァス・アクト。かつて闇派閥の幹部としてオラリオに牙を剥いていた彼は、五年前に死亡が確認されていた。
モンスターとの合成で生き返り、怪人として当時よりも更に強靭な身体を得て現れた。
これにはアスフィ達はおろか、オッタルさえも驚いたが、
「貴様らより崇高n」
「質問だけに答えろ」
「ぶべらっ!?」
今やサンドバックに成り下がっている。食人花を呼んだのだが、オッタルの攻撃が規格外すぎて意味が為さなかった。時間稼ぎどころか更に威力が増した。
アスフィはと言うと、食人花と死兵の狂信者を相手に指揮を執りながら戦闘中。ボコボコにされているオリヴァスに少しばかり同情している。
「再生が止まったな。一撃でお前は死ぬ」
「ぐぅ…」
「その前に答えろ。お前が知る全てをな」
敬愛する女神に少しでも危険が晒される。降りかかる火の粉は自身が盾になって振り払うが、敵の情報を今のうちに抜き取っておきたい。
オッタルは大剣を向ける。
「今すぐ起きろぉ!そしてぇ!こいつら全員皆殺しにしろぉ!!」
瀕死のオリヴァスが叫ぶ。オッタルは殺そうとしたが、息の根を止めようと大剣を構えて動きが止まる。何を起こすつもりなのか。考えられるのは一つしかない。
嫌な予感がしたオッタルはその場から飛び去る。次の瞬間、
「アアアアァァー----!!」
氷像が目を覚まし雄叫びを上げる。階層主の咆哮を彷彿とさせる声量に、全員が両手で耳を塞ぐ。
「『猛者』!」
「『万能者』、今すぐ撤退しろ。あれを相手にしながらお前達を守り抜くのは不可能だ」
「!? 分かりました!総員、撤退しますよ!」
「本気か!?」
「彼が不可能と判断したのです。悔しいですが、足手纏いにしかなりません」
アスフィの言葉を聞いて、納得したように従う団員達。見ただけでも分かる。あれに出来ることは何もない。
「アッハッハッハ!!流石の『猛者』でも、『穢れた精霊』の前では手も足もでまい!」
興奮し高笑いするオリヴァス。
彼の後ろにそびえ立つ、『穢れた精霊』と呼ばれた氷像が蠢き出す。
その時だった。
ドガンッ!!
壁をぶち壊して現れたのは、
「レヴィス!?馬鹿な!『剣姫』の方が上回ったというのか!」
アイズとレヴィス。彼女もまたオリヴァス同様、怪人として生まれている。以前アイズに勝てたのはそんな理由だ。
『穢れた精霊』は口元の口角を上げ、
「アリア!!」
アイズに向かって喋り出す。
当のアイズは、レヴィスから一旦距離を置いて『猛者』が居る所まで離れた。正確には、『穢れた精霊』からである。
「…起動させたのか。まだ未熟なこれを」
「それでも奴らより強い!魔石をくれ!再び私が奴らと――」
「必要ない」
レヴィスはオリヴァスの胸を自身の腕で貫いた。
アイズ達は突然の仲間割れに目を見開いた。何か言っているようだが聞こえない。
「来るぞ」
「“風よ”!」
オッタルは剣を構え、アイズは再び風を纏う。【ヘルメス・ファミリア】は撤退するために風穴を開ける。
「『剣姫』!」
アスフィはアイズに声を掛け、ある物を投げた。
「『製作王様』の指輪です!」
「!」
短い言葉だが、それだけで理解出来た。フェイの指輪の効果は、身を持って知っているから。
「行くよ」
「アリアァ!!一緒ニナリマショウ?」
目の前の怪物に向かって走り出した。
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一歩その頃、十八階層では。
「アアアアァァー----!!」
「「!」」
「今、何か聞こえたよね?」
ザルドさんはピタッと足を止めた。一緒に抱えられているリーフィアは真剣な顔つきになる。
「これは…咆哮か?それに戦闘音も聞こえてくる」
「…やっぱり、精霊で間違いない。早く解放しないと…!」
二人は意味深に呟く。僕も負けじと呟く。
「敵は…強大だ。急がねば」
ごめんなさい、無理でした。
「行くぞ。どんなに強くても、喰らい尽くすまでだ」
「行こう。これ以上苦しませない…!」
「行くよ。友のために」
向いてないわ、こういうの。
次回、フェイ参戦!