魔道具製作者の受難 作:お給料
真っ直ぐ行けばバベルがある大通り。
ここには、冒険者をターゲットにした数多くの店が並んでおり、一般市民向けももちろんある。
その中でも一際異彩を放っている店が存在する。しかし、利用する客は大勢いる。ある人物の製作する魔道具は、人間だけではなく神々をも魅了する。
魔道具だけではなく、店員も揃いも揃ってくせ者揃い。攻め込んできたファミリア連合をまとめて取り込んだ伝説がある。
その店の名は[星の玩具店]。
ぶっ飛んだ方法で、暗黒期の終結に貢献したとある魔道具製作者が店主を勤めているお店である。
~~~~~~~~~~~
寝室のカーテンの隙間から朝日が差し込む。外からはガヤガヤと賑わう人々の声が聞こえてくる。
「ふぁ…」
中肉中背でこれといって、強いて挙げるのなら弱そうな黒髪の男は欠伸をする。
少し怠い。昨日はある魔道具の開発に夢中になっていたからか、ベッドに入ったのが深夜になっていた。
ここの店員が声を掛けて来た記憶がある。それを曖昧に返事をした記憶もある。
今日は営業日だが、まだ寝ていたい。そう思い、二度寝を敢行しようとしていた時、
「フェイさん、いつまで寝ているんですか!もう営業の時間ですよ!」
「…君だけで大丈夫だよカレン。後で僕も向かうから」
私室に押し入って来たのはここの店員で僕の秘書。名前はカレン・カーラ。ヒューマンの二十一歳。
自前の眼鏡と、制服を着崩すことなくきっちり着込んでいる。彼女とは都市外で知り合い勧誘したのだ。
「魔道具の説明は貴方がいないと不可能です!置いている物は気まぐれで変わるんですから。それと、ナチュラルに布団の中に潜らないでください!」
「ちぇ…」
「ほら、顔を洗ってきてください。朝食は用意していますから」
「カレンの手料理?それは楽しみだなぁ」
「…今日は貴方の当番ですよ?いつもはあの人が作ってくれますけど」
「そういえば遠征に行ってたね。帰りいつだっけ?」
「そうですね。予定では来週です。それと…」
「彼女の
「ええ。ファミリアはどうするでしょう?」
「さあ?あの人は自分の手で探させるって言ってだけど…」
「過保護なのか厳格なのかよく分かりませんね…」
「そこが面白いところでもあるんだよ」
「それを言えるのは貴方だけでしょう」
「そうかな?」
「そうです」
一連のやり取りを終えて、寝巻きからいつもの服に着替えをする。
今日の朝食は、ベーコンと目玉焼きをのせたトースト。それとココア。コーヒーは基本苦くて飲めないからココアだ。
シンプルだがとても美味しい。真面目な彼女は味にも妥協しない。
彼女に感謝しつつ、新聞を見ながら食事を続ける。
「『今週の[星の玩具店]のオススメは"花鳥風月"!貴方は今日から一人前の手品師だ!』相変わらずだね、この新聞」
「固定の商品以外は一週間で変わりますから。今週は神々に向けて売り出す予定です」
カレンの眼鏡がキラリと光る。商売根性がたくましい彼女に苦笑いをこぼす。
「一仕事やりますか」
「店の前に大勢お客様がいます。…神々が多いですね」
「"花鳥風月"だね、きっと」
「ではフェイさん。扉をどうぞ」
「りょ~かい。んじゃ、開店です!」
[星の玩具店]の一日が始まった。
解説
[星の玩具店] 暗黒期終了後、フェイが始めた店の名前。店員は全員おっかなくてくせ者揃い。特殊で異彩。店主の無茶振りのせいで店員は強い。
フェイ・ハーグ [星の玩具店]の店主。性格は行き当たりばったりで適当なところが多いが魔道具関係については真剣そのもの。冒険者でもあるが、基本ダンジョンには行かず、店員に素材採取を押し付ける。その際には絶妙な采配をする。見た目は貧弱だがLv.5。死ぬほど鍛えられた。
カレン・カーラ 都市外で出会った大商人の娘で上に兄二人にいる。男尊女卑の酷い家から救ってくれたフェイに感謝している。商才がある。真面目な性格で眼鏡がトレードマーク。秘書兼店員兼冒険者でLv.2。ある小人族と運営している。