大自然日記帳   作:強烈ミントのキセル

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いつも絵を描いてくれている友人とは違う別の友人に頼まれ書くことになりました。
原作も少しずつなんとかしていくつもりです。


八百万神の遣い

「はぁ…はぁ……」

 

「人の子か?」

 

「はぁ………だ、誰?」

 

「そんなことより、ここは危険だ。早く立ち去らないとお前の様な人の子は先の様な妖モノに喰われてしまう」

 

「でも、走ってて帰り道がわからなくなってしまったの…」

 

「……これをやる」

 

「何?」

 

「この木の葉を持って行け……この森の全てがお前を助けてくれる」

 

「本当に?」

 

「……妖モノを除いてだがな」

 

「ありがとう…」

 

「礼を言うくらいなら気にせず早く立ち去ることだな…私は眠いのだ」

 

 

 

●◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆●

 

 

 

第一話 【八百万神の遣い】

 

森の奥深くにある大木の枝、そこが私の寝床……私はそこで少し寝ていた。

枝から落ちることはない。落ちそうになればすぐ近くの枝が私を支えてくれたし、落ちたとしても土が衝撃を殆ど無に等しくなる程に和らげてくれる。

そんなこんなで安眠を楽しんでいた私はこうして起きている。

起きてしまった原因は、風が教えてくれた侵入者である人の子とそれを追い回す意地汚い四足歩行で毛むくじゃらの妖モノ。

人の子を守れと八百万の神に遣わされた私がこれを見逃せるはずもなく、周辺の木々に頼んで妖モノを木の根で拘束して滅しておいた。

そして木の根が動く音に驚き振り向いた人の子に帰るように促したが、聞けば人の子、帰り道がわからないらしい。

このまま帰らせてまた妖モノに追い回されてしまってはいけないので、私が一筆入れておいた木の葉を人の子に渡す。

それを持っていれば木々が余計な隙間を枝や蔓で塞いで道を作ってくれるし、妖モノが近寄ろうものなら直ぐ様に根がそれを拘束してしまう。

そんな木の葉を受け取った人の子は、私に礼を言うと駆けて行った。

礼ではなくあまり私に心配かけさせないでほしいのだがな……いつもいつも人の子は私を心配させる。

 

 

 

「大木、私が落ちないようにしてくれてありがとうな」

 

木々は喋らないが、私が座っていない枝を震わせる…今風はない。つまりこれは木々が答えてくれたということだ。

 

「土も、お前がいるから私は安心して眠れるよ」

 

土がしっかりしていないと木は立っていられない…それに落ちてしまったときには土が私を優しく受け止めてくれるのだ。

 

「風も、雲も、太陽も、星も、月も、水も、空気も、全てに…私は感謝している」

 

私は起きて寝る前に、大自然の全てのモノ達に感謝する。

助けてもらっているのだ、感謝するのは当たり前だし、私の信条でもある。

神の遣いが信条ってのも変だとは思うが、つまり心に決めてるってこと。

 

「そして、おやすみ……」

 

私は再び眠りについた…今度はなるべく長く寝ていたいものだよ。

 

 

 

しかし私の眠りは一回太陽が沈み、月が昇り、月が沈み、太陽が昇って少しした時に覚めてしまった。

何故かって?

 

「あの、昨日の…えっと、いませんか~?」

 

何故か昨日の人の子がやって来たもんだから、その声と風に起こされてしまった。

とにかく、何の用件かはしらないが…手っ取り早く済ませて早く寝てしまおう。

 

「何だ、人の子」

 

ちょうど座っていた枝の真下を通りかかってきたので、声を掛ける。

するとどうだ、私を探しているのか慌てて顔をあっちこっちに動かし始めた。

 

「お前の上だ、上……」

 

見かねた私が再び声を掛けると、人の子は驚いた風に体をビクリと震わせ、恐る恐る此方を見た。

 

「あ、えっと…こんにちは」

 

よく見れば人の子は童だった。

上からだともしかすると恐ろしいのかもしれないな。

そう思ったら後は速い…私は枝から降りて人の子と目線を合わせるように屈んだ。

 

「危ないから立ち去れと言ったのだがな…何か用か?」

 

本当に危険なのだからこうしてキツく言わなければならない。

森の入り口周辺ならまだ良いのだが、奥になればなるほど…それこそ私のいるここなんかは人の子が入り込んでしまえば妖モノにパクリとあっさり喰われてしまう危険すぎる場所だ。

 

「でも、どうしてもお礼が言いたくて……」

 

そう言うと人の子がズイッと近づいてきた。

 

「お礼なんかよりも、私の気苦労を軽減してくれないか?」

 

不用意に森に入り込んだ人の子を妖モノから守っているのは私なのだ。

だから森に入り込んでくる人の子が多ければ多い程、私はそれだけ神経をすり減らさなければならない。

しかしそれを知らない人の子は更に近づいてくる。

 

「アナタは…何者なの?」

 

途端に大人びた口調で質問してくる人の子に私は面食らうがそれはこの際どうでも良い……用件を済ませて早く寝よう。

 

「八百万の神の遣いで、ここら一帯の守護をやっている」

 

本来なら人の子の前に現れるなんてことは絶対にしないし、会話だってしないのだが(精々「早く立ち去れ人の子よ」程度)、私の直感が教えてくる。

この人の子は、放っておくと必ず面倒な事の原因になる…と。

例えば今日私が現れなかったらこの童は明日も、明後日も、ここに来ただろう。

私の一筆入れた木の葉の効力は精々四日でなくなってしまう。

つまり危険な中を往復することになる。

危険…つまり妖モノに襲われた時、私はここから動かなければならなくなり、疲れて寝込んでしまう。

寝込んでしまえば迷い混んできた人の子を人里へ送り還すこともできなくなる。

それは、よろしくない。

 

「つまり神様の遣いなのね……」

 

やけにジロジロ観察してくるな……

 

「わかったらさっさと帰ることだ…その木の葉の効力は一日半でなくなるぞ」

 

勿論そんなことはないのだが、さっさと追い払う為に嘘を言う。

これくらい許されるさ…たぶん。

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