感想でヒロインとしての朱い月が見たいと言われていたので出してみました
それではどうぞ
――【グリューエン大火山】攻略から暫く後のこと
「さて……今日の所はこれで終わりにするぞ」
「「「「はぁ……はぁ……はぁ……」」」」
「前よりも動きが上達したな。確実に成長しているだろう」
見渡す限りの草原で4人が土に汚れることを気にすることなく地べたに仰向けになって倒れていた。しかしその中心にいるアルカードは、どこか余裕そうな表情を浮かべながらもハジメ達の成長を実感していた
「ほざけ……お前全然被弾してねぇじゃねぇか……」
「……私の魔法……あんな簡単に避けられるものじゃないのに……」
「や……やっと一撃を与えたかと思ったら……即座に背後に回られて気絶させられるなんて……」
「……妾に関しては、もう、訳が分からない……」
……この状況を一言で表すなら『死屍累々』が相応しいだろう
「ハ、ハジメ君……大丈夫……?」
「パパ……大丈夫?」
「ハ、ハジメさん……皆さん……大丈夫ですか……?」
――時は遡る
アルカードがパーティーに加わった時ハジメはアルカードから鍛錬の申し出を受け、これを承諾した。
自分はまだ到底ドラキュラに遠く及ばない
そう確信していたハジメにとってこの誘いは大変興味深かった。そしてそんなハジメに感化されてユエやシア、そしてティオもアルカードの師事を受けることになったのである。
――だが、この時の彼らは知る由も無かった。その鍛錬が自分たちの想像を遥かに絶するものになるとは思いもしなかったのだった。
ハジメの場合は
『ハジメはこれから私の放つ魔力球と斬撃を防ぎつつ持てる力全てで私を攻撃しに来い』
『……ん!?』
『では行くぞ』
『ちょっ……待てやぁあああああ!?』
開始の合図と共に信じられない程の物量の魔法とアルカードの斬撃を何とか防御することが出来たハジメであった。
訓練終了後
『よくやった。ではこれを喰え』
『……え?これは?』
文字通り全てを出し切ってアルカードの魔法と斬撃を防ぎ、疲労困憊のハジメが渡されたのは魔物の肉であった。
ハジメはためらうことなくその肉をほおばり自分の栄養としたが、これまで食べてきた魔物の肉とは何処か異なる味わいがしたためアルカードに質問した。
『……これ何の肉だ?』
『端的に言えば、父上の領地にいる魔物の肉に私の魔力を沁み込ませたものだ』
『おえええええええ!!』
『吐くな、もったいないだろう』
『そういうことじゃねぇよ!何食わせてんだよ!!』
アルカードは話し始めた
『そこいらにいる魔物の肉ではもはや急激な成長は見込めない、だからこそより強い魔物が集う悪魔城の魔物に私の魔力を混ぜたものを喰えばさらなる成長につながるのだ』
『くそッ!言っていることがなまじ正しいだけあって反論出来ねぇ!』
『明日は一段階厳しくするぞ』
『……マジ?』
ハジメの目は死んだ
ユエの場合
『まず……私の圧に耐えろ。私を前にして竦みあがっているようでは、父上には勝てんぞ』
『……難しいこと言ってくれる……!』
そう言ってアルカードは腕輪を外し、ユエは吸血鬼の本能が竦みあがる感覚に陥った。
『はぁ……はぁ……』
『……まだ鍛錬は始まってすらない。これからその内容を伝える』
『この状態で……鍛錬を……?!』
足が震え、体の芯から凍り付くような圧を感じつつまだ鍛錬が始まってすらない事実に恐怖した。
『で、鍛錬の内容だが……』
『へっ?!』
突然アルカードが5人に分裂したかと思うと、それぞれの手に異なる属性の魔法が発生していた。その光景を見たユエは頭が真っ白になった
『『『『『これから5人の私がお前に襲い掛かる。死にたくなければ必死に魔法をぶつけ相殺することだ』』』』』
『(絶句)』
このあと縦横無尽に飛び交いながらえげつない火力の魔法を撃つアルカード×5に対して涙を浮かべながら必死に魔法を撃ちまくるユエの姿があったとか
シアの場合
『さてシアだが……』
『は……はいぃ……』
『《未来視》を使い、私の攻撃を受け流しながら私に一撃を入れて見せろ』
『(未来を見て絶句)』
このあとシアは《未来視》を発動させながらアルカードの鍛錬を受けるが、《未来視》で見えたのはもはや線にしか見えない程の高速で動き回るアルカードが襲い掛かってくる悪夢が見えただけだった。
おまけに身体能力ではハジメ達の中でもピカ一の筈のシアだったが、身体強化能力を発動させた一撃を容易く回避するアルカードを見て言葉を失ったという
ティオの場合
『ではティオだが……』
『あのー……あそこに見える3人の屍はなんじゃろうか……妾嫌な予感がするんじゃが……』
ティオが指さした場所には、真っ白に燃え尽きたハジメとそんなハジメに寄り添うかのように同じく真っ白になっているユエ、そしてうつぶせになって沈んでいるシアだった
『え?妾もああなるの?!え!?すごく怖いんですけど!?』
『……鍛錬の内容だが、元が竜人族がだけあって元々の資質は悪くない……』
(え?もしかして、わりと優しい鍛錬になるんじゃあ……)
そんなティオの希望はすぐに打ち砕かれることになった。
先程と同じ、いやそれ以上の8人に分裂したアルカードを見てティオはこの世に希望がないことを悟った
『『『『『『『『という訳でひたすら私の猛攻を耐え忍びながら反撃をして来い』』』』』』』』
『……やってやる……やってやるのじゃあああああ!!』
この後数分も持たずしてアルカードに沈められたティオであった
「……俺たち良く生き残れたよな……」
「……何の前触れもなく5体に分裂したアルカードは何なの……?」
「妾は8体じゃぞ?!8体!!」
「……あれ?私の取柄って一体……?」
「不味い、シアが自分の存在意義に疑問を持ち始めてきやがった!」
地獄のような(誇張無し)鍛錬を乗り越えたハジメ達だが、その成果は如実に表れ始めていた。
「何か……最近魔物と戦ってても……全然苦戦しないっつうか、アルカードに比べたらマシって感じるようになったんだ……」
「……私も」
「私もですよ……」
「妾も……」
思い返すのは変態的な軌道を描きながら縦横無尽に襲い掛かってくるアルカードの攻撃とそれに比べて普段遭遇する魔物の動きがあまりにも鈍く感じるようになったことだった。
ハジメはアルカードの猛攻を耐えている内に以前とは比べ物にならない程に洗練された無駄のない動きに加えて、アルカードの魔力が入った肉を食べ続けたことでステータが異常なまでに向上したのだった。
ユエはそんなハジメの血を吸い続けたことで以前よりも格段に魔法の威力が向上し、更にアルカードの圧にも慣れてきたのであった。
シアやティオに関しても身体能力の底上げと、対応力が比べ物にならない程に向上していたのだった。
「……この前俺たちを襲った魔人族の……フリードだっけ?そいつの事を思い出してもさ……今なら余裕で倒せると思うようになったのは気のせいだろうか……」
「……気のせいじゃないと思う……」
「4人ともよく頑張った。飯は香織たちが用意しているとのことだ」
「やっと……やっと終わった……」
「ご……ごはん……」
「では、私はこれから自分の鍛錬をしてくる。用があればいつでも来い」
そういうとアルカードは複数の分身を生み出し、その分身と戦い始めたのだった。その衝撃で大地が揺れ、空気が震え、近くにいた魔物は危機を察知して逃げ出した。
「……あれより強いドラキュラってなんなん……?」
「……異形生命体?」
「間違いではないの……」
アルカードが戻ってきたのはそれから数時間後だった
◆◆◆
――或る日
「そういやアルカードってドラキュラだけど父親がいるよな」
「そうだな」
「……母親っているのか?」
「……なぜ聞く?」
「ふと気になったからな……それとも話したくなかったか……すまん」
「……いることにはいる」
「「「「!?」」」」
「……なんだその反応は」
まさかドラキュラに妻がいるのか!?と驚愕した一行だが、アルカードは何やら困っている様子だった。
「どうしたのじゃ……?」
「確かに……わが父の伴侶……?はいる……」
「すごい曖昧じゃの……」
「……私も何度かあったことはあるが……あれは……」
「……何じゃ?」
ハジメ達は初めてアルカードの心底困っている表情を垣間見た。
「あれは……父上に唯一立ち向かえる存在だった」
「……へ?ドラキュラに?!どんな奴だったんだ!?」
「……すまぬが、今は語れない」
――アルカードは思い出す
かつて、自分の父と互角の戦いを繰り広げたあの存在を……【朱い月】のことを――
◆◆◆
「……!」
「ドラキュラ様!?いかがなさいましたか!!」
「父上!どうされましたか!?」
ある日の夜……ドラキュラは異質な存在の気配を感じとった。それはこれまでのトータスにおいて感じたことが無い程に強力で、冷たく、そして途轍もない神威を感じた。
そのことに気づけたのはドラキュラただ1人のみであったが、これは単にドラキュラの探知が優れているわけでも、その存在が隠れているわけでもなかった。
当時のアルカードや死神でさえ気づくことが出来無かったそれは……
「――『沈め』」
――ただ格が違い過ぎて探知できなかっただけだった
「がッ!?」
「こ……これは……!?一体……!?」
「ギャァアア?!」
たった一言、たった一言でトータスにおいても屈指の強さを誇るアルカードと死神、そしてヴァンプスドラゴンが全身から崩れ落ちた。
そして更に次の瞬間悪魔城が、
「……随分と過激な演出じゃないか」
物腰は柔らかだが、体中から漏れ出すその濃密な死の瘴気を漂わせながら半壊した玉座に腰掛けるその姿から分かることは只一つ
(あれは……本気の父上……!)
ドラキュラは半分消し飛ばされた悪魔城の上を照らす『朱い月』を背にして手を打つ存在を見上げていた。
――その存在の名は『朱い月のブリュンスタッド』
またの名を……
【
――その正体は、こことは違うとある世界において、遥か途方もない未来において人類を絶滅させた存在であり、何も無くなってしまった嘗ての月の代わりに地球を自らの領地とするべく人類を絶滅させんとした『侵略者』
彼……いや朱い月は、
生物……いや、生命としての格が違う。
そう言わしめるほどに逸脱した存在……一言で表現するなら『天敵』これにつきる
アルカードは疎かヴァンプスドラゴンでさえも勝てるビジョンが見えず、絶望しかけていた
だが
「……ほう、少しはやるようだな」
――同じくこの世界の全ての生命を超越した存在であるドラキュラが悠然と朱い月に立ち向かっていった。
「驚いたぞ。まさかこの世界にもこれ程の存在がいるとはな」
「誉め言葉として受け取っておくぞ?」
軽口を叩く2人だったが、既に周囲は2人が発する強大な魔力とその威圧感によってかつてない程の緊張感を漂わせていた。
「……ふむ。小手調べといくとしようか?」
朱い月がふと思いついたかのように指を鳴らすとドラキュラの周囲に一体でも
だが次の瞬間
「失せよ。邪魔だ」
ドラキュラの周囲に出現した筈の死徒は何の前触れもなく、上半身から上が消し飛ばされた。そしてやがて灰になり消滅した
「――ほう。素晴らしき力だ。だが」
朱い月がその虹色の魔眼で周りを見渡すとドラキュラに話しかけるように告げた
「場所を変えるとしようか――『墜ちよ』」
朱い月がその掌を掲げると自らの権限である『
やがて悪魔城の上空に小規模の隕石が降り注ぎ……悪魔城を跡かたも無く消し飛ばしたのだった
――朱い月からしてみれば単なる掃除のつもりだろうが、アルカード達にとっては自らを終わらせる『災害』が目に見える形で襲い掛かってきたとしか思えなかった
◆◆◆
「ぐッ……ぐうぅ……無事か……死神……」
「坊ちゃまこそ……良くぞ……ご無事で……!」
「ギィイ……」
咄嗟に防御魔法を展開したアルカードとヴァンプスドラゴンの尽力により何とか生き残ることが出来たのだ。しかしその体はボロボロでアルカードは全身の再生を済ますまでかなりの時間を有した。
――そしてドラキュラは
「さて始めようか?吸血鬼よ」
「それはこちらの台詞だとも」
地表に降り立った朱い月と対峙していた。そしてその両手には普段とは様子が違う異形の二丁拳銃が握られていたが、それすらも頼りないように思えてしまうほどに朱い月の異質さが際立つのだった。
そして……その時は唐突に訪れた
「――『廻れ』」
「喰らえ」
魔力で強化された魔弾が朱い月の胸の部位に直撃した同時にドラキュラの胴体が捻じ切れた。ドラキュラは即座に再生させた。
朱い月は心底面白そうな表情をしながらその美しい髪から一振りの剣を創り、ドラキュラに振るった。
「
ドラキュラの周囲には夥しい数の魔法陣が展開されており、その魔法陣の数はおよそ
そのいずれの魔法陣からはあの白と黒の二丁拳銃やマスケット銃などの重火器、銀の力が込められた槍に加えて、高密度に圧縮された魔力の塊等が覗かせていた。
そしてそれらがドラキュラの合図によりけたたましい銃声と共に一斉に射出された。
「――『弾けろ』」
しかしたった一言で銃弾は弾かれ、槍は折れ、魔力の塊も弾かれてしまった。
そしてその刃がドラキュラの体を肩から切り裂いていった。
だが
「ほう……!これは……!」
先程弾かれた筈の弾丸が朱い月の体に衝突し、思わず仰け反る朱い月であった。
だがそれに追い打ちをかけるかの如く先程の倍の量の魔法陣が展開され、更に多くの暴力が顔を覗かせやがて一斉掃射された。
そしてドラキュラは既に体を再生させていた。――悍ましい瘴気を放ちながら
――ドラキュラは自身に課せていた枷を解いた
両手を顔の前に掲げ、まるで朱い月にピントを合わせるようにして構え――補足した
「【
瞬間彼の体は赤黒い何かへと変貌し、体中に無数の眼が現れた。そして体が蠢き始め、周囲に悍ましい魔力が満ち溢れた。
身体に無数の眼が現れ、そのいずれも朱い月を見定めていた。
「これからお見せするのは……
……朱い月はドラキュラの魔力と生命力が異常なまでに膨れ上がるのを弾丸や魔法を弾きながら感じていた。そしてそれを見て朱い月は笑いが止まらなくなった
「ハ……ハハハハハハハッ!!!!まだ先があるのか!面白い……!面白いぞ!!吸血鬼!私を楽しませてみろ!!」
朱い月にとって初めての出来事だった。まさか自分より格下だと思っていた吸血鬼がよもや自分に届きうる存在だったとは夢にも思わなかったのだ
朱い月は獰猛な笑みを浮かべ、ドラキュラに襲い掛かった。
――これが朱い月と“ドラキュラ”の邂逅であった
これがトラウマになってアルカードは文字通り死ぬ気で鍛えた模様
【拘束制御術式】ではなく【偽・拘束制御術式】なのは、アーカードに対するリスペクトと自分は決してアーカードでは無いという考えの現れです。
途中から弾丸の全てが魔弾(殺意マシマシ)だったり、対吸血鬼特攻がついた銀の槍等が数万回同時に絶え間なく襲ってくるというふざけ散らかした仕様になってます
次回は朱い月(ヒロイン?)との邂逅(殺伐)の終わりと現在です