もはや原作とはかけ離れていたり、時系列が凄い跳びますが、お許しください。
それではどうぞ
「『歪め』」
ドラキュラを中心に空間が歪む。
ドラキュラの胴体が捻じ切れるかのように空間が湾曲した。やがてドラキュラの胴体は千切れた。
しかし千切れた下半身の接続部から無数の赤黒い触手が飛び出し、朱い月を襲う。
「『墜ちよ』」
途轍もない重力によって触手はすべて地に伏せ、めり込んだ。そして朱い月の眼前に無数の弾丸が迫っていたが、これらも羽虫のように撃ち落とされた。
――その時だった
「――ほぉ」
地に伏せた筈の触手からドラキュラが
初めて血を流したことに朱い月は驚き、目を見開いた。
未だ空中にある上半身だった部位からは、無数の眼が覗かせており、やがて一つの大きな獣に成り代わり朱い月に喰らいつきに行った。
『グオオオオオオオ!!』
「ククク――『凶れ』」
獰猛な笑みを浮かべた朱い月はその獣を補足し――捻じ切った
筈だった。
「『凶るな』 お前が『凶れ』」
その瞬間朱い月の胴体の空間が凶った。
朱い月は驚愕の表情を浮かべながらも先の一撃で己の血を採取されていたことを思い出した。だが、朱い月の血を舐めて眷属にならないドラキュラに疑問が湧いた。
「……ほう、成程な。眷属化を拒否しただけでなく、私の血の力を取り込んだか! 全く以て面白い!」
「ご名答。では『墜ちろ』」
ドラキュラが親指を下に向けるとドラキュラを襲った途轍もない重力が今度は朱い月を襲い……朱い月が地面に激突した。
――通常ならば朱い月の血を吸うことで眷属になり果ててしまう。
これにはドラキュラの固有魔法が関係していた。
在りし日のドラキュラは考えた。自分にも固有魔法があるではないかと
結論から言えば、それは確かにあった。しかしそれはドラキュラの生き方に深く関係するほどのモノである種の宿命ともいえるモノだった。
【人外特攻】
これはその名の通り人外に対する絶対的な特攻を得るまさにバランスブレイカーな固有魔法だった。しかし裏を返せばこれが適応されるのはあくまで人外であり、人間には適応されないのだ。
……詰まる所彼を殺せるのは文字通り人間のみである。そう結論づけていた
今ドラキュラが朱い月とまともに渡り合えているのもこの固有魔法の存在が大きかった。
つまりドラキュラは朱い月の血を吸っても眷属にならず、そして朱い月の権限の一部を得て、それを行使したのだった。
「……くくく。面白い、実に面白い。まさか汝と同じ位階に一時的とは言え並び立つとは」
「余興はここまでだ。さぁ……やろうか。化け物」
◆◆◆
――そこからの闘争はまるで天地鳴動のごときであった。空は裂け、地は砕け、虚空は悲鳴を上げたかのように震えた。
「カァアアアアアアア!!」
「クハハハハハハハハ!!」
ドラキュラの手刀が朱い月の胸を貫き、風穴が開いた。そして朱い月の剣がドラキュラの胴体に深く突き刺さる。地面は既に両者の血で真っ赤に染められており、彼らが拳を、剣を、銃を放つたびに尋常ではない血が流れる。
互いは既に言葉ではなく殺意の応酬で会話を為していた。
――片や月からの侵略者にして真祖
――片やただある存在に憧れただけの吸血鬼
しかし、彼らの実力は拮抗していた。
朱い月の『
再びドラキュラの右腕が振るわれる。朱い月は避けようともせずそのまま腕が朱い月の顔面を突き抜けた。お返しと言わんばかりに朱い月の爪がドラキュラの左腕諸共胴体を切り裂く。
「良いぞ良いぞ! こんなに心が躍る闘争は初めてだ!!」
「それで、満足か? 化け物」
「いいや! もっとだ!もっと、もっと素晴らしき闘いを!!」
口を三日月のように上げながら狂気に満ちた笑顔をする両者だった。そして互いに腕を振りかぶり、全力を込めた。
ドラキュラの腕が膨張し、体内の魔力や血の殆どが腕に集中した。朱い月も同じく腕を振りかぶり――互いに衝突した。
「グゥオオオオオオオオオ!!」
「オォオオオオオオオオオ!!」
ドラキュラの手刀が、朱い月の爪がぶつかり合う寸前。周囲にはその膨大な衝撃波と行き場を失った膨大で濃密な魔力が広がった。
――そして、互いの腕は木っ端みじんに砕け散った。
肉片が、血が宙を舞い辺りを染め上げる。砕けた腕はそこに繋がっていた胴体の一部諸共抉りとっていた。
しかしドラキュラも朱い月も残った方の腕でまたしてもぶつかり合った。こちらもぶつかり合った瞬間、肉片になり果てた。……残るは足
「――喰らえ!」
「――汝がな!」
互いの回し蹴りが炸裂するとこちらも腕と同じ末路を辿った。すでに彼らの衣服はどす黒い血で染まり、元々の色が分からない位にまで染め上げられていた。
既に一本足であるが、ドラキュラも朱い月も体を起き上がらせ――互いの首元に牙を立てた。
「くくく……」
「はぁ……」
そうして互いに血を吸うと、消し飛ばされた部位を再生させた。朱い月は光悦な笑みを浮かべ、ドラキュラはどこか満足げな表情を浮かべながら互いに嗤った。
(これが父上と母上の出会いだとは……流石に言えん……有耶無耶にして正解だった)
「アルカード? どうした?」
「……何でもない、旅を続けるとしよう」
アルカードはあの出会いのことは話さない方が正解だと思いながら、ハジメ達との足並みをそろえた。
既に四つの神代魔法を手にし、残すは一つとなった時に使えるようになる概念魔法を前にアルカードは考えていた。
それは己の父が本当に望む【死】の為に自分は何が出来るかであった。
〝ドラキュラは人間でないと倒せない〟
それはドラキュラの【人外特攻】によるものであり、そしてその人外の枠に自分も入っていることを自覚していたアルカードは今一度思う。
(……私では父を倒すことは出来ない。なら、私にできる事は……なんだ?)
アルカードの戦闘力は、現状でもハジメ達よりも上だ。しかし、徐々にその差は縮まっており、いずれアルカードを追い抜こすことは確信していた。
これまでの長く、辛く、険しい旅がハジメ達を強くしたのだ。
(……私にできる事は)
アルカードは懐中時計を握りしめながら己が為すべきこと、そして、ハジメ達に何を残せるかを考え……そして決意した。
◆◆◆
……そしてその時は訪れた
『わ、私達の、勝利ですっ!』
――ォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!
戦場に、否、新たな世界に人々の爆発したような歓声が響いた。
その世界が上げた産声のような勝鬨に応えたように、空を覆う虹色のオーロラからキラキラと光の粒子が降り注いだ。輝きを取り戻した太陽の光が反射して、まるでダイヤモンドダストのように世界を煌めかせる。それはきっと、新たな世界への祝福だ。
エヒトを撃破し、空からゆっくりと落ちてくるハジメとユエの表情は晴れやかなものだった。
周囲は祝福の雄たけびを上げ、祝勝ムードに包まれていた。
――ただ一人を除いて
「どうしたのじゃ? アルカード!」
「……来るか、父上」
「え」
アルカードは空を見上げていた。そこには――赤い月が昇っていた。
ゾクッ
「お、おい……何だ……? この寒気は……」
「あのエヒトは死んだんだろ? じゃあ、これは……一体?」
「な……何だ、あの赤い……月は……」
一人の民衆の声に同調するかのように空を見上げると、赤い満月と――黒い影が浮かんでいた
「あ……あぁ……嘘……だろ?」
――それはやがて民衆の中心に降り立ち、深紅のコートを翻した。
ドラキュラだ
「み、皆逃げろォォオオオオオオオオ!!」
先程までの祝福ムードが一転。周囲は地獄と化し、周囲の人間は逃げ惑い、その場に取り残された負傷者は己の最期を悟り、死を悟った表情でドラキュラを見つめていた。
一方アルカードは
「皆、この秘薬を飲め」
「これは……?」
「……【不死鳥の涙】それを飲めばすべての傷は癒え、魔力が満ちるだろう」
驚愕する一行を余所眼にアルカードは一人立ち上がり、ドラキュラの下に足を運んだ。
「ま……待て! アルカード! お主は飲まないのか!?」
「……私には、もう不要な物だ」
アルカードの発言に驚愕する一行だったが、アルカードは振り返った。その表情にはどこか安らかな表情をしていた。それはまるで――永遠の別れをするようで
「世話になったな。皆。私は幸せ者だった」
「ま……て、アルカード……アルカードォオ!!」
「アルカードさん!――ッ!! これは!?」
意識も絶え絶えのハジメはアルカードを引き留めようとはち切れんばかりに叫んだ。
アルカードを引き留めようと慌てて手を伸ばしたシアだったが、結界のような物に弾かれた。よく見るとハジメを中心として大きな結界が展開されていた。
「これは……! 馬鹿な!? あ奴は死にに行く気か!?」
「そ、そんな……」
「戻れ、アルカード……アルカード!!」
「いいや、これでさよならだ。皆」
そしてアルカードは一人、ドラキュラの前に躍り出た。
「お待たせ致しました。わが父よ」
「……いいや、待たせたのは私の方か」
そしてアルカードは剣を構えた。しかしドラキュラは俯いたままであった。
「では、これより私の地獄は幕を開ける。覚悟は良いな?」
「……元より」
するとドラキュラは一息を吸い、唄い始めた
――私はヘルメスの鳥
「「「――ッ!?」」」
周囲がざわつく
ドラキュラは両手を顔の横に添え、次の節を唱えた
――私は自らの羽を喰らい
その場にいない筈の、遠くに逃げた人々、否このトータスにいる全ての生物が感じた
――こいつはやばいと
「――シッ!」
アルカードの剣が確実にドラキュラの首を刎ねた。……しかし詠唱は止まらない
――飼い慣らされる
アルカードから放たれた剣によってドラキュラの身体は即座にバラバラにされた。既にその場にはドラキュラだったものの肉塊のような、赤黒い霧のようなものが広場を包み込もうとしていた。
「や……やった……のか?」
「……嫌、違う!!」
「あ……あぁ……」
バラバラにされたドラキュラを見て安堵しかけた人々の声にテオが即座に訂正を入れる。まだ始まってないと、これから始まってしまうのだと。
ユエは感じ取った。今、ドラキュラの体内から無数の命が胎動していることを、これから起こるのは【死】であると
そしてユエは、確かに聞いた。
死人の叫びを、地獄の歌を
――そしてその時は、来た
「――クッ!? これは……石に!?」
突如放たれた灰色の渦巻く球体が、アルカードの足を突如石化させた。その光景に既視感のある人物たちは目を見開き驚愕していた。
――更に
「……ガ……ハ……ッ」
「アルカードさん!」
アルカードを炎のブレスが襲った。そして石化して動けなくなったアルカードの身体に竜の爪らしき物が突き刺さる。
「そ……そんな、あのブレスは、あの爪は……」
「テオ!? どうした!?」
ハジメは様子の可笑しくなったテオを気に掛ける。テオは赤い何かの中から這いずり出てきたそれらに驚愕していた。
「あ……あぁ……あれは、父様、母様の!!」
――見覚えのある赤い髪の魔人族の女の掲げた手に灰色の渦巻く球体が、そしてどこかテオに似た色合いの竜の手と、顔が這いずり出てきた。その正体は……
「あ……あれは……あいつは、カトレア!?」
ハジメ達に殺され掛け、ドラキュラに連れ去られていた魔人族の女、カトレアであった。傍には二体の黒竜が這い出てきた。テオの語るその正体にハジメ達はただただ驚愕していた。
その異様な様子に全員が絶句していた。
そしてそれだけでなく嘗てドラキュラと戦い、敗れた存在が現出しようとしていた。
「……始まったか。【死の河】が!」
石となった部位を自ら砕き、再生させたアルカードは覚悟を決めた表情で剣を構えた。やがて、ドラキュラの【河】は徐々に肥大化し始め、内に秘めた命を解放しようとしていた。
――地獄が、歌う
ぶっちゃけこれがやりたかっただけなのはあります。
恐らく次回で完結です。