現代艦隊これくしょん    作:岩波命自

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第一話 新たなる艦娘達

 二〇年ぶりに潜る基地のゲートは、二〇年前から何一つ変わっていなかった。

 また、この基地の門を潜る日が来るとは。

 迎えの車の中から彼女は二〇年ぶりに訪れる基地の風景を車内から眺めながら、退役してからこっち見る事ももうないだろうと思っていた基地の風景を眺めていた。

 日本の横須賀の国連海軍基地、かつては日本国国防海軍及びその前身の日本国海上自衛隊の第一護衛隊群の基地だった海軍基地には、昔と変わらず多数の基地要員が基地内で働いている。

 かつては彼女もこの基地で「艦娘」として所属し、人類共通の敵、「深海棲艦」と戦いを繰り広げて来た。

 三〇年前に突如現れた人類共通の敵「深海棲艦」との一〇年に渡る戦争、「海洋戦争」が終結し、用済みとなった自分は海軍から身を退き、一般人としてひっそりと暮らしていた。

 

 しかし、今は違う。

 

 二〇年前に根絶されたはずの深海棲艦は再び人類の前に現れた。

 実弾砲や魚雷で武装していた前の「海洋戦争」の時の深海棲艦とは、また別種と言っていい程に強化された、「ミサイルを装備した深海棲艦」の出現が確認されたのだ。

 二〇年前に戦争が終結して以来、艦娘は全員退役して、それぞれの戦後の人生を歩んでいた為に、新たに出現した深海棲艦に対抗出来る存在は無く、人類は瞬く間に世界中の海の制海権を失っていった。

 海に囲まれていた孤島や、島国など海上交通路による物流頼みだった各国では、制海権の喪失に伴い経済と産業は瞬く間に破綻し、国家存亡の危機に立たされていた。

 辛うじて、それら海上交通路に代わって国連加盟国同士での空路での物資の融通で各国は命を繋いでいるが、予断を許す状況ではない。

 この再び訪れた世界規模の危機に、再び深海棲艦相手に対抗可能な存在「艦娘」が駆り出される事となった。

 そう言う事もあり、一応軍籍登録上では予備役扱いだった自分が再編成される「艦娘艦隊」の上級幹部として再び呼び出された訳である。

 ゆっくりと余生を過ごせるかと思っていたのに、また深海棲艦との戦争に駆り出されるのか。そう思うと彼女の表情に陰りが見える。

 今年で自分は四六歳になる。艦娘として見れば前線に出るには歳を取り過ぎている。

 老兵の域に入っている自分に一体海軍は何を期待しているのだろうか。

 疑念だけが頭の中で渦巻く中、彼女を乗せた車は横須賀基地の司令部の前に着いた。

 出迎えの隊員が数名並んで出迎える中、車から降りた彼女は案内役の士官に案内されて、二〇年前と同じ国連海軍日本艦隊の総司令官のオフィスへと案内された。

 案内役の士官は司令官のオフィスのドアをノックし、入出許可を求める。

「入れ」

 中から彼女が初めて聞く今の艦隊総司令官、厳密に言えば国連海軍日本艦隊司令官の返事がドア越しに返され、彼女は案内役の士官と共に部屋に入室する。

 部屋には現日本艦隊司令官の南郷剣(なんごう・つるぎ)海将が彼女を待っていた。

 南郷司令官を前に、彼女は二〇年前と同じ直立不動の姿勢をとると、敬礼してかつての官姓名を名乗った。

「青葉型重巡洋艦艦娘一番艦青葉。出頭命令により予備役より出頭いたしました」

「ご苦労青葉。再度の招集に応えてくれた事に感謝を申し上げる」

 元日本艦隊第六戦隊三番艦青葉型重巡洋艦青葉と名乗っていた彼女に、南郷はまず感謝を述べる。

 南郷が勧めたソファに腰かけた青葉は、予備役に編入され、もう用済みも同然の筈の自分を何故再招集した理由を南郷に問うた。

「再び出現した深海棲艦に対して、我々は新世代の艦娘の実戦配備を進めている。

 だが、まだその新世代の艦娘の数が絶対的に足りていないのが現状だ。即ち、秘書艦や作戦参謀として起用できる艦娘に余裕は無いと言うのが今の我が艦隊の現状である。

 そこで、君の様な前の『海洋戦争』を戦い抜いた歴戦の艦娘を秘書艦、作戦参謀、基地司令官として起用していく事が、国連海軍内で決定したのだ。

 青葉。君には私のサポート役として一等海佐に昇進して秘書艦として新たに再出発を始める我が日本艦隊の首席幕僚を務めて貰いたい」

「小官が一等海佐に……ですか?」

 

 二〇年前の深海棲艦との戦争、「海洋戦争」で自分が一番昇進していた階級が一等海尉だった。一等海佐とはそこから三つも上の階級である。

 異例中の大抜擢だ。

 

「しかし、何故自分なのでしょうか? 他に適任と思われる前大戦の艦娘ならまだ沢山いる筈ですが」

「復帰をする事になったのは、君だけではない。君の妹、青葉型重巡洋艦艦娘衣笠は同横須賀基地の基地司令官として一等海佐に昇進の上再着任する事を承諾してくれたし、古鷹型重巡洋艦艦娘の古鷹は君と同じく新編成の日本艦隊の秘書艦として、加古は横須賀基地副司令官として復帰する事を承諾してくれた」

 はあ、旧第六戦隊の重巡洋艦艦娘全員が新生日本艦隊の重鎮として再着任を果たしたと言う訳か。

 前の「海洋戦争」では一線級とはいかずとも地道に艦隊戦力として各地で深海棲艦との戦争に身を投じて、激戦を繰り広げ、人類の勝利を掴んだ立役者の一人として歴史に名を刻んだのが第六戦隊の重巡艦娘達だった。

「先の深海棲艦との戦争を経験した経験を買って、小官は一等海佐に抜擢の上、艦隊の秘書艦を頼む、と言う訳ですか」

「これを言うのは酷であることは重々承知だが、新たに出現した深海棲艦相手に、今の君はもう年齢的に言っても、艤装の世代的に言っても時代遅れの域に入っている。

 前線に投入したところで、君が成す術もなく轟沈戦死する可能性が極めて高い。

 それよりは前大戦での経験を生かしての後方での艦隊運用の補佐に当たって貰いたいのだ」

「なる程です。ところで新規に深海棲艦相手に戦う艦娘はちゃんと揃っているのでしょうか? 小官は軍から身を引いて久しく、最近の軍の内情に関しては疎いモノで」

 昔はよく取材、取材と海軍内の様々な情報に首を突っ込んでは「艦隊新聞」の記事のネタにして、広報と戦闘の両方をやってのける器用さを発揮していたが、「海洋戦争」終結後、予備役に編入され軍の第一線から身を退いてからはジャーナリスト精神も身を潜め、「海洋戦争」時代の回顧録の執筆に明け暮れていた青葉だ。

 多少は昔の伝で軍の内情についてちらほら簡単な話は聞いていたが、もう自分の時代は終わったと思い、以前の様に積極的に首を突っ込むのは止めていた。

 懸念を口にする青葉に、南郷は問題は無い、と頷く。

 タブレット端末を手に、新規艦娘の人事ファイルを表示し、それを青葉に渡す。

「今のところ、実戦配備状態にある艦娘は三人。だが、艦娘候補生学校では既に多数の新造艦娘の育成が始まっている。

 深海棲艦がミサイルを使うのなら、対抗する形でこちらも艦娘の艤装サイズで使える誘導弾の開発を進めて来た。

 その誘導弾運用艤装の実戦配備が可能になって、ようやくわが日本艦隊で最初の三人が着任を果たせたと言う訳だ」

 南郷がタブレット端末で見せてくれた人事ファイルには三人の艦娘が表示されていた。

 

 

 一人はしらね型ヘリ搭載護衛艦艦娘DDHしらね。

 もう一人はあさぎり型汎用護衛艦DDあさぎり。

 もう一人がはたかぜ型ミサイル護衛艦DDGはたかぜ。

 

 これが新生国連海軍日本艦隊の初期艦娘と言う事になる。

 そして日本艦隊の秘書艦として一等海佐階級に任官されて復帰した青葉は、この三人を始めとする新生日本艦隊艦娘の上司になると言う訳だ。

 それだけでなく、旧第六戦隊の仲間達も日本艦隊の主要幹部として一等海佐の階級を与えられて復帰して来ている。

 

 秘書艦か……。前の大戦時は一介の重巡艦娘として戦って来て、秘書艦の座など夢の世界だと思っていたが、二〇年の時を経て自分が日本艦隊の秘書艦に、それも一等海佐として任官された上で着任する事になるとは。

 

「この三人の艦娘と対面する事は出来ますか?」

「勿論。これから君に紹介しようと思っていたところだ」

 青葉の問いに頷いて答えた南郷は付いて来てくれ、と言って青葉を新任の艦娘の元へと連れて行った。

 

 懐かしさが溢れる横須賀基地の艦娘整備場に南郷に連れられて入った青葉に、艤装の整備作業に当たる新任の艦娘三人が目に入った。

 南郷と青葉の姿を見たしらねが即座にあさぎりとはたかぜに「気を付け!」と号令をかける。

 休んでくれ、と三人に楽にするよう言いながら南郷は三人に青葉を紹介する。

「君達艦娘の直属上官兼私の秘書艦を務める事になった、元第六戦隊の青葉型重巡艦娘の青葉一等海佐だ。

 先の『海洋戦争』にも従事していた歴戦の艦娘だ。『元』ではあるが、新米の君たちと比べて場数、経験は確かだ。

 皆、青葉一佐に自己紹介してくれ」

 秘書艦について紹介した南郷は三人の艦娘に、青葉に自己紹介するよう促す。

 最初に自己紹介したのはしらねだった。

「しらね型ヘリ搭載護衛艦艦娘のしらねです。第一艦娘護衛隊群旗艦を務めさせていただいております。敵潜水艦の狩りならお任せください」

 長身、長い髪、そしてその口調にどこか、かつての戦艦艦娘の長門を想起させるしらねだ。艦隊旗艦を務める、と言うだけあってか着ている略装の胸には司令部幕僚過程履修済みの徽章が付いている。落ち着きのある、武人然とした佇まいも長門を思い起こさせる。

 次に自己紹介したのはあさぎりだった。

「あさぎり型汎用護衛艦のあさぎりです。しらねさんと同じ第一艦娘護衛隊群所属です。敵艦隊との戦闘から対空戦闘、対潜戦、艦隊護衛まで何でもこなして御覧に入れます」

 語り口調そのものは礼儀正しいが、自信に満ちた顔から滲むその姿は元気っ子であることが伺えた。汎用護衛艦と言う何でも屋と言うだけあって、やる事は多岐に渡るだけに文字通り汎用性の高い艦娘なのだろう。

 最後に自己紹介したのがはたかぜだった。

「はたかぜ型ミサイル護衛艦はたかぜです。しらねさん、あさぎりさんと同じく第一艦娘護衛隊群所属となります。

 艦隊防空はこの私にどうぞお任せください」

 名前もそうだが、はたかぜは前の「海洋戦争」の際に青葉とも一緒に戦った経験のある神風型駆逐艦艦娘の旗風に容姿も喋り方も佇まいも非常に似ている。

「失礼ながら、はたかぜさんは前の『海洋戦争』で活躍した神風型駆逐艦の旗風さんと何か関係はありますか?」

 そう尋ねる青葉に、はたかぜはにっこり微笑んで頷く。

「神風型駆逐艦旗風は私の母にございます。母の名を継いで護衛艦艦娘として着任いたしました」

「わお……」

 艦娘として名前を襲名した二世の誕生は初耳である。

 驚く青葉に南郷がはたかぜ以外にも襲名している艦娘がいると言う事を教えた。

「名前の襲名をしている新しい艦娘は何も彼女に限った話ではない。

 艦娘候補生として、戦線に投入予定の艦娘の多くが母親が君と同じ元艦娘と言う経歴の持ち主が沢山いる」

「そうなんですか」

 自分は結婚せず、子供も作っていないから護衛艦艦娘あおば、の誕生は残念ながら望めそうにないが、そうでない艦娘が望んだかはともかくといて自身の娘をかつての自分の名を継ぐ護衛艦艦娘として再び艦娘として世に送り出しつつあるのだ。

 まだ作戦可能状態にあるのはしらね、あさぎり、はたかぜの三人だけだが、何れは多くの護衛艦艦娘が着任して大規模な艦隊を構成するのだろう。

 その日が来るのが楽しみであり、また同時に、自分がかつて経験した過酷な戦争にこの後輩とも言える艦娘達が地獄の戦場に駆り出され、戦っていく事への不安も感じる青葉だった。

 

 

 秘書艦としてのオフィスに通される前に、青葉は横須賀基地司令官の部屋を訪れた。

「どうぞ」

 懐かしい声が入室を許可する。

「入るよ」

 ドアを開けて入室した青葉を見て、既に一等海佐の階級章を付けた略装を着込んでいる衣笠がぱっと表情を明るくして出迎える。

「青葉じゃん、久しぶり! 元気してた?」

「ガサも、元気そうで何よりだよ。横須賀基地司令官だってね。ガサも出世したね」

「青葉は日本艦隊の秘書艦に抜擢だってね。凄いわね」

「古鷹、加古も青葉と同じ秘書艦とガサのサポート役の副基地司令官だってね。

 また六戦隊揃って仕事ができるんだねえ」

「そうね。それにしても青葉、老けた?」

 青葉の顔を見て衣笠がストレートに尋ねると青葉は苦笑交じりに応える。

「ガサも老けたよね。お互いあれから二〇年も時が過ぎた関係だからね」

「まあ、確かにそうよね。でも青葉は見た目は老けても変わりない様でよかったわ」

「ガサも元気そうで青葉は何よりだよ」

 微笑みを浮かべて、見た目以外は変わり無い妹の様子に青葉は胸中で安堵の溜息を吐いていた。

 

 新任の秘書艦、前の大戦の第六戦隊の重巡艦娘か。

 いろいろとそのおちゃらけた性格からやらかした事から。艦娘同士や艦隊幕僚とのいざこざの仲裁まで幅広く活躍していた艦隊のムードメーカーだと聞く。

 そんな元重巡艦娘が自分達の直属上官兼司令官の秘書艦か。

 青葉の人事ファイルをタブレット端末で読み込みながら、しらねは新任の秘書艦についてざっと調べ上げていた。

「何か、不安な事でもあるのかい」

 横から自分にのぞき込んで来るあさぎりに「別に大したことではない」と返しながら、青葉の履歴を表示したタブレット端末の画面を消す。

「青葉さんはノリの軽い、ムービーメーカーでおちゃらけた人だったとは言っても、その実力は確かだ。

 そうでなければ、秘書艦になどと言う要職に抜擢される筈もないだろう」

「まあ、そうだよねえ」

 頷くあさぎりの肩を大丈夫さ、と言うように叩きながら今度はタブレット端末で今この場にいる三人以外の艦娘の配備予定状況を確認する。

「こんごう、はつゆき、しらゆき、やまぎり、しまかぜ、むらさめ、あぶくまは艦娘候補生過程の最終段階か。

 まだ三人だけでは基地正面海域の深海棲艦程度しか対応出来んな」

「こんごうさんが来てくれたら、私だけでは無理がある防空能力も強化されましょうね」

 イージスシステム搭載の防空艦娘こんごうの着任が待ち遠しそうに語るはたかぜにあさぎりは意外そうな顔を向ける。

「防空艦娘としてのお株を完全に持っていかれるんだよ? いいのかいそれで」

「私の防空能力では同時対処能力にも限界があります。ミサイルの一発二発、三発はどうにか出来ても、対艦ミサイルの飽和攻撃をされれば防ぎ様がありません。

 こんごうさんが艦隊に加われば、艦隊の防空能力は底上げされ、深海棲艦の対艦ミサイルに対しての盤石な防空体制が出来上がりましょう」

 そう語るはたかぜの言う通り、彼女は防空艦娘とは言っても残念ながら同時対処能力には限度が大きく、対艦ミサイルの飽和攻撃をされたらはたかぜだけでは防ぎきれないのが今の日本艦隊の現状だ。

 今のところ、しらね、あさぎり、はたかぜの三人だけで基地正面海域、通称1-1海域を攻略するのが関の山だ。

 基地正面海域以外の海域を解放していくにはもっと戦力が必要だ。

 

 そしてその為には誰一人として轟沈・戦死してはならないのである。

 

 艦隊旗艦を務める重責を負ったしらねにとって、それは自戒であり、自分に課せられた使命の様に思っていた。

 

 

 しらねは前の「海洋戦争」の時に両親を失って以来、孤児院で育った所謂戦争孤児だった。

 まだ物心つく前に両親を深海棲艦の無差別攻撃で失って、自分の本当の名前も知らないまま孤児院で与えられた名前を名乗って育ってきた。

 深海棲艦が再び現れた時、艦娘を志して海軍の門戸を叩いたのは彼女にとってはごく自然な流れとも言えた。

 かつての海上自衛隊のヘリ搭載護衛艦を基にした艦娘してデビューをし、それだけでなく艦隊旗艦を務める艦娘として幕僚過程まで履修し、修了した。

 何故、何の為か。そんなのは別に意識していなかった。ただ、自分には艦娘と言う世界が自分にとって今後生きて行く事が出来る世界だと本能的に感じたからに過ぎなかった。

 あさぎりとはたかぜがどうなのか、何故艦娘になったのか、それは聞いた事もないし、聞こうと思った事も無い。

 二人とも艦娘になろうと思う何か理由と意思があって艦娘になっただけだ。

 自分だってそうだ。

 これから増えて行くであろう護衛艦娘の旗艦としての大任を考えると、武者震いをしそうになる。

 艦隊旗艦。その言葉だけで、重責と大任を掌ったという実感が湧き上がって来る。

(気負い過ぎずに、頑張ろう。私なら出来る)

 胸中で自分自身を落ち着かせながら、自身の艤装の点検に戻った。

 

 しらねの艤装に備えられた武装は右手に七三式一二七ミリ単装速射砲二基と八連装ASROCランチャー一基

 背中の艤装には左右に一基ずつの二〇ミリCIWSが計二基。

 左腕の航空艤装に三機のSH60K哨戒ヘリを搭載したヘリ格納庫とその格納庫上にMk29八連装シースパロー対空ミサイルランチャー。

 両足に三二四ミリ三連装魚雷発射管一基ずつ、計二基。

 これが彼女の全武装である。

 彼女が得意とする戦闘は、哨戒ヘリを用いた対潜戦闘だ。それ以外に主砲二基を用いた水上砲戦もある。

 半面対空戦闘はそれほど得意分野と言う訳でないので、防空面では今のところはたかぜとあさぎりが頼りだ。

 

 

 基地正面海域の敵は対して脅威度の高い深海棲艦ではない、とされているが、それでも艦娘以外の通常兵器では対抗が難しい相手だ。

 来るべき反攻作戦に備えて、準備を怠らないよう気を付けなければならない。

 先の「海洋戦争」では複数の艦娘が轟沈し、戦死した。自分達も艦娘であるからにはその危険性とは常に隣りあわせと言う事である。

 誰一人失わず、みんなで生きてこの海の自由を取り戻す。

 その意気込みにしらねは一人熱情を込めていた。

 今は三人しかいないが、この三人だけで艦隊司令部は基地正面海域の制海権奪還作戦を開始すると聞いている。

 やって見せる、やってのけて見せる。私達なら出来る。

 そう意気込みつつ、教官から教え込まれた「油断慢心大敵」の文字を脳裏に浮かべていた。

 一つの気の緩みが、自分の命を、仲間の命を危険に晒す。

 そうならない様に全力でこの新たに始まる戦争に自分は挑んでいくのだ。




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