すまないヘクトール。ジークだ。夜分遅くに申し訳ないが少し時間はあるだろうか。
マスターのことでひとつ相談があるんだ。
その……とてもささいなことで、もしかしたら俺の早とちりで単なる杞憂なのかもしれない。それにこれはマスターのことだがマスター自身は知らないことなんだ。だから本当は俺の中にだけしまっておくべきことで、他の人には話してはいけないことなのかもしれない。だけどどう判断して何をすべきなのかが俺には……。だからまずマスターにとって一番信頼があり口外もしなさそうな貴方に……、ありがとう。恩に着る。
そうだな……。まず俺がマスターの部屋に時折泊まっていて同じベッドで眠っていることは知っているよな?
サーヴァントに睡眠の必要はない。それはもちろん知っている。他のサーヴァントたちもそのようにマスターと寝を共にしたいことも知っている。そもそも一人用のベッドにふたりで眠るというのがまず休息効率が悪いからマスターのためにならないのも分かっている。
だから憚られるところもあるんだが、マスターに「一緒だと安心する」と言われてしまうとな。幸いなことにそれに関して怒られたことはないからこうして時折。
それでその時。その時の話なんだ。
昨晩もマスターの部屋に遊びに行ってそのまま泊まる流れになって。マンドリカルドや沖田オルタもどうだと尋ねたらマンドリカルドはこの後にイアソンたちと会う約束があると断って沖田オルタは煉獄のほうから「今日はやめておく」と断られてしまった。だから昨夜泊まることになったんだが……、その時に、マスターが眠りながら泣いていたんだ。
うなされるでも苦悶を浮かべるでもなく。ただ安らかな顔で泣いていたんだ。
何か悪い夢を見ているのか。ただの生理現象なのか。見ただけでは分からなくて。バレンタインの時のようにマスターの夢に入られれば良かったんだが、あいにく昨日に限ってベッド下には清姫さんはいなくて……。霊体化して音を立てずに部屋を出て呼びにいくことも考えたんだ。けど……、握られていた手をほどくことが出来なかった。
だからそのまま、起こすも何も出来ないまま朝まで過ごしてしまい、起きたマスターは何も覚えていなかった。いつも通りに笑って朝の支度をしてふたりで食堂に向かって周囲に挨拶をしてから食事をした。
それ以上は何もない、それだけの話だ。
だがどうしても、マスターのあの涙が焼き付いてしまっていて。マスターが部屋に泊まることが多くて寝顔を見守っていることも多い貴方なら何か知っているんじゃないかと思ったんだが、どうだろうか。
「君たちが最初から双子みたいに仲良しなのは知っているけどちょっと整理する時間頂戴?」