今回はまたニッチなメンバーが選ばれたなあ。
先ほど発生した特異点への適性サーヴァントのリストを見たヘクトールの第一印象がそれだった。
そこに自分の名がないことに安心を覚えたり不安を覚えたり。
まあカルナがいるから最悪でもマスターはどうにかなるだろう。とは思うと同時にいやこのメンバーでカルナは意志疎通はどうなんだ?という言い知れない不安もあり……。まあカルナ以外も歴戦の英雄たちだ。心配しすぎも失礼だろう。そう思って曖昧な顔のまま黙することしか出来ないわけであるのだが。隣にいるプロトクー・フーリンなんかはあからさまに「大丈夫なのかこれ?」という顔をしているし実際に口にしているし。それに対し総司令のロマニも「うーん。かといって無理に適性の低いサーヴァントを連れていくのは更に危険だし……。まあどうにかなるだろう!してもらおう!」などと更に不安を極めてくる発言をしてくるし。反面一番危険となり得るマスターは「皆がいるんだからどうにかなるよ」と呑気に張り切った顔しかしてないし……。とにかく不安しかないオーダーであった。
沈痛な思いをいくら抱こうと適性がないものは適性がないのだ。そんか蚊帳の外からごちゃごちゃ言われても煩わしく邪魔くさいノイズでしかないだろう。大人しく引き下がり黙って万一に備えるのが一番の協力だ。そう思ってプロトクー・フーリンと共に食事をしたり細かな打ち合わせをしたりとゆるやかに日常を過ごすこと約半日。
「おーーーーーーーー!わーーーーーーーー!!ヘクトールヘクトールヘクトールーーーーーー!!」
泣きの入った少年の声が勢いよくカルデアの廊下を突き抜ける。
「なんだなんだ」と声を出し足を向ける前にヘクトールを視認した少年がヘクトールに向けて飛びついた。
「会いたかったよヘクトールーーー!!駄目かと思った!死ぬかと思った!その前に一回会いたかった!!会えて本当に良かった!!クーにも一回ハグさせて!」
「しっかたねえなあ」
一体どんな激闘が。
レイシフトスーツのまま大騒ぎでしがみついてくる震える彼の背を撫でる。それでも足りないとプロトクー・フーリンにも抱きしめてもらい大きく背を叩いてもらっているが。少しは効果があっただろうか。
満足には足りぬだろうが一定の落ち着きは得たらしい。ふたりから離れ大きな深呼吸を繰り返した後に「じゃあ身体綺麗にして報告書書いてくる!後で話も聞いてね!」と消えていった。
「どうも思う以上に大変だったみたいだねえ」
「マスターの報告を聞く前にアーカイブに目を通しとくか?」
「そのほうがいいだろうな」
一陣の風の余韻に気をそよめかせながら語らうふたりにこれまた帰還したカルナがやってくる。
真っ白な肌がいつもよりやや赤みを帯びている。高揚によるものなのか。激闘によるものなのか。
そこまでか。そこまでだったのか。
ふたりの中にあった不安がまた大きく肌をざわつかせる。
「あの特異点での出来事は特殊事案の連続であったからな。言語だけで表現するのは困難が極まる。報告書ならまだしもマスターの口頭報告だけでは理解は難しいだろう。お前たち相手なら尚更にな」
「途中から完全にテンション任せになりそうだもんなあ」
気を遣わなくていいふたり相手であるなら余計にそうであるだろう。最終的にはテンション抑制を完全に放棄して「ぶおおおおおおのうおおおおおおお」のような言葉にすらなっていない状態になりそうなのは予想に容易い。
警告はした。と満足して休憩に入るカルナの背を見送ったふたりはどちらからというわけでもなく息を吐く。
はてさて我らが愛しの幼いマスターはどんな愉快で笑えぬカオスを体験してきたのやら。
期待にも似た恐ろしさを抱えてふたりは事後処理に追われているであろう管制室へと足を向けた。