FE蒼炎の軌跡 最強クリミア軍育成録   作:天星

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本編中には書き切れないけどストーリー上かなり大事な話なのでEx章として入れておきます。
今作の『炎の紋章』に関する話です。


第十九章Ex 蒼き炎の紋章

 デインの連中を蹴散らした後、残されていた物資を検めた。

 ただ生活しているだけの民間人から略奪するような事をするつもりは無いが、敵軍が集めた敵軍の為の物資であれば話は別だ。有り難く頂戴しておく。

 そういう訳で調べてみたが……凄いな。

 目の前に積み上げられていたのは夥しい量のゴールド。こんなにもあると正直金って感じがしない。デイン軍というのは金持ちなんだな。

 

 『大金』という言葉を聞いて俺はある事を思い出した。

 フォルカに支払う予定の5万ゴールドだ。親父が依頼したという情報、内容は全く分からないが、確かめておかないと。

 そういう訳で貸して欲しいと頼んだのだが、エリンシアは全部くれるとの事だ。今まで満足に払えなかった給金として。

 気前が良いのは助かるんだが流石にこんな大金を受け取る訳にもいかない。5万ゴールドだけは報酬として押し付けられてしまい断れなかったが、残りは軍の維持費、管理費等に当てられる事になった。

 さて、早速フォルカを呼ぼう。どうせすぐ側に居るから呼べば来るはずだ。

 

「フォルカ! 居るんだろう?」

「……場所を移そう。あまり大勢の人間に聞かせる話でも無い」

「そうか、分かった」

 

 

 

 天幕の中に移動してから話を再開する。

 

「遅くなってしまったが約束の5万ゴールドだ。受け取ってくれ」

「ああ。確かに頂戴した」

「中を確認しなくて良いのか?」

「必要ない。あんたを信用する」

「そうか。じゃあ渡してくれ。親父宛ての報告書とやらを」

「無い」

「何?」

「報告書など、最初から存在しない」

「何だと!? 俺を騙していたのか!? そういう事なら容赦は……」

「待て。報告書は無いが、俺がグレイル殿に雇われていたのは本当の話だ」

「……どういう意味だ?」

「俺の仕事は2つあった。

 まず1つ目は、グレイル殿が『暴走』した際にはそれを止める事。その命を奪う事によって」

「!?」

「そして2つ目。グレイル殿が息子のあんたに『炎の紋章』に関する秘密を打ち明ける前に何らかの理由により死亡する等した場合、あんたの成長を待ってグレイル殿の代わりにその秘密を打ち明ける事」

「炎の紋章? 一体何の事だ?」

「順を追って説明しよう。

 全ての元凶は『エルランのメダリオン』だ。一部の学者には『炎の紋章』とも呼ばれているメダリオン。

 今、あんたの妹が大事に持っている古ぼけた青銅のメダリオンこそが全ての始まりだ」

「母さんの形見のメダリオン? あれが何だと言うんだ?」

「……エルランというのはサギの王子や姫君のご先祖様に当たる人物だ。

 そいつが所持していたというあのメダリオンには『邪神』が封印されている」

「邪神だと?」

「かつて大洪水を引き起こし、俺たちが今住んでいるテリウス大陸以外を沈めたとされる存在の事だ」

「そんなモノがあのメダリオンに封印されているというのか?

 いや待て、それが本当だとして、そんな物を身に着けているミストに悪影響は無いのか!?」

「悪影響は、ある。だが、あんたの妹であれば話は別だ。

 あの子であればメダリオンの悪影響を受ける事は無い。一種の才能だな」

「どういう事だ?」

「あのメダリオンの悪影響とは、『負の気を増幅させ、持ち主を暴走させる』というものだ。

 人間なら、ベオクもラグズも全て『正』の気と『負』の気を持っている。大抵の人間は半々くらいの比率で持っているが、中には極端に偏っている者も居るようだ。

 例えばサギの民であれば極端に『正』の気に偏っているという話だ。あんたの妹も同じく『正』の気に偏っている。だから『負』の気が増幅されたとしても暴走に至る事は無い。むしろバランスが取れて調子が良くなるかもな」

「……そう聞くと『邪神』も大したことが無いように聞こえてしまうんだが」

「あの子が極めて特別なだけだ。他人が触れたら漏れなく暴走だ」

「暴走……どうなるんだ?」

「……暴走した本人から話を聞いた事がある。

 怒り、悲しみ、恐怖、絶望。身体の奥底から身が捩じ切れるような痛みと共に負の感情が無限に送られてくる。

 視界は薄暗い赤で染まり、周囲の動く者は悉くが敵に見えた。

 身体はひとりでに動き周囲の全てを屍へと変えた。自分たちを匿ってくれた恩人たちさえ、例外無く切り刻んだ。

 自分が正気を取り戻した時、最愛の妻の亡骸を抱えていた。その背中からは、自分が手にしている剣が伸びていた」

「……なあフォルカ。その暴走した人というのはまさか……」

「察したようだな。グレイル殿の事だ」

「親父が、母さんを殺したというのか?」

「ああ。グレイル殿の妻であるエルナ殿はその身を挺してメダリオンを奪い取った」

「…………」

「どんな奴でもあのメダリオンを手にしたら『負』の気に飲み込まれて暴走するだろう。

 俺や、あんたでさえもな。

 正気に戻ったグレイル殿はどこからか俺の噂を聞きつけてやってきた。

 口が堅く、腕があり、何よりどんな仕事でもする俺を雇いたいと」

「その仕事が『親父を殺してでも止める事』か。

 母さんみたいな人を生み出さない為に」

「ああ、そういう事だ。

 だが、俺は最初は断ったんだ」

「?」

「グレイル殿はかつてデインの四駿だった。

 『神騎将ガヴェイン』と言えば当時は大陸中にその名を轟かせていた存在だ」

「親父がデインの将だと!?」

「元、な。

 そんな化け物染みた強さを持った人が、更に暴走して強化される。そんな人を殺せる訳が無い」

「……だが、あんたは引き受けた。何故だ?」

「あの人は悲劇を繰り返さない為にその強さに枷をはめてしまった。

 利き腕の筋を傷付け、まともに使えないようにしたんだ。その上で剣ではなく使い慣れない斧を振るうようになった。

 それでも常人よりはずっと強かったが、何とか俺でも隙を見て殺せるくらいにはなった。だから引き受けた」

「……あんた、そんなに強かったのか?」

「俺の本業は『暗殺』なんでね。

 正面からの一騎打ちや軍としての集団戦はあまり得意ではないが、搦め手で殺す事に関しては誰にも負けられない」

「そういうものなのか」

「……以上が俺の知っている全てだ。

 あんたに託された事は、メダリオンを追手に……デインの連中に渡さずに守り抜く事。

 あんたの妹に持たせたままの状態でな」

「親父の遺志はメダリオンを守り抜く事だったんだな?」

「ああ。優先されるべきはその1点のみだ」

「分かった。……感謝する」

「礼は不要だ。仕事だからな。

 ああそうだ。もう1つだけ確認しておく事があった」

「何だ?」

「あんたも、俺を雇うかい?

 アレを守るという事はアレの近くに居続ける事。そしてそれは少なからず暴走のリスクがある」

「自分への暗殺依頼……か。奇妙な話だな」

「代金はお前が用意したこの5万ゴールドから頂くとしよう」

「? それはさっきの話に対する報酬じゃないのか?」

「報酬は既にグレイル殿から頂いている。

 この金はあんたの成長を測る為の俺なりの物差しでしかない。で、どうする」

「……分かった。頼む」

「了解だ。他にも何か頼みたい事があれば言ってくれ。預かった金から適切な金額を頂いてく」

「ああ。これからもよろしく頼む」

 

 親父の遺志、メダリオンを守り抜く事……

 ……なあ親父、アレがそんなに危険なものならもうちょっとしっかり教えて欲しかったんだが。ミストが何かの拍子に誰かに触らせてたらどうするつもりだったんだ?

 俺が触ろうとした時は親父に顔が変形するまでぶん殴られた記憶があるから触ろうとはしなかった……いや、もうちょい穏便にやってくれる方法は無かったのか?

 ミストはアレを大事にしているから他人に触らせるどころか見せるような事もしていなかったが、事故が発生しないという確証は無いんだぞ?

 ……まあいいや。起こらなかった事に対して怒ってもしょうがない。ひとまずミストにも今の話を伝えよう。

 親父が母さんを殺したって所は……流石に止めておこう。今言わなくても良いだろう。せめて戦争が終わった時に……

 

「お兄ちゃん!」

「ミスト! 丁度いい所に……」

「大変なの! メダリオンが! お母さんのメダリオンが無くなっちゃったの!!」

「な、何だと!? くっ、フォルカ、探せるか!?」

「……恐らくは無駄だろう。その子がアレを相当大事にしていたのは俺が一番良く知っている。

 どこかに置き忘れたり落としたりする事が無い以上、持ち去られたと考えるのが自然だ。

 敵の方が一枚上手だったようだな」

「持ち去られた? どういう事!?」

「実はな……」

 

 ……事情説明中……

 

「あのメダリオンに邪神が封印されている? ううん、そんなはずは無いわ」

「いや、だがしかし……」

「あのメダリオンに宿っているのは女神様を名乗る妖精さんだけよ」

「よ、妖精……? いや待て、妖精だか女神だか知らんがメダリオンに宿ってる存在と会話したのか!?」

 

 そんなもの、普通に考えたらその名を騙っている邪神だろう。

 ミストには害が無いというのは誤りだったのか?

 

「あの子は子守唄が好きなだけの女の子よ。邪神だなんて言ったら可哀そうよ」

「……聞いてるだけで邪神のイメージがどんどん崩れていくな。まさか本当に違うのか?

 ……フォルカ、どう思う?」

「俺に意見を求めるのか? 100だ」

「構わん」

「了解した。

 少なくとも、アレが『負』の気の塊であり、所有者の『負』の気を増幅させる悍ましい物である事は間違いない」

「フォルカさん! あの子の悪口は許さないよ!」

「事実は事実として受け入れるべきだ。それに、悪口を言ったつもりは無い。

 生命活動に必要な塩は過剰に摂取すれば毒となる。本質が害になるものでなくとも結果が死を招く事は十分に考えられる事だ。

 それと同様に、膨大な『負』の気を纏った何かの精神自体は善人であってもおかしくはない」

「善人……しかし、大洪水を起こした邪神だという話は?」

「神話レベルの話だ。それが本当に起こったという証拠は無い。

 当時から生きているという触れ込みのゴルドア王国の黒龍王であればもしかしたら何か知っているかもしれんがな。

 それに、大洪水が起こっていたとしてもそれが悪だという確証も無い」

「どういう意味だ?」

「あんた達だって戦争という名の殺し合いをしているだろう。

 あんた達は善かどうかは置いておいて、少なくともあんた達は自分を悪だとは思っていないだろう」

「……そうだな。だが、デインにとっては明らかに悪という訳か」

「洪水で沈んだという大陸には沈めなければならない程の問題があったのかもしれない。邪神と罵られてでも成し遂げなければならなかった何かがあったのかもしれない。

 ……こんな所だな。代金分の意見は言ったぞ」

「邪神に対してかなり都合の良いように解釈しているが……そういう意見もあるか。感謝する」

「礼は要らん。仕事だからな」

「フォルカさん、ありがとう!」

「……礼なら俺を雇ったアイクに言え」

「ありがとうフォルカさん!

 お兄ちゃん、これで分かった? あの子は邪神なんかじゃないよ! 邪神だなんて言ったら可哀そうだよ」

「だが、アレが危険な存在である事に変わりは無い。邪神だという可能性の方がまだ高い」

「お兄ちゃんの分からず屋!」

「……だから、お前は信じてやれ。

 俺がそいつを信じてやれない分だけ、俺がそいつを疑う分だけ、お前はそいつを信じてやってくれ。大事な友達なんだろう?」

「っ! ……分かった。

 でも約束して。あの子が邪神なんかじゃないって分かったら、ちゃんと謝って」

「ああ。勿論だ」

 

 メダリオンの中に、炎の紋章に封じられている存在が何者なのかは結局よく分からなかった。

 だが、ハッキリしている事がある。

 奪われたものは必ず取り戻さなければならないという事だ。

 戦わなければならない理由が、また増えたみたいだな。







フォルカ殿は最初はメチャクチャ胡散臭いけど依頼人は決して裏切らない忠義の人。
金目当てで働くネサラ様は倍の額を提示すればアッサリ裏切りそうだけどフォルカ殿なら全然そんな事は無さそうという安心感があります。プロの仕事人って感じで憧れますよ。
フォルカ殿とミストちゃんの会話は何気に貴重です。続編での汎用支援会話くらいしか存在しないんじゃないですかね?

今作の『炎の紋章』は権力の証とかではなく邪神の封印具という。
大陸中の戦禍から発生する『負』の気を吸収して青白い炎のような光を発する事から名付けられているそうです。
なお『蒼』という文字は緑系の地味な青の事を現すそうです。幽鬼のような青白い炎とは似ても似つかない……
これは……アレだな。きっとテリウス語を日本語に訳した時の誤訳でしょう!
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