ミカヤ「ふふふ、今日は気分が良いわ。
あの狂人のうp主ですら騎士様との直接戦闘は避けた。
ナーシルとかいう老害よりもイナ将軍の方が強いからっていうもっともらしい理由も付けていたけど、きっと騎士様に恐れをなしただけに違いないわ」
アイク「いや、それは逆だ」
ミカヤ「あら居たのね。今日の講義は久しぶりにあなた担当だったわね。
せいぜい騎士様を褒めたたえなさい」
アイク「俺にできるのはやっぱり事実の解説だけだな。
じゃあ始めていくぞ。今回のお題はコレだ」
【漆黒の騎士:決着編】
ミカヤ「さぁ、どんな事を聞かせてくれるのかしら?」
アイク「結論から言うと……ちゃんと鍛えた俺とミストであれば漆黒の騎士はスキル無しでも100%勝てるという話だな。
そして、それこそがうp主が漆黒の騎士と戦うまでも無いと判断した2つ目の理由だ」
ミカヤ「…………は?」
アイク「今回の講義は本章の後半である俺と漆黒の騎士の一騎打ちイベントに関する解説だ。
正確には一騎打ちではないんだけどな」
ミカヤ「ふ、ふん、騎士様が100%負けるだなんてありえないわ。
しっかり解説しなさい。この私が論破してあげるから」
アイク「では説明していこう。
まず、マップはかなり狭い。そして俺の後方に離脱地点が3スクエアほど存在する。
漆黒の騎士には敵わないと判断したら逃げ帰る事が可能なわけだ」
ミカヤ「任天堂も当然想定しているわよね。なにせ騎士様は最強だもの!」
アイク「自軍ユニットは俺と、あとミストが付いてくる。勿論、今までの戦いでミストが戦死と言うか撤退していなければの話だが。
今回は問題なく付いてきてるな。
……一応言っておくが、茶番パートのトチ狂ったロードクレリックのミストではなく至って普通のワルキューレのミストだ。杖で殴打するようなイカれたユニットではない」
ミカヤ「わざわざそんな解説しなくても……」
アイク「敵軍ユニットは最初は漆黒の騎士のみだが、3ターン目から増援が湧いてくる。
確か、ハルバーディアが2人と司祭が1人だったな。
漆黒の騎士は俺だけを攻撃し、増援はミストだけを攻撃する。ついでに杖も使わない」
うp主注
あくまでも難易度『マニアック』での話です。
『ノーマル』だと漆黒の騎士を杖で回復されたという話を聞きます。未確認情報ですが。
ミカヤ「騎士様が望むのはあくまでも一騎打ちって訳ね」
アイク「そういう事だな。
ちなみに、ミストが漆黒の騎士に攻撃する事自体は可能だが、ラグネルが装備できないからダメージは一切入らない。
そればかりか反撃で瀕死になる。生半可な鍛え方ではそのままお陀仏だ」
ミカヤ「アイク、あなたマナーはちゃんと守りなさいよ。一騎打ちなんだから妹に突撃させようとするんじゃないわよ」
アイク「漆黒の騎士は『2人がかりでも一向に構わない』と言っているから問題は無い。
そもそも『一騎打ち』という表現が間違っていると言った方が正確だな」
ミカヤ「うーん……仕方ないわね」
アイク「さて、話を戻そう。
5ターン目の敵軍フェイズ終了時に決着が着いてなかった場合、ナーシルとかいう老害が乱入してきて勝負がうやむやになる。
本章の茶番でやってたようにナーシルが漆黒の騎士を抑え込み、城ごと潰されるという事になる」
ミカヤ「本当に空気を読まないのねあの老害」
アイク「ストーリー上は孫娘を助けようとして身を挺して犠牲になるという真っ当な場面なんだが……あいつのせいでこの神聖な戦いに5ターンの制限が設けられていると思うと少しやるせないな。
システム的にはターン制限が無いと割とぬるくなってしまうから割と最適に近いバランス調整なんだけどな」
ミカヤ「メタ視点でうp主にボロクソ言われるユニットは結構居たけど逆パターンは初めて見るわね」
アイク「褒めつつもけなされているだけな気がするが……
まあそういう訳で、この戦いには3つ……いや、4つの終了方法がある。
・俺が負ける(ゲームオーバー)
・俺が勝つ
・ナーシル乱入による引き分け
・うp主がリセットする
以上だ」
ミカヤ「いや、ちょっと待ちなさい。最後のは入れる必要ある?」
アイク「そりゃあるだろう。ミストが死んだらリセットするし、停電が起きてもリセットだ。
他にも、ゲームプレイ中にメティオが降ってくるかもしれないし、民家の中に漆黒の騎士が転移してくるかもしれない」
ミカヤ「いや、最後の方は流石に考えなくていいと思うけど……まぁ、ミストちゃんが死んだらリセットというのはよく理解できるわ」
アイク「ちなみにだが、離脱地点から俺が離脱した場合でもナーシル乱入による引き分けになる。結果が時間切れと変わらない上に自分から選ばないとならないから入れていない。
ついでに、ミストが離脱するだけなら特に影響は無い。離脱システムの正しい使い方だな」
ミカヤ「なるほど。確かに正しい離脱……というか避難ね」
アイク「さて、話を戻そう。
他の終了条件を満たす前に『俺が勝つ』という条件を満たせる事が証明できれば漆黒の騎士に100%勝てる事の証明になるはずだ」
ミカヤ「……そうね。これってそういう話だったわね。
それじゃあ聞かせてもらいましょうか!」
アイク「まずはそもそも俺が勝てる事の証明からだな。
漆黒の騎士の最大HPは覚えているな?」
ミカヤ「何度話したと思ってるの。60よ」
アイク「ああ。だが、今は90としておく」
ミカヤ「え?」
アイク「今回は5ターンの制限があるからな。奴がスキル『回復』により回復する回数も5回。
それぞれ6点ずつ回復するから合計で30になる。元々のHPと合算すると90だ。
速攻で倒せれば回復の回数が減るからもっと楽になるが、とりあえず90ダメージ与えれば確実に撃破可能だ」
ミカヤ「まぁ、確かにそうね」
アイク「時間制限が5ターンということはこちらからの攻撃と、敵からの攻撃に対する反撃で合計10回の攻撃チャンスがある。
……一応補足しておくが、最大限鍛えた俺であれば速さの関係でお互いに追撃は出ない。
あと、漆黒の騎士は瀕死であっても俺に隣接して攻撃をしかけてくる」
ミカヤ「ふむふむ」
アイク「後は簡単な算数だな。90を10回の攻撃で削るには9ダメージ必要だ」
ミカヤ「で、肝心のあなたの攻撃によるダメージは?」
アイク「丁度9だ。任天堂は間違いなくしっかり計算してジャストダメージになるように調整したんだろう」
ミカヤ「なるほど。でも疑問点が2つあるわ」
アイク「言ってみてくれ」
ミカヤ「まず、攻撃が躱されたらどうするの? 余裕が一切無いみたいだけど」
アイク「俺の技と奴の速さは同値の27だから完全に相殺される。
俺と奴の幸運は40と11だから差し引き29。
ラグネルの命中率は80だ。合算すれば命中率は109となる。
細かい補正を無視すれば絶対に当たる計算だ」
ミカヤ「くっ、ならもう1つの疑問よ!
常に攻撃しなければならないという事は逆にあなたも騎士様の攻撃に晒される事になる。
騎士様を倒す前にあなたが死ぬのであれば意味は無いわ!」
アイク「……そうだな。確かに俺は奴の攻撃を3発までしか耐えられない。
俺のHPが60に対して被ダメージは19、月光を放たれたら34喰らう。
致死ラインが4発であり、月光を喰らうと倍のダメージを受けると解釈すれば分かりやすいな」
ミカヤ「正確に倍ではないみたいだけど……死亡被弾数だけを見るなら確かにそうなるのね。
それじゃあやっぱりあなたは勝てないじゃないの。はっ、ざまぁ見なさい!」
アイク「逆に言えば1発は耐えられるという事だ。なら回復してしまえば良い」
ミカヤ「だけどあなたに傷薬を使う余裕なんて……はっ!」
アイク「ああ。俺には無い。だが、俺には妹が居る」
ミカヤ「ミストちゃんに杖を振らせるのね。それなら確かに回復でき……
……いや、待って。そもそもミストちゃんは生き残れるの?」
アイク「ちょっと順番がずれるが4番目を踏まない証明だな。
結論から言うとわざと自殺しようとしたりわざと離脱しない限りはまず死なない。
漆黒の騎士はミストを狙う事は無いから警戒すべきは増援の兵士だけだ。
ミストの魔防は鉄壁だから司祭の攻撃は無視して良い。
ハルバーディアの攻撃も……せいぜい8ダメージくらいだろう。6発くらい余裕で耐える」
ミカヤ「さっきから若干曖昧なのね。だったら付け入る隙はありそうだけど」
アイク「モブ兵士だと乱数次第で多少のパラメータ変動があるからハッキリしたことは言えないんだが……
とりあえず1回テストしてみた感じだとメチャクチャ余裕だったようだ。
ミストの守備20魔防26に対してハルバーディアの攻撃力は26、27。司祭は21。
ヴァーグ・カティを持って守りを固めてた場合、3すくみ補正も合わせて4、5ダメージしか喰らわない。
ソニックソードを持たせておけば反撃であっさりと倒せる。
そもそも被命中率が20とかだったんであんまり当たらないし」
ミカヤ「逆に言えばソニックソードを節約した上で攻撃力が5くらい上に振れたハルバーディア達が現れて、なおかつ攻撃が全命中すればギリギリ殺せるかしらね」
アイク「そんな事はそうそう無いというかまず無いんじゃないかと思うが……
どうしても不安だったらルーンソードを持たせておけばいい。
アレにはHP吸収効果があるからバグでも起こらない限りは死ぬことは無いだろう」
ミカヤ「……そう言えば問題なく装備できたわね。
ヴァーグ・カティすら持てるし」
アイク「そういう訳で、明確な証拠までは出せないんだが『まず死なない』と思ってくれ」
ミカヤ「仕方ないわね……えっと、残りは何だったかしら」
アイク「まだ『俺が途中で死なない』という証明の途中だな。
回復は可能だがその回復が本当に間に合うのかという検証だ。
ミカヤ「そうだったわね。えっと……100%勝てる事の証明だから全命中+全月光での検証かしら」
アイク「…………まぁ、そんな感じだな。
では具体的な戦闘の流れを想定しながら計算してみよう。
まず1ターン目。俺が攻撃して反撃を受ける。
その後、ミストが杖を使い俺を全回復。
ここまでは固定だな」
ミカヤ「ダメージを受けてない攻撃前に回復する意味は無いから必然的に攻撃を受けた後の回復になるって事ね。
あ、でも回復しきれるの?」
アイク「リカバーの杖なら全回復だから問題ない。
それに、ミストの魔力は26。ライブの杖の回復力は魔力+10の36、リライブなら+20の46回復できる。
月光のダメージは34だからライブでも十分な計算だな」
ミカヤ「なるほど、分かったわ」
アイク「敵の1ターン目から再開だ。
月光で34ダメージ喰らって残りは26」
ミカヤ「そうなると先に回復ね。もう1度月光を受けたら死ぬんだから。
で、あなたの攻撃に対する反撃でまた26まで減る。
次の騎士様のターンの攻撃で撃破。やった、勝ったわ!」
アイク「そうだな。奴が3連続で月光を放てるのなら俺の命は無い」
ミカヤ「ふっ、語るに落ちたわね。身の程を弁えなさい!」
アイク「そう、3連続で放てるのなら……な」
ミカヤ「ど、どういう事よ」
アイク「知っているか? 槍や斧は間接攻撃でも奥義が出るが、剣はモーションが用意されていない為か奥義の類が一切出ない。
それは俺は勿論、漆黒の騎士とて例外ではない」
ミカヤ「それに何の関係が……はっ、まさかっ!!」
アイク「敵ターンの攻撃は届くなら常に隣接攻撃を仕掛けてくるが、俺のターンに間接攻撃を仕掛ける事は容易い。そしてそれならば月光を受ける事は無い。
と言うか、わざわざ検証はしていないがナイトリングによる再移動とミストの肉壁による進路妨害を上手く使えば敵ターンでも間接攻撃に限定できるんじゃないか?」
ミカヤ「2回に1回のペースで月光を防止できるのなら……3連続の月光を放つ事は不可能ね」
アイク「そういう訳で、俺の第2ターンの行動はミストで回復する前に俺が間接攻撃を仕掛ける。
26からダメージ19を引いて7残る計算だな。
その後はリカバーで回復すれば良い。そうすればまた全快の状態で敵ターンになるからこのループを繰り返せば俺が死ぬ事は無い」
ミカヤ「くっ、ならリカバーは足りるの!? 貴重な杖でしょう!?」
アイク「15回使えるから無駄遣いしてなければ余裕だ。
ついでに、俺のダメージはあくまでも最大値を並べたものだから実際には攻撃を躱したり月光が不発に終わる。
運次第ではライブの杖でも十分だな」
ミカヤ「そんな……そんな事って」
アイク「以上で大体証明できたはずだ。
・時間切れまでに倒しきれる事。
・その間、俺が死なない事。
・ミストは死なない事。
これで100%倒せる」
ミカヤ(……ダメ。このままでは騎士様がこんな若造にスキルも無しで確実に倒されるクソザコという事になってしまう。
何とかできるのは私だけ。何か考えないと!
この証明のどこかに綻びは無かったかしら? 何か綻びは!!
…………………………!!)
アイク「どうした?」
ミカヤ「見つけたわ。
あなた言ったわね。あなたから騎士様への攻撃命中率は109%だと」
アイク「……ああ、言ったな」
ミカヤ「でも、それは諸々の補正を無視した値だとも」
アイク「ああ」
ミカヤ「状況故にお互いに支援効果は期待できない。
騎士様がエタルドから持ち替えない以上は3すくみも剣同士で互角。
でも、バイオリズムに関しては適用されるはずよ!」
アイク「その通りだな」
ミカヤ「バイオリズム補正は絶好調の時に命中回避+5、絶不調の時はその逆。
騎士様の絶好調とあなたの絶不調が重なれば差し引きは10よ!
ついでに、あなたも騎士様もバイオリズムに関わるスキルである気分屋も安定も持っていないし、スキルの書も存在しないから習得する事もできないわ!」
アイク「そうだな」
ミカヤ「結果、あなたの命中率は109-10で99となる。ごく僅か、ごく僅かだけど騎士様が攻撃を回避する目があるわ!」
アイク「気付いたか。その通りだ。
安定さえ習得できれば自力で100%に持っていけたんだがな」
ミカヤ「あっはっはっはっ! やっぱり100%ではなかったのよ!
身の程を弁えなさい!!」
アイク「……悪いな。それは俺も知っていたんだ。
だが、あんたのその説明には2つほど欠陥があるんだ」
ミカヤ「え?」
アイク「まず、俺と漆黒の騎士のバイオリズムが完全に逆である必要がある。
もの凄くザックリと確率を推測すると、奴が絶好調の時に俺は『絶好調』『好調』『通常』『不調』『絶不調』『不調』『通常』『好調』と8パターンくらいありそうだ。単純計算で1/8だな。
そして1/8を引き当てても命中率は99%。
99%と表現したが実効命中率で考えると実際には99.99%当たる。回避率は0.01%でしかない。
バイオリズムは固定だとして10回チャンスがあるとしても……1回でも回避できる確率は約0.1%だな。
最初の1/8と合わせて約0.0125%、8千分の1の奇跡だ」
ミカヤ「で、でも、たとえ僅かな可能性であっても0ではないわ!」
アイク「そしてもう1つ。もっと残酷な現実を教えてやろう。
……バイオリズムな、調整できるんだ」
ミカヤ「…………えええええっ!?!?」
アイク「乱数リセットと同じ感じで中断したあとソフトリセット。そして再開するとバイオリズムが完全にリセットされるんだ。
完全にランダムなのか、それとも完全に固定で変わるのかは知らんが、完全に逆一致した状態から変更できたのは実機で確認済みだ。
俺たちの実力だけで100%と言えればそれが一番良かったんだが……うp主の協力もあれば正真正銘の100%となるな」
ミカヤ「そんな……そんなのって……」
アイク「そういう訳で、やっぱり100%だ。
だが1つだけ言わせてくれ。漆黒の騎士は強かった」
ミカヤ「!?」
アイク「この100%勝てるというのはあくまでもミストが協力してくれたからだ。
俺単独だったら最短で自分の2ターン目に殺されてる。
期待値で考えても俺に対する漆黒の騎士の基本命中率が55だから……まぁ、月光が無くても大体8回目の攻撃で死ぬ計算だな。
俺の方がスキルを使ってないとはいえ、負ける確率の方が高いだろう。漆黒の騎士はそういう相手だった」
ミカヤ「アイク……」
アイク「だから、気に病むな。
それに、本当のあいつはもっと強い。そうだろう?」
ミカヤ「……ええ。そう。その通りよ」
アイク「よし、そろそろ時間も丁度良い感じ……いや、結構押してるみたいだな。
残り少ないが、後は頼んだぞ」
ミカヤ「ええ。任せなさいな」
支援が強化されました。
アイク・ミカヤ B→A
攻撃+1、回避+22
おまけパート アイクが騎士様相手に逃げなかったパターン
ついに親父の仇である漆黒の騎士との戦いだ。
俺もあの夜から成長した。決して奴に引けを取る事は無いだろう。
「来たか」
「ああ」
「神剣ラグネルは忘れずに持ってきただろうな」
「ああ。ここにある」
女神の加護を受けているという『神剣エタルド』。そしてそれと対を成す『神剣ラグネル』。
剣と同様に女神の加護を受けているという奴の鎧の絶対防御を打ち破るにはいずれかの剣が無ければならないという。
エタルドは奴の手に、そしてラグネルは……あの日、親父に対して施しのように投げ与えられたあの剣は今は俺の手に握られている。
奴が勝利のみを追求するのであれば、決して他人に渡してはならなかった剣だ。この男が求めているのは絶対的な勝利ではなく、自らの武技をぶつける戦いだという事なのだろう。
「では、始めるとしよう。
ガヴェインの剣技の後継者よ。その力、私に見せてみろ」
互いの武器の性能は互角。防具は……向こうの方が明らかに頑丈だが、それは奴が速さを代償に着込んでいる結果だ。軽装を選んでいるのは俺自身だし、文句があるなら俺も鎧を特注しろという話だな。大将用の鎧を特注するなら軍の経費は普通に落ちるだろうし。
よって、純粋にお互いの実力勝負と……
「お兄ちゃん!」
「なっ、ミスト!? どうしてここに来た!?」
「私も一緒に戦う! お兄ちゃんまで……死なせたりはしない!」
完全に一騎打ちする気満々だったのだが来てしまったようだ。
ティアマトもセネリオも……止められなかったんだろうな。俺だって止められる気がしない。
「ガヴェインの娘か。2人がかりでも一向に構わ……ん?
いや待て、お前がガヴェインの娘だと?」
「え? ええ。そうだけど」
「…………どういう事だ? 確かお前たちは兄と妹の2人兄妹だったはずだ。
……ガヴェインの息子よ、1つ質問させてくれ」
「何だ?」
「以前、クリミアの港町でお前の部下らしき女剣士に凄まじい足止めを喰らったのだが、あの者は一体何者だ?」
「ワユの事か。改めて何者かと言われるとよくは知らないな。確か元クリミア軍の傭兵だったはずだ」
「…………そうか。単なる勘違いであったか。あれほどの使い手が在野に居たとは。まだまだ世界は広いのだな」
「よく分からんが納得したのなら良かった。
こちらからも質問だが、ミスト……俺の妹と一緒に挑ませてもらう。それでも良いか?」
「ガヴェインの娘なのであればその権利はあるだろう。まとめて掛かってくる来るがいい」
「感謝する。それと、もう1つだけ言っておく事がある」
「どうした?」
「あんたは俺が親父の剣技を受け継いで、完成させたと期待しているのかもしれない。
だが、その期待には応えられない」
「……どういう事だ? まさか、この私を前にして怖気づいたか?」
「そうじゃない。俺はまだまだ未熟だ。親父の剣技の『奥義』と呼べる領域の技を習得するには至っていない。
だけど、その代わりに基礎は極めたつもりだ。
極まった基礎は、奥義をも上回る。それを見せてやるよ」
「……面白い。来るがいい!」
ガヴェインの息子、アイクが宣言した通り、その剣技は奇をてらったものではなく極めて正確無比なものだった。
しかし、ただ正確なだけではない。正確であれば読みやすくなり捌きやすくなるはずなのに、その刃は私の鎧を正確に捉えていた。
こちらもしっかりと反撃を行うが、アイクの言う『極まった基礎』の影響なのか決定打を与える事はできない。
決定打でなければ、ガヴェインの娘……確かミストと言ったか。彼女の杖で回復させられてしまう。
まとめて掛かってこいと言ったのは私だが、まさかここまでの影響を与えるとはな。このままでは……
「こんな所に敵兵が!? 漆黒の騎士殿をお守りしろ!」
「っ! 手出しは無用だ! この男は私の得物だ!!」
「なっ!? な、ならあの娘を狙うぞ! 生かして返すな!!」
……妹の方にも戦う権利はあるとは言ったが、元々が一騎打ちの予定だったのだ。そちらを狙う分には止める必要はあるまい。
これで状況は好転するだろう。全力ではないとはいえ、我ながら情けない話……
「貴公ら如きに私の相手が務まると思いましたか? 身の程を弁えなさい」
「「「ぐわぁああああ!!!!」」」
……妹の方を狙ったデイン兵達はアッサリと散って行った。
流石はガヴェインの娘か。血は争えぬな。
しかしまさかこの年にして自分が挑戦者の側に回るとは思っていなかった。とても久しい感覚だ。ガヴェイン殿との訓練以来か。
そうだな。自身を挑戦者とするならば無理をする必要など無い。勝ちを目指すのではなく、ただ私の実力を試させてもらおう。
例えばこの正確無比な剣撃。躱すのは極めて難しいが、決して不可能ではない。
自身の呼吸を万全の状態に整え、相手の決して無限には続かない緊張が切れた瞬間を狙い、万にも及ぶ試行を繰り返せばきっと躱せるであろう。
であれば、『今』躱せない道理など存在しない!
「っ!? バカなっ!」
「見事な技だ。そして感謝するぞアイク。
私はまだまだ上を目指せそうだ」
「……それはこっちの台詞だ。基礎は極めたと思ってたが、まだ足りなかったか」
その年齢であれだけの事ができれば十分だろう。そんな言葉は口にはしない。
慢心せずに上を目指すのであれば、きっと私の領域にも辿り着くであろうから。
そんな満足感を得ながら剣を構えていた私はらしくもなく油断していたようだ。
その刺客の存在に気付いたのは、その攻撃が放たれるほんの少し前だった。
「てやぁああああ!!」
「何っ!? ガヴェインの娘ゴハァッ!!」
禍々しい蒼炎を放つ杖による打撃は鎧の加護を突き破って私にダメージを与えてきた。
と言うか、あの殴打は私の奥義に酷似していたような気がするのだが……アレは一体……何だ?
「まったくもうお兄ちゃんったら、まだ戦いは終わってないのよ?」
「いや、ミスト……今割と大事な話してたんだが」
「この人はお父さんの仇だけど、私の師匠でもあるんだから!
お兄ちゃんにばっかり戦わせはしないよ!」
「う~む、気持ちが分かるだけに反論し難いな」
「分かってくれた? じゃあ、一緒に戦いましょう!」
「ああ!」
女だからと侮っていた訳では無い。だが、実際問題として女性の方が筋力が低いから私の鎧を通せる者は少数派だろう。
しかし彼女、ミストは私の技を模倣する事でその問題を突破してきた。
流石はガヴェインの娘……いや、あの方と付属品として扱うのは失礼か。
アイク、そしてミストよ。いつかまた戦える日を楽しみにしている。
入れようか迷って結局入れなかったやりとり。
ミスト「貴公ら如きに私の相手が務まると思いましたか? 身の程を弁えなさい」
騎士様(あの台詞カッコいいな。今度使ってみよう)
因果律が乱れる。