ゴールドシチーがトレーナーとイチャつく話   作:大大魔王

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はじめまして
大大魔王と申します。
同ユーザー名でpixivに投稿されていますゴールドシチーの短編集をこちらに投稿していくつもりです。
気が向いたらハーメルンだけに投稿する話も出すかもです。


ゴールドシチーは『束縛』『独占力』を得た

「へー、それで最近どうしてるんだ?」

 

トレーナー室の扉を開こうとしたらトレーナーの声が聞こえてきた。

誰かが来ているのかと思って窓から室内を見たら訪問者がいるわけじゃなくてスマホで誰かと話しているみたいだった。

それなら、とアタシは遠慮することを止め扉を開ける。

アタシに気が付いたトレーナーはジェスチャーであいさつをしてきたから

 

「ん」

 

と、そっけない返事を返してからソファに座った。

今日はモデルの仕事がないから1日全てをトレーニングに充てるつもりだ。次のレースに向けた作戦を練りたいし、課題だったスピードを鍛えるために今日は新しい走法をためしてみたい。やりたいことはたくさんだ。

 

「まっ、終わるまで待つとしますか」

 

あれもこれもトレーナーがいないと始まらないから待ってる間、手持無沙汰になったアタシはスマホを手に取って特に明確な理由もなくこれまで撮った写真を見る。

大昔に撮ってもらった写真なんかはモデルになった頃の写真ばっかりでキメ顔しすぎてて笑っちゃいそうな写真とかこっぱずかしい写真だらけだった。

ああ、懐かしいな、そういえばこんなんあったっけ?と適当に見てたら最近、数か月に撮った写真を見てアタシの手は止まった。

 

「は?アタシこんなにトレーナーの写真撮ってたん?」

 

思ったことが口に出てたことに気が付いたアタシはソッコーでトレーナーに聞かれてないか確認する。

……良かった、聞かれてはないか。にしても

どれだけスライドしても出てくるのはトレーナーの顔、顔、顔。それもアイツが気が付いてないときに撮ったやつばっか。盗撮じゃんこんなん。

我ながらマナーがない。てか、キモイ。

前にスマホを落として中身アイツに見られたこともあるしバレてない今の内に消そう。

 

とりあえず、この写真は……あーこれはアタシがG1勝った時に喜びすぎて転んだアイツの写真だ。これはイジる材料になるから保留。

んで、これは。初めてアタシの仕事現場に来た時の写真じゃん。顔が緊張しすぎててウケるから保留。

これは……寝顔か。……保留で。

どの写真を選んでも保留の嵐。結局アタシが捨てられたのは手ブレしたせいで顔が判別できない写真だけだった。

アタシってこんなに優柔不断だったっけ?トレーナーの顔が好みだったとか?

大きくため息を吐いてトレーナーの顔を見つめる。

相変わらず暑っ苦しい顔だけどアタシはまぁ好みかそうじゃないかって聞かれたら好みの顔だ。服もアタシが見繕ってやったやつを着ているみたいだから、まぁ悪い気はしない。

 

『だよね……!』

 

その時だった。アタシの耳に微かに女の声がしたのは。外でした声じゃない明らかに目の前のトレーナー、その手にあるスマホから聞こえてくる声だった。

嫌な予感がして尻尾が逆立つ。

 

『だ……さ、今度……開かない?二人……!』

「おう、そうだな!故郷の話を聞きたいし」

 

電話の音が思ったより小さいせいで詳しい内容までは分からないけど絶対に女だ。

それにアイツもずいぶん楽しそうな顔をしてる。

別にトレーナーがどんな女と話したってアタシには関係ないけど。

 

「じゃあまた今度な!……ごめんなシチー。急な電話で」

「別に悪いことしてないんだから気にする必要ないっしょ」

 

そう別に誰に迷惑をかけたわけでもないんだから謝ることはない。

ただ、どんな相手かは気になった。だからアタシは

 

「ねぇ、仲良さそうに話してたけど相手は誰だったん?」

 

あえて女だということは言わずに相手を聞いた。

素直に聞き耳立ててましたって言えるわけがないからなんだけど。

 

「んー、そうだなぁ。……まぁ昔の知り合い?……みたいな人だよ」

 

なんとも歯切れの悪い答えにアタシの心はざわついた。

嫌な予感がする。

いつものトレーナーならこんな時、隠し事はせず率直に答えるはず。アタシにも答えられない何かがそこにはあった。

 

「はぁ?なに、そのあやふやな答え方?ちゃんと誰なのか教えるべきなんじゃないの?」

 

ずいぶん無茶苦茶なことをトレーナーに聞いてることは分かってた。

相手が誰であろうとそれはトレーナーの自由だしアタシが踏み込んで良い領域じゃないことも分かってる。でもアタシはその領域にムカついていた。

そのあともトレーナーは唸りながら頭を押さえたかと思うと顔を赤くしてボソッと

 

「俺の初恋の人だよ」

 

と答えた。

 

 

_________

 

 

「それでトレーナーさんの所から飛び出して私の所に来たのね」

「ちょ、捏造すんなし。トレーニングはちゃんとしたって」

 

マネジの車の中、アタシは自己嫌悪に陥っていた。

あの後、必要最低限のトレーニングを終えたアタシは「無理だとは思うけどモデルに欠員が出たから代わりに出れない?」っていうマネジの誘いに飛び乗った。

思い出すだけでも最低の態度でトレセン学園を飛び出したアタシは栗東寮に帰る中、どんな顔をしてトレーナーに会えば良いかわかんなくなっていた。

 

「はぁぁ、トレーナーさんも可哀想ね。仕事が恋人だろう自分に少し浮ついた話が来たと思ったら今度は担当ウマ娘に邪険にされるなんてね」

「だから、邪険にはしてないって」

 

トレーニングを早々に切り上げた理由を聞いてくるマネジに今日の出来事を話したらアタシが悪いとはっきり言われた。おまけに仕事の内容も今日の仕事もまずまずだったわねとお小言も追加でだ。

 

「あのねシチー、私もトレーナーさんも自分の時間が持てないほど忙しい業界に勤めてるっていう共通点があるから言わせてもらうけど相手に出会いがあったなら祝福してあげなさい。このままあなたに遠慮し続けていたら幸せになるチャンスを逃すわよ」

「そんなこと分かってるし」

 

ああ、もう!うっさいな!

今回のことはアタシが100%悪いことなんて自覚してるし!

もし、トレーナーにそんな相手が出来たら素直に祝福するつもりだった。鬱陶しくて暑苦しい奴だけどいつもアタシを一番に考えてくれるアイツの幸せを邪魔するつもりなんてない。

でも、ムカつく。理由は説明できないけどアタシはとにかくムカついた。

 

「ふふっ……。シチー。あなた、最近仕事に幅が出て来たとは思ってはいたけど。そういうことだったのね」

 

確かに最近、仕事で褒められる回数は増えてきた気は……する。クールでカッコイイってのがモデルとしてのアタシだったけど仕草やポーズに艶がでてきたって。

マネジの言う「そういうこと」もなんとなく察しはついたけど否定できない自分にも無性にイラついた。

 

「本当に視野が狭くなるわよね、あなた。特にトレーナーさん関連については」

「は!?アタシのどこが」

「まだ分からない?私が言ったのはトレーナーさんが幸せになる邪魔をするなってこと。“誰”が幸せにするべきかは言ってないわよ」

 

車が静かに止まる。窓の外を見ると見慣れたトレセン学園の校門と寮が見えた。

マネジが運転席からバックミラーを介してアタシをジッと見つめる

 

「シチー、欲しい物があるなら自分の心に正直になって奪いに行きなさい。モデルの仕事でもレースでも奪いに行くときの貴方が一番、強いんだから」

「……送ってくれて、サンキュ。それじゃ」

 

マネジが言ったことは聞こえないフリをして車を出る。空を見上げたらアタシの心のモヤモヤとは裏腹に満点の星空が広がっていた。

 

ほんと、どうしろっつーんだよ。

 

心の中でぼやきながら寮に向かっていたら、その途中でトレーナー室の灯りが点いていることに気が付いた。もうすぐ門限なんだけどアタシの足は自然にトレーナーの方へと引き寄せれていく。

 

「うーん、どうするべきだったんだぁ」

 

トレーナーに分からないように窓から彼が四苦八苦している姿を覗いた。机の上にはたくさんの本。『サルでも分かる若い女性の接し方』『教え子との絆構築講座』『ウマ娘との共生』など。どれも明後日の方向の内容の本を難しい顔で呼んでいるアイツを見てアタシは思わず噴き出した。

 

「ふふっ、なにやってんだよトレーナー」

 

悪いのはアタシなのにトレーナーはまるで自分が悪いみたいに難しそうな本を囲んでこんな時間まで考えていてくれた。そう、アタシのために……。

 

1つ、想像をしてみた。

トレーナーがアタシの知らない女と付き合って、結婚して家庭を持って。

彼女を紹介されて、結婚式で、子どもを見せられて、アタシは素直に祝えるだろうか。笑顔で「おめでとう」と言えるだろうか。

結論は一瞬で出た。

 

「……嫌だ」

 

嫌だ嫌だ嫌だ。絶対に嫌だ。

絶対におめでとうなんて言えない。

泣き叫んで喚いて怒鳴って滅茶苦茶にしてやると思う。

我ながらなんてメンドクセー奴って思うけど誰にも取られたくない。

トレーナーの隣にいるべきなのはアタシだ。アタシなんだ!

 

『奪いに行くときのあなたが一番、強いんだから』

 

マネジの言葉が頭の中で響く。

本当にサンキュ、マネジ。大事なことに気が付かせてくれて。

そうだ、アタシはどんなに情けなくたってボロボロになったって欲しい物のためにはなんでもしてきたんだ。

これまでやってきたことと同じ。手に入れるものがトレーナーに変わっただけなんだ。

いいじゃんか、やってやんよ。

アタシが恋愛対象圏外だっていうなら無理矢理にでも圏内に入ってやる!

初恋の人が忘れられないっていうなら全てをアタシで上書きしてやる!

トレーナーはアタシの物だ!

 

 

 

 

翌日、アタシがトレーナー室に入ったらトレーナーが駆け寄って来て

 

「昨日はすまなかったシチー」

 

申し訳なさそうにトレーナーが謝ってきた。捨てられた子犬みたいな顔を見てにやけそうになるけど、ここは我慢。

 

「で、何が悪いか分かったん?言ってみ」

 

トレーナーを困らせたくて怒ってる風を装って聞いてみた。もしかしたら、不機嫌になった本当に理由を気付いたかもしんないし。

 

「それが、理由は色々考えんだが分からなくてな。たぶん僕がシチーに何かしてしまったんだろう。これからはそんなことが起きないようにするから話してくれないか」

「……ふ、ふふ。あっははは。ごめんもう限界」

 

もう少し我慢するつもりだったけどしゅんとしたトレーナーが面白くってつい笑ってしまった。

目を丸くしている彼に笑いが収まってからキチンと説明した。

 

「昨日、アンタはなにも悪くない。悪いのはアタシ。謝るべきなのはアタシだったんだ。ごめん、トレーナー。昨日は色々なことにムカついてアンタに当たっちゃった」

「そ、そうだったのか。良かった。君に何かしてしまったんじゃないかって気が気でなくて」

「うん今回は100%アタシが悪いよ。だから、これ。お詫びの印にあげる」

 

渡したのは紫色の小瓶。それをまるで宝物を受け取るみたいに大事そうに抱えたトレーナーはそれを興味深そうに中身の液体を揺らす。

 

「これは?」

「香水。アンタ、私たちみたいな若いウマ娘相手に仕事してんだから、もうちょい気を使った方が良いかもね」

 

トレーナーは匂いには気を使ってたつもりなんだけどなって自分の匂いを確かめた。

彼の匂いはアタシは好きだ。ホッとするし胸が熱くなってくる。けど、その匂いを知っているのはアタシだけで良い。

 

「この香水。アタシが今、使ってるのと同じものなんだけど。良い匂いするから。ほら、嗅いでみ」

「うーん確かに良い匂いだけど、ちょっと若すぎないか?シチーみたいな若い娘がつけるならまだしも」

「別にアンタみたいな大人の男がつけていても問題ないし。てか、毎日つけたほうが良いから」

「そんなに体臭が酷いのか……。わ、分かったこれから毎日つけることにするよ。ありがとうシチー」

 

その時、トレーナーのポケットで携帯が鳴った。慌てて手に取った彼は「ごめん。ちょっとだけ」と電話に応答する。

不自然にならないようにトレーナーの隣に座ったアタシはそっと聞き耳を立てた。

声は……あの時とおんなじ女だ。

この前は内容までは聞こえなかったけど、この距離ならヨユーで聞こえる。

 

『それでこの前してた飲みに行く話いけそう?』

「ああ、今日なら予定も空いているし平気だぞ。それよりも2人だけで本当に良いのか?故郷からこっちに来てる奴、他にもいるぞ」

『いいの!いいの!、あんまり多いと……ね』

「そうか、それじゃあこの前言ってた店、予約しとくから今日の19時に駅前で」

 

トレーナーは気が付いてないっぽいけど“そういう関係”になりたいってのはヒシヒシと伝わって来た。

させてやるかっつーの。

 

「ねぇトレーナー。なんの電話だったん?」

 

電話を切ったアイツに盗み聞きしてたことなんておくびにも出さずに聞いた。

 

「ああ、この前に言ってた初恋の人だよ。転勤でこっちに上京してきたから久しぶりに食事でもって話になってな」

「ふぅん。で、どうなん?アンタ的には初恋の人と会うわけだけど」

「あははは、初恋って言っても中学生の頃の話だからな。今では仲の良い友人ってところだよ」

 

へぇ、なんだ思ったよりも脈はないじゃん。

冷静になって考えたら分かったけど昨日、顔を赤くしたのも初恋って言葉を言うのが気恥ずかしくなったってところでしょ。

だったら、

 

「それだったらアタシも付いて行って良い?ジョーダンとの食事の約束が流れたせいで今夜はフリーなんだよね」

「え、でもシチーが知らない人が来るんだぞ。気まずくないか?」

「別にー、それよりもアンタの昔の話とか聞いてみたいし。アンタもアタシがいた方が仕事の話とかしやすいんじゃないの?アタシがお邪魔っていうなら遠慮するけど」

 

ウソ。遠慮するつもりなんてない。

拒否されたって絶対について行ってやる。

 

「そう……だな。シチーがいてくれたほうが話はスムーズだろうしな。それに僕と2人きりより現役の人気モデルが一緒のほうが嬉しいだろ。よし、分かった!後で彼女に1人増えるって連絡しておくよ」

 

こればっかりは初恋の女に同情する。いつもは察しが良いくせに色恋沙汰に対してだけは無頓着みたいだ。

ま、いいや。今はこの無頓着なところを最大限、活用してやらなきゃね。

 

「あー、それと今日はあげた香水つけていったほうが良いよ。匂いに気を付けるのもマナーっしょっ」

「お、そうか!なら早速」

 

首筋に香水をつけるトレーナーを見てアタシは思わず笑った。

2人きりでやるはずだった食事に追加で1人、それも女を連れて来て同じ香水の香りを漂わせてる。

アタシからのメッセージに絶対に気が付くはずだ。

コイツはアタシの物だって。

 




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