「……休暇?」
トレーナーが突然、休暇を取ることになった。それも1週間後の話。
それを今、聞かされたアタシは思わず聞き返した。こんなこと今までなかったし。
「すまんッ。2,3日のことだしシチーには迷惑をかけないようにトレーニングも組んでおくから」
申し訳なさそうに頭を下げるトレーナーを見てアタシは思わず溜息を吐いた。
「アンタさ。前回、休んだのっていつ?」
「いつって前の日曜だな。シチーも一緒に買い物行ったから覚えてるだろ?」
「そうじゃなくて“アタシ”抜きで休んだのはいつかって聞いてんの」
目の前にいる男はアタシが言うのもなんだけど熱心で優秀な奴だった。
トレセン一優秀って言われても不思議じゃないほど。だから、それが裏目に出てシチーシチーってアタシをいつも優先させる。前の日曜だってアタシの買い物が中心だったし。
別に悪い気はしない。いや、むしろ嬉しい……かな。くそ恥ずかしいから絶対に口には出さないけど。
ただ、トレーナーの人生に関わるのはアタシだけじゃない。一人の時間が必要だろうし、トレーナー以前、学生時代の友達とかに会うことだって重要な時間だと思う。それが少なくともアタシの目から見て皆無だった。
「うーん、そう聞かれると難しいな。3年以上かもしれない」
「アンタ……それって」
思わず絶句してしまった。
3年って言ったらだいたいコイツとアタシが契約した時と重なる。つまりアタシと出会ってから自分の時間ってものを持てていないってこと。
ほんと、色々やってもらってるからアタシが言えた話じゃないとは思うんだけどさ。
「……ありえない」
「ありえないって何がだ?」
「アンタがアタシ抜きで休んでないことがだよ。アタシが言うのもなんだけどさ。いつも仕事仕事になってんじゃないの?」
「それも……そうだな。まぁ好きでやってることだから全く苦ではなしんだが。じゃあ来週は遠慮なく休ませてもらうよ。……ま、休めそうにないけどな」
「ん、ゆっくり休みなよ」
最後の言葉が引っかかったけどアタシが心配でって感じだろ。それで来週の何曜日から空けるのか聞こうとしたらタイミング良くトレーナーの電話が鳴った。
「もしもし母さん?」
相手は母親だったみたいで手持無沙汰になったアタシはソファに座りスマホを触る。スマホを見ながらも何の話をしてるのか気になって聞き耳は立てていた。
どうやら休暇に実家に帰るらしい。3年も帰ってないんだろうし帰るべきだとアタシも思う。それにしてもトレーナーの家族か。会ってみたいな。
そんな他愛のない考えを浮かべながら話を聞いていたら
「だけど、これっきりにしてくれよ突然、結婚の話を持って来るなんて」
「……は?」
突然の爆弾発言に思わずスマホを落とした。
「そんなに気にしてんなら聞いたみたら良くね?」
「は?別に気にしてはないし」
翌日の食堂でアタシは言うつもりはなかったんだけどアタシの様子がおかしいと気が付いたジョーダンに問い詰められて仕方なく昨日あったことを教えた。
「授業中も上の空だったし今だってパスタをスプーンで食べようとしてんじゃん」
「あっ」
言われてみると確かにアタシの右手にはスプーンが握り締められていた。慌ててフォークを取りに行く。
「それでシチーのトレーナーさんって結婚してたん?結婚指輪なんか付けてなかったくね?」
「結婚はしてないだろ。……たぶん」
だって結婚してるなんて一言も聞いたことがない。
それに最近というか1年以上前から仕事が重ならなければ毎週、2人でどこかに出かけてるし。普通、奥さんがいるならそんなことしないでしょ。
「してないならー見合いじゃね?」
「見合い?」
「そうそう。ドラマとかでもあんじゃん。急に親が見合い話決めちゃって断るのも相手に悪いからって出席したら相手と気が合って、そのまま!……ごめん。シチーの好きピがトレーナーなの忘れてたわ」
「だから、違うっていつも言ってんだろ」
ジョーダンはアタシがトレーナーに気があるって前提で話してるみたいだけど別にそんなんじゃない。
「……雑誌にすっぱ抜かれた癖によく言うわ」
「それだって勘違いだから」
確かにゴシップ誌に晩御飯を2人で行った時に写真を撮られたしマネジにも怒られたけど!……その時の雑誌の切り抜きも持ってるけど!
アタシたちはそんな関係じゃない。
「なんにしても聞くしかなくね?見合いっつっても現実だとそうそう上手くいくもんでもないじゃん。シチーのトレーナーさん『私にはもう大切な人がいるんです』って言いそっ痛ッ。悪かったって!」
全く似ていないモノマネをするジョーダンを尻尾で叩きながらアイツの顔を思い浮かべる。確かにジョーダンの言う通りだ。
気になるなら聞くしかない。
トレーナーが休暇を取る前日。
明日からの3日間のトレーニングスケジュールを聞きながらコイツの見合いの話で頭が一杯になっていた。
「……と、説明はこれだけだが分かったか?」
「ああ、うん」
「大丈夫か? まぁ資料にまとめて残しておくから忘れたら見ながらやってくれよ」
相手はどんな女か。年は同い年? 顔は? 髪型は?
色々な疑問はあるけど一番、気になるのはアンタがどう思ってるかってこと。
ド直球で聞いたらトレーナーを意識してるみたいに聞こえそうで嫌だから遠回しに。
「……そういえば、その、前に電話が聞こえたんだけど女と故郷で会うんでしょ」
「……女? あ、ああ! その話か! まぁそのために実家に帰るんだからな。本当に迷惑かけてごめんな」
「別に迷惑なんかじゃない。それで……どんな女なの?」
言葉を選ぼうとしたけど結局、直球で聞いた。
これをジョーダンが聞いていたら「やっぱ意識してるし」なんてニヤけた顔で言うんだろうな。
「お、気になるか。ちょっと待ってろ。写真がスマホに……ほら!」
写真に映し出されたのは隣にいる男と仲良さそうにしている女の写真だった。隣にいるのは女の兄か弟?
いや、それよりも女のことだ。
見た目は黒髪を肩口まで伸ばした眼鏡をかけていて顔は整ってると思う。化粧は薄目にしていて良く言えば清楚、悪く言うなら地味な見た目の女。アタシとは真逆の女だった。
写真を見てアタシは、この女の人には失礼だけど安心した。だってトレーナーはアタシみたいな見た目の女が好みだ。
アタシがモデルしてるからとか自意識過剰で言ってるんじゃない。証拠と言えばなんだけどコイツは事あるごとにアタシに綺麗だって言うし目でアタシを追ってることも少なくない。それにアタシが掲載された雑誌の切り抜きを隠れて集めてることだって知ってる。
本当にアタシのことが好きなコイツがこの写真の女を気に入るとは思えなかった。
「それでどうなの。この人はアンタ的には?」
思えなかったけど一応、どう思ってるかは聞いてくことにしよう。
どうせどう言うかは想像がつく。コイツの性格上、見た目は好きじゃないなんて本人がいなくても言えないから苦笑いしながら『あはは、綺麗な人だと思うぞ』なんて言うんでしょ。
「いや、すっごい美人だよな。ウチには勿体ないぐらいで! 本当に嬉しいよ俺は」
「え?」
だから、満面の笑みで美人だと嬉しいと喜ぶ姿を見て愕然とした。
いやいや待て。落ち着けアタシ。
早とちりは良くないから。
きっと美人と見合いの機会があるなんて自分には勿体ない的な意味合いで言ってるだけでしょ。
嫌な考えを取り払うように手を一度、強く握りしめる。
「アンタは話を受けるつもりなの? 結婚……するの?」
「受ける……? まぁ結婚すると思うぞ。そのために家に帰るんだしな。式は3か月後ぐらいって……シチー? 聞いてるか。おーい」
目の前が真っ暗になった。
そこから先はどうやって寮に帰ったかも覚えていない。バンブー先輩に心配されたような気もするけど軽く返事をして早々にベッドに入った。
ただ、布団の中で眠れるわけもなくて悶々と結婚する、と言ったトレーナーの言葉が頭の中でループする。
3年前までのアタシ、トレーナーと契約した頃のアタシならきっと「結婚? 良いじゃん。おめでとう」って祝福できていた。それが今はできない。
それがどうしてだかなんて考えなくても分かる。
アタシはトレーナーが好きだ。
いつからって聞かれると自分でもよく分からない。いつの間にか好きになってたんだ。恥ずかしいから言葉で自分と他人には違うって言ってたけど。心はずっと前からトレーナー一色だった気がする。
たぶん、どっかでトレーナーは誰かと付き合ったりしないし結婚もしないアタシだけのものだって思ってたんだと思う。
それでアタシが卒業するときに『アンタまだ相手がいないの? ったく、しょうがないからアタシが相手になってやる』なんて言って付き合えたら良かったのに……。
自分でも笑っちゃうぐらいの歪んだ独占欲に気づかされてアタシは自嘲気味に笑った。
トレーナーが実家に帰ってアタシは淡々と渡されたメニューをこなしながらも心はもちろんアイツのことで一杯になっていた。
明日、相手と会うことになってるらしいアイツをもう止めることは出来ない。もちろん、相手が拒否して白紙に戻るって可能性もあるけど分の悪い賭けみたいなものだ。
誰だってトレーナーと会って話せば好きになる。
そんな確信がアタシにはあった。
「はぁぁぁ」
沈んでいく夕陽を見ながらグラウンドで大きくため息を吐いた。
もっと素直になっていればとか、それこそ告白していれば違った未来があったのかもしれない。泣きながら足に縋って行かないでって懇願したらアイツのことだから帰郷を中止にしてくれたに違いない。……もう遅いけど。
今からでも電話して見合いを止めてって言ったら帰って来てくれるかな……。
そう思ってバックに入れておいたスマホに手を伸ばす。
いつも使ってるメッセージアプリを使うんじゃなくて緊急の連絡先として教えてもらってるトレーナーの番号へ通話を……。
「ッ!いやいやダメだろ!!」
通話をタップしかけたところで正気に戻って慌てて画面を閉じる。
アタシとアイツはトレーナーと担当ウマ娘っていう関係だけ。それ以上でもそれ以下でもない。そんなアタシがアイツの人生に介入して良いわけがない。
「今日はトレーニングやめっかな」
トレーニングの消化具合は8割ほどだけど今の状態だととても満足に練習できる状態じゃない。このまま続けたら事故を起こしそうだからアタシは早々に引き上げることにした。
今日はゆっくりお風呂に入って早めに寝よう。明日を過ぎれば、見合いが終われば自然と諦めもつくでしょ。
「って思ってたんだけどね」
深夜のトレセン学園を歩きながら呟く。
あれから早めにお風呂に入ったし布団にも入った。でも目を閉じると瞼の裏にトレーナーの顔が浮かんできて寝ることができなかった。
それでどうせ寝れないならクタクタになるまで走ろうってジャージに着替えてグラウンドを目指していた。
「我ながら未練がましいっていうか女々しいっていうか」
自分はもっとこういう恋愛事には淡泊なほうだと思ってた。他人の恋愛話を聞いてもそんな心が動かされたこともなかったし。
そんなアタシが……。
ふつふつと考え事をしながら歩いていたら大樹のウロが目に入った。
レースに負けた悔しさとかモヤモヤを叫んでいる子をよく見る。アタシはやったことがないけど、どうやら滅茶苦茶スッキリするらしい。
……試してみる?
時間は午前2時を回ったぐらい。学園を見回ってる警備員さんの姿は見えないし学園生は皆夢の中にいるだろうから何を話しても気が付かれる心配はない。
フラフラと吸い寄せられるように近づいて縁を掴む。中は空洞になっていて底が見えなかった。
「……どうして」
どうせなら思いっきり叫ぼうとして出たのは小さな疑問符だけだった。胸の内にある想いは、アイツへの想いはこの身体が破裂するぐらいに駆け巡ってるってのに想いが強すぎるせいでどうにも言葉にすることが出来なかった。
だったら思ってること言いたかったことを一つ一つ言葉にしよう。
「どうして、そんなに見合いに乗り気なんだよ」
アンタは仕事が恋人だって口癖みたいに言ってたじゃん。シチーが恋人みたいなもんだなって笑いながら言うから頭を小突いてやったんだ。
「アタシのこと好きじゃなかったのかよ」
事あるごとにアタシのこと綺麗だって言ってくれる。
一回だけだけどアタシの見た目が好きだよねって聞いたら頷いたじゃん。
「告白してたら、素直になってたら恋人になってッ……」
結婚してと続けようとして言葉に詰まった。
喉がつっかえて上手く言葉が出ない。それに目が熱くなって、頬に生暖かい物が伝った。それで気が付いた。
ああ、アタシ泣いてるんだなって。
心は身体は制御不可能なぐらいに不安定なのに頭だけが現状を冷静に見つめていた。
「……好き……大好き」
「大好きだったんだよぉ……トレーナーぁ」
「結婚しないでよぉアタシがいるじゃんか」
そこからは泣き言っていうか叫ぶ声? いや獣の鳴き声みたいな勢いでアタシは叫び続けた。
何時間続けてたか分かんない。ただ顔がグチャグチャになって声がガラガラになるまで叫び続けたんだ。
それで空が白み始めてきた頃、アタシはやっとウロに想いをぶつけるのを止めた。心がスッキリしたってのもあるけど一つ決心したから。
「行こう。アイツの……トレーナーの所に」
行って想いを伝えよう。
絶対に迷惑だけどこんな小娘の告白なんて断られるなんて目に見えてるけど。
アタシには言いたいことがあんだ。
どこで見合いをするのかは知っていた。一応、何かあった時のためにって心配性のアイツが会場の住所を教えてくれてたから。
距離は気が遠くなるほど遠いけどウマ娘なら無理な距離じゃない。それに今からなら見合いの前にアイツを捕まえられるはず。
スマホで経路を検索してからアタシは走り始めた。
校門を出るとき偶然、たづなさんがいて何か言ってたけどそんなこと気にも留めずアタシは走った。
足は張り裂けそうで肺は破裂しそうで。きっと今のアタシの姿はギョッとするほど酷いもんなんだろう。
髪はボサボサで化粧は汗と涙でグチャグチャだし目は腫れていて隈も出来ている。そんなウマ娘が必死の形相で走ってるんだから。
文字通り野を超え山超えて太陽が頭の真上に差し掛かろうって頃に会場に辿り着いた。会場は結婚式の披露宴とかにも利用されてるホテルで宿泊客の他にも正装に身を包んだ人も見かける。そんな人たちの刺さるような視線を浴びつつアタシはホテルに入った。
このホテルのどこにアイツがいるのか分からない。きっと受付で聞いてもこんな見た目ボロボロの怪しいウマ娘に教えるわけない。
「今、行くから」
迷いなくホテルの中を突き進む。
確信はないけどアタシにはアイツのいる位置がなんとなく分かっていた。
無意識にアイツの匂いを感じ取ってるのか第六感的なものなのかは分からないけど理由なんてどうでも良い。
重要なのはアイツに今すぐ会いたい、伝えたい。ただそれだけだ。
到着の遅いエレベーターを待ちきれなくて息を切らせながら非常用階段を駆け上がり直感で『ここだ』って思った階に飛び出た。。
アイツはトレーナーはどこ?
「ん? シチー?」
……目の前にはトレーナーがいた。
偶然。本当の偶然だ。
この広いホテルの中で階段の目の前にお目当ての人がいるなんて一体、どれくらいの確率なんだろうか。
「シチー!? 一体どうしたんだ! こんな姿になって」
大慌てでアタシに怪我がないか確かめようとするトレーナーの手をひらりと躱す。
心配性なアンタは嫌いじゃないけど今は時間もないし、それよりも伝えたいことがあるんだ。
「トレーナー。アンタに聞いて欲しい話があるんだ」
「……なんだ?」
アタシの顔を見てさすがのトレーナーも手を止める。
「アタシは……」
一度、大きく深呼吸。
想いを伝えてしまえば吐き出してしまえば良くも悪くも関係は大きく変わる。最悪、契約を解くことになるかもしれない。
だって、お見合いをぶち壊しかねないことをアタシはしようとしてるんだから。
だけど、それが理由で退くのはアタシじゃない。
“ゴールドシチー”のやり方じゃない。
転んでも泥だらけになってもみっともなくても最後まで足掻くのがアタシだ。アタシの戦い方だ。
「アタシはトレーナーのことが好き。愛してる」
「いつもアタシのことを見てくれるアンタが好き。心配性なアンタが好き。周りの事は気が回るのに自分の事には無頓着なアンタが好き。こんなアタシとパートナーになってくれたアンタが大好き」
「こんなことしてアンタに迷惑かけて言えた義理じゃないのは分かってる! 分かってるけど言わせて」
「見合いなんかしないで……。結婚相手が欲しいならアタシを選んで。これからはもっと素直になるから。良い奥さんになれるように料理だって練習するし朝だってちゃんと起きれるようになる。アンタの隣に相応しいようなウマ娘になるから……!」
「……アタシと結婚を前提に付き合ってください」
言った。言ってしまった。
……テンション上がり過ぎてとんでもないことまで言った気がするけどスッキリはした。スッキリは、ね。
「まず……」
少し間が開いた後にトレーナーがいつになく真面目な重々しい口調で口を開いた。
「君の想いを真っすぐにぶつけてくれてトレーナーとして嬉しく思うよ。ありがとう。ただ……今、君の想いには応えることができない」
そう……だよね。
こんな迷惑行為をする奴なんかの告白を受けるわけがないもんね。
当たり前の結果だったけどショックで少し視界がぼやける。
「君と僕は生徒と指導者という関係だからね。でも、」
「でも、もし学園を卒業しても好きだと思ってくれるなら」
「その……結婚を前提に付き合おう」
「……え?」
悲哀から動揺。そして、歓喜へ
まるでジェットコースターみたいに感情が激しく揺れ動いたせいでアタシは激しく混乱した。
「うぇ? その告白受けてくれるの……?」
「学園を卒業したら、だな。それまではウマ娘と担当トレーナーっていう関係のままでいこう」
ウソでしょ。
絶対、断られると思ってた。
断られてトレーナーは見合い相手の人と結婚するって……。
あっ!? 見合い相手に謝らないと。
ただでさえアタシがぶち壊しにしたんだ。頭の一つでも下げないと筋が通らないって。
「トレーナー。アンタが見合いをしようとしてた人に会わせてよ。許してくれるかどうか分からないけど、ちゃんと謝りたいからさ」
「シチー、そのことなんだが。……見合いってなんだ?」
「は?」
困惑するアタシが聞いたトレーナーの説明を整理すると、そもそも見合いの話なんかなくてトレーナーのお兄さんが彼女との結婚を決めて初めて両家の顔合わせがするのが今日というだけらしい。
前にアタシが見た女性の写真、その隣にいたのがトレーナーのお兄さんだった。
完ッ全にやらかした。よくよく思い返すとトレーナーひ一言も自分が見合いするだなんて言ってないし。
結局、早とちりで暴走して……。って、ああ!よく見たら後ろの方に写真に写ってた女の人いるじゃん! お兄さんも! てことは周りにいるのがご両親!?
皆、ニコニコしてくれてるけど最悪のファーストコンタクトじゃん!
こんなことなら服もメイクもバシッと決めてくるんだった……。
「シチー。こんな所まで来たんだし。とりあえず両親に紹介したいから来てくれ」
「……うん! 分かった!」
覚悟を決めろゴールドシチー!
ここまでは最悪だったけど印象を変えてもらおう!
将来のお母さんに少しでも良い印象を残そう。
「初めまして! トレーナーじゃなくて○○さんのパートナーになりましたゴールドシチーです!」