ゴールドシチーがトレーナーとイチャつく話   作:大大魔王

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シチーがトレーナーのSNS投稿を見守ってたら匂わせをしやがってくれたから、それを問い詰めて最終的には世界に向けて匂わせじゃすまない投稿しちゃう話。
途中、主にシチーだけが曇りますがハッピーエンドなので……。許せシチー。

シチーの話書いてるとだいたいトレーナーくんが可哀想な目にあわされてるんですよね本当可哀想。これからもシチーの良さを引き出すための生贄になるんですが


ゴールドシチーと匂わせ投稿

ウマッター

知らない誰かとも繋がれる便利なサービス。もちろんアタシたちトレセン学園もほぼ全員が毎日利用してる。

でも、レースとかウィイニングライブなどでファンを獲得するアタシたちは世間からの注目もされっからちょっとしたことですぐ炎上する。

ほら、今日も

 

『人気ウマ娘、担当トレーナーと夜の密会!?』

 

っていう題名のネットニュースがスマホに表示された。

G1をいくつも制覇してる世間的にも有名なウマ娘がゴシップで燃え上がってる。原因は投稿したお洒落なディナーの席の向こう側にいる男の手が映り込んだことだった。

いわゆる匂わせってやつ。

まぁビックリなのはこのウマ娘が開き直って担当トレーナーとの婚約を発表したことだったんだけどね。

ってそんなことはいいんだけど問題は

 

「うーん」

 

スマホを眺めて唸ってるアタシのトレーナーが変な投稿でもして炎上しないかってこと。

アタシはもちろんモデルをやってるからフォロワーもそれなりにいるし炎上にも気を使って投稿してる。

ただ、目の前のコイツは最近まで碌にウマッターを使ってこなかったのにウマ娘ゴールドシチーのレース方面での広報担当として使い始めたのはさすがのアタシも心配になった。

 

「シチー、こんなもんで良いかな」

「ん?見せて」

 

あのトレーナーもさすがに心配らしくって毎回、投稿の前にアタシに確認を取ってくる。ちょっとメンドいけど自爆されるよりかは遥かにマシだった。

ただ、いつでも近くにアタシがいれるわけじゃないから1つ提案をしてみた。

 

「自分のアカウントを持てって?」

「そ、鍵アカにしてアタシが今から作る捨てアカと相互フォロワーになっとけば誰にも干渉されないし練習できるっしょ」

「確かに……。いやでも何を投稿すればいいんだ?」

「ふつーに日常のあったこととかで良いんだよ。アンタの練習なんだから気楽にやりなって」

「そうか。じゃあ悪いけどよろしくなシチー!」

 

こうして始まったSNSの炎上回避練習。

毎日、トレーナーは今日どんなことしたとか、あれが美味しかったとか律儀に投稿してくる。

正直、客観的に見るとクソつまんない内容なんだけどアタシは知らなかったアイツの一面を覗き込んでる感じがたまらなく好きだった。

 

「お、今日も投稿してんじゃん。どれどれー」

 

『今日は家でシチーの過去のレースを見ました』

そのコメントと一緒にこの前のレースの動画を映し出してるテレビが一緒に映ってる写真が投稿された。

場所はトレーナーの家。その居間の写真だ。

テレビ台の上にはアタシとの2ショット写真と公式で販売されてるアタシのデフォルメ人形が座らせられてた。

どんだけアタシのこと好きなんだよ。ていうかキモすぎ普通、担当の人形買う?

ま、悪い気はしないからいいけど。

 

「人形は大丈夫として2ショット写真は一応、これから写らないように注意させるぐらいかな……うん?」

 

テレビ台の横にある見切れた鏡。

よく見ないと分からないけど、そこにはピンク色の何かが映っていた。画像を拡大表示してようやく分かった。

女のスカートと足が映っていたことを。

 

 

____________

 

 

「なぁシチー昨日の投稿、いいねを押してくれてなかったけど何か悪いとこあったのか?」

 

今まで全部の投稿にいいねを押してやってたから何かダメな箇所がなかったのか気になってんだろうけど大有りだった。

特にあの女だ。

アイツはアンタの何?

ド直球に聞いても誤魔化されるかもしんないし初めはジャブ程度で。

 

「最悪だった。あの投稿。マジでキモ過ぎ。まずアタシとの2ショット写真とか論外。それになんなのあの人形」

「あー写真と人形か。ごめんな。シチーのグッズは絶対に一通りは買うようにしてるから本当はもっと飾ってるんだが。さすがにと思って人形だけにしてたんだ。あれもダメなんだな」

 

一通りグッズを買って飾ってる。つまり、アイツの生活の一部にアタシがいるってことを想像して顔がニヤけそうになるけど我慢……。

 

「それに!」

 

ここからが本番。

アイツが扉から逃げられないようにカギをかけてから画像を拡大して女の影を突き付ける。

 

「この女、誰?」

「あー映ってるのか。そうか、こういうのだよな気を付けないといけないのは」

 

首を掻いてアンタは笑うけど誤魔化そうとしてもムダ。

アタシには通用しないから。

 

「この女、誰?」

「あれ?シチー?なんか怖いぞ」

「だから!この女誰って聞いてんだけど!」

 

机を思いきり叩いたせいで脚が曲がって傾いたけど、そんなこと今は気にしてられない。

この女はどこの誰でアンタとどういう関係で、どこまでいってんのか。

身長は?体重は?友達以上?付き合ってる?両親には紹介した?アタシと比べてどうなの?

 

「た、ただの友達です……」

「た・だ・の?絶対に違うよね!ただの友達を家に上げる?」

「そりゃ友達を家に入れることぐらいは「異性と2人きりだと話はちがってくんでしょ!」……いや……はい」

 

認めた。

絶対に突き止めてやる。

 

「で、どういう関係なん?もう誤魔化しとかナシだから」

「別に誤魔化してはないけどな……」

「……口答え?」

「お、幼馴染です」

 

ふーん幼馴染、ね。

なんか若干、怯えた顔してっけどウソはついてなさそう。

 

「で?」

「で?とは何でございましょうか」

「どういう経緯で家にあげたかって聞いてんだけど」

「経緯って言われてもなぁ」

 

目を逸らして苦笑いをするトレーナーの顔を無理矢理に掴んでコッチに集中させる。

 

「目ぇ見て話しなよ」

「単純にトレーナー寮がどうなってるか見てみたいと言われたから招待しただけです……」

「で、なんかしたわけ?」

 

2人きりでなんもないワケないでしょ。

アタシなら……。って違う違う!

 

「簡単に紹介した後は用事があるとかで帰ってったな。近くに用事があったから寄っただけみたいだ」

「……本当に?」

「本当!本当!それよりも顔を放してくれないか……」

 

瞳を覗き込むようにじっと見つめる。

意外とまつ毛長い……じゃなくてこれもウソじゃなさそう。

これまでの付き合いでウソをついてるときは目を見れば分かるし。勿体ない気がするけどトレーナーの顔から手を放す。

ただ、このアタシに向かって匂わせ投稿したってのは変わらないワケで。

 

「はぁぁ。じゃあ信じるけど、やっぱアンタはウマッター向いてないわ」

「そうだよな。俺もそう思って」

「だから、今日からアタシと一緒に投稿していくから」

 

匂わせ投稿してしまうほど脇が甘いならアタシが甘い部分を潰してやれば良いだけの話。トレーナーの行く所。写真を撮る場所に一緒に行けば、確認とってやれば匂わせなんてこと一生できなくなるんだし簡単じゃん。

 

「へ?」

 

よく分かってなさそうな鈍いアンタのために説明してあげようと思って前にブクマしておいた『カップルで行けば間違えなしのスポット』を見せる。

 

「アンタ1人だと炎上待ったなしなんだから。メンドイけどアタシが監督するって話。今日はここ行って写真撮るから。あ、あとアカウントも共用アカウントにすっからね」

「シチー?別に俺がやるのは広報用のアカウントだから、そんな個人で撮るような写真は。それにもっと普通の場所とかで良いんじゃないか」

「は?やらかしたアンタが何か言える権利があると思ってんの?」

「……行かせて頂きます」

 

 

それから毎日アタシとトレーナーは色々な場所で写真を撮った。

本当に!本当にメンドイしアタシだってやりたくなかったけど広報をやるならアタシも関わってくることだから一切、手を抜くつもりはない。

これまで投稿した写真を部屋で毎晩、じっくり眺めながら次の投稿をするのが最近の日課だ。

撮影のための場所は毎回アタシが選んだ。アイツだとセンスないとこになるし。

ま、全部カップルで行くような所ってのはたまたまだよ。

 

「っし、今日もよく撮れてる」

 

今日は完全個室のレストランで有名なケーキがあったからそこに行ってきた。

写真の中のアタシたちは所謂、あーんってやつをやってんだけど……ギリセーフっしょ!

いや、こんなこと1ミリだってしたくなかったし嫌々やってただけなんだけど。

写真はスマホに保存した。一応ね……ほんとに。

 

 

こんな感じでトレーナーと過ごすことがこれまで以上に増えてきたワケだけど四六時中、一緒ってワケでもない。

アタシにだって予定ってもんがあるしアイツにいつまでも付きやってらんない。今日だって1人で買いたかった服とか香水を見て回ってる。

これからも一緒にやってくパートナーとしてアイツが可愛いって言ってた服とか好みそうな柑橘系の香水を買い漁っているのはエチケットの一環だ。

 

3時間後、買いたかった物が買えて昼飯をどうするか悩んでたときに偶然、トレーナーの背中を見つけた。

今日はアイツも用事があったらしくて別行動したんだけど終わってるってなら一緒に昼ご飯を食べに行きたい。

次に行きたい店もリサーチ済みで近くにあるし。

 

「トレーナー!!……えっ」

 

知らない誰かと話してる。

背格好から女だってことは分かるし、それにあのスカート!

 

「幼馴染の……女」

 

悪いことだってわかってけどアタシは2人の後ろを黙ってストーキングすることにした。

大きな買い物袋を2つ持ってるトレーナーはすげぇ楽しそうでアタシには見せたことない表情で笑い合ってる。

あ、よく見たらあの袋、アタシの好きなブランドのとこのじゃん。あの女へのプレゼントかな……。

 

「……ざっけんなよ」

 

トレーナーは悪くない。

それは分かってんだけどアタシの好きな物を他の女にプレゼントするってことが、よりにもよってアイツがそれをするってことがアタシにはキツかった。

走って行ってアイツの背中を蹴飛ばす衝動にかられれけど我慢だ。とにかく我慢。

その後もトレーナーと女のデートを延々と見せつけられた。勘違いかもしれない友達と遊んでるだけって思いたかったケドこうもカップルが行きそうな場所ばっかりチョイスされてると、ね。

 

「……あ」

 

でも、最終的に今日誘おうとしてた店に入っていく2人を見たとき感情を押し留めていた栓が壊れた。

そっからは嫌な妄想ばっか。

どれぐらい付き合ってんだろー。アイツのウソを見抜けるとか何を偉そうにしてたの?もしかして2人の邪魔してた?

そして、極めつけにアイツがアタシのことを彼女に愚痴る妄想をした。

 

『担当の奴に無理矢理連れ回されてさ困ってるんだよ』

『好きでもないのにカップルの真似事させられて気持ち悪い』

『こっちには幼馴染の彼女がいるってのに』

『邪魔なんだよ』

 

聞いたわけでもない想像上のトレーナーがアタシを責める。

 

……やめて。やめて。やめて。やめて。やめて!!!

アタシは駆け出した。

行先なんて分からない。だけどこのままだったら壊れてしまいそうで。店に突撃してトレーナーに何してしまうか分かんなくて。

少しでもアイツから離れようとして走った。

走って走って走って走って走り続けた。

 

でも、無理だった。どこもかしこもアイツとの思い出が詰まり過ぎていて。

大切なことも!しょーもないことも!全部、全部!覚えていて。

どうしようもなくなってアタシはトレーニングでいつも立ち寄る公園のベンチに腰を下ろした。ここが思い出が1番少なかったから。

 

「……トレーナー」

 

なにかに縋るようにスマホを開けてウマッターを起動させる。見るのはアイツとの共同アカウント。

見ても余計辛くなるのは分かってんのに1つ1つ「ああ、こんなことあったな」とか「ここ楽しかったな」とか思い出して幸せな気分になった1秒後には叫びだしたくなった。

 

「なにやってんだろアタシ」

 

ふと、ウマッターの鍵アカであることを示す南京錠のマークが目に入った。

 

解除しちゃいなよ。

 

心の中のアタシが呟いた。

ここで解除して全世界に向けてアタシたちの写真を公開する。あんな写真、絶対に付き合ってるとしか思われない。あの幼馴染の彼女だって勘違いする。

それでアタシはトレーナーに嫌われておしまい。

ざまーみろ。

 

「やってやる……!」

 

設定画面を開いて鍵を解除する項目を選択。

最後に本当に解除するかアプリが聞いてくる。

ここで『はい』を押せば本当に公開される。

 

押しちゃいなよ。押して一瞬だけでもざまーみろって楽な気持ちになろーよ。

 

心の中のアタシがまた甘い言葉を吐いた。

押すか押さないか。

散々迷った挙句、アタシは

 

「……できるわけねーだろ」

 

スマホを地面に投げ捨てた。

あれだけアタシがメンドウでも毎日毎日、甲斐甲斐しく世話してくれるトレーナーを裏切れるわけないでしょ。

どれだけ悔しくても苦しくてもアタシはアイツの幸せを祝福してあげるべきなんだ。例え隣にアタシがいない未来だとしても。

だったら、せめて大声で泣いてやろうと思った。それぐらいの権利はあるでしょって。

なのに……

 

「おい!シチーどうしたんだ。そんなボロボロの恰好して!」

 

どうして……。どうしてアンタが来るんだよ。それも後ろには例の女まで連れて。

あの店からは相当、離れてるはずなのに。なんで。

もしこの世界に三女神様がいるとするなら相当アタシを嫌ってるはず。だってこんな嫌がらせをしてくるんだから。

 

「もしかして何か事故ですか?私、警察に連絡しましょうか」

 

トレーナーの彼女がアタシのことを心配して携帯を取り出した。

 

「い、いや、自分でやっただけ……大丈夫だから」

 

自滅して警察呼ばれでもしたら、それこそ最悪だから嗚咽が混じった声でやめてもらった。

それにしても彼女さん良い人そうじゃん。綺麗で誠実そうでトレーナー、アンタにお似合いだよ。

あー、こんなことならアタシも最初から素直になっとくんだった。

そうすりゃアタシだって……。アタシだって……。

 

 

我慢の限界だった。

アタシはこれまでにないってぐらい大声でみっともなく泣いた。

涙はボロボロ出て声も枯れるぐらい叫んで。

さっきまで溜めてたものを全部、吐き出すみたいに泣いたんだ。

そんで暫く泣いた後、さすがに水分使い切ったみたいで自然と涙は打ち止めになった。

 

「落ち着きました?」

 

気が付くと隣で彼女さんがずっとアタシの背中をさすってくれていた。

 

「……はい。と、トレーナーは?」

「ああ、あの人なら飲み物を買わせに行かせました」

 

ありがたい。

アイツの前だけではこんなみっともない姿を見せ続けたくなかった。

いや、もう見せちゃってるよね。

 

「あ、あの。トレーナーのことなんだけどッ」

「はい」

 

だからみっともないついでにアンタのことをアシストしておくことにしたから。

一瞬でも最低なことを考えたお詫び。

 

「アイツ!本当に良いヤツでッ!メンドくて突っかかるばっかりのアタシの面倒を文句も言わずに見てくれる本当に良いヤツなんです」

 

泣き叫んだせいで潰れた声で吐き出すように振り絞るようにアタシは必死に声を出す。

 

「だからッ鬱陶しいところも暑苦しいところもあるかもだけどッ!アイツを……トレーナーを幸せにしてあげて、ください!」

「はい?」

 

アタシの全身全霊の叫びは彼女さんの呆気ない顔でかわされた。

はい?って言いたいのはアタシの方だ。

 

「あの、もしかしてですけど私とあの人が付き合ってると思ってます?」

「付き合ってんでしょ。そこそこ高いブランド物プレゼントされて行く場所全部がカップル向けだしアイツも滅茶苦茶楽しそうにもしてた」

「違いますよ。私と彼は付き合ってなんか。……あ!」

 

彼女さんは何か納得したみたいな顔をした。

もしかして付き合ってるとかじゃなくてトレーナーの片思いとか?いや、それでもアタシに付け入る隙なんて。

 

「これ、あの人には秘密にしてもらえますか?」

「……はい?」

「今日のことなんですけど……」

 

事の顛末は簡単だった。

トレーナーがいつもアタシにプランを考えさせるのは悪いからって自分で考えたのは良いんだけど若い子の感性は分かんないって意味不明の理由で彼女さん、ではなく幼馴染さんに予行演習の相手をお願いしたらしい。

あのブランドの袋もアタシへのプレゼントだったらしくて。

 

「あれも似合う。これも似合う。シチーはなんでも似合うって言って破産しそうな勢いで買おうとしてたから私と店員さんで止めてたんです」

 

もうね……。

もうアタシが早とちりしたってのが悪いってことは承知の上で言わせて欲しいんだけど……紛らわしいだっつーの!!

なに!あの時間!?

お気に入りの服と靴はボロボロだし!スマホはどっかいったし!絶対、他の人に変な目で見られたし!

柄でもないのに大声で泣いたし!っていうか最初から誘えッ!アンタと一緒ならどこだって良いんだよッアタシは!!

あー、もう帰ってきたらアイツ絶対に蹴る。ギリ死なないレベルの強さで蹴る。

 

「ふふっそういうことだったんですね」

「なにが……ですか」

「シチーさん。貴方、あの人のこと好きなんでしょ?それで私と彼が付き合ってると勘違いして今の状況にって感じじゃないですか?」

 

コクリとアタシは頷く。

トレーナーの知り合いなのにアイツと比べて100倍鋭い。

いや、アイツが鈍いのか。

 

「あー良かった。なにか深刻な事件でもあったんじゃないかって心配しました」

 

それに関しては本当にすみませんとアタシは謝った。

今回の件、悪いのはアタシとトレーナーで幼馴染さんはとばっちりをもらっただけの被害者だ。

 

「ここだけの話なんですけど彼、最近はシチーさんの話しかしないんですよ」

「え?」

 

彼女が悪戯っ子みたいな笑みで微笑む。

 

「ここが凄いとか、あのレースは最高だったとかね。今日だってシチーさんの話題が1回も尽きたことがないんです」

「え?え?」

「だからシチーさんが素直になれば案外、早く落とせると思いますよ彼は。貴方しか眼中にないって感じですし」

 

もしかして……両想い?

いやいや、さすがにそれは早とちりじゃ今だって早とちりしたせいでこんなことになってんだし。でも、幼馴染さんのお墨付き。

いや、マジ?こんなことってある?

負けたと思ったら実は勝利目前でした、みたいな。

 

「おーい!飲み物買ってきたぞ。シチーの具合はどうだ?」

「はい、シチーさんもう落ち着いてますよ、ね!」

 

アイツが飲み物を持って帰って来て幼馴染さんの言葉とか涙でグチャグチャになった顔とか色々思い返したら急に恥ずかしくなってきて、アタシは下を向いた。

 

「シチー?おなか痛いのか?」

「違う」

「頭か?頭痛いのか?それなら今すぐにでも病院に」

 

ああ、もう!

アンタはどこまで心配性なんだよ。

最低なことしようとしてたアタシに向かってアンタは……。

そこで顔を上げて今日、初めてトレーナーの顔をはっきり見た。毎日見てる鬱陶しいほど優しい顔。アタシのことしか考えてない大馬鹿トレーナー。

アタシの大切な人。

ふと、彼女だと勘違いしたときの後悔とか幼馴染さんの『素直』って言葉が胸に木霊した。

 

「だから!違うって!……それよりも明日、空いてるよね?」

「ああ、もちろん何も予定はないが」

 

だから、今からじゃ遅いかもだけど。アタシはもう少し素直になろうと思うんだ。

一緒に行きたい所があるなら一緒に行きたいって言う。ウマッターだとかアンタのためだとか下手なウソをつくのはもうおしまい。

 

「アタシ行きたい場所あるんだ。だから一緒に行かない?」

「ああ、もちろん一緒に行こう!!」

 

『好き』って言葉に出来るのはもう少し先かもしれないけどさ。

絶対に言葉にするから待っててよね!トレーナー!

 

 

 

「あっあんなとこにシチーの携帯が落ちてるじゃないか。ほら、なくしたら大変だぞ」

「あんがと……。あ」

 

携帯を渡すトレーナーの指がちょうどウマッターの鍵を外す最終確認のYESボタンを押していた。

 

 

翌週の週刊誌の見出し

『レースでも優秀な成績を収める人気モデルゴールドシチー熱愛発覚!!お相手は担当トレーナー!?』

 

なお1時間後に公式の記者会見が予定されており婚約指輪の購入や式場見学をしていたという目撃情報も多数上がっていたため記者たちの間では恐らく婚約発表をするのでは?という見解が主流だ。

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