気付いたらダークソウルの世界に転生していたが、自分の知ってる設定とはどこか違う展開がチラホラ。
亡者に弓で撃ち抜かれ、刺殺され、落下死して、挙げ句の果てに階段から転げ落ちて死ぬ。
中途半端に現実とゲームの法則が入れ混じった世界で、主人公は今日もYOU DIEDする。

1 / 1
息抜きに書きました。
暇潰しにどうぞ。


北の不死院

 

 

 

 俺はあまり立派な人間ではなかった。

 かと言って下衆な人間でもなかった。

 学校での生活は平均的で、社会に出てからもあまり目立つことのない存在だ。

 まあ、陽か陰かと聞かれれば陰側の人間だったとは思う。

 しかし何も悪いことはしていない筈だ。

 

 なのに何故俺はこんなところにいるのだろうか。

 

 目が覚めたとき俺は牢屋の中にいた。

 前後の記憶は思い出せない。

 いつものように出勤したところまでは覚えているが、そこからの記憶が不明瞭だ。

 

 牢屋の中には何もなかった。

 俺は何故か褌一丁で地べたに寝転んでいたのだ。

 砂利で背中がとても痛い。

 よくもまあこんな場所で眠れたものだ。

 見た感じトイレもないのが不思議である。

 垂れ流しは衛生面以前に心境的に嫌だった。

 

「おおぉぉぉぉい!! 誰かいないかぁぁぁぁ!!」

 

 絶叫にも近い叫び声を上げるが、返ってくるのはズシン、ズシンといった謎の振動音。

 規則的なところを鑑みるに、何らかの足音だと思うが地球上にこんな振動が伝わるほどの動物がいるのだろうか。

 象でもいるのかと思ったが、流石にこんな足音を響かせるほどの重さではなかった筈だと否定する。知らんけど。

 と思ったが、よく見ると牢屋の外に2人の人物が見える。

 人相までは見えないがハゲてた。格好も囚人服のようなボロボロのものだ。

 

 何かどこかで凄い見たことのあるような光景だった。

 

「あっ」

 

 するりと思い出す。

 ダークソウルに出てくる囚人亡者だ。

 ということは、この振動を響かせてるのは不死院のはぐれデーモンなのだろうか。

 

「いやいや、何でダークソウル……」

 

 最近エルデンリングが販売されて既にクリアしたが、よりにもよってダークソウルの世界に俺はいるのだろうか。

 フロムのゲームは全部やったが、初代ダークソウルは流石に覚えてないことが多い。

 それ以前にどうして死にゲーの中に俺はいるのだろうか。

 

 なんにせよ、ここから出なくては話が進まない。

 騎士が屋根上から鍵を落としてくれた気がするが、どうなのだろうか。

 早く来て欲しいものだ。

 暇だったので、牢屋の中を探索してみる。

 すると何故か牢屋の隅っこに鍵が落ちていた。

 ゲームとは違い光ってなかったので、全然気付けなかった。

 

「あれ? 最初に騎士が来てくれた筈なんだけどな……」

 

 俺が寝ている間に来ていたのだろうか。

 よく分からないが、進めるのなら先に進もう。

 

 気になることはそれ以外にもあった。

 素性は裸だったので持たざるものだと思うのだが、特に武器が見当たらない。

 贈り物もないので、本当に持たざるものとなっている。

 そして肝心のステータスが何も分からない。

 ゲームだとレベルとステータスは忘れたが、全部同じ値だった筈だ。

 しかし、それを確認する術がない。

 ここはゲームのような現実世界なのだろうか。

 というか俺は不死者になっているのか?

 亡者状態でないことだけは分かるのだが……。

 

 取りあえず、牢屋の扉を開けて外に出る。

 と、そこで地面に何か書かれていることに気付く。

 

「メッセージ?」

 

 ソウルシリーズの伝統であるメッセージシステム。

 ゲームでは自分の書いたメッセージが評価されれば体力が回復するのたが、過疎っている時期になると誰にも評価されなくなる。

 しかし、誰がメッセージを書いたのだろうか……。

 

『全てのデーモンを殺せ』

 

 書かれていたのはそんな内容だった。

 ダークソウルにこんなメッセージはなかったし、書くことも出来なかった。

 だとすれば、この世界に俺を連れてきた何者かのメッセージなのだろう。

 火継ぎをしろではなく、全部倒せというのはゲームであっても大変である。

 必要最低限のデーモンだけ倒すのが駄目なのは辛いところだ。

 一度も死なずに倒せるとは思えない。

 

 とにかく、先に進もう。

 

「やっぱりはぐれデーモンか……」

 

 外に出て柵の向こうに見えるのは一軒家ほどの大きさの化物だ。

 あれを倒さねばならないと思うと憂鬱になる。

 ゲームでは簡単な敵だったが、俺に倒せるのだろうか……。

 

 通路にいた亡者は壁とお喋りしていて気味が悪いものの、特に害はないので無視する。

 歩きながら先に進んで水路を超えると梯子があったので、俺はそれを登る。

 たったそれだけの行動なのに、俺はもう息切れしてしまった。

 これが現代社会人の体力か……。

 ステータス画面をもし見れたなら、俺の持久は1しかなかったりするのだろうか。

 

 梯子の先は広場になっており、そこには篝火があった。

 どうすれば火を灯せるのだろうかという不安はあったものの、手を翳すと勝手に燃え上がった。

 不思議である。

 

 さて、問題はこの先の扉だ。

 そこには不死院のデーモンが現れるのだ。

 左奥に抜け道があるのでそこに行けばいいのだが、俺の持久を考えると不安が残る。

 ここにいても仕方ないので行くしかないのだが。

 

 扉を開け……お、重い。

 腰を使い、全身の体重を掛けて何とか開ける。

 これだけでもう筋肉痛になりそうだ。

 

「よし……」

 

 ここを進むと、上から不死院のデーモンが降ってくる。

 なので、それを無視して左奥の通路へと走り抜けるのだ。

 

 そしてダッシュした俺の目の前に予想通り不死院のデーモンが降って来たが、予定通り無視して左奥へと走る。

 そして通路へと抜けようとし――柵が閉まっていて行けなかった。

 

「ぴぎゃ」

 

 俺は巨大なハンマーに叩き潰された。

 

 

――――

 

 

 気付いた時、俺は篝火の前で体育座りをしていた。

 先程のは……夢だったのだろうか。

 ハンマーに潰された気がするのだが、一瞬過ぎて痛みも何もなかった。

 もしかして、これが不死者としての力なのだろうか。

 身体を見ればゾンビのようなボロボロの肉体になっていた。

 どうやら俺は死んだことにより亡者になったらしい。

 よく分からないが、大切なナニかを喪失したような感覚に襲われていた。

 

 それはともかく。

 何故通路が閉まっていたのだろうか。

 篝火はついてなかったので、前任者がいたとは思えないが……。

 ダークソウルをやったのは昔だが、柵は主人公が通り抜けると閉まる仕様だったことは確実に覚えている。

 やはりここは現実のようなゲームの世界なのではなく、ゲームのような現実世界なのかも知れない。

 

 しかし、素手であのデーモンを倒せるとは思えないのだが。

 殴ってもダメージを与えられる気がしない。

 それどころか俺の手が折れて逆にダメージを受けそうだ。

 何か見落としてるのだろうか。

 気は進まないが、もう一度行くしかないだろう。

 

 再度バカ重い扉を開ける。

 デーモンはいないので左奥にダッシュする。

 先程同様に降って来たが、無視して左奥の通路を見る。

 やはり閉まっていた。

 開けた扉も閉まっているので、完全に閉じ込められた状態だ。

 一体どうしろと。

 

「クソ……」

 

 不死院のデーモンと向き合う。

 ゲーム越しでは何とも思わなかったが、改めて見ると悪魔のような見た目をしている。

 あのトラックみたいなハンマーで叩き潰されたのかと思うと、俺は思い出したかのように身体が震え、恐怖に飲まれてしまった。

 

「ぴぎゃ」

 

 俺は巨大なハンマーに叩き潰された。

 

 

――――

 

 

 無駄死にだ。

 気付けば篝火の前で体育座りをしていた俺は、自分の愚かさを嘆く。

 あんな場所で棒立ちすれば、殺されるのは当たり前だろう。

 精神に何かしらのフィルターが掛かっているのか、今は不思議と恐怖心はない。

 亡者になってるためだろうか。

 今は調べることは出来ないが、ありがたいと思うことにしよう。

 

 今度はちゃんと戦わなければならない。

 この扉の先を進まなければ脱出出来ないが、扉の先はデーモンとのデスマッチを強要される。

 少なくとも、出口はなさそうだった。

 念の為、篝火から左にある扉を調べてみるが、鍵が掛かっていて通れなかった。

 俺に道は残されてないようだ。

 

 不死院のデーモンの行動パターンは覚えている。

 勝てるか分からないが、戦うだけ戦ってみよう。

 

 俺はクソ重い扉を開ける。

 そのまま中央まで行くとデーモンが降ってきたので、俺は反時計回りで背後へと回り込む。

 俺の頭の近くをハンマーが通り過ぎて焦るが、初撃は避けられた。

 そのまま力いっぱいにデーモンの身体を殴り付ける。

 

「いてぇぇ!」

 

 デーモンの肌は硬かった。

 俺の右手は折れた。

 痛すぎて悲鳴をあげてしまう。

 

「ぴぎゃ」

 

 俺は巨大なハンマーに叩き潰された。

 

 

――――

 

 

 気付けば篝火の前で体育座りをしていた俺は、内心で仇を抱える。

 

 ――これ、どうすればいいんだ?

 

 今のでハッキリ分かった。

 素手で倒すのは不可能だ。

 そしてここはやはりゲームとは違う。

 ダークソウルでは壁でも攻撃しない限り跳ね返されることはなかった。

 だが……俺は跳ね返されるどころか骨が折れてしまった。

 現段階でまともに戦うのは不可能だ。

 

 それに今更だが、俺は毎回一撃死している。

 ゲームだと数発耐えたが、俺には無理らしい。

 ステータスがあるなら体力は1なのかも知れない。

 盾もないので一発当たれば即あうぅんオワタ式状態だ。

 勘弁してほしい。

 

 とにかく、先に進まない限り俺に未来はないのだ。

 ここで心が折れれば、牢屋前にいた亡者のように壁に話しかけるだけのモブ敵になってしまう。

 俺はそんな存在にはなりたくない。

 活路を見出だせなくても、前に進むしかないのだ。

 

 そうして俺は再び扉を開け、戦いに挑む。

 

 ローリングをしたがゲームのようなすり抜けは起きず叩き潰された。

 ローリングをしたら受け身が取れず叩き潰された。

 出口の扉を開けようとしたが、鍵が掛かっていて叩き潰された。

 行動パターンを見るために逃げながらも観察したが、叩き潰された。

 

 因みに、行動パターンは意外にもゲームと同じであった。

 それならばまだ希望はある。

 そして今回、俺は違う死に方をした。

 

 再び逃げ回っていたが、しばらくすると床が崩れ落ちたのだ。

 生憎、俺は頭から落ちてしまったのでそのまま死んでしまったが、初めてのパターンだ。

 

「というか不死院のデーモン戦で床が崩れ落ちるってどっかで聞いたことあるような……」

 

 だが、これは活路かも知れない。

 再び篝火で復活した俺が扉を開けると床の崩れはなかったが、デーモンの攻撃を避け続けると床が崩れる。

 崩れることを知っていた俺は、今度はしっかりと着地出来た。

 そして落ちた目の前にいるのは、はぐれデーモン。

 不死院のデーモンより数段強いデーモンだ。

 本来であれば、再び不死院に訪れなければ戦えないボスである。

 不死院のデーモンは落ちてこなかったらしい。

 崩れ落ちた床の穴からこちらを覗いていたが、興味をなくしたかのように立ち去った。

 

 それよりも、今は目の前のデーモンだ。

 ここは確か梯子がどこかにあった筈なのでそれを探す。

 何とか攻撃を掻い潜り、見つけた梯子を登る。

 だが、その間はとても無防備になってしまう。

 

「ぴぎゃ」

 

 俺はハンマーに叩き潰された。

 

 

――――

 

 

 気付けば篝火の前で体育座りをしていた。

 いい加減この感覚も慣れてきそうだ。

 一撃死なのは辛いが、痛みを感じる間もなく死ねるのは幸せなのかも知れない。

 そうでなければ気が狂ってしまってもおかしくないだろう。

 

 ふと思い付いた作戦があった。

 床が崩れ落ちる際に、不死院のデーモンも一緒に落とすことが出来れば地下に閉じ込められるかも知れない。

 全てのデーモンを倒さなければならないのなら、後々大変になるリスクはある。

 だが、それでも現状ではそれ以外に活路を見出だせないのだ。

 穴から落とし、梯子を登り切ればこちらの勝ちだ。

 確か梯子を登れば最初の牢屋に抜けられた筈なので、篝火まで戻ることが出来る。

 そうすればゆっくりと調べることも出来るだろう。

 不死院のデーモンを倒さなければ先に進めないならほぼ詰みだが、現状も詰んでいるので問題はない。

 

 ということで、俺は再度めちゃくちゃ重い扉を開けた。

 

 先程同様、不死院のデーモンの行動パターンを読みつつ、俺は崩れ落ちる床の上へと奴を誘導する。

 避けるのに失敗し、ハンマーに叩き潰されそうになったがタイミング良く床が崩れ共に落ちていく。

 仲良く落ちた俺を待っていたのは、2体のデーモンだ。

 こいつらから逃げ回りつつ梯子を登れるかは分からないが、やるしかないのだ。

 そう意気込んだ俺だったが、はぐれデーモンは俺ではなく不死院のデーモンへと視線を向けていた。

 不死院のデーモンもまた、はぐれデーモンへと視線を向けている。

 これはまさか、と思っていると、その2体で争いを始めた。

 

「まじかよ!」

 

 その隙に俺は梯子を登り、安全な位置まで退避することに成功する。

 遠くから2体のデーモンの争いを観戦するが、はぐれデーモンが不死院のデーモンを一方的にボコっていた。

 それからしばらく不死院のデーモンはタコ殴りにされ、悲鳴をあげて絶命した。

 それと同時に、俺の中に何かが流れ込んでいく。

 今までの喪失感を取り戻すかのように、俺のナニかに暖かさが蘇る。

 とても満たされた気分になった。

 

 はぐれデーモンがこちらを睨んでいたので、俺は慌てて奥に開いていた穴から牢屋前へと戻る。

 その穴の手前の死体に何故か魅力の指輪が落ちていたので拾っておいた。

 ステータスは思い浮かばないくせに、アイテムの名前は頭の中に思い浮かんだ。

 何なんだこの謎仕様は。

 

 そして何故か地面に『おれはやった!』というメッセージが。

 先程はなかったのにいつの間に出来たのだろう。

 他のプレイヤー的存在がいたりするのだろうか。

 白サイン書いてたりしないかな。

 取りあえず、メッセージは高評価と念じておく。

 結構辛かったので、メッセージを見てから達成感が湧いてきたのだ。

 

 さて、一旦篝火まで戻ろうか。

 

 ゆっくり歩きながら戻り、扉を開けた俺は中を調べる。

 崩れ落ちた床を覗けば、はぐれデーモンがウロウロとしていたので放置しておく。

 左奥の通路を確認したが、相変わらずしまっているままだ。

 辺りをちゃんと調べて見ると右奥に死体があり、そこで塔のカイトシールドを拾うことが出来た。

 すると、柵が開く音がする。

 まさかと思い通路の方を見れば、まるで何事もなかったかのように開いていた。

 

「俺の今までの苦労は一体何だったんだ……」

 

 まさに無駄骨だ。

 不死院のデーモンと戦っていた時、ちゃんと辺りを調べれば問題なく進めたなんて。

 だがまあ、結果的に不死院のデーモンは倒せたので良しとしよう。

 倒したのははぐれデーモンだけど。

 

 通路の先を進むと、篝火があったので火を点けておく。

 篝火前で体育座りしてホッコリ休憩しよう。

 休憩を終えた俺は先へと進む。

 盾も忘れず装備しておいた。

 

 しばらく先に進むと、亡者が奥から弓を構えていることを視認する。

 ローリングで避けれないことは学んだので、ジグザグに動きながら前へと進む。

 

「ぴぎゃ」

 

 俺の額にホーミングしてきた弓矢が刺さった。

 

 

――――

 

 

 この世界は物理法則がおかしい。

 何故放たれた矢が正確に俺を追尾するのだろうか。

 そしてゲームだと弓の速度はノロノロだったが、ここでは全然見えなかった。

 放たれた、と思ったらもう眼前に矢が来ていたのだ。

 盾を構えてなかった俺がアホだった。

 というか盾を構えていても足とかに当たるような気がしてままならない。

 亡者如きに殺されるなんて……。

 

 だが、同じ失敗はしない。

 次こそ奴を倒し、ソウルを回収する。

 

 再び先へと進むと、亡者が弓を構えていたので俺も盾を構える。

 放たれた弓は膝に刺さり、俺は見事に転んでしまう。

 

「ぴぎゃ」

 

 俺の額にホーミングしてきた弓矢が刺さった。

 

 

――――

 

 

 気付けば篝火の前で体育座りをしていた。

 何なんだあの亡者。

 まさかの予感的中であった。

 ゲームのように敵の攻撃は盾に吸い込まれることはないのだ。

 ちゃんと射線に盾を置かないと防げないらしい。

 当たり前のことなのだが、難易度が高すぎる。

 そして亡者の弓が正確すぎる。

 足を狙い、立ち上がりにヘッドショットを決めるなんておかしいだろう。

 実はロビンフッドなんじゃないのか?

 亡者でこれとか心が折れそうなんだが。

 

 気を取り直し、俺は再び奥へと進む。

 今度は防いで見せよう。

 奥にいる亡者は既に弓を構えている。

 俺は亡者の視線を探るが、全然分からなかった。

 当てずっぽうで盾を胸辺りに構えていたのだが、今回は防げたらしい。

 カン、と弓矢が盾に当たった。

 

 俺は今までの鬱憤を晴らすかのように猛ダッシュで駆け寄った。

 亡者は背を向けて逃げるが関係ない。

 途中に落ちていたブロードソードを拾い、追い付いた俺は亡者にタックルする。

 一緒にもつれて倒れるが、馬乗りになった俺は亡者の胸に剣を突き立てた。

 

 それと同時にソウルが流れ込む感覚がした。

 恐らく絶命したのだろう。

 そう判断しま俺は顔についた血を拭い、立ち上がり先へと進む。

 通路は白い霧で覆われていたが、手を翳すと通れるようになった。

 

 ここは階段を登ると大きな鉄球を亡者が転がしてくる。

 それを避けると後ろにある牢屋をぶち壊し、中にいる騎士からエスト瓶をもらえるのだ。

 階段を下ると篝火のところの扉に繋がっているので、取りあえずそちらに行き篝火に触れておく。

 気を取り直し、階段を登ると鉄球が転がってきたので俺は急いで避けようとし――足を踏み外した。

 

「ぴぎゃ」

 

 鉄球に弾かれた俺は階段から転げ落ち、首の骨が折れた。

 

 

――――

 

 

 …………最早何も言うまい。

 無言で立ち上がった俺は階段を登り、転がって来た鉄球を何事もなかったかのように回避した。

 俺は死んでない。

 間抜けなあんな間抜けな死に方なんてしていないのだ。

 

 牢屋の中に入ると、そこには瀕死となったアストラの騎士――オスカーがいた。

 

「……おお、君は……亡者じゃあないんだな……よかった」

 

 彼は何故こんな場所で死にかけてるのか分からないが、様々な推測がネットで立てられる中、大体は牢屋に落ちたことが原因だとされている。

 

「私が見たとき……君は動かないから死んでいるのかと思ったけど……鍵を投げ入れたのは正解だったようだな……」

 

 やはり牢屋の鍵があったのは彼のお陰らしい。

 

「……私は、もうダメだ……もうすぐ死ぬ。死ねばもう、正気を保てない……」

「いや、お前エスト瓶持ってるだろ。それ飲めよ」

「……だから、君に、願いがある……同じ不死の身だ……観念して、聞いてくれよ……」

「話聞けよ」

 

 無視されてるのかと思ったが、彼は小さく笑うだけだった。

 ふざけてんのかお前。

 

「……恥ずかしい話だが、願いは、私の使命だ……それを、見ず知らずの君に、託したい……私の家に、伝わっている……不死とは、使命の印である……その印、あらわれし者は……不死院から……古い王たちの地にいたり……目覚ましの鐘を鳴らし、不死の使命を知れ……」

 

 何とか言葉を紡いだ彼は、そこで安心するかのように一息吐く。

 しかし話してもらって何だが、鐘を鳴らしてほしいことしか分からなかった。

 一応ゲームでの知識があるのでその鐘を鳴らすことにどんな意味があるのかは知ってるが、初見だったら頭にはてなを浮かべていた自信がある。

 というか了承してないのに何で語るんだ。

 

「……よく、聞いてくれた……これで、希望をもって、死ねるよ……ああ、それと……これも、君に託しておこう……不死者の宝、エスト瓶だ……それと、これも……」

 

 エスト瓶、不死院廊の鍵、巡礼者の大鍵の3つを渡される。

 因みに貰ったエスト瓶はきっちり5回分の量があった。

 

「……じゃあ、もう、さよならだ……死んだ後、君を襲いたくはない……いってくれ……ありがとうな」

「ありがとうなじゃねえよ。エスト瓶飲めよ」

 

 仕方ないのでエスト瓶を飲ませるためにオスカーへと俺は触れる。

 次の瞬間、ゲームでのNPC死亡時のような音が聞こえた気がした。

 

「なぜ……」

 

 オスカーは死んでしまった。

 

 何故はこっちのセリフなんだが。

 部屋出るまでお前死なないんじゃなかったのかよ。

 俺が殺した扱いになってないよな?

 たまたまタイミングよく力尽きただけだよな?

 勘弁してくれよ……。

 

 この世界はどう合っても俺の都合の悪いことだけは現実的らしい。

 彼を復活させて味方にする、なんてルートを辿りたかったのに。

 一応、ダークソウルでは没案としてオスカーがライバル的立ち位置になる、みたいな話も聞いたことあった。

 それでもいいから生きていて欲しかったのだが……。

 今のはシステム的な何かが働いたようにしか感じなかった。

 

「考えても仕方ないか……」

 

 何にせよ、彼は死んでしまったのだ。

 もう復活させる手立てはない。

 先に進むしか道はないのだ。

 

 牢屋の外に出て階段を上がる。

 短剣を持った亡者が襲い掛かってきたが、俺は盾を構えたままタックルして弾き飛ばす。

 起き上がる前に剣を突き立て、息の根を止めた。

 扉を開けて先に進むと、不死院の高台部分と思われる場所に出る。

 その先には亡者が2体と奥から弓を撃つ亡者がいた。

 俺は手前の2体をおびき寄せ、弓の届かない位置へと誘導する。

 先程と同様、盾を構えてタックルすると2体とも転げた。

 その隙に俺は剣を振り下ろし2体とも倒す。

 

 残りの弓亡者だが、また盾で防ぎそこねる自信があった。

 なので、今回は倒した亡者の死体を盾にして接近することにした。

 流石の理不尽ホーミングも死体の盾を避けることは出来なかったらしい。

 全ての矢が亡者の死体に突き刺さる。

 そして、接近に成功した俺は矢を番えるタイミングを見図り飛び掛かった。

 そのまま剣で袈裟懸けのように斬り付けるが一撃では絶命しなかった。

 怯んでいるので続けて横斬りすることで、亡者は動かなくなった。

 

 さて、残りは奥の部屋にいるであろう亡者兵士だけだ。

 パリィの練習台として有名な彼だが、ハッキリ言って出来る気がしない。

 ゲームなら飽きるほどやってきたパリィだが、現実となった状態では無理だろう。

 パリィしようとした力負けしてら逆に盾が弾かれても驚かないぞ。

 部屋に踏み込むと、待ち構えていた亡者騎士が駆け寄りながらの突きを放つ。

 ゲーム通りのパターンで来ると睨んでいた俺は、そのまま横に避けようとする。

 だが、亡者騎士は横に動く俺の動きに合わせて剣がホーミングする。

 ローリングは出来ないので回避できない。

 

「ぴぎゃ」

 

 亡者兵士の剣は、俺の首を穿った。

 

 

――――

 

 

 納得いかない。

 俺だけ物理法則に縛られてるのに、敵は物理法則に縛られてない。

 弓矢といい、何故こんなにも追尾性能が高いのだろうか。

 横とか斜めとかに剣を振ってたのならまだしも、横に避けようとしてる人間に突きを当てれるとか結構異常だぞ。

 

 再び階段を上がり、盾を使いながら亡者を倒す。

 2体同時の亡者も同じように倒し、俺は奥へと駆ける。

 弓が頭に刺さりいつの間にか篝火で体育座りをしていた。

 そんな馬鹿な。

 また亡者に殺されるなんて……。

 弓が鬼門すぎる。

 

 取りあえず同じように上にあがり、死体を盾に弓亡者まで倒す。

 奥へと進めば亡者兵士が突っ込んで来た。

 前々回の死から避けることは出来ないと考え、盾を構えて置く。

 突っ込んで来た勢いのまま突きを放って来たが盾で防げる軌道だ。

 俺は盾で受け止め、そのまま体重差に負けて盾を弾かれた。

 

「ぴぎゃ」

 

 俺は袈裟懸けに身体を斬られた。

 

 

――――

 

 

 悲報、俺の頑強が弱すぎる件について。

 一撃で盾崩しされるとかどうすればいいんだよ。

 それも強攻撃とかじゃなくて、普通の攻撃だぞ。

 ……いや、もしかしたら俺の盾の構え方が悪いのか?

 よくよく考えなくても、俺は今まで暴力とは無縁の生活を送っていた。

 フィルター精神のお陰で亡者と殺し合いが出来ていたが、俺は戦いの素人だ。

 少し亡者で練習をしてみても良いかもしれない。

 

 ということで階段上にいる亡者(短剣持ち)を相手に盾の練習を行う。

 分かったことは、俺の盾の扱いが下手くそだってことだ。

 こちらから体重を掛けた時はともかく、相手から体重の乗った攻撃が来ると俺はよろめいてしまう。

 腕だけで受け止めていたことが原因だ。

 腰を使ってちゃんと構えることで亡者の攻撃はしっかり受け止められるようになった。

 また、盾を斜めにズラすことで攻撃を受け流すことも出来た。

 途中、パリィの練習もすべきだろうかと考えてやったのだが、失敗して刺殺されてしまったのはご愛嬌だろう。

 何度か繰り返し、盾受けのコツを掴んだ俺は再び亡者兵士に挑む。

 

 部屋の中に入れば、突っ込みながら体重を乗せた突きが放たれる。

 俺は盾を斜めに受け止めることで逸らすことに成功する。

 俺はそのまま剣を斜めに振り下ろしたが、亡者兵士は鎧を着込んでいるので振り抜くことが出来ない。

 亡者兵士が俺に剣を振り下ろそうとする。

 

「うおおぉぉぉぉぉ!!」

 

 俺は叫びながらタックルし、もつれながら倒れていく。

 馬乗りになり、剣を首に突き立てた。

 ソウルを吸収した感覚がした。

 どうにか倒せたらしい。

 タックル最強説が出てきたが、相手が人型であり体重差の少なそうな相手にしか通用しないだろう。

 それに、複数体を相手取る時には使えない戦法だ。

 盾受け以外にも、剣を振るう練習が必要そうだ。

 

 息を切らせながら立ち上がった俺は、奥にある扉に目を向ける。

 確かこの先は進めなかった筈だが、ゲームとは色々と違う変更点があった。

 念の為調べる価値はあるだろう。

 鍵が掛かっているが、オスカーから貰った不死院廊の鍵を使うと開くことが出来た。

 まじかよ。

 

 奥へと進むと階段の途中に底なしの木箱と堕落した聖職者のソウルが落ちていた。

 どうやって木箱を運べばいいんだよと思ったが、なんか光の粒子になって俺に吸い込まれた。

 ついでに堕落した聖職者のソウルも。

 まさかと思いブロードソードと塔のカイトシールドも念じると、光の粒子になり吸い込まれる。

 これがソウルの業なのか……。

 再び念じると手にブロードソードが現れた。

 武器も自由に取り出せるとか戦略の幅が広がるな、と思ったが念じても俺が何を持ってるのか分からないという難点が見つかった。

 もしかして分からないままだと一生取り出せない、なんてことはないだろうか……いや、ありえそうだ。

 下手に物を吸い込みすぎても把握出来なくなるようなので、底なしの木箱を活用するしかなかった。

 

 奥へと進んだものの、行き止まりだったので来た道を戻る。

 亡者が3体いた通路の側面に白い霧があったので、晴らしておく。

 ここはゲームだと不死院のデーモンを上から落下攻撃することで致命の一撃を与えられるのだが、既に倒されてるため何もいない。

 上から覗くと、崩れ落ちた地面はそのままだ。

 地下にはぐれデーモンが見える。

 まあ、それはどうでもいいだろう。

 現段階で倒せるとは思わないので、今はスルーしておく。

 それよりも、逃げる際に高所から飛び降りる必要もあるので、練習として俺は飛び降りた。

 

「ぐ、ああ!」

 

 盾と剣によって上手く体勢を整えた着地が出来なかった。

 そのお陰で思いっきりグネってしまう。

 いや、足が変な方向に折れ曲がっている。

 間抜けすぎん?

 そしてエスト瓶を飲むと、折れ曲がった足は元通りになった。

 ゲームの法則と現実的な物理法則が入れ混じり過ぎて奇妙な光景にしか見えない。

 どうせならゲームの法則だけで統一して欲しいものだ。

 

 立ち上がった俺は、奥の扉を巡礼者の大鍵で開ける。

 奥へと進めば崖しかないものの、この先に進むことで大カラスが火継ぎの祭祀場に運んでくれるのだ。

 余談だが、火継ぎの祭祀場(さいじじょう)を火継ぎの祭祀場(さいえんじょう)と読んでいたアホは俺だけではないと信じたい。

 

 そうして、俺は大カラスに運ばれることによって北の不死院からの脱出を果たした。




タグにもあるように、ダークソウルDoAの設定が入れ混じってます。
主人公はステータス見れませんが、ステータスはあります。

素性『持たざるもの』
贈り物なし。
Lv1
体力1
記憶8
持久1
筋力1
技量1
耐久1
理力0
信仰0

装備
ブロードソード
塔のカイトシールド
裸(褌のみ)

こんなの無理だよぉ(絶望)

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