とある海軍の火山活動 作:ネシエル
アパートの屋上
屋上に立つ御坂心陽は、スマホを耳に当てながら通話を続けていた。
「そうか、ご苦労だ。ナンバー1。引き続きレベルアッパーについて情報収集をせよ」
彼女の声は静かだったが、その中には確固たる意志が感じられた。
スマホの向こう側から、低い声が応じる。
「はい。では、心陽様はどうなさいますか?」
「私は引き続き、上条当麻の監視だ」
心陽は屋上から視線を下ろし、アパートの窓を覗き込む。そこには、目的の人物がいた。
電話の相手が静かに尋ねる。
「上条当麻、本当に見張る価値はありますか?」
「あるさ」
心陽は微かに口元を歪める。
「あの右腕は私の見聞色の覇気でも感知できない代物だ。監視してきたが、異能を打ち消す効果はどうやら本当のようだ」
「……わかりました」
ナンバー1は了承し、続けて報告する。
「そういえば、昨日の大規模停電は美琴様が引き起こしたことです」
「やはり、そうか。手のかかる妹だ」
心陽は小さくため息をつく。
「では、私のほうで注意をします」
「ああ、そうだね。あとで何を話したのか、教えろ。辻褄を合わせないといけないからな」
▲▲▲
道路沿い
上条当麻はのらりくらりと歩いていた。
その背後を、御坂心陽が慎重に尾行する。
『尾行に気づいていない……動きも身体能力も、凡人と大差ない』
「……不幸だ」
上条がぼやく。
『異常なまでの運の無さ、右腕の特異性は監視対象だが、身体能力と技の練度は低い。経歴も普通の少年だ……やはり、勘が外れたのか。
歳を取り過ぎた』
心陽は上条を観察しながら考える。
やがて、上条当麻は男子寮へと入った。
心陽は隣のビルの屋上へ移動し、それを見届ける。
『もう、これでいいだろう。右腕は確かに感じ取れないが、周囲の空気の流れで予知はできる。個室に入ったら、さっさと帰ろう』
そう考えた矢先、彼女は異変に気づいた。
「血の匂いか……」
▲▲▲
七回の廊下
「くそ、一体誰にやられたんだ」
上条当麻が、負傷したインデックスを抱えながら、怒りに震える。
「うん? 僕たち魔術師だけど?」
漆黒の修道服、赤い髪、右まぶたの下のバーコードのようなタトゥー。
ステイル=マグヌスが微笑を浮かべて立っていた。
「何者だ、お前」
上条が問う。
「おいおい、人の話を聞いていたのか」
ステイルは余裕の表情を崩さない。
「まあいい。早くそこを退け。回収をしたいけど」
「回収だと……?」
「それにしても随分と酷くやられたな」
ステイルはインデックスの状態を見て言う。
「神裂の斬撃でも『歩く教会』は防げるというのに……」
「!!」
上条が目を見開く。
「どうやら、その反応だと心当たりがありそうだね」
「そうかよ……」
「退かないのか。ならば、殺そう」
ステイルは口にくわえたタバコを投げ捨てると、炎を生み出した。
「ステイル=マグヌスと名乗りたいが、ここは『Fortis931』と名乗ろうか。君への敬意だ」
燃え盛る炎が、上条へと襲いかかる。
「!」
上条は反射的に右腕を繰り出した。
――
魔術も、超能力も、すべてを打ち消すその力は、襲いかかる炎すらも消し去る――はずだった。
「え?」
しかし、炎は消えない。
その時だった。
「随分とおかしい炎だな」
どこからともなく響いた声に、上条は驚いて振り向く。
「お、お前……ビリビリの姉じゃないか?」
そこに立っていたのは、御坂心陽だった。
彼女は手に炎を包ませ、まるでそれを吸収するように取り込んでいく。
「何者だ?」
ステイルが警戒を強める。
「通りすがりの海軍大将とでも言うか」
「……何、わけのわからないことを」
「上条当麻」
心陽が上条に向かって言う。
「そのまま私の後ろにいろ。他にこやつの仲間がいるかもしれない。私から離れるな」
「よそ見とは随分と余裕だな」
ステイルが走り出し、再び炎を操る。
「灰は灰に、塵は塵に」
両手に灼熱の炎の剣を生み出し、振るう。
「邪魔だ」
しかし、その炎の剣を、心陽は片手で掴み取った。
「なにっ……!?」
魔術で生み出された炎は、通常ならば所有者以外を焼き尽くす。
だが、心陽の手は燃えなかった。
「場所を変えるぞ」
心陽はステイルを片手で持ち上げ、ベランダへと投げ飛ばす。
「うおおおお!」
空中に放り出されたステイルを追って、心陽が跳ぶ。
「ここだ」
彼女の蹴りが炸裂し、ステイルは地上一階へと叩きつけられた。
地面に叩きつけられたステイルは、口から血を吐いた。
「ぐふぁ……!」
激痛が全身を襲う。地面にはひび割れが広がり、
衝撃の大きさを物語っていた。
それでも、彼は必死に顔を上げる。
「!!」
視線の先、空から御坂心陽が真っ直ぐに落ちてくる。
このままでは押し潰される。ステイルは咄嗟に、骨折した箇所を魔術で強引に補強し、その場を転がるように離れた。
「化け物か……」
思わず漏らした言葉に嘘はない。
心陽が降り立ったその場所は、つい先ほどまでステイルがいた位置。
ひび割れていたアスファルトはさらに深くえぐられ、まるで隕石でも落ちたかのような小さなクレーターが生じていた。
「お前……聖人か?」
ステイルの問いに、心陽は鼻で笑う。
「聖人? 残念だが、そこまで徳を積んだ覚えはない」
「じゃあ、能力者か……あいつと同じ肉体系の……はぁ、はぁ……」
ステイルの息が荒い。
それでも、彼は必死に分析を続ける。
『勝機はある……凄まじい身体能力だが、神裂ほどじゃない。当たれば勝てる。どんなに肉体が強かろうが、こいつには勝てない』
震える指でルーンを展開し、口を開いた。
「来い、『
その宣言とともに、灼熱の巨神が召喚される。
摂氏3000度にまで達する炎が、巨大な十字架を抱えた炎の巨人を形作る。
ステイルの切り札にして、確実に相手を焼き尽くす最強の魔術。
巨人は咆哮する。
「GUOOOOOOO!!」
これを攻略するなど、本来なら不可能。
たとえ攻撃しても、周囲に刻まれたルーンの結界がある限り、何度でも再生する。
さらに、自動追尾機能を持つため、相手が逃げても逃げても追い詰める。
壁をも、地面をも、何もかもを溶かしながら。
勝利を確信しかけたその時――
御坂心陽が、静かに右腕を掲げる。
「――大噴火」
その技はシンプルな正拳突き。
ただし、その腕はマグマと化し、巨人すらも飲み込む灼熱を宿していた。
放たれた拳は巨大化し、まるで噴火する火山のごとき圧力で炎の巨神に叩き込まれる。
「GIGAAAAAAAAA!!」
巨人が悲鳴をあげる。
その身体は逆に燃え上がり、やがて溶解して消えていく。
「ば、バカな……
信じられない光景を前に、ステイルは愕然とした。
術式そのものが、心陽の圧倒的な熱量に耐えきれず崩壊したのだ。
それが何よりの証拠に、周囲には一切の延焼もなく、ただ魔術だけが焼き尽くされていた。
本来なら、時間が経過すればマグマは火山弾となり、周囲に無差別に降り注ぐ。
だが、心陽はそれすらも制御し、敵だけを確実に狙い撃った。
――魔女狩りの王は、使命を果たせなかった。
次回投稿3/12
リメイクに関するご報告です。
多くの方がリメイクを望んでくださいましたが、一部の方からは現行のままが良いとのご意見もいただきました。私自身も大変悩みましたが、最終的にリメイクは行わず、プロットを活かしたまま全ての話を改めて書き直すという決断をいたしました。
これに伴い、描写の追加や新たなエピソードの加筆を予定しております。今後もより良い物語をお届けできるよう努めてまいりますので、ご理解のほどよろしくお願いいたします。
キャラとして心陽ちゃんは広島弁はやめました。
やりずらいです。
儂から私になりました
ID:JCxf7ABcさん ID:S7uP2Eqgさん ID:yYZLV78oさん 筏と筏さん
菊子さん モンスタブーさん
感想ありがとうございます。
リメイクを希望しますか。皆さんの意見をお願いします(正直に言って書き直したいと思っております)
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希望する
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希望しない