本にする妖怪   作:覚め

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ここは幻想郷。常識が通用しないらしいですよ。
でも常識とモラルとマナーは別物ですから、気をつけてくださいね。


第1話

 

人里

 

「しっかしお前は本当に変な名前だな」

 

「そう思って名前だけでも変えようとしたんですけどね。親からもらった名前だからって却下されましたよ」

 

「外の世界のカタカナ文字を漢字にして干酢都…無理矢理がすぎるな」

 

「本当ですよ。で、慧音先生は何故ここに?今は寺子屋の時間では?」

 

「今日は祝日だぞ?」

 

「え?」

 

…とてもそうとは思えない道にいる人の数はなんだろうか。今日は異変でも起きているのだろうか。さて、とてもとてもよくわからないことになったわけだが、どうしたものか。祝日と聞くと、どうも良くない考えが頭をよぎる。祝う日とか言われるととても気分を害される。と言うか、俺は妖怪なのだ。そこらへんの低級に負けるほど弱くない。はずだ。多分。ほんと多分。こう言うととても弱く見えてしまうな。

 

「祝日かぁ」

 

「今日は久しぶりに私と呑むか?」

 

「んー、今日は祝日だし、呑もうかな」

 

「よし、私が奢ってやろう!!」

 

「先生の場合呑むじゃ済まんだろうに」

 

「お、言ったな?」

 

おっ言ったな?と言う言葉を聞いてああ面倒だと思った。俺は妖怪だ。そう、妖怪だ。人里にいることが許されてる結構仲良い人間だ。ただ、ただ。そんな俺でも酒が絡めば人と付き合うのは嫌になる。俺はそんなに酒が飲めないと言うのに、なんで俺が呑むんだ。ずっとたこ焼き食ってやろうか。

 

「…じゃ、焼酎」

 

「たこ焼き」

 

「…酒呑まないのか」

 

「べつにそんな意味はないがな。どうせ呑むし」

 

「やっぱりお前は良いな。寺子屋を卒業してたまに酒を呑もうなんて言ってくる奴は居ないし、会っても世間話。寂しいんだよ」

 

「数年前…いや数十年前?はみんな飲んでたのにね」

 

「そうなんだよ…お前の能力でそう言うの出来ないか?」

 

「お前俺をなんだと思ってんの?」

 

「…酒仲間」

 

「おっちゃん、お好み焼きも追加できる?」

 

「なあ、自棄喰いか?」

 

「寂しさを埋めるために俺は存在してんじゃねーよ。テメェの財布全部吸ってやろうか」

 

「…酷い」

 

と言うよりも、俺の能力はそんな大層なものではない。確かに妖怪の中では格が上の方だし、力もあるし、強さもある。能力もある。能力は『記憶を本にする程度の能力』だ。そいつの本を小説みたいにできるし、絵本にもできる。漫画にもできる。その際記憶を消すことは出来ない。が、少しだけ書き足せる。他人の記憶なんて見るもんじゃないけどな。

 

「私の記憶見ても良いから、『元生徒と呑めなくても寂しくない』って書き足してくれ」

 

「あんた等価交換も何もないじゃないか。お、たこ焼ききた」

 

先生に俺の能力の不便さを語りながらたこ焼きとお好み焼きを食す。人里に入りたかったとき、こいつの記憶を本にして俺が人里に居ても問題はないって書き足したのは内緒だが。

 

「この能力は使ってる間にも相手の意識はあるからな。上手くやらなきゃすぐにバレる」

 

「バレたことがあるのか?」

 

「そうだな。八雲紫にやったら読んでる途中で本が閉じたよ。ありゃバケモンだ」

 

「意識が強ければ本は閉じるのか」

 

「まあな。先生の場合そんなこともなさそうだけど」

 

「…いや、まあ実際そうだろうな。」

 

「というか焼酎をラッパ飲みして大丈夫なのか?」

 

「何、大丈夫だ。とりあえずトイレへ…」バタンッ

 

「ダメじゃねーか…金は払ってやるか。おっちゃん、お勘定」

 

博麗神社

 

…くそっ。値段が13万を超えていた。大出費だ。博麗神社にお賽銭を入れようと思っていたが、これじゃ無理だな。恨むなよ巫女。恨むんだったら人里の先生を恨むんだな。俺も恨んでいるからおあいこだろ。

 

「上がるのきついな」

 

「あら、お賽銭はあっちよ」

 

「…寺子屋の先生を恨め」

 

「は?」

 

「さて、今日は誰の記憶を読もうかね」

 

少なくとも博麗の巫女の本だけは読まない。こいつの本は何故か毎日毎日『今日はこれで凌いだ』とか『今日からお米を自分で採ることにした』の次に『お米を植える田んぼがなかった。断念』とか書かれてるから読んでて中身がない。これもある意味褒め言葉に入るのだろうか。それは知らんが。とにかく読む気もないのがこいつの本だ。

 

「…慧音と呑んだの?」

 

「おう。呑んだって言うか、あいつだけだな。焼酎ラッパ飲みしてぶっ倒れたから奢った。13万円だってよ。」

 

「…それでよく死なないわね。運がいいのかしら」

 

「身体が丈夫なんだろ。少なくとも俺はもうあいつと呑まん」

 

「そう。まあ異変でないなら私とは無関係ね。不機嫌異変とかこじつけで言われたら動くしかないから」

 

「先生は卒業した生徒と呑むことがなくなって寂しい寂しいって言ってたぞ」

 

「…あいつそんな願望あったの?」

 

「先生はずっとそれを楽しみに育ててたらしい」

 

「邪心ありすぎじゃない?」

 

「仕方ねえだろお前が生まれる前までは大体皆んな卒業して数年で酒飲んでたんだからよ。今や永遠亭っつー病院が出来て、酒は○○歳からって、決められちまったし」

 

「へー。そんなことがあったの…」

 

「まあみんな勿論守らなかったんだがな」

 

「えぇ?」

 

「酒の飲み過ぎで入院したやつがまた酒を飲んだ時に永林って医者が患者の口を塞いで酒飲ませないようにしたんだと」

 

「自業自得ね」

 

「その男はその歳じゃなかったから、泣きながら酒を飲むのはやめるって言ってな。その話が冬の山火事より早く広まったもんだから皆守ってんのさ」

 

「…よっぽど話が怖かったのね」

 

まあ、その男が俺なんだが。そう言うと博麗の巫女は手に持っていた湯呑みに入っている湯を躊躇なく俺にぶっかけ、蹴りを入れ、賽銭箱に俺の体を叩きつけた。うむ。判断が早い。と言うより、速すぎる。痛い、と言うより賽銭箱の謎の線?で背中がメチャクチャだ。引っ掻き傷よりも酷い傷ができた気がする。もう酷いったらありゃしない。

 

「…健康には気をつけることね」

 

「それどう言う意味で言ってんだお前…」

 

 




干酢都さんの能力は決して便利ではありません。バレたら秘め事全部バレてるのを知られると同義なので、確実に殺されます。
相手が寝ている時にやればまだ生きる可能性はあるでしょう。
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