スキマ内部
「さてさて、ヘカーティアが行きましたが…その後を追うのは行けないことでしょーかっ?」
「八雲紫…私の友人を部下にしたそうね」
「ええ。まさか、貴女ともあろうお方が、友人を私物化するつもり?」
「そのまさかよ」ゴリュッ
「!?」
「…なんだかやばいことになってんな…ヘカーティア、とりあえず本探せ本」
本さえあれば割となんとかなるから。とか言ってさささと探しに行くヘカーティア。俺の本の居場所は分からないが、誰か知ってそうな奴に聞けばわかるだろう。さて、誰かいないかな〜?ついでに本もあるかな〜?ないな〜?
「そうね。良い?次やったらこんなのじゃ済まないわよ。最低でも2本は貰うから」
「…っ」
「本〜本〜…あ、藍ちゃん」
「あ、どうも」
「主人やられてるけど?」
「自業自得です。私も、助けられた命を捨てるつもりはありません」
「へ〜。じゃあ、俺の本ってどこにあるか分かる?」
「…紫様…が持ってると思いますが」
「紫」
「し、知らな」
「嘘つかないで。良い?」
「紫…正直に言ってくれるか?」
自分より格上の奴二人に迫られて、全く紫も嬉しそうだな。藍ちゃんは知らない、となれば橙ちゃんはもっと知らない、むしろ存在すら知らないだろう。紫…なるべく早く返してくれ。そしてヘカーティアに渡せ。お前よりは信じることができる。
「大嶽丸…こいつと一騎打ちしなさい!」
「俺か…部下だから従わなきゃ行けないってことね。足が勝手に動いちゃう」
「あら…貴方と一騎打ちなんて初めてね」
「待てよ、俺まだ死にたくねえんだけどな」
「今━」
「紫様…私も救われた命。救って下さったお方にはご恩を返さなければなりません…」
「藍!?」
「私が彼を相手するのなんて、指一本で終わるのよ?」
「横腹突かれて死にかけるとか、情けねえ…!」
「っ…これよ。私だってまぎゃっ」
「…初めっから渡せばよかったのよ。じゃ、これはどうやって消すのかしら?」
「俺の指でなぞると消えるぞ。ほれ」スッ
「あら本当」
「…あの、お聞きしてよろしいでしょうか?」
「?」
「何?まさか不満がある訳じゃないでしょうね?」
「いえ…なぜそこまで干酢都…いえ、大嶽丸さんに肩入れするのかが…」
「簡単ね!彼が弱くて、私のお気に入りだからよ!」
「意外と傷つくんだがなぁ」
「はぁ…そうですか」
それだけ言って藍ちゃんはどこかへ行った。顎が潰れ気絶しているご主人を置いて。俺の本をへカーティアに渡すと、ヘカーティアは『じゃあ、私は帰るわね。一緒に来てくれたって良いのよ?』と言い去った。勘弁してもらいたい。狂気の妖精とか一番嫌いだ。
「…俺も、人里に行くか」グワッ
人里
「おっす」
「…んぁ?」
「なんで俺の家で酒飲んでるんですか、先生」
「おお、お前か。弱体化したまま八雲紫と一緒にどこかへ行ったのでな。死んだのかと思ってこうして葬式を」
「嘘仰らないで」
「…そうだよ!自棄酒だよ!悪いか!?」
「いや、悪いとは一言も…」
「良いんだ!最近誰も飲んでくれない!妹紅も最近では変な奴とほっつき歩いて!」
「先生?」
「赤い色したオーバーオールつけた奴がどうやったらモテるって言うんだ!この!」
「先生!?」
「…私の酒を…」
「ちょ、来んなって、ここ俺の家なのになんで俺が追い詰められんの?」
「飲めぇ!!!」
「ふべゃぁつ!?」
「…帰る」
「ちょっと、酒が鼻に入って死ぬ…!」
「うっせ!死ね!ばーか!!!」
「…妹紅さん、どう思います?」
「どう思うって…あいつ、お前の前だとあんなか?」
「ええ。愚痴はいつもより多くて激しかったですけど」
「あ、愛されてるんだな…ハハ」
「ちょっと、どこ行くんですか。おい、待て妹紅」
「…私は飲まないぞ」
愛の逃避行とはよく言ったものだ。意味は知らんが、なんとなく口ずさむ。酒を飲む気はない。現実からの逃避行はしたくないのでな。妹紅を無理やり家へ引き摺り込み、酒を頭からぶっかける。そして、火をつける。いつもの妹紅だ。安心した。
「自分で火をつけるのと、つけられるのでは結構違いがあるんだが」
「じゃあ消火」プシュゥ
「…あのな、服だって燃えるんだ。私はどうやって帰れば良い?」
「確か…あった。ここに。慧音の服」
「なんであるんだよ…なんでサイズが合うんだよ…なんで…」
「…成長しろ、妹紅」
「そう言うことじゃねえよ!?」
「いや、胸の部分だけ合ってないとか言うのだとばかり」
「ざけんな!あるわ!」
「…慧音が小さいのかぁ」
「っ…!そんなことはどうでも良い!なんでここに慧音の服があるんだよ!」
「慧音だけじゃないぞ」
「え?」
「妹紅の服もこんなに」
「それよこせ!!」
「妹紅どころか輝夜姫の服も」
「うぇっ」
「八雲藍はまだちょっと揃えてないんだよな…あ、こっちは…」
「なんだ、その…赤と青の服は…永林か?」
「試行錯誤中だった。すまん」
はっきり言ってすまんかった。お許しください、永林先生。俺自身、これを売っているわけでも趣味で作っているわけでもない。永遠亭に行ったら何故かくれるのだ。一回もらったらその次、その次もと。断ろうとしたら『次はヘカーティアよ』と言われ続けて。
「…」
「なんだ、深い事情があるんだな。さて、私の服は…?なんかこれ小さくないか?」
「永林先生が因幡用にサイズ小さくしたんじゃないですかね」
「…つまり」
「?」
「私サイズの慧音服があったと言うことは、私サイズの因幡がいると?」
「…そう、なりますね」
その頃永遠亭では、輝夜の突然なる癇癪により、裁縫へと身を乗り出した永林がいたとか。いなかったとか。