本にする妖怪   作:覚め

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のんびりとした雰囲気が好きですけど、苦手です


第25話

人里

 

「おっはー」

 

「紫か?悪いな、今はまだ2時で眠いんだ。俺は寝る」

 

「…ヘカーティアよ、ヘカーティア。わかる?」

 

「ヘカーティアか…ん?」

 

ヘカーティア!?と思いっきり起き上がったら、俺の顔を覗き込んでたヘカーティアと俺の頭が鈍い音を頭の中で繰り広げるが為にぶつかる。また、寝床に伏せる。あんまりだ。少し痛い。自業自得と言われればそこまで。ヘカーティアは痛がる素振りもないが。

 

「私をあんな奴と見間違えるなんて、失礼しちゃうわよん」

 

「申し訳なく思いますよ神様」

 

「それで良いのよ」

 

「で、何すんだ?」

 

「でって…何も?友人の家を訪ねただけよ。ピースちゃんの所も訪ねたいんだけど、深夜の2時だからね」

 

「今の俺は一応人間だ。すまんが、遊ぶなら他を当たれ」

 

「そうねぇ…仙界にでも行って、貴方とたまに居る華扇って人にご挨拶しようかしら」

 

「どんなふうに?」

 

「貴方のお嫁さん」

 

「…香霖堂って店の店主に言っとけ。面白い反応が返ってくるぞ。あいつは」

 

「冗談よ。私がそんなことするわけないじゃない」

 

やりそうだから言ったんだが、伝わってないらしい。と言うより、最近は紅魔館に行っても門前払いが多くなった気がする。自分のやったことを振り返ったら当たり前ではあるんだが、それでもノーレッジさんとは仲が良い…方、だとは思う。なぜ拒絶されるのか。

 

「とにかく、今の時期ならどーせ紫も『眠れない〜』とか言って起きてるからそっちに」

 

「眠れないわね〜…」

 

「…噂話をすれば何とやら、か」

 

「そうねぇ。私の目の前に現れて来るなんて、良い度胸してるわ」

 

「何よ、前回のことはもう終わったことじゃない。彼がムカついてるならわかるけどね?」

 

「お前なんぞにムカつく暇があるならの話だがな紫さん」

 

「うぐっ」グサッ

 

「そうね、相手にするだけ意味がないわ。私と彼が暮らす愛の巣から」

 

「愛の巣?」

 

「心配するな。お前と同じだ」

 

「心外ね、私は貴方を思って追い出そうとしてるのに」

 

「二人だけの空間になってるわね…」

 

「心配するな。お前らの本を入れ替えて『入れ替わってる!?』とかにはしないから」

 

「え、嫌よ」

 

「私も」

 

「それなら尚更だな。帰れ」

 

「嫌よ」

 

「私も」

 

「…はぁ。この時間だと提灯しか点けれないんだが」

 

「それでもないよりはマシよ」

 

「スキマから電気を通したって」

 

「断る」

 

悪い話だ。断らせてもらう。俺だってまだ慧音先生に追い出されたくない。得体の知れない謎のカラクリだって言われたくない。もう少し、せめて後200年くらいは安心して人里を歩きたいのだ。つーか待て、電気って何だおい。外の世界のものか?

 

「ここは灯りがあるな。失礼するぞー」

 

「おい嘘だろ」

 

「侵入者?」

 

「私が退治してあげるわ」

 

「そう、行ってらっしゃい」

 

「待ってるわねー」

 

「うわ、何だお前!?ちょ、天子だよ!八雲紫、聞いてんのか!?」

 

「…おい、天人が来たぞ」

 

「空の上の人ね。八雲紫と面識があるみたいだし、任せておけば?」

 

「夜中に提灯点けると誰か来るんだよ。全く…テメーまさか妖怪じゃないだろうな?招き猫が憑依してるとかじゃ」

 

「それはないわよ」

 

「痛い痛い!悪かったわよ!侵入した私が悪かったって!」

 

「そう。じゃあ出て行きなさい」

 

「嫌よ」

 

「ふんっ!」ボギィッ

 

「がっぁあ!?」

 

「もうやめて…俺の胃が…」

 

「大丈夫!?私の体温で抑えられるかしら?」

 

「ごめん、嘘」

 

「あらそうなの?」

 

「チョークスリーパーは不味い!死ぬ!死ぬって!!」

 

「うるせえ!」バゴッ

 

「ごはぁっ!?」

 

「…さて、これでようやく三人に戻ったわね」

 

三人に戻った?あたかも最初からいるように振る舞う貴様は何なんだ。アレか?寄生虫か?パラサイトなのか?全て自分のものとして頂いていっちゃうのか!?許さんぞ。それはともかくヘカーティアはなぜ帰らん。一人消えるだけで嬉しいんだが。

 

「お前ら帰れよ」

 

「嫌よ」

 

「右に同じく」

 

「…ほいっと」

 

「あら、その本は」

 

「二人とも同一人物にしてやるよ」

 

「スキマ回収術」

 

「私のは持ってても良いわよん。そうしないと不公平だもの」

 

「…返す」

 

「え、なんで」

 

「とにかく、私は帰るつもりないから」

 

「…あら、もうそろそろ日が昇る頃ね。それじゃあ私はこの辺で。そろそろピースちゃんも起きて来る頃だし」

 

「おう、行ってら」

 

「私は寝かしつけない限り帰らないわよ」

 

「ほー。所で、これは何でしょう?」スッ

 

「…本ね。しかも私の…ん?」

 

「寝ちまえ八雲紫」

 

「そうね。その本に書かれたらおしまいねぇ」バタンッ

 

「さて、人里もそろそろ活性化するだろうから…返さねえとな」グワッ

 

「あ、紫さ…大嶽丸さんですか。失礼ですが、紫様は」

 

「寝てる。いつまでも居座るモンだからつい寝かした。ほれ、返すよ」

 

「あ、ありがとうございます」

 

「良いってことよ。んじゃまた会う日まで」

 

「わかりました」

 

…スキマって便利だなぁ。とか思ってると、何だかとても不思議な予感がする。家の前に人がいて、それが俺を呼ぶ気がする。腕を組み、髪が白く、歴史の教師をしてそうな、お隣の寺子屋を住処としている妖怪…慧音じゃん。慧音じゃねーか。

 

「出てこい干酢都ぉ!!」

 

「今すぐに!」

 

「何で日が昇る前あんなにうるさかったんだ!この大馬鹿者が!」ゴツンッ

 

「おぅ!?」ドカンッ

 

「全く!提灯を点けてるじゃ…死体!?」

 

「あ、天人忘れてた」




天人さん、扱いに困るんで多分二度と出てこないんじゃないですかね。
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