本にする妖怪   作:覚め

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小説とはいえ、終わりが来るのは怖いですよね。
怖い、怖い。
ああ、怖い。
怖いや。
怖いなぁ。


第29話

人里

 

「っ!!」

 

「お、起きたか」

 

「純狐さん…いや、お母さんか。悪夢見たよ…」

 

「どんな悪夢だ?お母さんに話してみなさい」

 

「…終わるんだよ…」

 

「何が?」

 

「わかんないけど、何かが終わるんだ。こう、パラパラと音を立てるんじゃなくて、急に、何事もなく、終わるんだ」

 

なんか、そんな夢だった。俺が見てる紫が、俺が見える先が無くなるように、感じて何だか怖かった。紫との別れを予知夢したのか?なら、俺は紫を結構大切に思っているのか?バカな、歴史上どこからでも生まれることの出来る俺が?

 

「何だかよくわからないが…お母さんに任せなさい。自分の子供の不安を取ってあげるのが親の役目だ」

 

「そう、かな…まあ良いや。ではお預けします」

 

「ふふっ。そうだ、それで良い。私の心音に合わせて、息をして。吸って、吐いて」

 

「すぅー…はぁー…」

 

「どうだ?これでも結構変わるだろう?安心したか?」

 

「ありがと…」

 

「人に見放されたりするのは怖いだろう。そんな夢を見たんだよきっと。」

 

だとしたらものすごい嫌だな。本当に。俺だって人に見放されるのは嫌だからな。死んでも戻ってくるのは本のせいだけど、見放されてもどうしようもないのは人のせいだからな。俺は悪くない。俺は終わりたくない。

 

「終わりたくない、か。それも良いだろう。始まりがあれば終わりも来る。始まりと終わりはセットだ。月の者は終わりを取ったがな」

 

「俺も、月の奴らみたいになれば良いのかなぁ」

 

「それはダメだ。そしたら、今まで以上に終わりが怖くなる。やめておきなさい」

 

「お母さんがそう言うんだったら、良いか…あ?」

 

「…お前、やっぱりそう言う趣味が」

 

「自分の子供の噂を取っ払うのが親の役目だ」スッ

 

「お母さん。やめて」

 

「む、そうか。感謝することだな」

 

「なんなんだお前の母親相手は…」

 

「一瞬で塵になるから気を付けてくださいね」

 

「退散」

 

「登場」

 

「…妹さん」

 

「依姫だ。どうやらお前単体はもう戦う気のない奴だと分かったので、停戦の挨拶に来た」

 

「純狐がお母さんになったからな。お母さんを止めれるようには頑張るさ」

 

「ふむ、お母さんか…え、お母さん?」

 

「どうしたの?またなにか…何の用だ?」

 

「い、いや!ここで会うとは、貴様本当に何者なんだ…?」

 

依姫さんには説明した。そうしたら依姫さんは『なんだ、そう言う関係か』と納得し、帰ろうとした。が、俺は引き止めた。お母さんはご飯だけを作ってどこかへ行ってしまった。これではつまらない。他人の飯は他人と食うことで面白いのだから。

 

「で、なんだ?呼び止めて。私は訓練で」

 

「終わりってどう思う?」

 

「…なんだ、いきなり。あの日のお前とは訳が違うな。偽物か?」

 

「本物。で、どう思うの?」

 

「…そうだな。我々にはもう無縁の物とでも言っておこうか」

 

「そんなに無縁の物ではないさ。お前とお姉さんの関係も終わりを告げる時がある。いきなり、何事もなく。それ以外には変化がない」

 

「ありえないな。私と姉様は」

 

「あり得ない、なんてことはこの世にはない。人間関係が顕著だ。お前がお姉さんの機嫌をすこぶる損ねたり、お姉さんがお前をいきなり突き放してしまったり。あり得る」

 

「あり得ないと言っているだろう。姉様は寛大な方だ。だが…」

 

「だが?」

 

「そんなことが以前あった。玉兎が1匹飛び出したんだ」

 

「それで?」

 

「それで…確か、ほかの玉兎は何も知らないと言うどころか存在を知らないと言い出した。根暗で関係の薄い、影も薄い玉兎かと思えば違う。本当に、元から無かったように消えるんだ」

 

「その玉兎は今どこにいるのやら、ということか?」

 

「ん、まあそう言うことだ。だが、それを終わりに含めるなら…」

 

確かにあるかもしれない、そう呟くと妹さんは帰ろうとしなくなった。終わりについて考えると、どうしても気が狂う。人間関係だとか、無縁だろうが死についてだとか。どうしても怖くなってしまう。依姫は俯いたまま考えている。

 

「…もしかしたら」

 

「したら?」

 

「帰ったら、お姉さんにあらぬ疑いをかけられ、突き放され、地上へ来てしまうかもしれない」

 

「姉様が?いや、ないとは思うが」

 

「可能性はゼロではない。もしかしたら、元から自分がいなかったかのように扱われるかもしれない」

 

「そんな、そんなことが」

 

「さっきの玉兎と同じだ。自分の周りでは何も変わっていない。しかし、確実に何かが変わってる。その玉兎も本当は死んだのかもしれない」

 

「そんなものは…そんな…」

 

「自分の柱が消えると、知能がある者は皆きつい思いをする。あまり深く考えない方がいい。俺も今怖くなってきたところだ」

 

「ならば何故話したのか…まあ、良い。私は帰る。すまないが、移動の能力があるだろう。それで送ってはくれないか」

 

「良いよ。ついでに付き添ってあげる。ほれ」スッ

 

と言うと、我先にと入っていった。俺が抱えて月への出口を開くと、こう言う感じかと言って驚いていた。出口にはお姉さんがいた。お姉さんに愛されているんだなぁと思っていたが、どうやら依姫はそんなことよりも気になる事があるらしい。

 

「別にもう少し地上に居ても良かったのよ?」

 

「え…」

 

「ちょっと、大丈夫?」

 

「でも、帰ってきたのなら仕方ないわね。おか」

 

「いえ、もう少し地上に留まることを報告しに来ましたので」

 

「そうなの?まあ別に構わないけど…」

 

とか言って帰ってきた。依姫ちゃん、もう何してるのさ。せっかく帰ってきたのに。ちょっと、何泣いてるの?まさか、さっきの話の雰囲気に釣られて、あの言葉が拒絶の言葉に聞こえたとかないよね?ね?

 

「…怖いな、唐突に終わるのは」

 

「依姫ちゃん?どうするの、これから」

 

「その、良ければなんだが…」

 

「ウチで暮らすの?」

 

「ダメだろうか?」

 

「ダメではないけど…まあ、帰る時は何も言わずにってことはないようにしてね?」

 

「分かっていますよ」




てれれてっててー
依姫が仲間に加わった▼
と言うわけで次回から依姫様入りまーす!
え?何?依姫様はこんな人じゃない?
…そんなふうになるのがこの作品での依姫さんです
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