月の都
「帰りたいです」
「帰さないぞ」
「なんでですか」
「なんでだと思う?」
「…なんででしょう?」
「夫婦だからだ」
「何…やってるの?」
「IQを極限まで落とした会話」
「楽しい?」
「いや、全然」
はっきり言ってクソほどつまらん。心躍ることが起きないだろうか。そして帰れないだろうか?…そうだ、俺が死んだらヘカーティアのところで蘇るんじゃないか?そうだ、それがいい。よし、死のう!…どうやって死のうか。
「どうやってかぁ」
「今急に話が変わったな」
「…そうだ!」
月面
「見てろよ二人とも」
「ああ。」
「何やるのかしら…?」
「自爆!」ドガァンッ
「…これは一本取られたわね」
「お姉様、どうしましょう?」
「まあ、良いんじゃない?こっちが訪ねれば良いだけだし」
「…そう、ですか」
地上
「ただいま!」スッ
「グズっ…え?」
「紫、なんで泣いてんの?」
「なーんだ生きてたの!?それならそうと言ってくれれば」
「藍ちゃんは泣いてないのか」ジッ
「…いえ、そんなことは」
本当か?お?と目の下をジッと見る。じーっと見てると、ほんのり赤いのがわかる。ヨシ、泣いてくれてたな!というわけで嬉しくて嬉しくて寝ちゃう。あれ、そういえばクラウンピースは?あいつはヘカーティアから聞いてそうだからどっか言ってんのかな。
「つーわけで戻ってきたのよ」
「変な人たちね、月人って」
「一度拳を交えたでしょう、紫様。まさかもう…」
「何言いたいのかなんとなくわかるからやめときなさい。死ぬわよ?」
「それは失礼…」
「あ〜…誰か純粋に俺のことを悲しんでくれそうなのは…な〜…慧音?」
「私は?」
「お前面白半分で泣いてただろ」
「分かってるなら何か言ってくださる?意地悪」
「俺は紫より藍が好き」
「なんて人!藍と私で比べて、若い方を取るだなんて!やっぱり若い方が良いのね!」
「重力の差で上手く歩けるか心配ではございますが…藍ちゃん、肩貸してくんね?」
「ちょ、なんで私じゃないの!?」
「私でよければ…どうぞ、掴まってください」
「さんくす〜」ガシッ
「…ちょ、ちょっと〜!?」
寺子屋
「あーい…それでは今日は終了だ。気を緩まずになー」
「先生の方が緩んでる〜!」
「違うぞ。これは心配で心配で仕方がない状態だ」
お、慧音先生は純粋に心配してくれてるみたいね。寺子屋の屋根裏にいくつか仕組んだ隠し通路、乱世の時代に流行った忍者を意識して作ったのはいい方向に行ったようでよかった。それではチラリ…慧音先生、なんか痩せた?バカを言え、慧音先生はほら、痩せたんじゃない。元からあんな感じだったんだ。
「オラ、月に行って身長が10cm伸びた干酢都だぞ」
「…干酢都か!?」
「だからそう言っているだろう」
「じゃあ早速呑もう!」
「先生、気緩めすぎ」
「私は良いんだ!」
「…りふじん!」
「うるさい、これは心配した私の特権でだな」
「とりあえず永林に文句言いに行くから連れて行ってくれ」
「空飛べば良いだろうに」
「月に行ってたから足がおぼつかない、空を飛ぶにも浮かぶ力加減が今分かりづらい。行けると思うか?」
「そういうことか。じゃあ生徒諸君、さらば!」
「それ俺のセリフだろオイ押すな」
永遠亭
「あら、帰ってこれたのね」
「望まない結婚だったので、慰謝料代わりに俺の感覚元に戻してくれや」
「作りかけならあるわよ」
「どんな経緯だよそれ」
「そうね…こっちにきた時、重力の差に慣れる薬を作ってたんだけど…作ってる間に慣れちゃったわ」
「嘘だろ先生」
「あと、あの会見は面白かったから次もまた呼んでくれる?」
「呼ばねえよ」
次はねえよ、そう言いたかったが、豊姫の能力と言っていたスキマの移動先を無理やり変える奴がある限り言い切れない。うーんやっぱあいつクソだわ。紫と同じタイプだな。藍がしっかりしてるから紫がゆるゆる。あまあま。ふわふわ。藍ちゃんの尻尾触ってねえ!
「というわけで今の状態で完成させたものがこれね」
「おー!これだこれ」
「感覚の差を埋めるものだから、個人差があるけど」
「良いんだよこれで」ゴクッ
翌日 人里
「くそが」
「言われてただろう。個人差があると」
「あいつら月に居たからなぁ。そりゃ元々地上にいて慣れる途中だった俺には体が六倍くらいに感じたら寝たきりだわ」
「そんなに筋肉がないのか?衰えたというべきか」
「阿保言え!」
「月では足の筋肉を使わなかったんだろう。それも含めて衰えたと言っただけだが?」
「ああ、そういう…黒駒ちゃーん」
「…?」
「ああ、お風呂だったのね。ごめんなさい」
「ちょっと待て!?今のなんだ、今の!?」
「稲妻弾ける男道よ」
「格好良く決めるんじゃない。潰すぞ」
「ごめんなさい」
「全く…なんでこうも破廉恥なのか」
「助平と言いなさい。せめて。あれが破廉恥で済まされたら空飛んでるスカートのアレらはどうなるんだ」
「…それはあのろくろ首妖怪にも言っているのか?」
「まあな」
そう言ったらゲンコツが俺の頬を叩いた。なんでだろうか。やはり説教の化身か、地獄の使者か。突然説教を止め暴力に走るのは仙人と一緒だ。あれは…アレらが悪いだけだから仕方ないとして。今俺は動こうにも空を飛ぼうにも六倍の力で動くつもりでいないとだしなぁ。めんどい。
「あーもうめんどい!」
「妹紅」
「なんだ?」
「お前の肝食わせてやれ」
「どうした慧音、想い人でも死んだか?」
「そこは頭いかれたかを聞くところだよ」
自白します。
月の奴らの技術が高すぎてどうやってもいつでも強制送還可能になってしまいました。