ぞっとするような、すべてを見られているかのような暗い目、両親を失ったばかりにしてはあまりにも落ち着きすぎている性格、貼り付けたような笑顔、時折出てくる面白くないギャグ
それらの要因から
彼の両親は近所からもよく慕われているいい両親だった
生まれた時から感情…というよりも反応が淡白な息子を物ともせず、愛情を与え続けた
そんな彼の両親は、彼の個性が何なのか病院へ検査に行った帰り道、凶悪ヴィランによって殺された
運良く彼だけはその惨劇から免れた…
だが問題はそのあと
彼のもとにヒーローが駆けつけた頃には、すでにヴィランの姿はなかった
あるのは大量の塵とそこに刺さった木の棒
彼の決意はすでに満たされていた
彼が10歳になった頃、彼は様々なトレーニングをするようになっていた
本格的にヒーローを目指し始めたのだ
周りの大人はやっと子供らしい感性を持ち始めたと安堵したが、その実態は違う
彼が目指したのは誰もが憧れる、オールマイトのような輝かしいヒーローではなく、自身の両親が殺されてから10分弱遅れて登場したというのに、やたらと高そうな時計と、きれいな奥さんを持ったヒーロー象
つまりは、ろくに働かずとも大金が手に入る楽な仕事としてのヒーローだった
もともと彼の夢は公務員、彼には己の安寧さえあればよかったのだ
ヒーローというものは安定性とはかけ離れてはいるが、こと金に関しては、そんなに安定していないというわけでもないというのを彼が最初に見たヒーローから学んだ
そこからは早かった、ストイックさを追求し、一切の無駄を省いたトレーニング、毎週週末に行う、特別訓練
彼はどんどん強くなり、目標へと近づいていった
誰にでも笑顔を振りまき、誰かを笑顔にするためのヒーロー、という人気の出そうな人柄
誰と戦っても勝ち、必ずヴィランを捉える腕っぷし、という子供から好かれそうな見栄え
彼の人生は、嘘と建前の連続だった
彼の感情は、めったに表には出て来ない
そんなことを15年という月日、貫き通していた
…ただし、別に本人はこのことについては特にどうとも思ってはいないが
きっと、彼はこれから先もずっと、自身の本音を隠し続けて生きて行くのだろう
自分が本当にやりたいことをやれるようにと
*起点は、まだ、今ではない
+++++++++++++++++++++
荒れた空模様、梅雨からまだ抜けきれていない7月中旬
中学3年生にとって、その夏は青春ではなく、おそらくは勉強漬けの灰色の記憶だろう
もちろんそれは2回目の人生においても変わりはない
何なら前の状況よりもかなりきつい状況になっていると言える
それは、何故か…
受けようと思っている学校の倍率がとんでもねぇことになってるからだよ!
おかしいだろ!300倍って!!どうなってんだ!!!
…ふぅ、ちょっと叫んだら落ち着いたな
偏差値もだいぶ高くなっている
どうやら俺はまた勉強で青春を棒に振らなければならないらしい…
それに俺の受けようと思っている高校…雄英高校の試験にはバカムズイ筆記の他に、実技テストがある
それのためには個性の練度とLoveをさらに上げることが必要になってくるだろう…
そうなってくると結構時間が無いぞ…!?
まぁ、ここでまごついてても仕方がないし、とりあえず今は勉強の方に集中しよう
それにここ数年でのLoveの伸び率はかなり調子が良いと言える
5→15
と、結構上がっているのだ
しかも自分の個性だからはっきりわかるが、俺はUndertaleの原作主人公らとは違い限界のLoveがない
つまりは、殺生をすれば殺生をするほど、俺は強くなることができるのだろう
これはすこし、楽しみだ
*まだあなたは新しい世界と出会っていないようだ…あなたは決意で満たされた