犯罪神マジェコンヌが引き起こした動乱から数週間後。
「結局行っちゃうの?」
「言っただろう? オレはまだ自分の気持ちとこの世界に折り合いが付いていない。罪の償い方も、ね」
「償ったようなもんじゃん。帰ってきなよ」
「君にそう言ってもらえるのは嬉しいが、オレは大きい方のねぷっちたちと旅をするのも気に入ってるんだよ」
「そっか。じゃあまたね! 大きいわたしも!」
「うん、また遊びにくるね! 小さいわたし!」
暗黒星くろめと次元の旅人ネプテューヌは再び次元を超える旅に出た。
全ての守護女神と完全に和解した、というほどではないが、それでも彼女がゲイムギョウ界を守るために一時的に帰還したという事実を皆嬉しく思っていた。
「【オレ】のやつ、最後まで素直じゃなかったけどさ。俺と合体してネクストオレンジになれたってことは、もうそういうことなんだよ」
くろめが完全にいなくなってから、うずめが言った。
「わたし全然出番なかったなぁ」
次元の狭間にて、ネプテューヌがぼやく。
「キミは別の世界で大活躍したんだからいいだろう? 元社長」
「そうそう。楽しかったけど本当に大変だったよ。脱走したクロちゃんがあんなことするのは想定内だけど、まさかルギエルがクロちゃんの味方するなんて思わなかったもん」
「ま、彼は善であれ悪であれ世界の理を壊したい人間だからね。あの世界に眠る怨念の集合体と戦ってみたかったんだろう」
「ん? なになに? 俺の話?」
すると、先に次元の狭間で二人を待っていたルギエルが、話に割って入る。
「ルギエルもみんなに挨拶すればよかったのに」
「やだよあんな女神が多いとこ」
「それより、マジェコンヌはどうしたんだい? 君が回収したんだろう?」
「あー、安全な場所に降ろしといた。その内回復して目覚めて元に戻るだろ。あのカスも殺す気で斬ったわけじゃねーだろうし」
「マザコング……大丈夫かな」
「大丈夫かどうかは知らないが、敵でありながらも彼女を受け入れることを、あの世界の女神たち、そしてギンガは選んだ。オレたちが心配する必要はないさ」
「それもそっか」
『世界滅亡は見れなかったけど、面白い現象は見れた。収穫はあったな』
「そりゃ良かった。じゃ、また別の次元に行こうぜ」
「良くはないよ! まぁでも、さぁ出発だね!」
何はともあれ、四人の次元の超える旅が、再び始まった。
*
「さぁ働け働け労働者諸君! ナスの出来栄えは貴様らの働きぶりに比例すると思えよ!」
「相変わらず農家姿も様になってるっチュね」
「久しいなワレチューよ。そうだ。しばらくナス農園で金を稼いだら、また女神どもを倒す作戦を実行する。お前も付き合え」
「嫌っチュ……と言いたいところっチュけど、オイラもなんだかんだで悪いことしてる方が人生楽しいってことに気づいたっチュ。付き合ってやるっチュよ」
「ふっ、私も貴様も生粋の悪人ということだ。待っていろ守護女神ども……! 今度こそ私が勝ぁつ! ナーハッハッハ!」
(楽しそうにしやがってっチュね。まぁそれに付き合うオイラも大概っチュけど)
*
「ね、ねぇぎあちー……消し飛んだ筈のぴーしー大陸が元に戻ってるんだけど……何が起きたん?」
「ギンガさんのあの剣の効果じゃないかな? 破壊された世界を元に戻せるらしいよ」
「なにそれ。チートやん。怖。それより、ぎあちーまでぴーしー大陸に着いてきて来てくれなくても良かったのに」
「だって私、この度プラネテューヌ教会ぴーしー大陸出張技術開発顧問として任命されたんだもん。だからしばらく一緒だよ。よろしくね、マホちゃん」
「で、アタシがラステイション教会ぴーしー大陸出張技術開発顧問で」
「「わたしたちがルウィーのでーす!」」
「うぅ……ありがとう……みんな大好き……!」
「泣いてないでちゃんと仕事しなさい、マホ」
「分かってるってばあんりー!」
*
「行くわよブラン! 『レイシーズダンス』!」
「甘いっ! 『ツェアシュテールング』!」
「お二人とも本気で模擬戦するのも良いですけれど、わたくしと戦う時の体力は残しておいてくださいねー」
「分かってるわよ」
「じゃ、ちょっと休憩」
「それにしても、いきなり合同で鍛錬なんて、ノワールらしくない提案ですわね」
「……見たでしょ、あの子たちの……特にネプギアの強さ」
「私たちの妹まであの時のネプギアみたいになったら、追い付かれるのも時間の問題よ」
「姉の威厳のため……ですか。そうですわね……わたくしも妹たちのために強くあらねばなりませんわ!」
「「あなたの妹じゃないんだけど……」」
「とはいえ、ネプテューヌが誘いに乗ってこないのは珍しいですわね」
「どーせダラダラしてるんじゃないの?」
「だからこそ、俺が参加させてもらうわけだ。よっ、三人とも」
「あらうずめじゃない」
「あなたと戦えるのはなかなか楽しみね」
「お手合わせ願えますか?」
「三人同時は無理だから一人ずつ、な?」
*
「イストワール様が私たちにランチご馳走してくれるなんて珍しいこともあるんですね」
「珍しいのはそうですけどケチな上司みたいな言い方やめてくださいアイエフさん」
「あの、あいちゃんは部下だからっていうのはわかるんですけど、私までご馳走になっていいんですか?」
「コンパさんにもいつもお世話になってるので構いませんよ。それに、ここの巨大パフェ……食べてみたかったのですが、私一人では厳しくて食べるのに三日かかってしまいそうだったので……お手伝いしてくれませんか?」
「ええもちろん」
「楽しみです」
(まぁそれだけじゃなくて、ちょっとした人払いも兼ねてるんですけどね、ネプテューヌさんとギンガさん)
*
閑散とするプラネテューヌ教会で、プラネテューヌの女神補佐官ギンガは、教祖イストワールに提出するための報告書を作成していた。
「世界が救われたから、世間はお祭りムードだっていうのに、働き者はいるもんだね」
ギンガの作業部屋のドアに寄りかかりながら、ネプテューヌが言う。
「今回の件の報告書の作成がまだ済んでいないので……と、言いましても困りましたね。例の別の次元のマジェコンヌですが……あの存在をどう報告書にまとめたらいいか……聞いたままを書けばいいでしょうか?」
「いーじゃんいーじゃん」
「意外とうるさいんですよいーすんは、何か言われる前に言われそうなところは無くしておきたいんですよね」
すると、ネプテューヌはギンガの膝の上に座り、何かをねだるように目をジーッと見つめる。
「……何か?」
「せっかく二人きりなのにお仕事ばっかでつまんない」
「と、言いましても……」
「じゃ、この前のアレのお返ししてよ」
「アレ、とは?」
「ちゅー」
「……こほん」
ネプテューヌのストレートな物言いに、ギンガはわざと咳払いしながら照れ臭そうに目を逸らす。
「ネプテューヌ様はしたないですよ、嫁入り前の乙女がそんな……」
「わたしこれでも何百年も生きてるんだけど」
「私にとってはそれでも乙女です」
「じゃあ、あんなことして乙女の純情を弄んだんだね」
「したのはネプテューヌ様からじゃないですか……」
ギンガは仕事の手を止め、ネプテューヌをそっと抱きしめる。
「私は、不器用な人間です」
「知ってる」
「無駄に生き過ぎたせいで、まともに人を愛することもできなくなってしまった男ですよ。本当にいいんですか?」
「いいの。あなたがいい。わたしが嬉しい時も辛い時もずっとそばにいてくれたあなたがいい」
「ネプテューヌ様……」
「ん?」
名前を呼ばれ振り向いたネプテューヌの唇に、ギンガはそっと唇を重ねた。
「……っ、ひとまずは……この一回で勘弁してください」
「うん、いいよ。勘弁してあげる」
■ 『紫の星を紡ぐ銀糸S』終わり
これにて『銀糸』シリーズ本編は終わりとなります。
長らく読んでくださった方々、本当にありがとうございました。