紫の星を紡ぐ銀糸S   作:烊々

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02. 崩壊の空

 

 

 

 

 ぴーしー大陸が出せるものに加えて、ギンガがイストワールや他の知り合いに頼んで用意させた船と飛行機で、避難民の八割近くはプラネテューヌまで退避できることになった。

 

「それにしても……まさか戦艦まで来るとは思わなかったわね。やけにキャラの濃いメカのおじさんと忍者っぽい人が動かしてたし」

「……ギンガさん大丈夫かな」

「わからない……けど、あの人が死力を尽くしてあのモンスターを止めてくれている間に、私たちも私たちにできることをやるしかないわ」

「わかってるよ、あんりー」

 

 

 

 

「あいつ……本当にマジェコンヌか……?」

 

 ギンガの目の前を飛ぶその姿は、明らかにマジェコンヌのものだった。

 しかし、その魂はあまりにも違っていた、

 ギンガの知るマジェコンヌよりも邪悪で禍々しい深淵なる闇、永く生きるギンガでも感じたことのないほどのものであった。

 

「なんであろうと、お前を止める! 『32式エクスブレイド』!」

「……む?」

 

 ギンガに気づいたマジェコンヌは、破壊の手を止め、32式エクスブレイドを叩き落とす。

 

「……貴様、なんだ? 女神の気配を感じるが、女神ではない……何者だ?」

 

(私のことを知らない……? やはりこいつはマジェコンヌではない……のか?)

 

「何にせよ、良いだろう。私に向かって来るというのなら、貴様は我が新たな肉体の試運転として使ってやろう」

 

 そしてマジェコンヌは、明確にギンガをターゲットに定め、掌から闇魔法のビームを放つ。

 

「……『ギャラクティカクロスシュート』!」

 

 ギンガは必殺光線を撃ち出して迎撃、ビーム同士が相殺される。

 

「なるほど、悪くない力だ」

 

(……っ、何という出力! マジェコンヌはネプテューヌ様から賜わった力ですら容易く勝てる相手ではないことはわかっている……しかし、今の奴は私が知る以上……!)

 

「こちらも試すとしよう」

 

 マジェコンヌは槍を顕現させ、ギンガに距離を詰める。

 

(来るか……!)

 

 ギンガも機械剣ネプテューヌGE(Galaxtica Expansion)を握り、マジェコンヌを迎え打つ。

 

「ほぅ……受け止めるとは、中々やる」

「お褒めいただき光栄……です……!」

 

 マジェコンヌの圧倒的なパワーの前に、ギンガの技量ですら劣勢を強いられる。

 

「だが……私には届かん」

「それはどうでしょう……っ!」

 

 ギンガはマジェコンヌの攻撃を避けようとはせず、ダメージを覚悟でマジェコンヌに肉薄する。

 そしてそれは、ギンガの狙いでもあった。

 ネプテューヌリングには、ギンガがダメージを負った時、指輪にかけられた女神の加護の出力が上昇し、ギンガを回復させつつ更にステータスアップをさせる機能がある。

 ギンガはその機能を逆手に取り、自らに強制変身解除をしないギリギリのダメージを与えることによってステータスアップを引き出す方法を考えついていた。

 しかし、変身解除後にのしかかる身体への負担は普段の比ではない。

 ギンガはこれを『ギンガネプテューヌ・オーバーフロー』と呼称している。

 

(ネプテューヌ様には内緒ですけれど……)

 

 そしてこれは、ネプテューヌが想定していない使用方法で裏ワザのようなものであり、ネプテューヌがこれを知った時どう思うかは…………

 

(……しかし、最低でもマホ様たちが逃げる時間を稼ぐためにはこうするしかありません!)

 

 オーバーフローにより、ネプテューヌの加護のエネルギーがギンガの身体の周りを火花のように走る。

 オーバーフロー形態は、最大出力ならば守護女神ネクストフォームとも戦えるほど。

 

(……む? 急激に奴の力が増しただと……?)

 

 全てのステータスが大幅に上昇したギンガネプテューヌの動きに、対応が遅れるマジェコンヌ。

 その一瞬の隙を、ギンガは逃さない。

 

「『ギャラクティカエッジ』!」

 

 ギンガの剣技『ギャラクティカエッジ』の刃が、マジェコンヌに炸裂する。

 

「……ぬぅ⁉︎」

 

(手応えはある……! しかし、この程度で倒せる相手ではありませんが……何事も積み重ねが大事だというもの)

 

「……ぐ……が……あぁ……ッ!」

「……?」

 

 自分の想定以上のダメージを受けている様子のマジェコンヌに困惑するギンガ。

 すると、マジェコンヌは変身を解除し、普段の姿に戻った。

 

「マジェコンヌ……? 何のつもりだ……?」

「……ギンガ! 今のうちに私を殺せ!」

「何……?」

 

 変身を解除したと思えば自分を殺すように呼びかけてきたマジェコンヌに、ギンガは更に困惑する。

 

「……お前……そうか、お前が本当のマジェコンヌか!」

 

 困惑しながらも、マジェコンヌの魂そのものを見たギンガは、今のマジェコンヌこそ自分の知るそれだと気づいた。

 

「ならばさっきまでの一体……?」

「詳しく話してる時間はない! お前の攻撃の影響で一時的に身体の主導権を取り戻せたが、『こいつ』は貴様が思っている程度の存在ではない……! 再び『こいつ』が身体の主導権を握り返す前に、私を殺せ!」

「……わかった」

 

 ギンガはマジェコンヌの意を汲み、剣を握り直してマジェコンヌに向ける。

 そして振りかかろうとした……が。

 

「……っ!」

 

 直前、ギンガの脳裏に、マジェコンヌとの記憶が走った。

 ギンガとマジェコンヌは、初めは敵対しており、何度も戦ったが、世界の滅亡を防ぐために何度か共闘もし、互いを気に入らないながらも理解し合うような奇妙な信頼関係を築いた仲であった。

 加えて、主にネプテューヌの影響で非情さを失いつつあるギンガには、無抵抗のマジェコンヌを殺すことができなかったのだ。

 

「……この阿呆め……私に下らない情を持ちおって……」

 

 マジェコンヌは複雑な表情でそう吐き捨てると、再び禍々しいオーラに包まれ変身した。

 つまり、身体の主導権を奪い返されたのである。

 

「……まさか、身体の主導権を奪われるとは……やってくれたな、女神擬き……!」

「……」

「遊びは終わりだ。貴様はここで殺しておく」

 

 マジェコンヌは邪悪なエネルギーを溜め、辺り一帯をギンガごと消し飛ばそうとする。

 

(私は奴を……マジェコンヌを殺したくはない……しかし、殺さないにせよ動きは止めなくてはなりません……だが、生易しい攻撃では止められはしない……ならば!)

 

 ギンガも、ネプテューヌリングに込められた加護のエネルギーを全開放する。

 更に自身の魔力も全開にし、その全てを身にまとい、炎のような輝きを放ち始める。

 

「……『ギャラクティカ……エクスプロージョン』‼︎」

 

 そして技名を叫ぶと同時に、マジェコンヌがエネルギーを溜め終わる前に、突撃し……

 

「……ッ⁉︎」

 

 ……解き放たれたギンガのエネルギーを起点に爆発が起こり、マジェコンヌのエネルギーにまで誘爆し、辺り一帯が爆風に包まれた。

 

 

 

 

「ギンガさん……爆発しちゃった……」

「なんでよ……! 死なないで、って言ったのに……!」

 

 船の上から双眼鏡でギンガとマジェコンヌの戦いを見ていたマホとアンリは、国を捨てて逃げてしまった上に、足止めを任せたギンガが爆散したことにより、失意の底に陥っていた。

 

「これじゃ……プラネテューヌの女神……ネプテューヌさんにどう顔を合わせればいいの……?」

「マホ……」

「女神候補生のネプギアちゃんにも……こんな様じゃ『友達になって』なんて言えないよ……」

 

 涙を流すマホを、アンリは抱きしめながら頭を撫でる。

 

「あなたが悪いわけじゃない。だから……泣かないでマホ」

「……ごめん、ありがとあんりー」

「そろそろプラネテューヌに着くわ。泣かないでって言ったけど、それまでは泣いてていいから」

「うん……」

 

 

 

 

 爆発が収まり、爆風と煙が晴れる。

 

「……チッ」

 

 ギンガの自爆特攻によるダメージの影響か、変身形態を維持できず、普段の姿に戻ったマジェコンヌ。

 しかし、その肉体はやはり『何者か』に奪われたままではあった。

 

「まさか……肉体だけでなく魂に届く斬撃を放てる者がいるとはな……私が知る限り女神ですら行えん芸当だが……」

 

 マジェコンヌは再び変身しようと身体に力を入れるが、エネルギーが足りずに何も起こらない。

 

「肉体のダメージが……このままではことを為せんな。しばらくは潜むしかない……か」

 

 マジェコンヌは人のいなくなったぴーしー大陸の大地に降下し、自らを一時的に封印させ、体力とエネルギーの回復を図った。

 

「何であれ、私が存在している以上、世界を滅ぼし破壊することは変わらん。そして今度こそ……貴様の全てを踏み躙り、嬲り殺しにしてやる…………ネプギア……‼︎」

 

 

 

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