紫の星を紡ぐ銀糸S   作:烊々

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 久しぶりです。



05. 虚無の再来

 

 

「あなたマホちゃんっていうのね! わたしはラムちゃんよ! ルウィーの女神候補生! よろしくねー!」

「ルウィーの女神候補生、ロムだよ。よろしくね……!」

「初めまして、あたしはユニ。ラステイションの女神候補生よ」

 

 姉たち守護女神がギョウカイ墓場へと向かったことを受け、女神候補生たちは今後の行動について話し合う為にプラネテューヌに集合していた。

 そして、そこで丁度マホとの顔合わせもすることにしたのだ。

 

「ちょ〜嬉し〜、あーし今日でこんなに友達増えちゃった〜!」

「マホちゃんあそぼー!」

「あそぼ?」

「こらラム、ロム。あたしたちは遊ぶ為に集まったわけじゃないのよ」

「「はーい……」」

「ギンガさん。状況はどうなんですか?」

「かなり……厳しいと思われます」

 

 

 

 

「何を……企んでいようと……」

 

 疲労困憊、女神化を維持するだけで精一杯の身体をなんとか持ち上げ、パープルハートは立ち上がる。

 

「あなたの好きにはさせない……!」

「無駄なことを……」

 

 一撃で倒せない限り、マジェコンヌはすぐに回復してしまう。そして、今のパープルハートにマジェコンヌを一撃で倒す攻撃力はない。

 避ける必要もない攻撃。マジェコンヌは足を動かすことすらせず、ただ棒立ちで受けようとする。

 

「ネプテューヌ!」

「無茶よ!」

 

(どうしてギンガにはこのマジェコンヌを弱らせることができたのか……その答えは"これ"しかない!)

 

「……『ギャラクティカエッジ』ッ‼︎」

「……っ⁉︎」

 

 パープルハートが技名を口にすると、マジェコンヌが焦る。

 しかし、避ける猶予は既に無く、技が直撃した。

 

「……っ、ぐ……おぉっ!」

 

 仰け反ったマジェコンヌは、今までダメージを受けた時にはしなかった苦しみ方を見せる。

 『ギャラクティカエッジ』は、魂にまで響く斬撃。

 身体へのダメージはすぐに回復できるマジェコンヌだが、魂へのダメージはそうはいかない。

 初めて消耗を見せたマジェコンヌに対し、追撃を加えようとするパープルハートだが……

 

「…………っ、そんな……変身が……っ!」

 

 遂に体力が尽き、女神化が解けてしまった。

 

「く……ふぅ……威力は高いが……あの男のものに比べると鋭さに欠けるな……お陰で、我を失わずに済んだ」

 

 魂への攻撃をクリーンヒットされたマジェコンヌは、力尽きて仰向けに倒れるネプテューヌと、膝をつくノワールたちに目を向けた後、その場に座り込む。

 

「あいつ……私たちに攻撃してこなくなったわね……」

「どういうつもり……?」

「……その隙をつけるほどの体力がもう私たちに残ってねえのが問題だかな……」

 

 外傷をほぼないマジェコンヌだが、想定外のダメージを食らってしまったため、これ以上戦闘を長引かせたくないからか、女神たちに直接攻撃をすることをやめた。

 先程のネプテューヌのように、最後の力を振り絞った反撃に、想定外のダメージを喰らうことを恐れたからだ。

 

「……少し、甘く見過ぎたか」

 

 マジェコンヌが女神たちに方に手を翳すと、触手のようなモノが発生し女神たちを拘束する。

 

「きゃあっ!」

「くっ、またこのような辱めを……!」

「離しやがれ……っ!」

 

 あくまでも拘束、ダメージはなく、屈辱があれど、女神たちは体力の維持をするために無駄な抵抗はせずにいた。

 おそらくマジェコンヌが自分たちを殺す気ならばとっくに死んでいてもおかしくない状況。下手に行動するより、少しでも時間を稼ぎ、待機している女神候補生に充分な時間を与えようとしているのだ。

 

「……やはり、貴様らより先に奴らを処理するべきだな」

「……っ!」

 

 しかし、そんな女神たちの思惑を、マジェコンヌは看破している。

 

「とはいえ、私にも今から貴様らの妹たちを殺しにいけるほどの余力はない。だから、代わりにその役割を果たすモノを作ることにした」

「作る……?」

「『墓場』の名の通り、ここは現世と幽世を繋ぐ場所。私の力を使えば、地獄に眠る死者の魂を掬い上げることもできる」

 

 マジェコンヌは地面に手を置き、魔法陣を展開する。

 

「とはいえ、幽世に眠る魂など有象無象に過ぎんが……む? ほぅ、使えそうなのが二つ」

 

 マジェコンヌは、幽世から二つの魂を掬い上げ、自らの魔力で身体を復元させる。

 一つは『ジャッジ』。かつてギンガに鏖殺された巨大なモンスター。

 もう一つは『ブレイブ』。かつてギンガとアイエフに討たれた巨大なロボット型モンスター。

 

「こいつらは……」

「ふむ、悪くない完成度だな。さて、プラネテューヌへと向かえ。そして、候補生たちを無きものとしてしまえ。そうだ、ネプギアだけは殺すなよ。奴は私が自分の手で嬲り殺しにしてやるのだから……」

 

 ジャッジとブレイブはギョウカイ墓場から飛び立ち、プラネテューヌへと向かった。

 

「さて、我が眷属がゲイムギョウ界を破壊し尽くすか、貴様らの妹が食い止めるか。お互いここで高みの見物といこうではないか」

「悪趣味な……っ!」

 

 

 

 

「お姉ちゃんたち、大丈夫かな……」

「……」

 

 変わらず暗く淀んだギョウカイ墓場を見つめならば心配そうに呟く候補生たちに、ギンガは何も言うことができない。

 一度戦った身だからこそ、ギンガには今のマジェコンヌの強さがわかる。そして、ネクストフォームを封じられた女神たちに今のマジェコンヌを倒すことができない、ということも。

 

「……勝つことはできないでしょう」

 

 そんなギンガの心情を理解したイストワールが口を開いた。

 

「ネクストフォーム無しでは、今のマジェコンヌにネプテューヌさんたちは勝てないでしょう。勝てるのならば、最初の遭遇でギンガさんが終わらせています。しかし、勝てないことは戦わない理由にはなりません。それが『守護女神』という生き方なのです」

「じゃあお姉ちゃんたちは……!」

「大丈夫……とは言えませんが、敗北はしていても、すぐに殺されはしないでしょう。おそらくは数年前のズーネ地区と似たような理由だと思われます」

「ズーネ地区……?」

「お姉ちゃんたちが捕まったところだね」

「それは心次元でしょ?」

「その前だよ、ラムちゃん」

「あー、あの時のね」

「無事なら良かったわ。お姉ちゃんたちが捕まったなら、あたしたちが助けに行く。いつだってそうでしょ?」

「うん!」

「当然よ!」

「行こう、みんな……!」

 

 幾多もの危機を乗り越えてきた女神候補生たちは、もう状況に流されるだけの幼児ではない。姉の失敗は自分たちでカバーする、誰に言われなくても自分たちの意思で行動を始めようとしていた。

 

「なんかぎあちーたちすごい頼もしいんだけど」

「同じ候補生なのにこうも違うのね」

「あんりーひどーい! あーしも変身さえできるようになればなぁ……」

「変身したいっていう意思も大事だけど、変身してどうなりたいっていうのが一番大事だと思うんだ」

「ぎあちー……」

「マホちゃんなら絶対に見つけられるよ。だから、焦らないで頑張ろう?」

「……うん、ありがとうぎあちー」

 

 奮起する候補生たちを、少し離れて見守るギンガとイストワール。

 

「頼もしくなられましたね、候補生の皆様は」

「そうですね。数年前はまだあどけない少女だったのに、今ではすっかり一人前の女神の顔です」

「……先程は助かりました。イストワール」

「別に、私は何もしていませんよ」

「いいえ、あのようなことは私の口から説明するべきなのに、候補生の皆様も悲しむ顔を見たくない、と口を閉じてしまったのです。そんなことをしても意味はないと言うのに……私も弱くなったものです……」

「そうですね、私もギンガさんは昔より優しくなったと思います。そして、たとえそれが弱くなっているとしても、私は悪いことだとは思いません」

「そうですか…………っ⁉︎」

 

 その瞬間、ギンガは急速に接近してくる二つの強大なエネルギーを感じ取った。

 そしてすぐに、プラネタワーのサイレンがけたたましく音を立てる。

 

「……っ、職員は退避させろ! 衛兵は民間人の避難を! ここに落ちてくるぞ‼︎」

 

 ギンガはすぐにプラネタワー中に伝達し、候補生と自分たち以外の全ての人間をプラネタワーから避難させようとする。

 

「ネプギア様、ユニ様、ロム様、ラム様、戦闘の準備を! この反応、おそらく敵です!」

「「「「はい!」」」」

「マホ様とアンリさんは避難を! イストワール、普段ネプテューヌ様があなたから逃げるために使っている隠し通路を教えます。そこからお二人を逃してください!」

「そんなものが……いえ、わかりました。皆さん、お気をつけて」

 

 ギンガと候補生たちは、イストワールたちがプラネタワーを脱出するのを見届け、臨戦態勢に入る。

 

「……この気配、まさか」

 

 敵の反応は徐々に近づいてくることで、ギンガには鮮明に感じ取れるようになっていた。

 

「『ジャッジ』と『ブレイブ』だと……⁉︎」

 

 自らと因縁のあるそれらの気配を感じ取ったギンガは、動揺を隠せずにいた。

 それもそのはず、この二体は、かつて自分が討った。トドメを刺して消えるところまで見届けたはずなのだから。

 

「会いたかったぜええええ! ギンガぁああああ!」

 

 プラネタワーの外壁を破壊し、叫びながらギンガに斧を振り下ろすジャッジ。

 

「お前……生きていたのか……っ⁉︎」

「蘇ったんだよ! 犯罪神様の力でなああああッ!」

「犯罪神……?」

「ギンガさん!」

 

 ギンガの元に駆けつけようとした候補生たちの前に、ジャッジが破壊した外壁の穴から侵入したブレイブが立ちはだかった。

 

「おいブレイブ! ギンガは俺が殺しても良いよなぁ⁉︎」

「好きにしろ。その男のことは犯罪神様には何も言われていない。俺は女神候補生どもを討つ」

「ブレイブ! お前は私たちと分かり合えた筈……それなのに!」

「貴様のような男など知らん。全ては犯罪神様のため」

「……っ」

 

 ギンガはジャッジの攻撃に対応しつつ、頭の中で状況を整理する。

 マジェコンヌに取り憑いた"何か"は『犯罪神』という存在で、『犯罪神』はゲイムギョウ界の滅亡を目論んでおり、その力でジャッジとブレイブを蘇らせた。そして、ジャッジは記憶を残したまま、ブレイブは記憶と心を消して従順な僕として。

 

「……蘇ったのならば、何度でも殺すまで!」

「そう簡単に行くかよ!」

 

 

 

 

 ジャッジとブレイブの視点から送られてくる映像を強制的に見せられている四女神。

 

「あんな奴らに、ユニたちは負けないわ!」

「そうかな? 奴らには私の力を大いに与えておいた。単純な戦闘力だけを見るならば今の私よりも上だ」

「何ですって……!」

「……犯罪神って言ったよね。どうしてネプギアだけを執拗に憎んでいるの?」

「知ってどうする? まぁいい、隠すようなことでもない。教えてやろう。そうだな、私はこの次元の存在ではない」

「……だよね。もしあなたがこの次元の存在だったら、あなたのことをギンガが知らないはずないもん」

「我が使命たるゲイムギョウ界の滅亡……かつて私は自身の生まれた次元でそれを寸前まで持ち込んだ。しかし、当時は矮小な女神候補生如きだったネプギアの手により阻止され、我が肉体は奴に滅ぼされた。我が魂は人間共と女神の想いの力によりゲイムギョウ界から永遠に追放され、次元の狭間を彷徨うことになったのだ。しかし、ある時、次元を彷徨っていた私の魂が、何かに吸い寄せられ、この次元に誘われた。私は、同じ"マジェコンヌ"たるこの身体に取り憑き、今度こそ我が使命を果たすことを誓った。そして、一度私を滅ぼしたネプギアへの復讐もな」

「……でも、あなたの話を聞く限りだと、あなたの復讐したいネプギアはこの次元のネプギアじゃないんでしょ!」

「奴という存在そのものを赦すわけにはいかん。この次元のネプギアを殺し、ゲイムギョウ界を滅ぼした後は、あらゆる次元を超え、あらゆる次元のネプギアを殺すつもりさ」

「……そんなこと」

「『させない』とでも言いたいのだろう? しかし今の貴様に私を止めることはできん」

「……っ」

「だか、私は貴様ら女神や人間たちには少し感謝もしている。以前の私は、ただの邪な力の象徴たる存在でしかなかった。ゲイムギョウ界の滅亡という使命の元に動くだけのな。しかし、貴様らの心とやらに触れ、私も心を知った。憎悪を知った。そして、心のままに力を振るうのは、案外気分が良く、以前よりも強くなれたのだ」

 

 

 

 

 候補生とギンガはジャッジとブレイブの手によって分断され、ギンガvsジャッジ、女神候補生vsブレイブというマッチアップになっていた。

 

「『ギャラクティカエッジ』!」

「効かねえッ!」

 

 犯罪神マジェコンヌから力を与えられたジャッジ相手に、ギンガはギンガネプテューヌへと変身し応戦するも『ギャラクティカエクスプロージョン』の影響で低下したギンガの戦闘力は戻り切っていないこと、そして復活したジャッジの戦闘力が非常に高いことで、苦戦を強いられていた。

 

「妙な変身をするようになったが……もう俺の方が強えようだなァ!」

「……さっさとお前を処理して、候補生の皆様のところへ参らなければなりません」

「あー?」

「出し惜しみしてる暇はありませんね。地獄に送り返してやろう……『シェアリングフィールド』展開!」

 

 ギンガは『シェアリングフィールド』を展開、ギンガのフィールドの効果により、女神を信じていないジャッジの五感は奪われ、勝敗は決する。

 

「……馬鹿が」

 

 ────と、思われた。

 フィールドが展開される直前、ジャッジは全身から邪悪なエネルギーを解き放ち、フィールドを生成していたシェアエネルギーを相殺させ、シェアリングフィールドは不発となった。

 

「なん……だと……⁉︎」

「地獄は退屈だったからなァ。てめえのその技の正体を突き止め、その対策をイメージする時間は幾らでもあった」

 

 シェアリングフィールドを解除した直後、過剰に使用したエネルギーが焼き切れ少しだけ力が抜ける。たとえ不発に終わったとしても、それは変わらない。

 

「そしてェ! 犯罪神様から頂いた力で、そのイメージを具現化させたってわけだァ‼︎」

 

 力が抜けた隙に、ギンガの横腹にジャッジの斧が叩き込まれる。

 

「がぁぅ……っ!」

 

 咄嗟に防御したものの、思い切り吹き飛ばされ、外壁を破壊し、プラネタワーから落下していくギンガ。

 しかし、ジャッジの狙いが自分であることを裏目に取り、あえて落ちながらプラネタワーから人のいない方向へ進んでいく。

 

「く……っ!」

「ははははっ、おらぁっ‼︎」

 

 追撃のために降りてきたジャッジは、力任せに斧を振るだけでなく、衝撃波まで繰り出し、ギンガの体力を削っていく。

 巨体故にただでさえ高い攻撃力と防御力が、犯罪神によって更に強化され、絡め手も通用しない。ギンガにとってはほぼ手詰まりの状況。

 

「『32式エクスブレイド』!」

 

 放った大剣は、いとも簡単に弾かれる。

 

「……っ、『スラッシュウェーブ』‼︎」

 

 繰り出した衝撃波は、斧を振われるだけで掻き消される。

 

「……はっ、こんな奴に二度も負けたのかよ、俺はよ」

 

 ダメージによる蓄積されていく疲労とエネルギーや魔力の消耗により、ギンガの技の威力はどんどん落ちていく。

 ただでさえジャッジに効きづらいダメージが、更に入らなくなっていく。

 

「『デルタスラッシュ』!」

 

 最早ジャッジはギンガの技を防ぐことも避けることもせず、正面から突っ込んで来る。

 

「……っ⁉︎」

「これで、終わりだああああっ‼︎」

 

 そして、邪悪なエネルギーを込めた一撃が、ギンガに振り下ろされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいおい? 俺たちに勝って守り抜いた世界だろ? こんな簡単に壊されていいのかよ」

 

 しかし、その斧はギンガに当たることはなかった。

 急に現れたその男が、ジャッジの斧を素手で受け止めていたからだ。

 

「あなたは……」

「あぁ? ギンガの野郎が……二人ぃ?」

「俺をこんなクソカスと一緒にするなよ。俺の名は──」

 

 ギンガと瓜二つの容姿。それは当然である。 なぜなら、その男はギンガの別次元の平行同位体なのだから。

 そう、その男の名は。

 

「──ルギエルだ」

 

 『ルギエル』。

 虚無の暴君が、再び超次元に降り立った。

 

 

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