紫の星を紡ぐ銀糸S   作:烊々

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 気がつけば前回の投稿から一年近く経っていた



06.逆転の芽吹

 

「こんな雑魚に手間取ってんじゃねえよカスが」

 

 ルギエルはジャッジの斧を奪い取る。

 

「……ッ⁉︎」

 

 気がつくと自分の体が宙を舞っていたジャッジは、驚きを隠せずにいた。

 巨大な身体ゆえパワーも勝っていると思われた自分が、目の前の人間に力尽くで武器を奪われ、身体を空中に放り投げられたのだ。

 

「っらよ!」

 

 そして、ルギエルは落下してくるジャッジに飛びかかり、斧でジャッジの身体を粉々に破壊していく。

 

「ぐ……ぉおおおおおっ!」

「うっせーな。さっさと死ね」

 

 ジャッジを完全に破壊したルギエルは、斧を放り捨て、気だるそうにスタスタと歩く。

 すると、その後方で、破壊されたはずのジャッジが体を再生させ、立ち上がった。

 

「あ?」

「……へっへっへ、今のは効いたぜぇ? けどなぁ、俺は犯罪神様が生きている限り何度でも甦る! てめえらは死ぬしかねえんだよおおおお!」

「あー……そういう感じ?」

 

 ルギエルは、復活したジャッジの猛攻をひょいひょいと躱しながら、ギンガの元まで後退する。

 

「貸せ」

 

 そしてギンガの剣を奪い取り、邪魔だからと蹴り飛ばす。

 

「ぐふっ」

 

 ルギエルは剣を軽く振り回し、手に馴染ませる。

 そして、剣を構え、ジャッジの懐に潜り込んだ。

 

「……っ!」

「『ギャラクティカエッジ』……だったか?」

 

 ギンガの斬撃『ギャラクティカエッジ』をルギエルも使用し、ジャッジを斬り裂く。

 

「ぐ……おおおおっ!」

「へー、この技、攻撃の動きから再び構えがループするようになってて、相手が死ぬまで連撃できんだ。おもれー」

 

 のけぞったジャッジに、次々とギャラクティカエッジを叩き込むルギエル。

 また、ギャラクティカエッジは魂にまで届く斬撃。

 

「ぐ……なんだ……身体が……元に戻らねえ……っ!」

 

 魂を刻まれた者は、肉体の再生が行えない。

 つまり、決着がついた。

 

「……」

 

 相変わらずの暴力の化身とも言えるルギエルの暴れっぷりに、唖然とするギンガ。

 ルギエルの強さを身をもって経験しているギンガは、援護は不要と判断し、座り込んで休息を取っていた。

 

「あっ、ルギエルったらもう終わらせたんだ」

「あなたは……ネプテューヌさん……!」

「あ、ギンガ久しぶりー。助けに来たよ」

 

 ギンガの元に駆けつけたもう一人の女性は、猛争事変の際に暗躍していた別の次元の『ネプテューヌ』。

 

「あなた方は行動を共にしていたのですね……」

「そうだよ。まぁ最初は悪いことしないように、っていう監視のつもりだったけどね。ギンガと小さいわたしに影響を受けたのか、すっかりくろめもルギエルも毒気を抜かれちゃってさ。今では普通に楽しく旅してるよ」

「……そうですか。救援ありがとうございます。ですが、私のことはいいのです……! ネプギア様たちの方へ救援に向かってください!」

「あっちは大丈夫だよ」

「大丈夫……とは?」

「私たちの……最強の味方が向かってるからね」

 

 一休みしたら即候補生たちの救援に向かおうとしていたギンガだったが、ネプテューヌの言葉を信用し足を止める。

 詳細は知らないが、その『最強の味方』とやらの邪魔になりかねないと思ったからである。

 

 

 

 

「女神候補生と侮っていたが……なかなかやるようだな……!」

 

 犯罪神の力でパワーアップしていたブレイブに、女神候補生たちは健闘していた。

 前衛のネプギア、中衛のラム、後衛のユニとロム。そして回復技を使えるのが三人と、姉たち以上に連携を活かして戦っていたからだ。

 

「喰らえ! 『ブレイブソード』ッ‼︎」

「ロム、ラム、お願い!」

「任せて!」

 

 ブレイブが繰り出した必殺技を、ロムとラムの魔法陣によって底上げされたユニの射撃が相殺する。

 

「くっ……!」

「はぁああ! 『パンツァーブレイド』!」

 

 そして、ブレイブが必殺技を繰り出した隙を突き、ネプギアがM.P.B.Lの連続斬りを叩き込んだ。

 

「ぐっ……ぉおおっ⁉︎」

「これで……終わりです!」

 

 ネプギアの最後の一閃が、ブレイブを斬り砕いた。

 

「やったわね! ネプギア!」

「みんなのおかげだよ」

「早くギンガさんを助けに向かうわ…………っ⁉︎ ネプギア! 後ろ‼︎」

 

 ユニが叫んだ。

 

「えっ?」

 

 撃破した筈のブレイブが、何事も無かったかのように蘇り、立っていたのだ。

 

「嘘……倒したはずなのに……」

 

 犯罪神マジェコンヌ本体が生きている限り、その力で復活したブレイブは、何度でも蘇る。

 ブレイブの剛腕が、ネプギアを掴んだ。

 

「ネプギアを離しなさい! 『アイス……」

「待ってラム! 今撃ったら、ネプギアにも当たるわ!」

「……くっ」

 

 ネプギアへの誤射を考慮した他の三人の動きが止まった瞬間、ブレイブは背部装甲から高弾速のミサイルを射出する。

 

「「「きゃあああっ!」」」

「みんな! ……うわっ!」

 

 そしてブレイブはユニたちの方向へネプギアを放り投げてぶつけ、剣をブーメランのように投擲する。

 

「ぐっ!」

 

 そして、帰ってきた剣をキャッチし、思い切り振りかぶった。

 

「これで終わりだ……『ブレイブ……」

「『夢幻粉砕拳』!」

「……ッ⁉︎」

 

 しかし、その剣は急に現れた何者かによって阻まれる。

 

「何者だ、お前は……?」

「俺か? 俺の名は……」

 

 橙の光を放つその女神の姿を見て、候補生たちは嬉しそうながらも不思議そうな表情をする。

 

「『天王星うずめ』そして……」

 

 ネプギアたちは目の前の女神、天王星うずめを知っている。知っているのだが……ネプギアたちの知る天王星うずめ、そしてオレンジハートとは見た目が異なっているのだ。

 また、声のトーンも変身後の緩い声ではなく、変身前のものであった。

 しかし、ネプギアたちは目の前の『うずめ』が放つ輝きを知っている。

 女神化を超えた輝き、その名は────

 

「……『ネクストオレンジ』だ」

 

 女神候補生が放つ光とは明らかに出力が異なる輝きを放つネクストオレンジに、ブレイブは戦慄する。

 そして、目の前の敵はおそらく自分より強いことを、確信してしまった。

 

「な、何者であろうと、邪魔をするなら斬り捨てる!」

 

 しかし、敵の殲滅が命令されているブレイブは、退くことが許されない。故に、ネクストオレンジに斬りかかる。

 

「シェアエネルギー解放……」

 

 ネクストオレンジは、応じるように右腕にオレンジ色の光をまとわせる。

 

「ネガティブエネルギー解放……」

 

 そして、左腕に暗黒の闇をまとわせる。

 

「『夢幻虚夢双拳』!」

 

 両腕を前に突き出し、ブレイブの剣を破壊しながら、拳で身体を貫く。

 

「ぐああああっ!」

 

 更に、炸裂したシェアエネルギーとネガティブエネルギーが、ブレイブの中で相反し、身体を破壊しながら拡大していく。

 

「終わりだ」

 

 そして爆発が起こり、ブレイブは粉々に砕け散った。

 

「うずめさん! そのモンスターは、倒しても復活するんです!」

「知ってるよ、見てたからな。だからこうするんだよ」

 

 ネクストオレンジは、ブレイブが復活する直前に、その魂を捕捉し、手のひらサイズのシェアリングフィールドに閉じ込めた。そして、フィールドを魂ごと消滅させ、復活を阻止した。

 

「さて、久しぶり……ってほどでもねぇけど、ただいま」

 

 帰還したネクストオレンジ-天王星うずめの元に駆け寄る候補生たち。

 

「……でも、それってネクストフォームですよね? どうしてうずめさんがなれるんですか?」

「それはな……」

 

 ネクストオレンジは変身を解除し、通常の姿に戻る。

 すると、もう一人の『天王星うずめ』が、ネクストオレンジから分離し姿を現した。

 

「あ、あなたは……」

「『暗黒星くろめ』!」

 

 かつてゲイムギョウ界滅亡の危機を齎した宿敵が突然目の前に現れ、ユニロムラムの三人は武器を向ける。

 

「わわっ! ちょっと待ってくれ!」

 

 必死で三人を静止するうずめ。その中でネプギアだけは冷静に、くろめの元に歩いていく。

 

「力を……貸してくれるんですか?」

「……この世界を滅ぼすのはオレだ。オレ以外の何かに滅ぼされてたまるものか」

「そう言ってるけど、この世界を危機から守るために帰ってきたんだぜこいつ」

「黙れ」

 

 そして、なんとなくくろめから憎悪が消えてることを察したネプギアは、くろめに対して敵意を引っ込めた。

 

 

 

 

「とりあえず戦力は揃いましたので、こちらから打って出ることができます」

 

 四人の候補生に加え、うずめとネプテューヌ、そして前作のラスボス二人が集まったことで、ギョウカイ墓場と呼ばれるダンジョンへと向かうことにした一行。

 マホも、女神候補生だからと一緒に戦いの地へ赴き、アンリはイストワールと共にプラネテューヌ教会に残ってサポートに回っていた。

 

『あの犯罪神は今、自らの力を乗っ取った身体に完全に馴染ませるために休息をとっている、といったところだろうな』

 

 プラネテューヌから見える浮遊したギョウカイ墓場を眺め、クロワールが語る。

 

『あれが完全に済めば、どうなっちまうだろうな? それこそ、本当にこの世界が滅んでもおかしくねーな』

 

 楽しそうにケラケラと笑うクロワールをよそに、一行はギョウカイ墓場の下まで辿り着いた。

 

「とりあえず、飛んでいけばいいんだよね?」

「……あ?」

 

 上空からの気配にいち早く気づいたくろめとルギエルが、飛び上がり、謎の攻撃を弾き飛ばす。

 

「足止めのつもりか、アレ?」

「そのようだね」

 

 すると、上空から犯罪神の邪気で強化されたドラゴン型モンスターの群れが飛んで来ていた。

 

「しゃあねえ。ここは任せろカスども」

「オレも残ろうか?」

「うずめちゃんが残ると天王星うずめが本気を出せねーだろ。だから行きな」

 

 加えて、女神嫌い(くろめ除く)のルギエルには、さっさと女神の多い空間から離れたかったという理由もあった。

 

「あ、そうだ。ネプテューヌちゃ〜ん! なんか武器貸してー!」

「しょうがないなぁ。壊さないでね」

「保証しかねる。じゃーな!」

 

 ネプテューヌから予備の剣を借りたルギエルは、迫り来るドラゴンの群れに突撃し、無双していく。

 

「あの男に任せましょう。私たちは上へ」

「はい!」

 

 その隙に、残りの全員は上へ向かう。

 

「それよりも、まさかうずめ様たちが帰ってきてくれるとは……久しぶりに会えて嬉しいです」

「やめてくれ、そういうのじゃない。ただ……あの戦いの後にねぷっちに言われただろう? 気持ちに折り合いがついたらいつでも帰って来い、って」

「言われていましたね」

「今でもついちゃいけないさ。だから、その前に世界に滅びてもらったら困るんだよ」

「そうですか」

「だから、その嬉しそうな顔をやめろ。全く……」

 

 一行は、ギョウカイ墓場のダンジョンを抜け、モンスターを蹴散らし、遂に最深部へと到着する。

 

「ネプギア!」

「お姉ちゃん!」

 

 候補生たちは、そこに捕らえられていた四女神の元に駆けつけ、拘束を解いた。

 

「……毎度毎度悪いわねユニ、助けに来てもらって」

「もう慣れたわ。お姉ちゃんが捕まるのも、助けに行くのも」

「むっ……言うようになったじゃない。でも、ありがとうユニ。頼りにしてる」

「うん! えへへ」

「お姉ちゃんまた捕まってる〜」

「大丈夫……?」

「大丈夫よ。それに、最近はもう私がやらかしてもあなたたちがいるから平気とすら思えるようになってるわ」

「それはそれで良くないと思う」

 

 それぞれ女神と候補生たちが再開する中、ベールは新たな一人の女神候補生を捕捉していた。

 

「あら? あらあらあらあら? 新しい子がいますわね? いますわね! これは、わたくしの妹になりに来たということですわよね⁉︎」

「むぎゅっ」

「可愛いですわぁ……! お名前はなんといいますの〜?」

「ひっ、ま、マホです……」

「マホちゃん! あぁ……遂にわたくしにも妹が……!」

「た、助けて……おっぱいに殺される……」

 

 女神たちを心底鬱陶しそうな目で見ながら、マジェコンヌが口を開く。

 

「いつの時代も、どの次元でも、まるで蛆虫のようにワラワラと湧き出でくるな……守護女神というものは」

「随分な物言いだけど、その四女神にトドメもさせずに休憩してたとなると、よほど手こずったと見えるね、マジェコンヌ」

「自分の苦悩を私に投影するのはよせ。守護女神たちに敗北したのは貴様だ。暗黒星くろめ」

「オレを知っているということは、この次元のマジェコンヌの記憶でも覗いたか。それに、果たして守護女神に敗北したのはオレだけかな?」

「貴様……!」

 

 舌戦を交わし、互いに戦闘態勢に入る犯罪神マジェコンヌと暗黒星くろめ。

 

「行くぞ【俺】」

「お前の方がやる気なのは驚いたな」

「そういうのじゃない。ただ、あんな奴にオレができなかったことをやられるのが嫌なだけだ」

 

 かつての宿敵暗黒星くろめが当たり前のように味方に立っている姿に、四女神のうち二人は困惑を隠せずにいた。

 

「ねぇ、アレ暗黒星くろめよね?」

「生きていたの……? ていうか、なんで味方に?」

 

 もう一人は、捕獲した候補生を堪能しており。

 

「あぁ^〜マホちゃん……!」

「ぐえぇ……」

 

 そして最後の一人ネプテューヌは、その状況を喜びに満ちたような表情で見つめていた。

 

「候補生諸君」

「な、なんですか?」

「オレたちでこのギョウカイ墓場に蔓延る瘴気を相殺する。その間に君たちは奴本体を叩け」

「……はい! 行くよみんな!」

「おっけー!」

「任せなさい!」

「頑張るよ……!」

 

 

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