天王星うずめ、暗黒星くろめの二人が、シェアエネルギーとネガティブエネルギーを用い、ギョウカイ墓場の瘴気を削いでいく。
その好機を逃さないよう、パープルシスターたちは、犯罪神マジェコンヌに使って突撃する。
「待っていたぞネプギア、この手で貴様を殺せる日を……!」
犯罪神マジェコンヌは邪悪な笑みを浮かべ、候補生たちに向かい闇の雷撃を放つ。
「ロムちゃん!」
「わかってる」
犯罪神の攻撃から身を守るべく、ホワイトシスターロムが発動した魔法陣が展開される。
防ぎきれなかったものは、ブラックシスターが撃ち落とす。
「行くわよネプギア!」
「うん、ラムちゃん!」
後方からの援護を受けたパープルシスターとホワイトシスターラムが、M.P.B.Lと氷剣アイスカリバーをそれぞれ握り、犯罪神に斬りかかる。
「「はぁああっ!」」
「ぐ……っ」
犯罪神にダメージが入る。
本来ならギョウカイ墓場の闇の瘴気がその傷を癒すが、うずめとくろめの尽力により、その効果は失われている。
「あの子たち……すごいわ……」
「ええ……もうあんなところまで……」
候補生たちの連携を、感心しながら見る姉の女神たち。個人の力量ではまだ自分に劣るものの、四人揃った時の連携力では、自分達をも凌ぐかもしれない、そう思ってさえいた。いつも自分の後ろを歩いていた妹たちが自分たちに並ぶ日が、もうすぐそこまで迫っていると。
「なるほど……良き力だ。我が力がこの次元に馴染む前であれば、再び貴様らに敗れていたかもしれん」
しかし、犯罪神は余裕の表情を崩すことはない。
「だがもう遅い。何もかも」
犯罪神マジェコンヌから溢れ出す力が、戦場を包んでいく。
(まずい……!)
その力の広がりの正体を、ギンガはいち早く察知した。
続いてうずめとくろめも、気づいて表情を歪める。
「やばいなアレは……」
「ただでさえこの瘴気を抑えつけるのに精一杯だというのに……」
しかし、阻止することは間に合わず、犯罪神マジェコンヌの行動を許してしまう。
「『ダークリング・フィールド』」
犯罪神マジェコンヌが、この次元のマジェコンヌの記憶で見たオレンジハートの秘技『シェアリング・フィールド』を、自らの力で似た性質の技を再現したのだ。
(おそらく奴はフィールドの範囲を限定し、前線にいる候補生の皆様のみを呑み込み、一網打尽にする気だろう……!)
フィールドが展開され、ギンガの言うとおり、闇の膜が候補生を呑み込む。
「候補生どもを一掃するつもりが、余計なものまでついてきたようだな。まぁ良い」
犯罪神マジェコンヌが前方に手をかざす。
同時に、魔力が解き放たれ、候補生たちは防ぐまもなくダメージを受ける。
「きゃあああっ!」
フィールドの効果で底上げされた犯罪神マジェコンヌの魔力に、候補生は反応が追いつかない。加えて、犯罪神マジェコンヌのフィールドの効果により、女神は大幅に戦闘力が低下され、身動きもままならないほど弱体化していた。
「これで貴様らは終わりだ。呆気ないな」
すると、ギンガがフィールドの外壁を破壊し、範囲内に侵入した。
「む……?」
「『シェアリング・フィールド』!」
ギンガはフィールド内でフィールドを展開し、候補生たちを襲うデバフ効果を押し返そうとしていた。
ギンガの出力では、犯罪神マジェコンヌのフィールドを相殺できない。だが、フィールドの効果を軽減することはできる。
「ふ……今の貴様に何ができる? このまま押しつぶしてやろう……!」
マジェコンヌはフィールドの展開に更にエネルギーを注ぎ込み、フィールド同士の押し合いを通してギンガを押し潰そうとする。
「ぐ……ぐぐ……っ!」
「諦めろ。貴様では力不足だ。と言いつつも、諦めるような性分ではないか、貴様は」
フィールドの展開に全神経を注ぎ込んでいるギンガだが、それでも犯罪神マジェコンヌに押し切られないギリギリで踏みとどまるのが精一杯だった。
「……ならば、そのまま死ね」
犯罪神マジェコンヌが更にエネルギーを込める。
「させ……ませんッ‼︎」
ギンガが押し潰される直前に、パープルシスターが傷だらけの身体をなんとか動かし、犯罪神マジェコンヌを『ギアナックル』で殴りとばす。
「ありがとうございます……パープルシスター……様……っ」
「こちらこそありがとうございます! ギンガさんのおかげで、なんとか動けました!」
「この隙に……フィールドだけでも破壊します!」
犯罪神マジェコンヌがフィールドから意識を外したほんの一瞬で、ギンガはフィールドを押し返し、相殺させてお互いのフィールドを消滅させる。
「ちっ……まぁ良いか」
しかし、劣勢なのは変わらず。
満身創痍の候補生とギンガ、対するはほんの少し消耗した程度の犯罪神マジェコンヌ。
「貴様らが死ぬことは変わらん」
フィールドを消しても劣勢は変わらず、犯罪神の圧倒的な力で候補生たちは蹂躙される。
「さて、ネプギア。今から貴様の仲間を、貴様の目の前で一人ずつ殺していく」
犯罪神マジェコンヌは、倒れてるネプギアの髪の毛を掴んで持ち上げ、そのままユニの方にゆっくりと歩いていく。
「や、やめろー!」
「……ん?」
「ぎあちーを離せー!」
すると、マホが犯罪神マジェコンヌに突撃する。
「マホちゃん! ダメ!」
「ふん」
しかし、犯罪神マジェコンヌに素手ではたかれ、地面に転ぶ。
「ふぎゃっ」
「貴様は確か……ぴーしー大陸の女神候補生だったか……」
「そう……そうだよ! あーしはぴーしー大陸の女神候補生マホ! あーしが相手だよ! 犯罪神マジェコンヌ!」
「女神化もできない女神の成り損ないに何ができる? 貴様如きを殺すのに一切の魔力も必要ない。その程度の存在だ、貴様など」
犯罪神マジェコンヌはネプギアを投げ捨て、自分に迫り来るマホを素手のみで迎撃する。
マホの攻撃を素手で受け流し、地面に転がし、踏みつける。
「ぐ……うぅ……」
「こんな程度の力でこの私に立ち向かおうかど、愚かすぎて笑えるな」
「うっ……さい! 弱かったら戦っちゃいけないの⁉︎」
「はぁ……?」
「あーしだって……守りたいものがあるんだもん! あんたがどんだけ強くなって……守りたいものを守るために戦うんだから!」
その瞬間、マホの目が光る。そして、光は全身へと伝播し、犯罪神マジェコンヌを吹き飛ばす。
「ぬぅ……」
「今のあーしならできる気がする……いいや、できる! 変身ッ!」
マホは己のシェアクリスタルの力を解放し、女神化を果たした。
「変身完了……グレイシスター」
ぴーしー大陸の女神候補生、グレイシスターが姿を現す。
そして、マホがグレイシスターへと覚醒したことで、ネプギアのシェアエネルギーに共鳴し、消耗により失った力が再び湧き起こる。
「マホちゃんの想い、私にも届いたよ」
ネプギアは立ち上がり、女神化する。
「ち……少し遊びが過ぎたようだ。だとしても……無駄だがな」
「それを決めるのはお前ではない」
ボロボロの身体を強引に立ち上がらせたギンガが言う。
「死に損ないが……女神ですらない貴様なんぞに何ができる?」
「それはお前自身が一番わかっているんじゃないか?」
言いながら、剣を構えた。
「ギンガさん、私たちも戦います」
「申し訳ありませんが、今の私の体力ではこの剣の一振りが精一杯です。パープルシスター様は、私の動きを見て、私の技を一つ覚えていただきたい」
「技……?」
「では……行きます」
言い終わり、ギンガが駆ける。
(おそらく、私の攻撃は通らない。しかし……パープルシスター様がこれを使えるようになれば……!)
「『ギャラクティカエッジ』!」
神速の一閃が犯罪神マジェコンヌに炸裂……することはなく、その動きは見切られ、剣は止められていた。
「マホちゃん……マジェコンヌからの攻撃は、任せてもいい?」
「はい……私が全て防ぎ切ってみせます」
「マホちゃん……変身したら喋り方変わるんだね」
「あ、いえ……これは……」
「ううん、すっごく良いと思う。じゃあ、行こう!」
「はい!」
ギンガの剣を犯罪神マジェコンヌが抑えている隙をつき、パープルシスターとグレイシスターが前進する。
「ふむ……貴様の狙いは奴らか」
「ぐ……うわっ」
犯罪神マジェコンヌはギンガを容易く弾き飛ばし、迫り来る女神候補生二人に魔法弾を放つ。
「私が……防ぎます!」
グレイシスターは腕につけている巨大なスマホ型のユニットを盾のように展開し、魔法弾を防ぐ。
「今です!」
防いだ瞬間、パープルシスターが盾の後ろから飛び出し、M.P.B.Lを振るう。
犯罪神マジェコンヌは反応が遅れており、またパープルシスターの攻撃力では自身へ大したダメージを与えることができない、という驕りがあった。
「はぁああっ! 『ギャラクティカエッジ』!」
「───ッ⁉︎」
しかし、その驕りが間違いだったことを知るのは、パープルシスターの剣技が犯罪神マジェコンヌに炸裂した直後だった。
マホのグレイシスターへの覚醒により発生した小規模の女神の共鳴が最後の引き金となり、パープルシスターは今まで見えていなかった自らの力の『核心』に触れた。そして、魂に届く斬撃『ギャラクティカエッジ』の使用条件を満たしたのだ。
「ぐ……ぅ……き、さまぁあああッ!」
「あなたが……」
パープルシスターが、先程までとは隔絶した強さを手にしていることを、犯罪神マジェコンヌは見抜けなかったのだ。
そして、苦し紛れに放つ反撃は、グレイシスターによって全て防がれる。
「……別の次元の私とどんな因縁があるのか、それはわかりません。けど、あなたは、私がここで倒します」
「ネプ……ギア……ッ」
「『ギャラクティカエッジ』」
一発のみならず、追撃に剣技を何度も振るう。
魂が斬り刻まれ、犯罪神マジェコンヌは悶え苦しむ。
「ネプギア……貴様だけはぁああっ!」
犯罪神マジェコンヌが己の中にエネルギーを貯める。
「貴様もぉ……道連れだぁああーっ!」
「……ッ!」
「ぎあちー! 逃げて!」
そして、貯めたエネルギーを解き放ち、自爆しようとした……
「させんぞ」
その瞬間、犯罪神マジェコンヌの身体が止まる。
「ようやく……魂が弱ったな。これで、この身体を取り戻せる! やめろ! この身体はもう私のものだ! お前は負けたんだよ、目の前の女神候補生にな。黙れ! 私の復讐はまだ済んではいない!」
そして、自分だけで会話を始めた。
目の前の不可解な言動に、パープルシスターはギンガの言葉を思い出す。
(そっか……今、普通のマジェコンヌさんと悪いマジェコンヌが戦ってるんだ!)
「マジェコンヌさん! もう何回か斬ります!」
「任せたぞ女神候補生ネプギアよ! やめろ! こいつの自爆は私が食い止める! 貴様、それでもマジェコンヌか!」
「はぁあああっ! 『ギャラクティカエッジ』!」
「やめろぉ! ナイスぅ! ぐわぁあああっ!」
そして、追撃で更に犯罪神マジェコンヌの魂を斬ったことで、本当のマジェコンヌが肉体の主導権を完全に取り戻した。
「犯罪神とやら……貴様の力だけはもらってやろう。後はもう……消えろ」
そしてマジェコンヌは、自らの身体の中に巣食っていた犯罪神の魂を喰らい、完全に消滅させた。
「すまなかったな、女神たちよ。助かった。そして……」
こうして、この世界に突如して現れた脅威は無くなり、世界に再び平穏が戻る……
「最後の戦いを始めようではないか」
筈だった。
「マジェコンヌさん……?」
「私は……貴様ら守護女神の敵だ。それなのに、くだらん情に絆され、本来の自分を見失ってしまった。私と貴様らは敵同士なんだよ。だから、決着をつけねばならん」
「でも!」
「今思えば良い機会だったのかもしらない。別の次元の『マジェコンヌ』を知り、私という存在がどういうものかを再確認するのは」
「そんなこと、あなたは望んでなんか……」
「黙れ!」
パープルシスターはなんとかマジェコンヌを説得しようとするも、拒絶される。
「最後の戦い……とはいえ、力を奪われ戦えん四女神と、今の戦いで力を使い果たした候補生どもでは……戦いにすらならんか。いや、ボロボロの相手を蹴散らす方が悪役らしくていいだろう」
「やめてくださいマジェコンヌさん! あなたは本当は優しい人だって、みんな知ってるんですから!」
「それが、お前の望みか?」
「ギンガ……」
犯罪神マジェコンヌにボコボコにされながらも、数分身体を休めなんとか立ち上がれるところまで体力を回復させたギンガが、マジェコンヌに問う。
「お前の考えなど分かっているぞマジェコンヌ」
「……」
「今のお前は、世界を愛している。だからこそ、世界の敵である自分が、世界の守護者たる女神様に討たれようとしているんだ。お前という存在が、またいつ別の次元の邪悪なマジェコンヌを呼び寄せるかわからないから、だろ?」
「……半分は正解だ。認めてやろう」
「もしそんなことになっても、また私が止めてみせます! だから、討たれようなんて言わないください!」
「黙れと言っている! 確かにギンガ、貴様の言っていることは当たっている! 半分な! だが、貴様らと戦うことのもう半分は私の本心だ!」
マジェコンヌは、己の本心を吐露していく。
「私は……私は……昔の私に戻りたかったんだ! 残忍で冷酷な悪人の私に戻って、何も気にせず貴様ら守護女神と戦いたかったんだ!」
「……」
「そうだ! 私の名はマジェコンヌ。四人の小娘たちが支配する世界に混沌という福音を齎す者だ!」
犯罪神から吸収した邪悪な力を身にまとい、マジェコンヌは高らかに宣言した。