転移ゲート開通後の
クワ・トイネと重桜
クイラと鉄血
ロウリアとサディア
トーパ王国
それぞれのお話です。
[クワ・トイネ 首都マイハーク]
Side外務局員ヤゴウ
エムブラ殿から転移前の世界と行き来できるようになったと報告を受けて唖然としていたら、さらには緊急で重桜の使節団が来ることが決まってしまった。
理解が追いついていない頭を何とか動かして受け入れの準備を急いだ。
使節団が到着するとクワ・トイネの広大な大地と大穀倉地帯に感動されていた。
重桜はいくつもの島からなる群島国家とは聞いていたので、地平線というものを始めて見たと喜ぶ姿に笑みがこぼれた。
そして技術支援についての話となったのだが、これについては相手方から申し訳ないぐらいの提供を受けることになった。
こんなに一方的でよいのかと不安になったのだが、
どうも向こうが焦っている様子なので理由を聞いてみた。
そして聞いた内容は、つい最近レッドアクシズに加入した北方連合という大国が食料危機を起こしているため
急いで運搬のための整備を進めないといけない、ということらしい。
どれぐらい必要なのかと聞くとかなりの量であった。
つまり重桜はここで北方連合とやらに恩を売りたいのだと理解した。
そうであれば下手に遠慮するほうが迷惑というもの、
有り難く提案を受け入れた。
ただ少しばかり誤算だったのは、快諾した次の日には
北方連合からの作業員も来て大工事を始めることになったことだろう。
国内インフラの一大改革だというのに自国が置いてけぼりを食らう羽目になるとはさすがに予想してなかった。
さらには北方連合からは感謝の印として今回のインフラ工事に使った
機材(一様旧式の物らしい)はすべて我が国に提供してくれるとまでいってくれた。
…………作業用のWAWだけでも100体近い、各種作業車両が山のような量を、である。
…………うちでは使い切れないと思われるのでクイラやロウリアにも格安で輸出することにした。
[クイラ王国]
Sideクイラ外務局員
カグヤ女史経由で鉄血公国がどういう国なのかは聞いたが想像以上の実力主義国家なのだと感じていた。
使節団の代表は"皇帝"候補生と名乗っていたため皇室の人間なのかと聞いたら同じ鉄血人であること以上の繋がりはないと言われた。
鉄血公国では次代の"皇帝"を育成するための教育機関があるらしく、彼はその一人ということだ。
事実、前"皇帝"と現"皇帝"に血縁は無く、また息子はいたのだがこの教育機関に合格できずに勘当したらしい。
当の息子は身軽になったと喜んでおり、国内五指にはいるWAP乗りとして大成したとのこと。
国を纏める"皇帝"に必要なのは、統治能力と判断力であり鉄血人であれば血の正当性は必要無い、とは我々からすると凄い考えた方だ。
そのためか我々が獣人であることについて見下すようなことはなく、寧ろ身体能力の高さが羨ましいとまで言われてしまった。
そして国内の資源採掘についての話となるとそれはもう精力的に取り組んでいた、仕事人気質な人種なのだと改めて思う。
下手に口出しができないほど精密な計画案を出されてしまい、少々困ったのは内緒である。
[ロウリア王国]
Sideハーク・ロウリア
異世界との本格的な支援と介入が始まって直ぐに、サディア帝国からの要請で政治形態の見直しが打診された。
我々は敗戦国故に仕方ないと思っていたのだが、状況を理解出来ないバカ貴族共から文句の嵐だ。
やれ伝統がだの、利権がだの、誇りは無いのかだの、ペラペラと口が回るものだ。
そして地方貴族の代表達と我々でサディア代表とジン・ハーク王城にて会談をする予定だったのだが、
相手方から急遽王都北の港まで来てほしいと言われてた。
向かうと港は何やら騒ぎになっていたが理由はすぐにわかった。
海の上に白亜の宮殿が建っていた。
無論それが船であることは頭では理解してはいたが、
以前見たレッドアクシズの大型軍艦にも負けない200m級のサイズである。
【サディア・グローリア(サディアの栄光)号】と名付けらた船に案内されると中はもはや天上の世界かと思ってしまうほどの豪華絢爛の内装であった。
そして案内された先の部屋は王城の謁見の間のような場所であり、
奥の玉座には金髪赤眼の真っ赤なドレスを着た一人の若い女性が足を組んで待っていた。
サディアの代表が跪き、美しきサディアの紅き華と讃えていた。
サディアの紅き華?………まさか"女帝"陛下か!?
以前リットリオ殿が言っていた"女帝"への賛美の言葉を思い出し、
私も慌てて跪くと周りも事態を理解して跪いた。
サディアの紅き華、または
小心者であった前"帝王"の落胤であり、15歳にして"帝王"と皇妃を排除して今の地位を手にした女傑。
まさか国のトップが事前連絡も無しに来日するとは夢にも思っていなかった!
もしや遅々として改善が進まないこちら側の現状に怒り首切りを始めるのかと戦々恐々していたが、
特にそういうことではなかった。
華のような笑顔で新たな同胞を迎えれたことに感謝すると天真爛漫な様子で歓迎してくれた。
"女帝"はサディア側の要請として元老院の設立すること、現在のサディアの政治形態を真似てくことでのメリットを教えてくれた。
比較的ロウリア側にも受け入れやすい内容であり、反対派だった貴族も納得を示すものが多かった。
だが反対派の重鎮が焦って侮辱ともとれる馬鹿な発言をしたことで空気が変わった。
先程まで華のように笑い、笑顔を振りまいていた"女帝"の紅い眼が氷のように冷たくなる。
視線で人が殺せると思うほどの圧に反対派の重鎮が泡を吹いて倒れた。
"女帝"が視線で合図すると護衛が倒れた馬鹿貴族を引き摺って退室した。
すると機嫌が戻った"女帝"はにこやかに言った。
異論はあるか?
我々は黙って首を降るしかなかった。
レッドアクシズの女性達といい、向こうの世界の女性はおっかないのしかいないのか?
[トーパ王国]
Sideトーパ王国大使
魔王軍の出現の報と全滅したとの報が同時に舞い込んできた時以上の
理解不能な報告が修繕中の"世界の扉"から王城に舞い込んできた。
『グラメウス大陸が噴火している』
『グラメウス大陸南東に建造物ができ始めている』
なんのことだと思っているとレッドアクシズからの書状が届いたとの連絡がきた。
…………絶対にソレだ!
慌ててその書状を持って王の元に向かう。
そして王や側近達の前で書状を開いて中身を確認する。
『グラメウス大陸を開拓しますので騒がしくなります。ご迷惑をおかけして申し訳ありません』
………要約するとこういう内容だった。
私や側室達が口を開けて混乱している中、王の忍び笑いがよく響いた。
そろそろ二章に入ります。