[パーパルディア皇国 皇都エストシラント]
Sideルディアス
パラディス城の一室、エストシラントを一望できるテラスでグラスに注がれたワインをスワリンして香りを楽しんでいた。
「そろそろ開戦した頃か、まったくアルタラスも愚かなことをしたものだ。
要求を飲めば滅びはしなかったものを」
戦勝祝いがてらのワインを一口飲む。
少々気が早いとも思ったが負けることなど万に一つもない。
ただ気がかりだったのは本来一緒にこの場にいるはずの人物がいないことか。
「レミールの奴、余との一時より仕事が大事か?」
最近レミールの付き合いが悪い。
最初は女性特有のアレで体調が悪いのかとかと思ったが、
政務については今まで以上に精力的らしい。
そして調べさせてみると、どうやらリットリオなる僻地の新興国家の大使と会ってから
様子が変わり始めたことが分かった。
文明圏外国や属国にも興味が出てきたのかそこら中から資料を掻き集めてるとのことだ。
もしやリットリオなる者に誑かされたかと思ったが、
どうやら女性らしいく、レミールにも今度紹介したいと言われた。
レミールの愛を疑ったことを恥じた余は、謝罪として胸の内を明かした。
パーパルディアをさらには大きくする。
いずれはムーやミリシアルをも手にし、
世界はパーパルディアの威光のもとに統一されるのだ、と。
レミールであれば喜んで賛同してくれると思っていたが、その表情は固かった。
疑問に思っているとレミールが恐る恐る聞いてきた。
「陛下には、このパーパルディアがどう見えますか?」
「おかしなことを聞く、世界を統べるに相応しき国だよ」
「………はい、レミールは何処までも、お供します」
そう返事をしたレミールの表情は笑顔であったが少しばかり影があった。
恐らくこの先に待ち受けるムーやミリシアルの二大国との争いを不安に思ったのであろう。
やはり理解ある聡明な伴侶があってこそ我が野望も近づくというものだ。
レミールの懸念通り、確かに今のままでは難しい。
故にアルタラスの魔石鉱山を手にする必要がある。
「アルタラスには我が覇道の礎になってもらおう」
[アルタラス王国 外洋]
Sideルミエス
お父様がパーパルディアからの理不尽な要求に怒り、戦争が始まってしまった。
そして私は、もうすぐ祖国の海域を出てしまう。
お父様との今生の別れに深い悲しみと国民を見捨て、これからの苦難の道のりに心が締め付けられる。
だが希望はある、この旅の先にあるかの国。
レッドアクシズ。想像を絶する力を持ち、そして弱き者らを救う御伽噺のような存在。
ただの風の噂であるかもしれない、だがお父様が言ったのだ。
『レッドアクシズは存在する、そこを頼りなさい』
お父様は噂のに縋るような人ではない、きっと確信がある。
「どうか我らの旅路に祝福を……」
そう祈っていると慌てた様子で上級騎士であるリルセイドが入ってきた。
「ルミエス様!大変です!」
「どうしたのですか?」
「前方に見たこともない船が複数、こちらに向かってきています!」
その言葉を聞き、私も慌てて外へと向かう。
甲板に出ると既に形がハッキリと解るほどにまで"ソレ"は接近してきていた。
帆を貼っていないのに凄まじい速度で突き進む鉄のような外装の船。
そして先頭の大きな船にはためく紅旗の十字紋様。
ああ!御伽噺は本当に存在した!
「ルミエス様、どの道振り切ることは不可能です。
いかがなさいますか?」
「これも運命の導きです!接触を図りましょう!」
「解りました!」
お父様、ルミエスは必ずや祖国を救う運命を掴み取ってみせます!
Sideチェシャー
前方からきた船がこちらの進路を遮るように停まる。
船員らしき人影が必死に手を降っている……?
………もしかして故障したのかにゃ!?
大変!すぐに助けてあげないと!
「緊急事態!全艦停止!全艦停止!」
『『『ピィ!』』』『『『ニャア!』』』
「本艦は減速して前方の船を救出する!お仕事開始!」
『ニャアン!』『ピピィ!』
チェシャーの船体をゆっくりと前方の船へと近づけていく。
その間にも急いで救急キットや毛布を掴んで船外へと飛び出る。
「大丈夫ですかぁ〜!?怪我人はいますかぁ〜!?」
「え、はい?怪我人はいませんが……?」
身なりの整った女性とお嬢さんが不思議そうにこちらを見てくる。
あれ?そこまで切羽詰まってない?
後ろには饅頭とオフニャ達がありったけの浮き輪とロープを持ってどうしようと、困っていた。
「あれ?船が故障したから助けを求めてたのじゃないの?」
「いえ、船は大丈夫です!ですが別件で助けを必要としてます!」
「なんと!?一体なんですにゃ!?」
「わが祖国を、アルタラスをお救いください!」
………へ?アルタラス?
「ゴメンにゃ、ここはどこですか?」
「アルタラス島の外洋、ですが……?」
アルタラス島、ロウリアの西にある大島。
……………間違えたぁ〜!!!
ごめんなさい、カグヤお嬢様。
チェシャーはお遣いに失敗しました。
ショックで真っ白に燃え尽きながら膝から崩れ落ちる。
『『シッカリニャ!』』『『キズハアサイピィ!』』
「「ええ……?」」
チェシャーが立ち直るまで、この混沌とした空気はそのままであった。
[計画艦重巡洋艦"チェシャー" 艦内客室]
Sideルミエス
「ゆ、許せない!ルミエスちゃんをそんな酷い目に合わそうなんて!(# ゚Д゚)
その悪党をチェシャーが成敗してやるにゃ!ヽ(`Д´)ノプンプン」
目の前の給仕服?のような格好の獣人、チェシャー様が顔を真っ赤にして憤慨して机をバンバンと叩いている。
彼女がこの船団の最高責任者と聞いた時は驚いたが、事実らしい。
そしてある程度こちら視点とはいえ概ね事実を話したのだが、彼女は心から私達のために怒ってくれていた。
初接触の時に崩れ落ちていたのはどうやら別任務を帯びていたが、
間違ってアルタラス島へと着てしまったらしい。
そうなると本当にここで出会えたのは運命であったのだろう。
「今すぐルミナスちゃんの故郷に向かうにゃ!」
[王都ル・ブリアス アテノール城]
Sideターラ14世
パーパルディアとの海戦で海軍は劣勢、上陸も時間の問題だと思われた時に緊急の報が入った。
「東海岸に複数の不審船とな?」
「はい、陸からたまたま見かけた者によるため
詳しくは解りませんが見たこともない形状とのことです」
「それともう一つ、先程ルミナス様が国外脱出に使われた船が帰還しました。
船員の話によりますとその不審船の一隻にルミエス様がご同乗してるとのことです」
「なんだと!?」
馬鹿な!娘にはロウリア王国経由で、かのレッドアクシズと接触して保護してもらうとしていたのに!
「ルミエスは無事なのか!?」
「ええ、それとルミエス様から国王に伝言を預かっています」
「……なんと?」
「内容は『祖国の救い、紅旗の援軍』だそうです」
「紅旗……、レッドアクシズか!」
「恐らくはその不審船がそうなのでしょう」
「………戦場に向かうぞ、護衛騎士を呼べ!」
私は事態を把握するためにパーパルディアが上陸するであろう北側沿岸地域へと向かうのであった。
[計画艦重巡洋艦"チェシャー" 艦橋]
Sideチェシャー
ルミエスちゃんとリルセイドさんの案内で戦地へと向かっていると木造船の船(戦列艦というらしい)がいっぱい浮かんでいる。
浜辺には木造の揚陸艦みたいなのがいくつか見かける。
「ここがルミエスちゃんの故郷?」
「はい、ですが………」
「こちらの海軍の姿は無し、パーパルディアの上陸を許している……」
む、では見えるのは全て悪党、なら考えるまでもない。
味方を誤射する心配がなければ簡単なこと!
「全艦に通達!チェシャーを先頭に単縦陣で突撃!上陸船達と敵艦隊の間を抜けるにゃ!!!(・∀・)」
「はい?」「はぁ?」
重巡洋艦である自艦を先頭に、
【外洋側】
悪党艦隊
↑↑↑
重巡、軽巡、駆、駆、駆、軽巡、駆、駆、駆
↓↓↓
揚陸部隊
【沿岸側】
工作艦はルミエスちゃんの乗っていた船と一緒に退避させているので問題無し。
これなら両舷に無駄なく攻撃ができる!
ふっふっふっ、完っ璧!
「敵艦隊を射線に収め次第魚雷を発射!その後は目標に砲身が焼けない程度に撃って撃って撃ちまくるにゃ!!!」
『『『『『リョウカーイ、ニャ(ピィ)!』』』』』
「え?あの……!?」「チェシャー殿!?」
機関最大!敵艦隊の側面に魚雷の射線が通るように前進する。
……もうすぐ……もうちょい、……ココ!
「今!全艦魚雷発射!ナガラ級はチェシャーと共に敵艦隊に、フブキ級は上陸部隊を集中的に砲撃開始!」
やーてやるにゃー!!!(☆▽☆)
[アルタラス北側沿岸地域 揚陸地点]
Side陸戦隊長バフラム
これは夢か、そうだ夢に決まっている。
ドンドンドドドン!!!
「うわぁー!」
「退避!退避しろ!」
「くそ、逃げ場が……ぎゃっ!」
敵艦隊の放つ魔導砲が凄まじい勢いで被害を拡大していく。
上陸援護の100門戦列艦が、砲艦達が爆発する。
接岸していない揚陸艦が中身ごと弾ける。
地面が爆発するたびに数人が空を舞った。
直撃を受けた地竜リントヴルムが消し飛んでいく。
我が国が誇る精鋭が消えてなくなっていく……。
これは夢だ!夢に決まっている!早く目覚めなくては!
は、ははぁ!はひ!ひゃひゃひゃ!!!……はひゅ?
はて?何故自分は空を飛んでいるだろうか?
その疑問に答えが出ることなく、意識を失った。
[パーパルディア皇国軍 旗艦"シラント"]
Side将軍シウス
艦隊の東側から所属不明艦隊が近づいて来ていると報告を受けてまだアルタラス艦隊の生き残りがいたのか、
と思っていると凄まじい砲声が鳴り響き始めた。
「なんだ!?何が起きてる!?」
「報告!東からの不明艦隊が我が艦隊と揚陸部隊の間に突入!揚陸部隊と我が艦隊を攻撃してます!」
「なんだと!?被害は!?」
「既に上陸艦隊が大損害を受けてる模様!他の被害は不明!」
報告では埒が明かないと思い甲板に飛び出し望遠鏡を取り出す。
我が艦隊の正面を見たこともない形状の鋼鉄の艦隊が凄まじい勢いで前進している。
特に先頭の鋼鉄艦なぞ我が"シラント"を超える巨躯ではないか!?
それにあの形状、あれはもしやムーの……!?
そう驚愕しているのもつかの間、前進を始めていた東側の戦列艦一隻が
比喩ではない、船底から大爆発を起こして船体が上に跳ねたのだ。
続いて一隻また一隻と同様のことが起こり、最終的に11隻が吹き飛び、近くにいた3隻が巻き添えで大破した。
周りの船員達も何が起きたのか理解できず、ただ呆然と眺めていた。
「………今すぐ後方の竜母に連絡!ありったけのワイバーンロードを飛ばして敵を撃滅しろ!!!
艦隊前進!逃げ場を塞いであの鋼鉄艦を囲めぇ!!!」
[計画艦重巡洋艦"チェシャー" 艦橋]
Sideチェシャー
「にゃはー!いけいけゴーゴー!!」
敵の戦列艦が脆すぎて過貫通を起こし、たまに3隻ぐらいを纏めて大穴を開ける。
まぁ、チェシャー自慢の234mm連装砲3基6門にかかればこんな連中ブリキ缶以下だにゃ!(☆▽☆)
113mm両用砲やナガラ級の140mm単装砲でも一発で誘爆を起こしてるぐらいだからしょうがない。
陸上を攻撃していたフブキ級も127mm連装砲による陸上攻撃は順調と連絡が来ている。
しかし数が多すぎて砲身の冷却が間に合わなくなってきている。
ならばやることは一つ!
「攻撃の回転数を上げるし!チェシャーの”弾幕”をくらえ!」(☆▽☆)
無数の肉球スタンプの弾幕が戦列艦の船体を貫き、さらには巨大な猫の手が空から降ってきて戦列艦を叩き潰す。
「見たかにゃ!これがチェシャーの自慢の肉球弾幕!!」
「………(唖然)」「………(白目)」
むう、ルミエスちゃん達の反応がイマイチ。
派手さはなくともかわいいのに〜。
『レーダーニヒコウブッタイ!ニャ!』
「ワイバーンライダー!?各艦対空戦闘開始!」
魚雷が燃えたら大変にゃ!全部叩き落とす!
チェシャーの113mm両用砲*1と対空機銃*2による迎撃を開始する。
ナガラ級とフブキ級からも25mm三連装、又は連装対空機銃を撃ち始める。
敵ワイバーンは報告にあったものよりも速かった気がしたが、
大した差異ではなかったので気のせいだろう。
にゃっははは!チェシャーに近付きたくばその3倍は連れてくるにゃ!
「す、すごい!すごいです、チェシャーさん!」
「ワイバーンロードが、こうもアッサリと……!」
おお!ようやくチェシャーの凄さがわかってくれたみたい!
(※ただ単にようやく理解が追いついてきただけである。
)
さぁ!ガンガンいくにゃー!
Side皇国軍竜騎士
クソ、ろくな情報もなしに出撃させやがって!
緊急発艦の要請を受けてのことだが、これはあまりにも理不尽だろ!?
『駄目だ!避け…、!』
『クソがぁ!隊長が墜とされた!』
『魔導砲が空中で炸裂してやがる!』
『光弾に絡め取られる!誰か助……』
皇国が誇るワイバーンロードが為す術もなく蹂躙されていく。
なんてことだ、導力火炎弾の有効距離に近づくとこさえ出来ないぞ!?
……ん?この進路は……!不味い!奴らこのままだと竜母を補足するぞ!?
「緊急連絡!竜母を退避させろ!このままだと奴らの進路上にぶつかるぞ!」
「さぁ!派手に吹き飛ばしてやるにゃ!魚雷装填!」
ここまでの快進撃に勝利の女神は間違いなくアルタラス王国に、チェシャーに微笑んでいた。
「魚雷発射!」
だが勝利の女神とは気まぐれである。
ドゴーン!!!
「ぎにゃー!?」「きゃー!」「姫様!?」
"チェシャー"の船体が激しく揺れる。
「何事です!?」
「え、え〜と?……右舷が吹き飛んでる!?!?」
起きたことは奇跡的な確率であった。
弾薬が誘爆して弾け飛んだ戦列艦の魔導砲本体が一基、
空高く舞い上がった。
その魔導砲が”チェシャー”の船体の直上から落下、
たまたまそこに四連装魚雷管から発射直後の魚雷に直撃。
魚雷4本がそのまま誘爆、”チェシャー”の右舷中央の船体を抉ることになった。
『センタイニキレツ!』『シンスイヤバイニャ!』
「あ、あわわわ!機関停止!速度落とすにゃ!」
このまま戦闘機動をすれば船体が折れかねないほどのダメージが発生していた。
[パーパルディア皇国軍 旗艦"シラント"]
Side将軍シウス
敵の先頭艦が爆発とともに黒煙を上げる。
また何かが起きるかと身構えたが、敵艦の速度が明らかに落ち始めた。
………これは最後のチャンスだ!
「全艦反転!今のうちに撤退する!」
「将軍!?ここは攻めるチャンス……」
「馬鹿者!後続の艦隊は健在だ!
ここで超フィシャヌス級戦列艦と竜母を損失するわけにはいかん!
全艦に通達、撤退だ!」
副官はなにかを言いたそうだったが、私の悲壮に歪んだ顔を見て口を噤んでくれた。
黒煙を上げた敵艦隊は停止し、追撃をしてくる気配はなかった。
この屈辱、絶対に晴らしてやる!
[計画艦重巡洋艦"チェシャー" 艦橋]
Sideルミエス
チェシャー様が申し訳無さそうに現在の状況を話してくれた。
どうやらトラブルで船が大きく破損していまい、これ以上の戦闘は厳しいというもだった。
「ごめんにゃ、追撃は無理……」(´・ω・`)
「いえ大丈夫です!」
「パーパルディアも撤退を始めました、十分ですよ」
落ち込むチェシャー様をリルセイドとともに慰める。
「チェシャー様がアルタラス王国を守ってくださったのです!
敵を逃したことより、そのことを誇りましょう!」
「ルミエスちゃん……!ありがとうにゃ!」(TдT)
ああ!チェシャー様が泣き出してしまった!
私達は四苦八苦しながらチェシャー様を慰めるのであった。
[アルタラス島 外洋小島]
Side???
海戦が勃発する少し前より角を生やした白銀色白の少女が一人、旧世代艦同士のチンケさに爆笑しながら
さらに登場したKAN-SENのコメディな戦いを興奮しながらポップコーン片手に観戦していた。
カグヤに頼まれてつまらない捜索を頼まれたけど、
思った以上に面白いものが見れた!
「あー、楽しめた!
さて、そろそろ迎えに行きますか!」
黒いパーカーをはためかせながら、自身の艤装を虚空から呼び出す。
出てきたのは機械仕掛けの深海魚、フクロウナギであった。
「このオミッター様が直々に迎えに行ってやるんだ!
ちゃんと歓迎してくれよな!アッハハハハ!」
セイレーンの一体、オミッターは高笑いしながら海上を疾走し始めた。
イベントとかに集中するので少し更新が開く予定です。