異世界にレッドアクシズの名を刻む!   作:有澤派遣社員

18 / 76
今回はレッドアクシズのターン


科学文明との接触

 

[海上要塞"ヴァルハラ" 港湾区画]

 

Sideルミエス

 

ここがチェシャー様たちの、レッドアクシズの本拠地……!

構造物以外は殆ど真っ平らな黒い石と金属の大地。

チェシャー様から人工の島とは聞いていたが実際に見ても理解が追いつかない!

リルセイドは何度も地面を踏み、異様な踏みごたえに震えている。

オミッター様も先程までご一緒でしたが、パーパルディアの捕虜を連れて別の区画に行ってしまわれた。

 

「どうにゃ!ここがチェシャーのお家!カグヤお嬢様のお城にゃ!」

「凄い、としか言葉が出ません……」

「やはり土でも岩でもない……、本当に人が作ったものなのか!?」

 

遠くの方では見たこともない乗り物らしきものがいくつも見え、巨大なゴーレムが何体も列んでいる。

空を見上げると轟音を鳴らしながら飛竜ではない何かが頭上を通り過ぎた。

ただ圧倒される光景に固まっていると、二人の人影がこちらに向かって歩いてきていた。

一人は水色の髪を靡かせ、三叉の槍を持ったメイド服のような格好の女性、

もう一人は夕焼け色の髪に軍服のような格好の女性だ。

 

「ネプチューン!モナーク!お迎えありがとうにゃ!

聞いて聞いて!チェシャーお遣いには失敗したけど……」

ガシッ!

「へ?」

「アホンダラを確保」

ガシッ!

「あれ?」

「大馬鹿者を連行する」

 

………チェシャー様が両腕を掴まれて引き摺られていく。

え?連行?どういう状況!?

リルセイドもどうしたらいいのか反応に困っている。

するとモナークと呼ばれた女性がこちらに視線を向けた。

 

「ご客人、済まないが重要参考人として着いてきてもらいたい。

我らの指揮官殿が是非お話を聞きたいとのことだ」

「「はい!」」

 

有無を言わさないあまりの迫力に私達はただ頷いてついていく。

 

「な、なんでにゃー!」

 

チェシャー様の叫び声が虚しく青空に響き渡るのであった。

 

 

 

■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇

 

 

 

[ヴァルハラ中央区 執務室]

 

Sideカグヤ

 

「罰として一週間その格好ね」

「にゃあ……」(頭にでっかいタンコブ)

 

チェシャーがうなだれながら首からぶら下げたプラカードに視線を向けている。

《私は報・連・相を怠りました》

軍規違反としてはふざけてるのかと突っ込まれそうだがあくまで緊急の人道支援であったとゴリ押すしかない。

上層部も対応に頭を抱えてるので大事にしたくないのが本音だけど……。

因みに軍祭に出ていたメンバーも報告書とは別に反省文を書かせた。

先制攻撃を受けたとはいえ自衛戦闘以上のことはやってしまったからね。

…………ここでしっかり締め上げないと一部のKAN-SENが拡大解釈で戦果目的の戦闘を吹っかけかねないからだ。

ドイッチュラントとか、加賀とか、大鳳とか、特にローンとか!

チラッとチェシャーが連れてきた人物達に視線を向ける。

 

「申し遅れました、レッドアクシズ指揮官、カグヤ・エムブラといいます。

それで、貴女方がチェシャーに助力を求めたで合ってる?」

「は、はい!アルタラス王国の王女、ルミエスと申します!」

「護衛のリルセイドです!」

「大まかな事情は確認しました。

………貴女方の境遇には同情はします。

ですが他国の軍隊に戦闘を強要したことについて何か弁明は?」

 

ルミエスさんとリルセイドさんの口が震え、顔色が真っ青になる。

何か言わなければならないが下手なことを言えない、そう表情に出ている。

この状況を理解して悪いことをしたという自覚があるようだ。

ならこれ以上虐めるようなことはしたくない、二つ返事で快諾したチェシャーにも非はある。

 

「………アルタラス王国との国交については緊張状態であることもあり承諾しかねます。

そして今回の件について私は貴方方に不信感を募らせています。

そのため暫くの間貴方の国を我が軍の監視下に置かせてもらいます。よろしいですね?」

「……!?は、い……!」シュン

「……!?(クソ!やはりコイツも列強どもと同じ……)」

「チェシャー、船体の点検と修理が数日後で完了する予定だからそれまではご客人の付き添いをお願い。

そして点検終わり次第、特使を連れてアルタラス王国に向かい監視を行いなさい」

「にゃ?」「え?」「は?」

 

援軍としては戦力を出せないが、監視のために仕方なく(・・・・)軍を派遣しないとね。

そして派遣先で戦争に巻き込まれたら仕方なく(・・・・)自衛をしないとね!(すっとぼけ)

 

「ネプチューンとモナークもチェシャーに同行、補助してあげて。

流石に監視任務如きにKAN-SEN3人は過剰かもしれないけど念の為にね?」

「了解しましたわ!」

「了解だ」

 

二人が快諾するとチェシャーが目を潤ませて私の方を見てくる。

 

「カグヤお嬢様……!」

「チェシャー、貴女が始めたことよ。

………最後までやり通しなさい」

「あ、ありがとにゃー!」(´;ω;`)

「格別の配慮、謹んで受け入れます……!」ウルウル

「ありがとうございます!(私が浅はかであった、なんと寛大な)」

 

もうルミエスさん達も大げさだな、涙流して感謝してくれるなんて。

 

「とりあえずこちらからのお話はこれでおしまいです。

出来ればもう少しゆっくりとお話をしたかったのですが、

このあと私も出港しなければならないので申し訳ありません。

客室はご用意しますので寛いでいってください」

「にゃ?どこ行くの?」

「ちょっと遠くへ、第2文明圏国ムーだよ」

 

この世界で数少ない科学文明国、国交を結ぶにこっちも万全を期さないとね!

 

 

 

 

■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇

 

 

 

[サディア帝国 "女帝"私室]

 

Sideリットリオ

 

「ロウリアの貴族も概ね整理(・・)が完了しました。

今後はハーク・ロウリア34世を議長にした貴族議会にて国の方針を決定していくようになります。

また以前提案されていた平民の議会参戦はまだ時間がかかりそうです」

「うむ、ご苦労。………貴族以外の者らにももう少し政治に興味を持ってもらわんといかんな」

「少し前まで貴族に支配されているのが当たり前だったのですからしかたありませんよ、"女帝"陛下」

 

我らがサディアの紅き華は天蓋付きのベッドにゴロンと寝そべりながら溜息をつく。

 

「う〜む、民主政治とまではいかなくとも平民の知識層が政治に関わらんとまた貴族共の整理(・・)しないといかんくなるのだが………。」

「今回ほどの強硬策はできれば避けたいです」

「やはり腐れ貴族どもとはいえ、少々派手にやりすぎたか?」

「はい、不満というより畏怖され過ぎてます。

傀儡国家を作りたいならまだしも、そのようことをコチラは望んではいませんから」

 

サディアとしてはロウリアは完全な配下ではなく協力関係ぐらいを望んでいる。

属国にしてもいずれは利益より負債が上回るのは大エウロラ帝国時代で嫌というほど解っている。

 

「はぁ〜、メンドクサイ!余は好きに生きたい!

好きなように遊んで!楽して金を稼いで!自堕落に生きたいのだぁ!」

「身も蓋もないことを言わないで下さい………」

 

まるで駄々っ子のようにジタバタする"女帝"陛下(20代)に思わず溜息をついてします。

こんな我儘な方だが”欲を嗅ぎ取る”という点については稀代の天才だ。

財政難になったサディアの国庫を帝位について僅か三ヶ月で4倍強にしたのは元老院達も舌を巻いていた。

………黒い噂の絶えなかった貴族どもがいつの間にか行方知れずになったり、

ロイヤル、アイリス、ユニオンの大物政治家や資本家達が相次いで辞職・逮捕されたりして、

事態を把握した元老院達が皆顔を青褪めさせてた時点で”稼ぎ方”はお察ししてほしい。

 

「とりあえず報告は以上になります」

「ご苦労、では労いがてら今日は”一夜”を一緒にせぬか?」

 

目をキラキラさせながらベッドをポンポンと叩いておられる。

私もパーパルディアの件を早急に対応したいから”向こうの世界”にもどらねばならんのだがな……。

陛下は”夜戦”限定でKAN-SEN並に体力あるからお相手が大変なのだ。

しかし機嫌を損ねるとここの侍女達に迷惑をかけるな。

 

「わかりました、しかし後悔しないでくださいよ?」

「言うではないか、余も手加減しないぞ!」

 

 

…………"一夜"の結果は私の勝ちだった。

涙を流しながら必死に負けを認めず意地を張る陛下はたいそう可愛かったとだけ言っておこう。

 

 

 

■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇

 

 

 

[ムー アイナンク空港]

 

Sideマイラス

 

早朝から呼ばれた空軍基地の廊下を足早に進んでいたのは”とある報告”が原因だ。

目的の部屋に入ると上司な数名の軍関係者と外交官がすでに席に座っていた。

 

「マイラス技術士官、待っていたよ」

「お呼びありがとうございます、報告は聞きました。

………レッドアクシズですね?」

「ああ、夜明け前に我が国の領海付近で巨大な機械動力船を一隻、海軍が発見した。

臨検をした結果、レッドアクシズの代表を名乗る者から我が国との国交交渉を行いたいと打診があったそうだ」

 

ついに来たかと改めて思う。

レッドアクシズ、正直情報がまだまだ揃っていない現状、

少しでも情報がほしい。

 

「相手はどのような船ですか?」

「それが……恐らく空母、らしい……」

 

何とも煮えきらない軍関係者の言葉に上司とともに首をひねる。

 

「なぜそんな曖昧な答えなので?」

「………船体がデカすぎて判断しきれんのだ。

信じれんことに戦艦"ラ・カサミ"の倍、全長250mは超えるそうだ。

遠見でみた際に平らな船体であったから恐らく(・・・)空母だろうと現場は判断したようだ」

「なんと!?……いや、すみませんどうぞ続きを」

 

驚愕に浮かせてしまった腰を席に戻しながら内心かなり焦っていた。

空母を持っていることにも驚いたが、その大きさが余りに予測の範囲外だった。

一体どれだけ化け物じみた動力を抱えてるのだ!?

 

「しかしそれだけ大型ですと入港できる場所が……」

「いや、向こうからは近海まで入らせてくれるなら”ヘリ”なるもので向かうから、

飛行許可がほしいと打診がありました。」

「”ヘリ”……?」

「ええ、なんでも垂直に離着陸ができる飛行機械なので滑走路はいらないと……」

「はぁ!!!」

 

今度こそ机を叩いて立ち上がってしまう。

上司も驚愕に固まって唖然としている。

軍関係者も理由は察したのか特に何も言わないが、

状況を理解できない外交官が疑問を口にする。

 

「そんなに驚くことなのですか?空母があるなら飛行機械ぐらい……」

「ただの艦載機なら驚きませんよ!……失礼取り乱しました。

ええ、ただの滑走路を使う艦載機なら大して驚きませんでした。

しかし垂直離着陸ができるとなれば話は全く違います。

垂直離着陸できる飛行機械はミリシアルにも無いと言えばご理解できますか?」

 

ことの重大さを理解した外交官が驚くような顔をする。

つまりレッドアクシズはムーやミリシアルに匹敵、もしくは超える技術力を持っていることになる。

 

「到着はいつ頃に?」

「いま空軍より先導機を送っているのでそろそろかと」

「……解りました、では向かいましょう」

 

我々は直ぐに到着予定の場所へと向かう。

”ヘリ”という未知のモノへの興味とレッドアクシズへの対応への緊張で胸はいっぱいであった。

 

 

 

■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇

 

 

 

[ムー 港湾商業都市マイカル 近海]

 

Side統括空軍"マリン"パイロット

 

「くそ、レッドアクシズとかいう文明圏外国め!

もっと昼の時間に来いよ、あ〜寝みー」

 

朝からスクランブル食らってイライラしていたが”ソレ”を見てそんな気持ちは吹き飛んだ。

近くの海軍船が小舟に見える、どんだけバカでかいだこの船!?

しかもこの形状空母だよな?どれ程の艦載機を搭載可能なんだ?

とにかく今は任務を優先だ、甲板にいるが………?

おかしい”アレ”、マリンの横幅よりデカいぞ?

上に付いた2つのプロペラが回転し始める。

………浮いた、ほんとに飛んでるぞ!?

高度を上げて来たのでこちらも近くまで機体を寄せる。

全身装甲を纏ったまさに金属の塊だ、これだけの重量物がなんで飛んでるんだ?

しかも操縦席らしきものもパッと見た感じ見当たらない。

おそらく前方のにあるはずだがそこにも装甲が貼り付けられている。

…………現在時速200km、こんなデカブツでこの速度が出るのか。

 

「レッドアクシズか、ちょっと興味が出たな」

 

 

 

■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇

 

 

 

[ムー マイカル上空▶アイナンク空港]

 

【レッドアクシズ使節団】

【艦艇顕現】

・空母 大鳳

【同伴KAN-SEN】

・計画艦重巡洋艦 ローン

・空母 翔鶴

・空母 瑞鶴

 

〘重装甲大型ヘリ*1・兵員輸送型〙地形データ収集中

操縦席 ローン

同乗者 カグヤ 大鳳 翔鶴 瑞鶴

 

Side大鳳

 

「指揮官様♡はい、あーん♡」

「あ、あーん」

 

カグヤが恥ずかしながら手作りサンドイッチを食べてくれる。

悔しそうな翔鶴と羨ましそうな瑞鶴、ふふ!

ジャンケンで勝ち取った朝食係ですから文句は言わせません。

顕現させた艦をキューブに戻すと無用な混乱起こすと判断したため、

艦艇はそのまま置いてきたが饅頭達もいるし最悪遠隔操作でなんとでもなる。

 

「ごちそうさま、美味しかったよ大鳳」

「あ〜ん♡お褒めありがとうございますわ!」

 

指揮官様の笑顔が眩しすぎる。

この場で襲って食べてしまいたくなってしまいます♡

………いえいえ!だめですわ!もっと雰囲気を大切にせねば!

妄想にふけていると操縦席のローンから声がかかる。

 

『指揮官様、そろそろ到着いたします』

「解ったよローン、では気合いれて行きますか!」

「は〜い」「ええ」「了解よ」

『着陸に入ります』

 

さて、ここの国は”良い人間”かしら?それとも”悪い人間”?

カグヤに害を成すのなら私の"切り札"で全て焼き払って差し上げますわ。

 

 

 

■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇

 

 

 

[アイナンク空港 駐機場]

 

Sideマイラス

 

バラバラと凄まじい音と強風を撒き散らしながら”ソレ”は降りてきた。

周りには空港スタッフや整備士、"マリン"のパイロットなども集まってきていた。

ともに来た軍関係者の顔は堅く、外交官の顔は驚愕に染まっている。

私?私は頭の中で必死に構造原理を解明しようとして、自身の知識不足を悔しく思う。

アレは我が国の常識の範疇にないものだ。

巨体が格納していた車輪を降ろす、この時点で技術力の高さは明確だ。

後方装甲の一部が開きスロープ状の床になる。

そして少し間をおいて降りてきた人物たちに息を呑んだ。

女神のようだとよく形容されるモデルなどを雑誌で見るが、そこにいたのはまさに美の女神だ。

風に靡く長髪にスタイル抜群の肢体を露出させ女性でさえ思わず魅入ってしまう独自の民族衣装を着た三人。

そしてその三人に囲まれるように歩く二人の女性。

一人は黒い軍服を纏ったショートカットのふんわりとした雰囲気と何故か背筋が寒くなる雰囲気が同居する美の化身。

そして最後の一人、中央を陣取る他の四人より年若いが決して見劣りしない可憐な女性。

白を基調とした軍服に赤と黒の大柄なコートを袖を通さずに纏っており、僅かに見えた背中には紅旗に白の十字紋様。

ほぼ間違いない、中央の彼女こそがこの一団のトップでありレッドアクシズ側の代表だろう。

ならば私は与えられた任務を全うするだけだ。

 

「ようこそ、技術士官のマイラスです」

「レッドアクシズ代表、指揮官のカグヤ・エムブラと申します」

「指揮官……?申し訳ありません、指揮官とはどの規模の指揮官なので?」

「ああ、分かりづらいですよね。申し訳ありません」

 

自身よりも若い子が指揮官とはもしかして親の七光り、将校の娘さんなのかも………。

 

「レッドアクシズ軍部、事実上の総責任者です」

「ぶほぉ!」

 

完全に予想外の応えに思わず変顔になった。

 

 

《レッドアクシズ、ムーと接触》

 

 

*1
※見た目はアーマード・コア5の大型ヘリをイメージ




レッドアクシズの各陣営上層部のカグヤ・エムブラの印象

重桜 "主上"の曾孫?遠戚?疑惑あり、重桜KAN-SEN達の精神的柱。
鉄血 KAN-SENの性能を十全に引き出せる要警戒人物、出来れば次期皇帝の身内に……。
サ帝 "女帝"のお気に入り、出来れば嫁入りを……。
北方 同志!新世界の開拓者!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。