[スダンパーロ区 墜落現場]
Sideガングート
騎士病院を出て輸送機の墜落箇所まできたのだが……。
「………なんで着いてくるのよ」
「(君が心配だから)魔族かもしれない奴を放おっておくわけにはいかんのだ!」
「管轄外でしょうに……」(#-∀-)
そう、ジャスティード署長だけが何故か着いてきた。
同志らからの刺さるような視線にも負けず己の責務を全うしようとは良い心がけだ!
「ははは!別に構わん!職務に勤勉であることは良いことだ!」
「貴様に誉められても嬉しくな……、なんだあれ!?」
驚愕している彼の目線の先、アニーツカ機のヴィーザフがスナイパーライフルを残骸の山に向けて構えていた。
『セイ技監!10秒カウントで撃つ!耳塞いで口開けてな!』
外部スピーカーからの警告からちょうど10秒後、発砲音とともに残骸の山頂部が弾ける。
その光景にサフィーネとジャスティードが驚愕していた。
「な、なんだあれは……」
「馬鹿な!あれは”銃”か!?なんて巨大な!」
ふむ?こちらにも銃が存在するのか?それとも自動翻訳とやらがそう変換しているのか?
「ジャスティード署長、この国にも銃があるのか?」
「貴様に教える情報なんぞな「いい加減にしなさい!」ぶべぇ!」( #`Д´)=○)゚3゚)・∵.ガッ
おお、見事なストレートだ、綺麗に入ったな。
「失礼したわガングート殿。銃は確かにあるけどあんなデカくはないし、貴族様しか持ってない高級品ばかりね」
「ふむ、ではやはり単発式か?」
「え?単発式?どうい……」
『続けて連続射撃いくよ!』
アニーツカ機からテンポよく連続射撃音4回がする。
4発の弾頭は残骸の山に等間隔に当たり正面から見ると正五角形が書けるように着弾する。
「……は?」「な……!」
「あのように連続で撃てるのか?」
「………いや、1回ごとに弾を込めている。
弾込めにどんなに早くとも十数秒はかかる」
「(ではマスケット銃か?)そうかありがとう。
王宮からの調査隊も来ているようだし少し急ぐぞ」
足早にアニーツカ機の方へと向かうと、1人の男性が大はしゃぎでヴィーザフの足にしがみついていた。
周りの調査隊らしきものらや同志達がなんとも言えぬ顔で眺めている。
「この感動を言葉に出来ない己の無知が恨めしい!
魔力も使わず動くゴーレム!連続射撃ができる巨大銃!全てが未知だ!
ああ!素晴らしい過ぎる!」
もしや彼が責任者か?なんと熱意溢れる姿だ!
しかし稼働中のヴァンツァーの足元は流石に危険なので声を掛ける。
「探求心溢れているところ申し訳ないが、危険なので離れていただきたい!」
「おや?あなたは?」
「この部隊の全権を預かる者、ガングートである!
貴殿が調査隊の長で間違いないか?」
「おっと!お見苦しところをお見せしました!
王宮科学院の技監セイ・ザメンホフと申します!」
少し汚れた身なりはともかく仕草に滲み出る気品がある、もしかやそれなりの位のある人物か?
「いや〜!女性とは聞いてましたがまさかこれほどの美人とは驚きです!
その、ガングート殿、是非お願いがあるのです!」
「ふむ、なんだ?」
「残骸からのサンプル回収と、可能な限りの実物の貸し出しをお願いしたいのですが…、」
「何故?どのような理由で?」
「王国の未来のため、は建前として自分の抑えきれない探求心が叫ぶのです!
この未知を全て解き明かしたいと!己の限界はまだまだ先なのだと!」
熱意溢れるセイ技監の言葉に胸打たれる。なんと素晴らしい心掛けか!
「うむ!その熱意、素晴らしい!良かろう、残骸は好きなだけ持っていけ!
実物についてはこちらで一通り用意できるように取り計らう!」
「おお!感謝の極み!」
ガシッ!と力強く握手をする。
この光景にサフィーネ氏とジャスティード署長が「ええ……」と困惑していたがなぜだ?
さすがに最新機種のヴァンツァーを寄越せと言われれば断るが、彼もそこは理解している。
基礎理論などが知りたいなら整備マニュアルとかでも代用できるし、なんなら任務後に本部に招待しても良いかもしれない。
む?そうだ忘れていた。
丁度機体から降りてきた同志アニーツカ(名で読んでほしいとお願いされた)に声をかける。
「同志アニーツカ、本部との連絡は取れたか?」
「いえ、まだ衛星とのリンクを再調整中です。
申し訳ありませんが、今日中には連絡が取れるようにします」
「向こうもシグナルロストしたことには気づいてるとは思うが状況を伝えないと動けんだろう。
またタイミング悪く磁気嵐でも起きたら二次遭難になりかねん」
「了解です、急がせます」
同志アニーツカとの話を聞いたサフィーネ達が状況を飲み込めないのか質問してくる。
「すまないガングート殿、本部とは?」
「やはりお前ら魔王軍の……!」
「あんたは黙ってて、話が進まないから」
「………!」∑(゚д゚lll)
サフィーネの言葉に落ち込むジャスティードを取り敢えず置いておき、簡単に我々の説明をする。
・北方連合という名の国で魔法は無く科学のみで発展したこと。
・グラメウス大陸の外から来たこと。
・現在大陸東側から魔物を駆除しながら開拓していること。
・空から調査していたらこの国を発見したこと。
・国の近くに観測できない黒い場所があること。
以上の説明をした時点でセイ技監以外の現地民が頭を抱えていた。
「凄いね!それが本当ならあとはこの王国周辺で魔物どもの駆除は完了なのでは!?」
「まだ山脈地帯地下にいる可能性があるが平地や山林はほぼ虱潰しにしたからな」
「デ、デタラメを言うな!そんなこと不可能だろう!」
「さすがにジャスティードの言う通りだ、いくらこの巨人が強くとも数はいないだろ?」
「ん?巨人?ヴァンツァーのことか。
北方連合でのグラメウス大陸での実稼動機は現在500機(作業用などは含まず)ほどだぞ?」
「はぁ!?あれが500!?」(;゚Д゚)
「……さすがに予想外だね」ヮ(゚д゚)ォ
「他にもそこにある装甲車両やら大型兵器も多数展開してるしな。
上陸してそろそろ二ヶ月になるが大陸中央部まで進行は完了、あとは山脈より西側だけだ」
「………凄まじいな、北方連合とやらは」
「………(ブクブク)」バタン
「ジャスティード!?しっかりしろ!」
「泡吹いてる!?」
「はやく起こせ!窒息するぞ!」
倒れたジャスティードを介護していると、遠方から馬が一頭駆けてきた。
なにやら慌てているのか馬から飛び降りた人物がセイ技監へと走ってくる。
「セイ様!緊急事態です!」
「何事だね、客人の前だよ!」
「魔王軍が現れました!ゴブリン100とオーク10!さらにオークキングが2体!それと黒騎士がいます!」
「なんだと!?状況は!?」
「現在迎撃準備中!ですが万一があります!セイ様、急ぎ避難を!」
襲撃か、少し視線を同志アニーツカに向けると目が合う。
(いけるか?)
(命令あればすぐに)
………ふむ、ならば行くとしよう!
「同志諸君!楽しい"労働"の時間だ!歩兵二分隊と装甲車両2台を回せ!戦闘準備!」
「「「「Урааа!!!!」」」」
「同志アニーツカ、残りの歩兵分隊とヴァンツァー隊はこの場に残り即応戦力として待機しろ!」
「(う〜ん待機か)了解です」
同志アニーツカが残念そうにしているが第二波が来ることを見越して戦力に余裕を持たせたい。
それに何の情報もなくヴァンツァーを戦場に出せば無用な混乱を起こす可能性もある。
「ガングート殿、案内するから私も同行させてくれ」
「セイ技監!?」
「よろしい!サフィーネ氏、私が”何なのか”を戦場で教えてやろう、付いてこい!」
装甲車両が横付けされハッチを開くとセイ技監は意気揚々と乗る。
サフィーネ氏は僅かに迷ったあとに決心した顔になる。
「……わかった、乗せて!」
※今起きた「う〜ん?………サフィーネ!?待て俺も乗せろ!?」
ハッチを閉める寸前にジャスティード署長も滑り込むと、
装甲車両が唸りを上げて速度を上げる。
キューポラから上半身を出し後続の装甲車両に手で合図を送りながら目的地を目指していくのであった。
[グラメウス大陸中央 北方連合解放戦線本部]
Sideソビエツカヤ・ロシア
未知領域調査隊の輸送機がシグナルロストし、本部内は騒然としている。
さらに同時に大規模な磁気嵐が発生したことで周辺調査のために飛ばしていた早期警戒機が
緊急着陸や不時着を余儀なくされており、そちらの対応にも追われている状況だ。
「では現在飛ばせる早期警戒機はいないのだな?」
「はい、基地にある機体も現在総点検中です。
また磁気嵐対策に電磁波シールドの強化を急がしています」
「無理に飛ばしても二次被害が起きる可能性が高いか……。
どちらにしろ向こうからの連絡が来ないことには動けん。
何時でも動けるように準備を急ぐように同志らに伝えてくれ」
「解りました!」
兵が退出したのを確認して一人ため息をつく。
まさかこのような事態が起きるとは予想外であった。
聞くところによると他の場所では大した被害は出てないようなので、
北緯に近いグラメウス大陸でのみ被害が出ているようだ。
「最悪同志ガングートの死亡も視野に入れねばならんのか………!」
飛行機とともに墜落したぐらいなら多分大丈夫だろうが、
遥か上空で放り出されて身一つで自由落下なんてなれば流石に無事では済まない。
出来ればそのようなことがないことを願いながら書類を片付けていく。
「ん?文書が抜けてる?」
追加予算の中間部分の書類が抜けてどこか他の所に紛れ込んだようだが、結果が解れば大丈夫だろ。
決済の判を押すと次の書類のチェックを始める。
次の日、数件の書類不備を同志ベラルーシアと同志ヴァグナーにこってり怒られるのであった。