異世界にレッドアクシズの名を刻む!   作:有澤派遣社員

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ガングート無双始まるよ!


革命に祝福よッ!

 

[スダンパーロ区 南門防衛線]

 

Sideとある重騎士

 

同僚が吹き飛び受け身も取れず地面に叩きつけられる。

くそ、ついてねぇ!よりにもよって黒騎士が相手とは!

 

「だめです!抑えれません!」

「無駄口叩くな!コイツを進ませると戦線が崩壊する!

死んでも止めるんだ!」

 

まだ騎士に成り立ての新米が弱音を吐く、だがこいつが後衛に食いついたらそれこそ終わりなのだ。

その新米が横合いからハンマーで殴られ地面を転がる。

そしてハンマーを横に振り始めた黒騎士が俺の目の前にいる。

ああ、終わった。そう諦めた瞬間、突如後ろに引っ張られた。

 

「失礼!」

「うおぉ!」

 

立ち位置が自身を引っ張った者と入れ替わる。

つまりは黒騎士の猛威に晒されるのは……!

 

「馬鹿!避け……」

 

ゴン〜!

 

………明らかに人が殴られたとは違う音がする。

黒騎士のハンマーを側頭部に直撃しながらも微動だにしない白服にウェーブの長髪……女性?

 

「ふむ、いい一撃……だとでもいうと思ったか。

貴様、ふざてるのか?」

 

周りの騎士も、黒騎士も、オークキングも動かない。否動けない。

足が震える、なんだこれ?

 

「この攻撃には意思がない、想いがない!

そのような惰弱な攻撃でこのガングートが傷つくものか!」

 

ああ、これは彼女の怒気か、なぜ怒ってるのかはわからないが随分ご立腹のようだ。

黒騎士が一歩下がる、嘘だろあの黒騎士が気圧されてる!?

オークキングなんぞ体を震わせて怯えてるぞ……。

ゴブリンやオークなんて今にも逃げ出しそうな雰囲気だ。

黒騎士が両手でハンマーを持ち直し大きく振りかぶる。

誰の目にしても全力であることが解る一撃。だが……

 

「無駄だ」バガン!

 

無造作に振るった拳がハンマーを粉砕した。………え?

周りの騎士らと共に目を擦る。

もう一度見る、やはりあるのは散らばるハンマーだったもの。

黒騎士が柄だけになった物を捨てて素手で殴りにかかる。

顔面に直撃、しかし女性は全くその場から動かない。

 

「ん?まさか貴様……」

 

嘘だろ、微動だにしてねぇ!?

黒騎士が腕を引くよりも先に女性がその腕を掴み引っ張る。

たたらを踏んでよろける黒騎士のヘルメットを覗き込む女性。

 

「………なるほど、随分不愉快なものを付けて、いや?付けられたか?」

 

女性が頭を後ろに振りかぶる。おいまさか!?

 

「ふん!」ガゴン!!!

 

生身の人間が頭突きを行ったとは思えない破砕音が響く。

黒騎士のヘルメットがひび割れ、その体躯が地面に倒れ伏す。

 

騎士団一同

ポポポポポ( ゚д゚)゚д゚)゚д゚)゚д゚)゚д゚)ポカーン…

 

え?倒したの?黒騎士を?頭突きで?

呆然としていると後ろの隊列が割れる。

何事かと思っていると振り向くと巨大な鉄塊が隊列を掻き分けて出てきていた。

 

 

 

Sideガングート

 

倒れ伏した漆黒の騎士を見やる、割れたヘルメットからは安堵したような顔で気絶する亜人らしき人物。

どうやらこの騒動は想像以上に根が深いやもしれん。

 

「同志ガングート!配置に……」

「すまんな、同志諸君」

「「「え?」」」

「予定変更だ、少々派手にいく。艤装展開」

 

虚空からキューブが溢れ出し艤装形態へと移行する。

 

「え?嘘だろ!?」

「待って待って!おい、騎士ども!急いで下がれ!」

「サフィーネ殿!頭を下げて!」

 

相手は私が一番嫌いな手合いやもしれん。

よもや戦いを強要させるなど……!

 

「退避!死にたくなかったら退避しろ!」

「さっさと後退しろ!巻き添え食らうぞ!」

「車両の後ろに隠れて耳塞げ!口をできるだけ開けろ!」

 

悪いが憂さ晴らしをさせてもらう。

残りは魔獣ばかりだ、消し飛ばして問題はない。

艤装の305mm三連装砲Model1907、4基が前方の逃げ惑う魔獣達を補足する。

 

「革命に祝福よッ!」

 

ドドドドン!!!!!!

 

轟音と爆発、爆震が全てを覆い呑み込んだ。

 

 

 

 

Sideサフィーネ

 

凄まじい衝撃が鉄箱を揺らし、耳が壊れそうな爆音にパニックになりかける。

周りの騎士団からも悲鳴が聞こえてくる。

だがそれでも彼女を必死に見続ける、あれだけの衝撃を自身から放ちながら殆ど動いてない。

 

(凄まじい、これではまるで伝説の大規模魔法”カンポウ”のようではないか!) 

「おい!なんだこれは!?」

「何って同志ガングートの艦砲(・・)射撃だよ」

 

ジャスティードの叫びに答えた異国の兵の言葉に耳を疑う。

カンポウ、シャゲキ?魔力を一切感じないこれがか!?

音と衝撃が止む、土煙が晴れた後には何も残ってはいなかった………。

耳鳴りがするのを我慢して鉄箱から飛び降りる。

セイ様もヨロヨロと鉄箱の扉を開けて降りる。

そしてガングート殿は黒騎士を担ぎながらこちらに歩いてきていた。

 

「サフィーネ氏、これが私の正体、”戦艦KAN-SEN”ガングートだよ」

「センカンカンセン……?」

「私はKAN-SENという船が人型になったモノ、ゴーレムに近い。

故に人間でも魔獣でも、生物でさえない存在だ。

………私が怖いか?」

「ええ、恐ろしい力でした。でもガングート殿は怖くないです」

「あまり我々を見縊るでないよ?それよりなんで黒騎士だけ連れてき……ん?」

「この者が魔族なのかの確認もだが、戦いを強制されていた戦士を殺すのはは気が引けただけだ」

 

砕けたヘルメットからは黒い肌に角が生えた男性の顔が顕になっていた。

これは……人間ではないか?それに”強制されていた”?

 

「強制?どういことだ?」

「眼に力がなく自意識が薄かった、身体能力の割に動きが悪かったからな」

「………あれで、か?」

 

黒騎士一人で戦線が崩壊しかける、故に多大な犠牲を払ってきたというのに………!

あれが本来の強さではないなんて信じたくはなかった。

 

「つまり、操られてただけと?」

「ああ、ずいぶん悪趣味なアクセサリーだ」

 

ガングートが砕けた”ナニカ”をセイ技監に手渡す。

あれが黒騎士を操っていたもの……。

 

「ふむ、破片になっても僅かに魔力を感じる。

少し調べてみるが、あまり期待はしないでくれ」

「後先考えず砕いた私の不手際だ、可能であれば程度だ」

 

騎士団達も遠巻きに様子を伺っている、どの顔にも戸惑いや畏怖が見えた。

するとガングートの仲間達が大笑いと喝采を始める。

 

「お疲れ様です、同志ガングート!」

「おらお前ら!勝鬨上げろ!」

「勝ったんだ!思っきし笑え!」

 

それに吊られて騎士団達にもようやく勝利したという実感が湧いてきたのか歓声が上がる。

 

「そうだよ、勝ったんだよな!」

「黒騎士がまるで近所の悪ガキ扱いだぜ!」

「万歳!ガングート殿万歳!」

「不動の女神、かな?」

「いや!爆炎の女神だぁ!」

 

空気が震えるほどの歓喜の声に、ガングート殿は気分が良くなったのか大きく声を張り上げる。

 

「諸君!身に余る称賛に感謝する!さぁ!此度はこの勝利に酔いしれよう!」

「よし!それでは凱旋だよ!黒騎士の身柄は王宮が責任を持って預かるからね!」

 

ドサクサに紛れて黒騎士の身柄を確保するセイ技監。

誰もそのことを気にする雰囲気ではなく、そそくさと黒騎士を鉄箱に乗せていった。

 

 

その後祝い酒と称して彼女らか愛飲しているという酒(ウォッカというらしい)を振る舞われ、

皆で乾杯をして飲んだまではよかったが私含め十数人が喉が灼けるような痛みに悶えるはめになった。

その隣で平然と飲んでる北方連合の兵士と、一瓶を一気飲みするガングートに私や騎士団は改めて戦慄するのであった。

 

 

 

■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇

 

 

 

[バグラ山 館地下研究所]

 

Sideダクシルド

 

「………計測器の故障かな?」

「………現実、見よ?」

「もう少し現実逃避させてくれ………!」

 

同僚の無慈悲な一言に頭を抱える。

今にして思えば魔王ノスグーラの制御に失敗したことが最初の不幸であった。

そのノスグーラがトーパ王国に進行し、城塞都市を攻め入った時に突然観測器か異常を検知し一部の機器が破損した。

復旧できたのは1時間後であったが、再度観測を始めたときには既にノスグーラの反応は無くなっていた。

観測できてないタイミングで討伐されたのは大きな痛手であった、むしろどうやって討伐されたのか検討もつかない。

そして現在頭を悩ませているのは東からの大規模侵攻だ。

レッドアクシズの北方連合とかいう文明圏外国がグラメウス大陸に上陸して2ヶ月経ってないというのに、既に東部と中央を制圧されてしまった。

あまりの進軍の早さに魔帝の古代兵器を使われているのではと疑ったが、魔力の反応は一切検知できなかった。

つまり、信じられないことだが科学文明の力だけでこのグラメウス大陸は陥落しようとしているのだ。

このままではココが見つかるのも時間の問題、故にビーコンの確保を急ごうとした矢先に”ソレ”は起きた。

 

エスペラント王国南部で起きた山まで響く轟音と振動、そして土煙。

 

推定艦載砲並みの爆発が、魔力の反応が一切なく発生した。

つまり、東部と中央を制圧した連中がエスペラント王国と合流した可能性が極めて高かった。

墜落した飛行機械があることは把握していたがまさかあれ程の兵器を所持してるとは!

最早ビーコンの確保や実験検証などと言っている場合ではない、すぐにでもここを立ち去りたかったのだが……。

 

「本国に帰還せねばならんが、あの忌々しい飛行機械どもが邪魔だ……!」

 

十数機単位で常に大陸中を飛び回る飛行機械(北方連合の早期警戒機)に見つかる可能性がありそれも出来ない。

万一、億分の一であろうと”発覚”という事態が起きかねない行為をするわけにはいかない。

だがこのまま留まっても同じ未来が待っている………。

 

「こうなれば手段は選べん。

手持ちの駒をすべて投入し、”アレ”の封印を解く。

我々はその混乱に乗じて脱出するぞ。

研究データだけあればあとは全て捨て置いてかまわん」

「しかしそうすると我々の痕跡が……」

「”アレ”が全て焼き払ってくれるさ」

「なるほど、ではそのように」

 

魔法帝国でさえその扱いに困り封印をした怪物、それがあれば奴らなんぞものの数ではない。

しかし封印を解くのに二週間は掛かる。

こんなことなら下等生物どもが東側から侵攻してきた時点でさっさと解くべきだったか。

グラメウス大陸とついでにフィルアデス大陸も壊滅するかもしれないが運が悪かったと諦めてくれ。

 




少しガングートの戦闘がさっぱりしてるけど、戦艦の一斉ならしょうがないよね!

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