異世界にレッドアクシズの名を刻む!   作:有澤派遣社員

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書きたいこと削っても、今週中にエスペラント王国編を終わらせなさそう……
なのでここで時間軸的にも外伝は一旦締めて、本編に戻りながら同時並行する形にしてみます。


戦力増強

 

[ラスティネーオ城 謁見の間]

 

Sideザビル

 

一悶着の後、話を本筋に戻すためにセイ様が異国の銃の素晴らしさを演説していた。

空から降ってき異国の戦士達、最初は何の冗談かと笑い飛ばしたものだ。

だが現実に彼女らはここに存在し、見たこともない武具で身を固めていた。

確かに彼女らは我々とは違う強さを持つのだろう、だが……!

 

「………故に、彼女らが持つ銃は我々の造ったものを遥かに凌ぐのです!

この技術と知識を取り入れれば我々の戦力は飛躍的に向上するでしょう!」

 

セイ様、何故そこまで手放しに彼女らを賞賛するのですか?

それではまるで、我々の積み重ねてきた技術は無意味だと言いたいのですか!

 

「セイ様、私は反対です!どこの馬の骨ともわからぬ奴らに我々が積み重ねてきた技術の結晶を!

選ばれた貴き血の証を触らせるなど!」

「君ぃ、話を理解できなかったのかね?」

 

セイ様は不機嫌そうに睨みつけてきたが、爆炎の女神が手で制する。

 

「ガングート殿?」

「まぁ、任せろ。実践したほうが手っ取り早い、のだろ?」

「一体何をするので?」

「同志アニーツカ、"コレ"を上に投げるからを撃ち落とせ」

 

そう言って取り出したのは見たこともない硬貨であった。

大きさは当然小さい、あんなもの狙えるはずが……!

 

「りょ〜かい、どうぞ!」

 

高々と投げられた4枚(・・)の硬貨。

皆がその投げられた硬貨を目で追う、そして……。

 

タン!タン!タン!

 

鳴り響く3発(・・)の軽い銃声、粉々になるの4枚(・・)硬貨………!

待て、おかしい!連射したことも、軽々と命中させたこともだが、何故3回しか銃声がしない!?

 

「2枚抜きか、さすがだな」

「同志ガングートが意地の悪い投げ方しなければ2発(・・)でしたよ」

「そのように投げたからな、寧ろ誇れ」( ̄ー ̄)ニヤリ

 

謁見の間での突然の蛮行を咎める者はいない、誰もが唖然と今起きた非現実的な光景を理解しようと必死であった。

 

「アニーツカ殿!すごいじゃないか!」

「あの程度、出来る奴らなんて他にもいますよ」

「このレベルの早撃ち狙撃なら十分誇れると思うが?」

「私の本職はヴァンツァーパイロットですよ?

狙撃技術関係は特殊部隊どもの独壇場ですよ。

ま!私はヴァンツァーでも同じこと出来るけどね!」

 

銃士としてのプライドがひび割れる、これ程の神業を有していて本職ではないだと?

銃の性能、銃士の技能、どれももはや言い逃れできないほどの差を見せつけられ、私は膝から崩れ落ちた。

 

 

 

Sideアニーツカ

 

イケメン野郎の絶望顔、すげぇ気分がいい!

ジャスティードの奴が慌てて支えたから倒れこそしなかったかが心がボッキリと折れているのか目が完全に死んでるwww

おっと、流石に顔に出すのは不味い。

表情筋を必死に抑えながらガングート様と一緒に満面の笑みを浮かべる国王の前に立ち直す。

 

「手荒い方法になりましたが、如何でしたか?」

「うむ!実に素晴らしいものを見せてもらった!

皆の者、異国の技術が如何に進んでいるのかを理解出来たと思う。

故にだ、異国の戦士らに要請したいことは2つ。

貴殿らの技術協力を得ての新兵器の開発と騎士団の戦力向上のための知識を願いたい!」

 

おや?思わず首を傾げた、てっきりもっと直接的なことをやらされると思っていたのだが……?

 

「魔獣どものアジトを潰してこい、とは言わんので?」

「それは確かに願いたい、だが今後(・・)のことを考えれば下策よな?」

 

あ〜なるほど、私達の心象を気にしたのか。

今後、つまり魔獣どもを駆除した後、北方連合との関係悪化を危惧しての判断ね。

まぁ普通は戦闘よりも技術指導のが命の危険も無いし、

そもそも国交もない他国の軍隊に自国の問題を解決させるなんて普通は怖くて出来んわな。

あれ?確かアルタラス王国は………?

…………まぁ、あれは特殊な例、かな?(汗)

 

「了解しました、では10日間で可能な限り形になる手段を講じましょう。

そこを中間報告として向上具合を確認する、ということでよろしいか?」

「下手に口出しはせぬ、必ずや成果を出してくれると信じておるよ」

 

このオジサマ、ガングート様の琴線を理解してやがる……!

こんな言われ方をすればガングート様は絶対に断らない。

 

「無論だとも!必ずや最高の形で結果を出すと約束しよう!」

 

ほら予想通り、チラリとセイ技監を見ると「計画通り」なんて顔してやがった……!

やっぱりお前の入れ知恵か!ああ!派手に暴れる方が楽なのに!

その後、国王自身が我々のことと国の外の実情を国民に発表を行うこと、

そして兵器開発のために王宮科学院への出向をガングート様が、

騎士団の再訓練と我々が持つ余剰装備の適正者探しを私が代表になることに決まった。

はぁ〜、面倒くさ!テキトーにやろ。 ̄Д ̄ =3 ハァ

 

「同志アニーツカ、貴殿であれば問題ないと信じてるぞ!」

 

はい!おまかせ下さい、ガングート様!

この栄誉ある任務、完璧にこなしてみせます!(✧Д✧)

(掌がドリル回転)

なんなら死を恐れぬ完全無欠なバーサーカー部隊に仕上げて見せます!

(おい、バカやめろ)

 

 

 

■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇

 

 

 

 

[グラメウス大陸中央 北方連合解放戦線本部]

 

Sideソビエツカヤ・ロシア

 

前日の書類不備の直しを泣く泣くしていると下士官が慌てた様子で部屋に飛びこんできた。

 

「報告!調査隊からの電子メールが届きました!」

「本当か!」

「はい!数名の負傷者はいますが死者行方不明者無し、全員生きてます!」

「おお!」

 

どうやら最悪の事態は避けられたようだ。

電子メールの内容を確認すると一部の装備損失の被害で済んだようだ。

また現地の国家エスペラント王国の存在、現在魔獣又は魔王軍による被害が出ていると報告が書いてあった。

組織的な動きの可能性?背後に敵性組織又は国家の存在を懸念?

………念には念を入れたほうが良さそうだな。

 

「強化型電磁波シールド装備の進捗状況は?」

「まだ本国で部品の生産中ですので、早くとも一週間以上はかかるかと」

「投入戦力を1個機甲*1中隊から1個機甲大隊に変更するように上申する、その予定で進めておいてくれ」

「!?、解りました!すぐに要請します!」

 

兵が出てくと同時にすぐさま内線をベラルーシアへと繋ぐ。

 

『私だ、どうした?』

「調査隊から電報が届いた、報告によると敵性組織の存在する可能性が高い。

故に派遣部隊を1個大隊に増やしたい」

『………わかった、同志ヴァグナーとともにこちらで調整しよう』

 

通信を切ると同志らの無事を静かに、されど心から喜ぶのであった。

 

※なお補足として、ヴァンツァーの編成単位は、

2機で分隊、4機で小隊、12機+補助車両・補助兵で機甲中隊

3個機甲中隊で1個機甲大隊、3個機甲大隊で1個機甲連隊

つまりはヴァンツァー36機と付随する補助兵力、そしてそれを運べる輸送部隊を投入すると言っているのである

 

 

 

■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇

 

 

 

[バグラ山 館地下研究所]

 

Sideダクシルド

 

「…………なんだ、今の寒気は?」

「どうした?手が止まってるぞ」

「いや、すまん。少々疲れを感じてな」

 

 

 

■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇

 

 

 

[ラボレーオ区 王宮科学院]

 

Sideガングート

 

謁見の翌日、セイ技監から派遣された案内人トルビオンと共に工学知識のある同志ら数名を連れて装備開発室、通称”工房”を訪れた。

 

「ここが我が王国の最新技術を生み出しているところです」

「活気と熱意を感じるいいところだな」

「そう言っていただけると我らも喜ばしい限りのです」

 

案内さているとヨロヨロと重たそうに木箱を運ぶ耳の尖った男性とすれ違いそうになる。

男性はこちらに気付いた時、ギョッと驚きバランスを崩しそうになった。

 

「えっ!あ……!」

「おっと、危ないぞ」

 

落としそうになった木箱を掴んで持ち上げる。

男性は何が起きたのか理解出来ずに呆然としていた。

 

「ゼリム!貴様なんてことを!ガングート殿、お怪我は?」

「いや、大丈夫だ。……君も大丈夫か?」

「はい……、だ、大丈夫……です。

あの!あ、あなたが……、爆炎の、女神……?」

「うむ、そう呼ばれているものだ、貴殿は?」

「ゼ、ゼリム……」

 

オドオドした態度、というより怖がられてる?

 

「ゼリム!仕事の途中だろ、早く戻れ」

「はい……、では、また」

 

こちらに一礼すると木箱を持ち直すしてヨロヨロと歩いていく。

それを見送ると我々も再び歩き出す。

 

「すいません、ゼリムは鈍臭くて変な喋り方の奴ですがお気になさらず」

「別に変と言うほどでもないと思うが……?彼はエルフか?」

「エルフとドワーフのハーフなのですが、その…種族が持つ特性に恵まれず……」

 

………ふむ?エルフ、ドワーフどちらの種族的才能がない、と。

彼がつけていた黒いサークレット、黒騎士のものと同じ材質ではないか?

すると同志の1人が耳打ちしてきた。

 

「同志ガングート」「どうした?」

「先程の男、死臭(・・)がしました」「………解った」

 

死臭、殺人か食人か?では彼は魔獣か何かか?

しかしそれにしてはあまり脅威は感じなかったな……?

むしろ寂しさと恐れのが目に写っていた。

………とにかく今はセイ技監の元へ向かうとしよう。

案内された部屋に入るとセイ技監他の、ランザル氏を筆頭に十数名の学者や工匠が目を輝かせていた。

 

「ガングート殿!ようこそ我が台所へ!」

 

台所???どういうことだ?

 

「台所て、錬金術じゃないっけ?」www

「おや?どちらも物質の本質を見極めるという意味では一緒では?」

「確かに、錬金術が科学の基礎になったとも言えるか」

 

若い兵は意味が解ったらしく話が弾んでいる。

錬金術……、あとで調べてみるか。

学者や工匠との挨拶をして早速本題である新兵器開発にあたり現在の王国の技術力を確認した。

蒸気機関、プレス加工機、炉の性能確認。

炉については【魔石】【月光石】【氷砂】など我々の知らない未知の物質で解決できるらしい。

 

「やっぱ出たよ魔法物質」

「マジでファンタジー、訳わからん」

 

同志らも関心しながらその特性を事細かにメモしていた。

グラメウス大陸での採掘作業が本格化すれば輸出資源として重宝できそうだな。

そして結論としてはステンレス鋼の生産とそれを加工する旋盤の作成。

そして現在時点で制作可能かつ大量生産も視野に入れるとなると、

回転式拳銃、リボルバーが最適と判断した。

一部の同志はレバーアクションかボルトアクションまで目指そう!

などとほざいていたので拳骨を叩き込んでおいた。

そんな複雑なもの、仮に作れてもここの設備では量産ができんわ!

熱意は大事だが現実も視野に入れねばただの妄言になってしまう。

これで方針は決定、私達もこちらに残り作業を手伝うことにしたのだが……。

 

「あ、そういえば女性が使える部屋がないね」

「男衆ばかりだからな……」

「熱くて汗臭いと家の侍女も主人置いてそそくさ帰っちまう……」

「風呂とかもこの区画に女風呂なんてないしな、どうする?」

 

何かよくわからんことで悩み始めていた。

 

「別に私は気にしないから一緒で構わんぞ?」

「「「こっちが気にするの!!!!」」」×多数

「「「精神をゴリゴリ削られるの!!!!」」」(血涙)

ふむ……?そういうものか?

まぁ屋根があれば倉庫の一室でも構わんさ。

 

セイ「ちょっと!ガングート殿の貞操観念どうなってんの!?」

北連兵A「あ〜、豪胆というかなんといか……」

北連兵B「自分の美貌に無頓着なんすよ……」

ランザル「マジか……!」

学者A「あれ程の女性と一緒に……」(鼻血)

北連兵C「やめとけ、下心出すと本国の信奉者どもが地の果てまで殺しに来るぞ」

「「「肝に銘じます!」」」

 

こうしてエスペラント王国の戦力向上計画が始動したのであった。

 

 

■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇

 

[マルノーボ区 古民家]

 

Side???

 

「………イじょうガ、ほうコクニなりまス」

『…………(白目)』

「ダくシるど様……?」

『………はっ!ゴホン。報告ご苦労だった、ビーコンの未発見の件は置いておくとしよう。

では新たな命令だ、これは最優先事項とする』

「なンでショウか?」

『空から来た下等生物ども、奴らを見張れ。

もしも火山へと侵攻するようならすぐに連絡しろ、いいな?』

「エっ?ソンな……」

『以上だ、通信切るぞ』

 

通信が一方的に切られた、どうしよう………。

空から来た人間、一人視線が怖かった。

もしかして感づかれた?そんな状況で見張りなんて……!

怖い、人間はやっぱり怖い生き物だ。

それに”食料”の在庫も残り少ない、どうしよう……。

途方に暮れる男性の足元には人間の遺骨が散乱していた。

 

*1
※ヴァンツァー又はそれに類似する機動兵器を指す





北方連合「敵が強いかもしれない、準備は慎重にしないと……」
ア皇「しめしめ、愚かな下等生物だな」
北方連合「取り敢えず戦力3倍に増やすか」
ア皇「ふぁ!?」

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