異世界にレッドアクシズの名を刻む!   作:有澤派遣社員

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ローンちゃんのケッコン衣装はまだですか?(威圧)
大鳳とローンの専用特殊兵装はよ!( º言º)


疑念と暗躍

 

[パーパルディア皇国 エストシラント高級ホテル]

 

Sideカイオス

 

第2外務局長リウス殿とともに裏手の隠し扉からホテルに入っていく。

一部の要人しか存在をしらない秘密部屋へと続く廊下を通り扉を開ける。

部屋に入ると財務局長と農務局長がすでに席に座って一服していた。

 

「カイオス局長にリウス局長、貴方方も呼ばれたのか」

「ええ、エルト局長から必ず来てくれと頼まれてな……」

「では何故集められたかは?」

「我々も知らぬ、だがただ事ではない」

 

エルトの奴め、せめて内容ぐらいは事前に話せば良いものを……。

いや、内容を話すことが出来ないのか?

だがエルトを”使える”地位なんぞ皇室ぐらい………?

ガチャリと扉が開く音がする。

エルトと先日の失態で降格されたノイス、さらに侍女が2名入室してくる。

侍女2名の格好に違和感を感じる。

一人は身の丈ほどの大荷物を背負っており、もう一人は何も持たず顔を黒い布地で隠している。

 

「すまない、待たせたか?」

「問題無い、今到着したところだ」

「そうか、今回は急遽かつ秘密裏の会合に応じてもらい感謝する」

 

頭を下げるエルトにさらに不安が大きくなる。

これはやはりただ事ではない、そう思っていると顔を隠した侍女がエルトの横に立つ。

大荷物を下ろした侍女とノイスが頭を下げ、エルトが侍女のベールを外した………なぁ!

 

「此度の召集に応じたこと感謝する、外務監査官のレミールだ」

 

思わず息を呑む、皇室が秘密裏に我らを集めたのか!?

慌てて頭を下げようとしたがレミール殿が手で制する。

 

「礼はよい、この場には私はいない(・・・・・・・・・・)

時間が惜しい、各々席に座ってくれ。

ノイス、申し訳ないが資料を配ってはもらえるか?」

「は!」

 

ノイスが侍女とともに荷物から幾つかの資料を取り出し机に並べていく。

………これが狂犬、狂人と言われる者か?

噂よりも随分理知的に見えるな。

資料の表題に描かれた赤い四角に白十字の紋様、何処かの国旗か?

待て、この紋様見覚えが……!

 

「今回集まってもらったのは他でもない。

先日のアルタラス征伐艦隊を壊滅させた者達、レッドアクシズについて知ってもらうためだ」

 

 

 

Sideエルト

 

レミール殿の話を聞きながら資料を捲る。

レッドアクシズ、4カ国の軍事同盟。

フェン王国に似た文化を持つ亜人中心の”重桜”。

徹底した実力主義で皇族さえ選別する”鉄血公国”

我が国に似た文化を持っていた(・・)”サディア帝国”

現在グラメウス大陸を開拓している”北方連合”

そして4カ国が共同出資する軍事組織レッドアクシズ。

その責任者の顔写真がとても鮮明であることにも驚いたが、

まだ20歳過ぎの女性であることにはさらに驚いた。

そして軍事力については門外漢の私でも分かる、分かってしまう。

絶対に勝てない、これが事実ならムーどころかミリシアルさえ超えかねんぞ!?

 

「………以上がレッドアクシズが公開(・・)してる情報だ。

何か質問は?」

「これは、事実なのですか……?」

 

財務局長の言葉に同意する他の局長達の顔に明らかな不信が見えるが仕方ないことだ。

私はも”アレ”を見せられなければ同じように思っていただろう。

レミール殿は机に”アレ”、タブレット端末なるものを滑らせる。

カイオスが恐る恐るの手元にそれを持つと、画面が動き出しレッドアクシズの組織旗を表示する。

そして動画が流れ出す。

ここでは無い世界の歴史、セイレーンなる人類の敵。

二分化した人類、アズールレーンとレッドアクシズ。

戦闘の映像が流れるがどれも理解の範疇外のものばかりで困惑する。

そして途中で映る鋼鉄の船が砲撃するシーンで映像が止まる。

 

「それがアルタラス征伐艦隊が相手にした一隻、フブキ型駆逐艦という”小型艦艇”だ」

「これで小型……!?」

「いや、それよりも”コレ”はなんですか!?

板切れの大きさなのにこれ程鮮明な魔写映像が見れるというのか!?」

「サディア帝国のリットリオ様から頂いた情報を閲覧するための機器です。

魔力ではなく電気で稼働し、国立図書館並みの情報量を中に収められるらしい。

………しかもそれは一般人でも手に入る便利品、それが当たり前のように普及しているのだ」

 

全員が絶句する、さすがに皇室への特別な献上品か何かと思えば一般人でも持っているものだと!?

 

「そ、そんな、魔力を使ってないだと……!」

「技術力の差は歴然か……!」

 

カイオスがまじまじと端末を弄っていると映像が切り替わる。

そこには地上を走る兵士、ムーの車両をゴツくしたようなモノ、そして………。

 

「なんだこれは!?」

「ゴーレム、それも5m以上あるぞ!」

「なんと軽快な動きだ……!」

 

金属製のゴーレムが凄まじい速さで地上を疾走し、手にした巨大な銃を構えて射撃を行っていた。

 

「レッドアクシズでの主力陸戦兵器、ヴァンツァーと呼ばれる機械動力のゴーレム。

グラメウス大陸を開拓している北方連合は陸軍大国でありこれの最新型を大量に配備しているらしい」

 

沈黙、驚愕さえ出ない。

するとノイスが声を上げる。

 

「ロウリアでの報告は真実だったのか……!」

 

苦悩するノイスに皆が憐れみの目を向ける。

ノイスが無能とは思わない、現場からこれが報告されても信じるのは無理であろう。

侍女がカイオスから端末を回収してレミール殿へと手渡しする。

 

「ご苦労、さてレッドアクシズについてある程度知ってもらえたと認識する。

そしてこれからが本題だ、パーパルディア皇国はどうするのが最善と考える?

遠慮はするな、少しでも意見がほしい」

 

どのような発言も許すと言われ、カイオスが席を立つ。

 

「これほどの強国の存在を認知出来てなかったことは第3外務局長としてまずは己の無能をお詫びします。

その上で発言させてもらいます。

話し合いによる講話、友好国になるのが最良。

どのような屈辱的な要求があろうと武力衝突は絶対に避けるべきです!」

 

誰も反対はしなかった、レッドアクシズと戦争する位ならムーやミリシアルと戦争をした方がまだ勝ち目があるというものだ。

しかしそうなると問題なのは……。

 

「レッドアクシズ側から何か要求などは?」

 

リオス殿の発言に皆がレミール殿を見るが、彼女は首を横に振る。

 

「まだ何もない、おそらくはアルタラスの件でリットリオ様が訪問するとは思うが……」

「ではレミール様はどのような要求があると予想されますか?」

「………現在の拡大政策は即刻中止せよとは言われるな」

 

まぁ当たり前だ、このまま行けばいずれはレッドアクシズとぶつかることを考えればその要求は飲むしかない。

ルディアス陛下の説得は大変だがレミール殿が味方ならなんとかなるだろう。

 

「もう一つは、属領の解放も要求されるやもしれん」

 

…………え?

思わず呆けていると農務局長が席を立って抗議する。

 

「無理です!今の皇国は属領からの食料で賄われておるのですよ!?

それを手放せば間違いなく皇国は食料不足に陥ります!」

「何故そのような懸念を?」

「グラメウス大陸にいる北方連合、あそこは元々労働階級の奴隷が蜂起して出来た国なのだ。

おそらく皇国の現状を最も問題視しているだろう」

 

そんな、そのような経緯を持つ国だとは……。

 

「食料については解放した属領から正式に輸入するしかあるまい。

財務局長、軍の予算をどれ程削れば財政を持たせられる」

「………即答は出来かねますが、最悪半分は削らばならないかと」

 

………軍縮は確実、これは陛下の説得は厳しいであろうな。

 

「そうか、まぁ属領についてはおそらく程度のものだ。

皇国の威光の元、きちんと統治されていれば無理に手放せとは言わないだろう」

 

その言葉に臣民統治機構長のパーラスの黒い噂を思い出す。

………大丈夫だよな?場合によってはレミール殿の考えが破綻しかねん。

 

「アルタラス王国の件はこちらから譲歩するしかあるまい………。

まったく、悪いのはあちら(・・・・・・・)だというのに……!」

 

怒りに拳を震わせるレミール殿に疑問を持つ。

どういうことだ?思わず外務局長達で見合ってしまう。

私はおずおずと手を上げて発言をする。

 

「悪いのはあちら、とはどういうことですか?」

「どうもこうも!ルディアス様が鉱山の譲歩を求めたのはアルタラスの横流し(・・・)で私腹を肥やしてるのが発覚したからだ!

皇国以外への輸出を堅く禁じておったのにだ!

故に懲罰として今回の要求である鉱山の管理権の譲渡を迫ったのだ!」

 

息を荒げるレミールにそのような事情があったとほ知らずアルタラスに対して私とリウスは少なからず疑念を持った。

だがカイオスは違ったようだ、というより第3外務局長である彼は把握してる内容なのでは?

 

「……申し訳ありません、初耳なのですが?」

「何?第3外務局から横流しの懸念ありと言われて調査を命じた結果、発覚したのだぞ?

何故局長のお前が……」

「いえ、私は一切報告も調査も命じてませんぞ!?」

「「「「「は?」」」」」

 

待て、待て待て!それでは今回の騒動の原因である征伐艦隊派遣の理由が無くなるぞ!?

 

「本当に陛下がそのように仰ったのですか!?」

「わ、私も報告書を少し拝見したし、怒りを露わにするルディアス様を私が宥めたのだぞ!?

だから間違いない!確かに調査結果として上がっていたぞ!」

 

レミール殿とカイオス、どちらも嘘を言っていない……?

何だ?どうなっている?

その後カイオスは至急事実確認をするのでもう一度集まりたいと言い、レミール殿も調査結果の報告書を持参するということで解散となった。

 

 

 

 

■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇

 

 

 

[パーパルディア皇国 聖都パールネウス]

 

とある屋敷の地下、綺羅びやかと言えば聞こえはいいが正直悪趣味と取れないほどに豪奢に飾れた一室。

そこには十数名の男達が席に座り雑談をしている。

だが話の内容は聞くに堪えない醜悪な内容ばかりだ。

 

「先日買った奴隷がもう役立たずに………」

「邪魔な奴に濡れ衣を………」

「最近殴っても反応が薄い、もう飽きた……」 

 

どれも自分達以外は道具以下にしか考えていないのは明白であった。

そして目聡いものなら彼らの顔を見て疑問を持つだろう。

何人かは過去に何かしらの処罰を受けて処刑或いは追放刑を受けたはずの貴族に瓜二つなのだ。

もちろん他人の空似とかではない、間違いなく本人たちだ。

 

秘密結社【顔無しの支配者(ノー・フェイス)

 

政界や経済を裏から支配するパーパルディア皇国の闇。

処罰を受けた者たちは"生贄(ダミー)"を用意して悠々自適の生活を謳歌していたのだ。

そして下級貴族の分家として貴族名簿に名を連ね、この聖都で暮らしている。

無論影響力はそのまま、むしろバレなくなったからとより派手に動くものもいる。

そしてまた捕まりそうになると他の生贄を用意して雲隠れをする。

これを組織単位で行うことで目聡い連中からも逃れているのだ。

なによりも現在の組織のトップは皇族(・・)なのだ、過去最大の権力を持っている。

 

「皆のもの、静粛に」

 

壮年の男性の声に全員がピタリと沈黙する、

この壮年の男性こそが現在の組織のトップ、ドミディア。

前皇帝の腹違いの弟であり、両親を早くに亡くしたレミールの後見人。

ルディアスに前皇帝の毒殺の嫌疑をかけらために継承権を永遠に失しない、その後は聖都にて隠居生活を強要されている。

……のが本来であるが今や裏世界の皇帝とも言える存在となっていた。

なお毒殺の件はルディアスの読み通り事実であったが証拠を残すようなヘマはしていない。

 

「お集まり頂き感謝する。先日皇国にあるまじき事態が発生し、

ルディアスの小僧めが醜態を晒しているのは皆ご存知と思われる」

 

周りからは忍び笑いが聞こえる、ここにいるものらはルディアスのような若造が皇帝であることに不満を持つものばかりだ。

 

「軍備ばかりに金をかけてた割になんと情ない」

「まったくですな〜」

「お前は大儲けしてた口だろ?」

「いやそうでしたな!」

「「「「「はっははは!」」」」」

「ヤンチャな子供の失敗を笑って許す貴方方の寛大さには大変感謝します。

きっと甥も感激することでしょう」

 

ドミディア自身笑いを堪えて言う、完全に嫌味だがそのことを指摘するものはいない。

 

「では本題に入る、あの愚かで可愛かったレミールが裏で目障りな行動をし始めている」

「属国への一斉監査の件ですな」

「まったく、面倒事を増やしてくれる」

「しかしさすがにルディアスに近いものが真実を知ると厄介では?」

 

属領の過酷な重税の原因はルディアスの拡大政策にもあるが、

それに便乗した者達がさらに割増をしていることが一番の原因であった。

酷いところでは本来の税の3倍を要求しているところがあり、属領の経済状況は悪化の一途を辿っている。

位置的な関係で属領の税収は一度パールネウスに集められてからエストシラントに送られるため書類の偽装は容易だ。

さらに臣民統治機構長を筆頭に属領に勤務する上層部は全てグルであるため報告されることはない。

しかし皇室が直々に調査を行うとなれば誤魔化しは困難を極める、はずだった。

 

「問題ない、送られた調査員5人の内4人はこちらの要請に快く(・・)応じたよ。

………独り身で頑固な約1名は不幸な事故に会ってしまったがね」

「ほう?よく説得できましたな」

「なに、誰しも家族が大事だということだよ」

 

外道ここに極まれり。

仮に虚偽の報告をしたことが皇室に知られれば本人達はタダでは済まされない。

どちらを選んでも無事では済まない、ならばせめて家族は守ろうと決断させたのだ。

 

「ははは!相変わらずですな!………しかし何故あの小娘がこのような蛮行を?」

「あれにはこちらの都合の良いように教育していたはずだが?」

「どうやら要らん知恵を誰かに吹き込まれたようだ。

全く、愚かで無知であれば良い駒であったのにな」

 

ドミディアが溜息をつく、レミールの教育には彼なりに気を遣っていたのだが無駄になってしまった。

場合によっては”不幸な出来事”を演出せねばならない。

 

「処分ですか?勿体ないですなぁ」

「あの肢体、一度弄んでやりたかったのですがね」

「やめとけ、やめとけ。ルディアスの小僧にぞっこんだ、死物狂いで抵抗するか自刃するぞ?」

「ならどちらも出来なくしてからヤレば大丈夫では?」

「ははは!鬼畜じゃのう!」

 

周りから醜悪としか言いようのない嘲笑いが響く。

すると部屋の扉が開き、そこから一人の10才位の少年が恐る恐ると入ってきた。

ドミディア以外の貴族達は驚く、子供が迷い込むにしても警備の者に見つからずに来れるはずはない。

ならば正式に入室が許可された者であろうが、何者なのかは見当がつかなかった。

少年は早足で部屋に入るとドミディアの裏に隠れてしまう。

 

「これこれ、今日はお前の顔見せのために集まって頂いたのだ。

ほら、挨拶をなさい」

「はい叔父上。皆様お初目にかかります、ヘリオガと申します」

「亡き兄上の忘れ形見(・・・・)でしてな、今は私が保護をしてるのですよ」

 

一瞬皆が訝しんだが、すぐに”そういう設定”と理解して驚いたように喜ぶ。

 

「おお!亡き先帝の子がいるとは!」

「いやいや、先帝の若い頃にそっくりだ!」

「いずれは皇国を引っ張っていく素晴らしい皇帝になろう!」

 

ヘリオガは周りからの称賛の声に目を輝かせて喜ぶ。

故に気づかない、その言葉の裏にあるドス黒い欲望が見え隠れしていることに……。

そして自分の頭を撫でる尊敬する叔父上の目が全く笑っていないことにも、気づくことはなかった。

 

(さあ、準備は整ってきた。くく、小僧がどのような顔をするか楽しみだ)

 

欲望に際限はない、パーパルディアを我が物にするためなら自分の子(・・・・)さえただの道具なのだ。

 





顔無し「よっしゃ!属国から搾り取って私腹こやすんじゃ〜。
レッドアクシズ?ぷぷ!見栄っ張りの蛮族なんて無視無視れ」
パー皇「おいばか、やめろ!?」


秘密結社、こういう大国なら絶対いるよねと思って出しました。

オリジナルキャラの補足

【ドレディア】
40後半の美丈夫。
先帝である兄を疎ましく思っており時間をかけて毒殺するもルディアスに皇帝の座を奪われた。
頭脳明晰でルディアス以上に政治に強いが視野が狭く独善的。
文明圏外国=植民地候補という思想がある。

【ヘリオガ】
10才過ぎの少年。
自分が先帝の子供と信じており、会いにさえ来てくれない兄ルディアスに冷遇されていると思わされている。
実際にはドレディアが奴隷に産ませた子供であり、偏った教育により純粋だが殆ど言いなりにしか動けない。
叔父上の喜ぶ顔を見るのが何よりの喜び。

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