異世界にレッドアクシズの名を刻む!   作:有澤派遣社員

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そろそろエスペラント王国編も佳境です


戦闘準備

 

[バグラ山 館地下研究所]

 

Sideダクシルド

 

「ゼリムの制御装置からの信号途絶して丸一日以上、殺されたか………」

「どうします?このままでは……」

「解っている。しかし封印の解除は慎重に行わなければ失敗しかねん」

 

クソ!役立たずめ!こうなればバハーラに指示して鬼人族を張り込ませるしかないか。

まぁ殺されたなら私達の存在が漏洩することもないだろう。

封印の解除まであと5日弱、こうなれば戦力の逐次投入で連中を釘付けにするしかない。

連中が防戦に執着するようにして時間を稼ぐ。

頭のいい奴らはこちらの意図に気付くやもしれんが守れる市民を危険に晒してまで攻めてはこないだろう。

 

「バハーラ、手勢はいくら費やしても構わん。

連中を攻勢に出れないように揺さぶりを掛け続けろ」

「カしこマリましタ」

 

どうせ封印さえ解ければ諸共全て焼き尽くされる連中だ。

ならば手駒は有用に使わなねばな。

 

 

 

■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇

 

 

 

[エスペラント王国 ラスティネーオ城]

 

Sideガングート

 

国王に約束した10日目での中間報告に来たのだが……こいつらは暇なのか?

 

「おお!爆炎の女神よ!」

「今日も美しいですなぁ」

「良ければ今度お茶会でもどうですか?」

 

…………物理的に叩き潰したくなってきた。

王城に入っすぐに貴族どもに囲まれて中々前に進めない。

同志アニーツカがいれば適当にあしらえたかもしれんが現在同行しているのはルサンカ含めた陸戦隊数名だ。

とてもではないがこういう面倒な連中の相手には向いていない。

 

(あ〜、これだから貴族は……!)

(どうする?殺っちゃう?)

(さすがに他国の人間を殺るには動機が薄い、やめろ)

(((こいつらめんどくせぇ〜)))(#^ω^)

 

いかん、私よりも周りの同志らの怒りが既にピークだ。

対応に強硬手段を検討し始めていると、ザビル含め数人の青年らが割り込むように入ってくる。

 

「彼女らは貴方方と違って忙しいのです、お下がりを!」

「叔父上、これ以上恥を晒さないで頂きたい」

「父上もです!北方連合の方々が迷惑しているのに気づかないのですか!」

「アビシ、お前!父に向かってなんて態度を!」

「父上こそアレンベルナの家名に泥を塗る行為をお止めぐださい!」

 

言い争う青年らの顔に見覚えがあった、彼はもしや貴族特権まで使って訓練に参加していた者らか?

同志らが物好きな連中が必死に訓練をしていると言っていたな。

能力は未熟だが熱意はあると褒めていた。

 

「申し訳ありません、此処から先は我々がエスコートします」

「すまんなザビル殿」

 

暇人貴族達の罵詈雑言を無視しながら廊下歩いていく。

………ん?そういえば先程アビシと呼ばれた青年、以前来たときにこの廊下で見かけた者か?

前見たときに比べ覚悟を決めたような凛々しさがある。

 

「アビシと言ったか、以前見た時とは見違えたな」

「!?、はい!ありがとうございます!(今度は見てもらえた!)」

 

目尻に涙を浮かべ喜ぶ姿に微笑ましくなる。

それに比べ先程の連中は危機感がないのか?

………いや、もしや?

 

「ザビル殿、貴族連中は我々”北方連合という国自体”について知っているのか?」

「いえ、知る気もないようですよ。

ここにいる青年らは北方連合について知っているようですがね」

「王族や貴族を排他した国家と聞いて耳を疑いましたよ……」

「自分もです、それで国家として成り立つのですか?」

 

ふむ、王国しか知らないならこの疑問は仕方ないか。

 

「貴族や王族がいなくとも国家は運営できるさ。

貴族や王族が国家を運営する背景は専門知識と政治基盤の独占からくる支配体制だ。

貴族以外の知識層の充実化、ようは教育と知識量の差を無くせばよい。

血族の重要性を説いているロイヤルやサディアでも能力が低ければ冷遇されるしな」

「なるほど、ではすぐに今の国家体制を変えるのはリスクが高いのですか?」

 

アビシの言葉に周りの青年貴族らの顔が強張る。

………なるほど、そこまで考えているのか。

 

「そうだな、別に今すぐで無理に貴族制度を無くす必要はない、徐々になくしていけばよい、

どうせ今の地位に胡座をかいてる連中は勝手に自滅する」

「そういうこと、だからあんまり性急なことは考えるなよ」

「国家が混乱すると下の連中が割りを食うからな」

 

同志らの乾いた笑いに羞恥から帽子を深くかぶって顔を隠す。

嫌味でいっているのではないことはわかるが、私が起こした大粛清で苦労した世代としては一言ぐらい言いたいだろう。

間違ったことをしたとは思わないが、頭に血が上って派手にやらかしたとは思っている。

メルクーリア達が頑張ってくれたから持ち直せたが、あの頃は本当に危なかった。

我々の反応から色々察したのかザビル含め青年貴族らが苦笑いしていると、謁見の間の扉が見え始めた。

 

「着きましたね、では我々はこれで……」

「何故だ?このまま行くぞ?」

「え!?ですが……」

帰りのエスコート(・・・・・・・・)までを貴殿らに頼みたいからな」

 

ザビル殿以外はここで下がるつもりだったようだが、国王に我々との関係性を印象つけておけば彼らの望みに繫がるだろう。

 

「あ、ありがとうございます!」

「うわ、緊張してきた……!」

「き、気合いれてくぞ!」

 

なんとも初々しい”革命の種”達の反応に苦笑いしつつも、今後の成長を楽しみに思うのであった。

 

 

 

 

[ラスティネーオ城 謁見の間]

 

Sideザメンホフ27世

 

セイやザビル、ガングート殿からこの10日間での進捗状態を聞いていた。

新型銃と専用弾丸の量産状況は順調。

使用上の注意として発砲煙が有毒であるためマスクの着用を厳守とする。

片手で撃つノーマルモデル、銃身の延長とストックの大型化で両手打ちに対応させたライフルモデル。

パーツのつけ外しでどちらにも換装可能にしたとの報告。

セイの奴めが胸を張って言う姿に叔父として思わず微笑ましくなる。

 

ザビルからは北方連合との訓練状況についての報告。

一部脱走者が出るほどの厳しい訓練であったらしく、側近らが頬を引き攣らせておった。

(なお脱走者は一人残らず失敗していて全員根性を叩き直された)

同席している貴族の青年らも訓練生であるらしく北方連合兵からの評判は悪くないとのことだ。

ふむ、緊張はしているようだが顔つきが良いな。

少々過激な思想を持っているなどと報告を受けていたが、彼らなりに貴族の未来を案じているのであろうな。

 

そしてガングート殿からの敵勢力に関する報告となった。

 

「まずは敵勢力についてですが以前救助した黒騎士から少ないながらも情報が得られました。

まず彼らは【鬼人族】という種族らしく、かつては異種族連合にも参加。

彼らは種族の要となる姫君を人質に取られて半ば強制的に洗脳装置を付けさせられていたようです」

「なんと、古の連合に参加した種族であったか!?」

「人質を取って洗脳までするとは、なんと卑劣な!」

 

周りからは驚愕と義憤の声が上がる、よもや異種族連合の末裔らと戦わされていたとは……!

 

「本人が精神操作の副作用でまだ意識がはっきりしないためこれ以上の情報を得るのは困難と判断、

今は静養に努めさせています」

「ふむ、残念だが仕方あるまいな」

「その代わり、この者からは重要な情報を得られました。

ゼリム、ヘルメットを取って良いぞ」

は、はい

 

ん?聞いたことのない言語だな?

同席していた北方連合の兵の一人がヘルメットを外すと顕になった姿に驚愕する。

 

「なっ!?」

「ま、魔族か!?」

 

驚きのあまり呆然としてしまったが、護衛騎士らが剣を抜くのを見て慌てて止める。

 

「やめい!剣を収めよ!………ガングート殿、ご説明を頼む」

「彼はこのエスペラント王国で諜報員をされていたものです。

黒騎士らと同様に洗脳装置を取り付けられていましたが我々が捕縛、

彼からは貴重な情報を多く得ることが出来ました。

故に彼の扱いに関してはどうか寛大な処置を願いたい」

 

ガングート殿が頭を下げると魔族の者も慌てた様子で頭を下げる。

ふむ……、伝え聞いた魔族という種族とはかなり違う印象よな。

人間同様に魔族にも色々いるということなのだろう。

 

「ガングート殿、頭を上げてほしい。

彼の処遇については我々では手に余る、北方連合が問題無いと判断したのならそのようにしよう。

して、どのような情報が得られた?」

「今回の黒幕はダクシルドなる翼を持つ亜人種とのこと、

他にも同じ種族のものが数名いるらしく組織立った行動をとっているようです。

またバグラ山には極めて危険な邪竜が封じられており、彼らはそれを呼び起こそうとしている可能性が高いと推測しています」

 

なんと!?それではここ最近の散発的な襲撃は足止めが目的か!?

側近や騎士団も事態の全容が掴めてきたのであろう、顔が青ざめてきている。

 

「………時間的猶予は?」

「不明です、本国には増援を要請していますが最低でも5日はかかるかと」

「うむ、難しいところだな……。

こちらから攻め込むことは可能か?」

「難しいかと、連中には守るものがありません。

恐らくこちらから攻めれば向こうは拠点を捨てて王国を四方から攻めてくるかと」

 

こちらから攻めるには手勢が足らぬか。

北方連合からの増援が数日中に着くのであれば攻めるのは下策か……?

 

「セイ、新型銃の生産量は?」

「まだ不十分ですね、もう少し数を作る必要があります」

「ザビル、貴殿の見解は?」

「ガングート殿と同様で攻めるのはリスクが高いかと。

下手に攻めるよりは経験を活かせる防衛線に引きずり込みたいです」

 

目に見える脅威がいるのに攻めれぬとはなんと歯痒い。

しかし国民を守ることが最優先だ、ここを間違えるわけにはいかん。

 

「仕方ない、全兵力を総収して防衛線を張るぞ。

外縁部の非戦闘員に避難命令を出せ。

可能な限り中央区に人を集めて防備を完璧なものにせよ」

「了解しました、必ずや守りきってみせます」

 

あと数日、たった数日で我らの命運が決まる。

太陽神よ、どうか我らにご加護を……!

 

 

 

■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇

 

 

 

[グラメウス大陸 中央部 大陸解放本部]

 

Sideメルクーリア

 

本部のとある倉庫、大勢の兵達の前に私は小さな箱を土台にして立っていた。

 

「はぁ〜い!みんなのパーミャチ・メルクーリヤだよ!」

「うおぉー!!!クーちゃ〜ん!」

「罵ってくだされ!」「踏んで!」

「どうか罵倒を!」「『ザ〜コ』の一言を!」

「メスガキロリババア〜!!!」

「属性が特盛二郎系ラーメン!」

 

ちょっと!後半の罵倒よね!?

 

「バ、ババアは許さないわよ!?」

「でもこの前腰痛めてましたよね?」

「腰は誰でも痛めるでしょ!?」

「さすがに背伸びしただけでギックリ腰になるのは庇えないでございます」

「うう、うわぁ〜ん!」(´;ω;`)

((((あ〜、クーちゃんの負け泣き顔カワエエのぉ))))×全員

 

こいつら、いつか粛清してやる!(半泣き)

 

「おほん!本題に入るわよ!

数時間前に未知領域調査部隊から緊急連絡が来たわ。

未知領域にあるエスペラント王国が大規模な魔獣の襲撃に晒されている。

この襲撃の裏には他組織の介入が確定、場合によっては他国の陰謀の可能性あり。

また魔獣の群れの中には洗脳された亜人の存在が小規模ながら確定されており、彼らの救出も可能な限り行うことになったわ」

 

洗脳の下りのあたりで兵士達から怒りの感情が顔に出始める。

 

「さらに追加情報としてかなりヤバイドラゴンが封印されてたらしくて、それが暴れ出すことも懸念されてるわ。

………状況はかなり逼迫していのが現状よ」

 

周りからは緊張した空気が張り詰める。

これまでの魔獣退治と同じ様にはいかないと悟ったのだろう。

 

「数日後に輸送機の準備ができ次第、貴方達にはエスペラント王国に行ってもらうのだけど………。

怖気づいたザコいりゅ〜?」

「いるかよぉ!」「気合い入ったぜ!」

「わからせるぞゴラァ!」「うぇ〜い!」

 

よし!気合は十分ね!ふふん、当日が楽しみね!

 

「あ、当日は私も同行する予定だから宜しく!」

「「「え?腰大丈夫?」」」×全員

「あんたらぶっ飛ばすわよ!?」ヽ(`Д´)ノプンプン

 

 





アヴローラは北方連合兵士らに敬意を向けられてます。

ガングートは北方連合兵士らに尊敬されてます。

メルクーリアは北方連合兵士らに愛されてます(笑)

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