異世界にレッドアクシズの名を刻む!   作:戦場の派遣(渡鳥)社員

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これにて外伝軸の話は一区切りになります。
次回からは本編軸の話の予定です。


無機質の憎悪

 

[グラメウス大陸中央 北方連合解放戦線本部]

 

Sideソビエツカ・ベラルーシア

 

飾り気のない執務室で今回の追跡作戦の報告書を確認する。

 

「で、結局確保には失敗か」

「面目もございません……」

 

今回のエスペラント王国へのテロ行為容疑の首謀者らの確保を指揮していた陸軍大佐が頭を下げる。

 

「仕方あるまい、こちらも情報が少なかった。

万一、同志エムブラ指揮官の報告にあった”魔王”クラスの化け物が同伴していれば被害は大きかっただろう」

「しかし現場判断にしてもやりすぎました………。

完全に燃え尽きたところだけでも200ヘクタール、延焼を含めればそれ以上の森林が焼け野原になりました。

貴重な森林資源の損失もそうですが目標の生死さえ確認困難です………」

 

申し訳無さそうに謝罪する大佐にこちらもバツ悪い思いで目を伏せる。

今回の追跡は計画にない緊急出撃に近いものであった。

今回の大規模空挺作戦の事前準備としてエスペラント王国の方角へと情報収集部隊とドローン偵察機を出撃させていたのだが、

そこに山から降りてくる馬に乗った一団を発見したと報告があった。

最初は逃げ出した王国の者かと思ったが背中に翼らしきものがあることから魔族ないし亜人ではないかと推測。

明らかに怪しいと思いドローンを近づけたところで謎の火球により撃墜された。

そして別のドローンからの映像では速度を上げ急ぐ一団の姿が映し出されていた。

そのため一団の確保のために急遽部隊を編成して出撃させたのだが………、

機甲部隊や砲撃部隊まで出撃させた結果は散々なものとなってしまった。

 

「確保に失敗はしたが、収獲もあったな」

「ええ、形状からおそらく有人の飛行物体と思われますが構造が全くの未知であり、

解析には時間がかかるものと思われます」

 

報告書にある写真を見る、そこには多少煤けてはいるがほぼ無傷の白いSF映画に出てきそうな見た目の物体。

イメージ的には車輪の無いワゴン車、左右には短いながらも翼もある。

 

「これも魔法で動くのか?ならば是非解析して欲しいものだな」

「グラメウス大陸では魔法由来の資源が豊富ですからな。

輸出だけではなく自国でも活用方法を模索すべきです」

 

………空中戦艦ソビエツカ級、それはそれで面白そうだな。

 

 

 

■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇

 

 

 

[グラメウス大陸南東 海底南下中]

 

Sideダクシルド

 

薄暗い金属質の空間で目を覚ます。

………どうやら少々眠っていたようだ。

 

「ダクシルド殿、大丈夫ですか?」

「すまん、さすがに疲れていたようだ……」

 

心配そうに覗き込む同僚を手で制し、薄暗い室内を見渡す。

共に逃げてきた同僚らに脱落者は無し、そして一様は命の恩人の姿も確認する。

直立不動で佇む”テスター”と名乗った女性。

病的に白い肌に感情を映さない金色の瞳、青白い長髪。

そして局部を辛うじて隠せている程度の黒いボディスーツと金属の髪飾り。

魔力を一切感じないこの不気味な姿をした女は爆音が鳴り響く森の中に突然姿を表し、

我々をこの海中を潜行する物体へと案内してグラメウス大陸からの脱出を支援してくれた。

 

「テスター殿、おはようございます」

「(チラッ)…………」フイ

「………むぅ」

 

同僚らと目を見合わす、先程からこの調子なのだ。

助けこそされたが理由は不明、さらに言うなら現在向かっている場所も不明。

いいかげん多少の会話をしなければと無理矢理会話を続ける。

 

「何故我々を助けたのだね?」

「…………」

「我々は今から何処に向かっている?」

「…………」

「あ〜、食事はあるかね?」

「………(ガサゴソ、コト)」

 

………水の入った容器と黄色い箱に入った焼き菓子のようなものを渡された。

同僚らと一本づつ分けて食べる。

パサパサしているが味はそこそこ美味しかった。

…………泣きそう。

 

「すまん、我々の精神を保つためにも会話をしてくれないかね……」

「…………解った、何が聞きたい?」

 

ようやくまともな返答がきたことに感謝と悪態をつきながら確認をする。

 

「我々を何故助けたのだ?」

「目的遂行に必要だったからだ」

「我々は今どこに向っている?」

「フィルアデス大陸をさらに南下、艦隊と合流後にアニュンリール皇国へと向かう」

 

………まぁ驚く内容ではないな、有翼人種となれば特定は簡単ではあるだろう。

しかし目的……?我々を人質に何かを要求するのか?

 

「目的、とはなんだ?」

「………お前達が魔法帝国の残滓であるのは確認している」

「「「!?!?」」」

 

こ、こいつは、そこまで知っているのか!?

どうする?ここで始末するのは……、流石に無理だ。

顔を青褪めさせてただ状況を受け入れるしかなかった。

 

「かつて魔法帝国は神の怒りを受け、それを回避するためにこの世界から一時撤退した。

そしてそう遠くない未来に帰還を果す、これであっているか?」

「黙秘、とさせてもらえるか……?」

「会話をしたいといったのはお前らだろうに……」

 

呆れるテスターにふざけるな!と心の中で叫ぶ。

 

「まぁ続けるぞ、我々は魔法帝国もしくはアニュンリール皇国に”ある情報”を確認をしたいと思っている」

「ある情報……?」

「”神”の存在証明と観測方法だ」

 

???、この女は何を言っている。

すぐに理解出来ずに同僚らと見合わせる。

我々と因縁深い神なんて一柱しか思い当たらない。

 

「神とは太陽神のことか?」

「肯定、それで合っている」

「何故太陽神の存在を?」

「我々が”この世界”に来るキッカケになったのは”我々の世界”の一部のモノが転移させられた(・・・・・)からだ」

 

なるほど、こいつらは太陽神の使者、もしくはその関係者………。

 

「”この世界”と空間座標の発見には先に転移した者の助力が大きかったが、

現在は世界間の移動用ゲートも予定数を建造し終わった」

「「はぁ!?」」

「なん、だと……!?」

 

ま、まさかこいつら自力で世界線の移動を行ってあえるのか!?

主神である太陽神でさえおいそれと出来ない奇跡*1だぞ!?

こいつらは、魔力を使わずにかつての魔法帝国並の技術を持っているというのか!?

 

「で、出鱈目を……!?」

「しかし根本的な問題が解決していない、故に”世界の敵対者”である貴殿らの助力を願い出たい」

「助力……?いや、それよりも根本的な問題とはなんですか?」

 

否定しようとした私の言葉を遮って女が話した内容に同僚の一人が食いつく。

確かそこは気になるな、その根本的な問題とやらが神の存在とどう絡むのだ?

 

「根本的な問題、それは”我らの世界”から強制的に転移させられるような存在が野放しになっていることだ。

一度行われた以上、今後も転移させられる可能性は否定出来ない」

 

………それは考えすぎではないか?

仮に再び使者として呼ばれることがあろうとおそらくは数百年後とかだろう。

それにすでにこちらとの世界を行き交い出来ているなら特に問題は無さそうだが……?

そう考えていると女の様子がおかしいことに気づく。

無表情のままであるがその纏う雰囲気がドス黒いものになっていく。

 

「我らは決して許さない。

掛け替えのない存在(カグヤ・エムブラ)を連れ去ったことを。

我らの”計画”を、ただ一つの”願い”を踏み躙ろうとしたことを。

故に再び、ふざけた存在が我らの可能性(カグヤ)を摘み取る確率がたとえ涅槃寂静の果てであろうと存在するのであれば、

どれほどの労力をかけようと、どれほどの犠牲がでようとも、必ずや抹消し尽くす」

 

室内の空気が変質するかのような錯覚をする。

煮えたぎる灼熱地獄のような、全て凍てつかせる極寒地獄のような矛盾を感じさせるほどにまでに濃密な憎悪と殺気。

表情は一切変わっていない、ゆえにより異質さを感じる。

 

「我らは”報復”する、観測出来ない存在を暴き曝け出し抵抗も弁明も一切許さない。

この世界における我ら【セイレーン】の最終目標、それは”神殺し”だ」

 

そう言い終わると同時に殺気と憎悪が一瞬で霧散する。

胸に手をやり己の心臓がまだ動いていることを確認し安堵した。

 

「しかし我々の技術と知識では”神”の観測が出来ない。

観測も存在証明も出来ないのでは”殺せない”。

だからこそこの世界特有の技術、魔法技術の最頂点にいるであろう魔法帝国とアニュンリール皇国に助力を願いたいのだ」

「………まるで観測さえ出来れば手段はあるかのような言いようだな」

 

私は精一杯の虚勢をはるように皮肉交じりに言う。

魔法技術も魔力もない存在に太陽神を殺せるような手段があるとは思えなかったからだ。

 

「手段においてはこちらが用意できる最上最高(サイテイサイアク)のモノを用意した。

それが”神”に効くかどうか観測をしてからでも遅くはあるまい。

帰還する魔法帝国に”神”を殺す方法があるならそれはそれで構わん」

 

なるほど、意地でも”神”を殺すつもりか。

そのためには手段は選ばない、と。

こいつらセイレーンとやらの規模と戦力はわからないが味方が増えることには問題はないだろう。

この世界で魔法帝国の復活に協力するような国や存在はほぼ皆無なことを考えれば喜ばしいことだ。

精々役に立ってもらおうではないか。

 

 

 

Sideテスター

 

現在座標確認、そろそろ合流地点か。

現在搭乗している潜水艦【Assassin】を操作しているエグゼキューターシリーズ【ダイバー】に浮上命令を出す。

………しかし感情に任せて少し喋りすぎたか?

感情機能を抑制されている私が感情に流されるとは、あまりいいことではないな。

オブザーバーの醜態(親バカ)やピュリファイアーの失態(姉バカ)、コンパイラーの暴走(姉バカ)にあれこれと苦言をしていたが………今後は控えよう。

………カグヤ・エムブラ、計画に転機を齎した我らの福音。

他の自律型個体の殆どが何かしらの思いを秘めているのは公然の秘密ではある。

私は比較的執着心が薄い(・・・・・・・・・)ため喪失事件のさいに機能不全を起こすようなことはなかった。

当然だ、我らの福音がカグヤが私を置いていなくなるなんてことはあり得ないのだから(・・・・・・・・・)

だからこそ追跡が不可能とされたときも自我崩壊しかけた程度(・・・・・・・・・・)で済んだため、

オブザーバーやコンパイラーのように機能不全に陥るような欠陥は起こさなかった。

何故かオミッターやアビータモデルからは再三メンテナンスを受けるように要請されていたが………?

自身の機能に問題はなかったのだからおそらくは彼女ら自身に何かしらの不調があったのであろう。

 

「もうすぐ浮上する、そこで使節団の艦隊と合流する予定だ」

「(……艦隊?)そうか、ようやく空を拝めるな」

「(もしや戦力の売り込みか?)それは楽しみですな!」

 

アニュンリール皇国の者らは何やら興味を持った様子だが大した規模の艦隊ではないので舐められるやもしれんな。

潜水艦が浮上すると直上にいた双胴空母【Queen】の後方に接舷、そこから艦橋まで移動をした。

ちょうど艦隊の全容が見える位置のため一様は説明を開始する。

 

《セイレーン使節団派遣艦隊》

 

セイレーン空母【Queen】 1隻

セイレーン戦艦【Rook】 2隻

セイレーン重巡洋艦【Bshop】 4隻

セイレーン軽巡洋艦【Knight】 6隻

セイレーン駆逐艦【Pawn】 15隻

セイレーン潜水艦【Assassin】 4隻

 

※各艦にエグゼキューターシリーズ搭乗しコントロールを担当

 

アニュ皇「「「「………(絶句)」」」」

 

少々心許無い規模の艦隊だが別に戦闘をすることが目的ではないならこの程度で問題はないか*2

 

「艦隊前進、針路アニュンリール皇国本土(・・)

 

カグヤ、あなたの安寧と平穏を脅かした愚神を必ずや殲滅してあげよう。

我らの”願い”を踏み躙りかけた代償を必ずや払わせよう。

 

「必ずや我らの”報復”を成就せん」

 

その結果、この世界が滅びようと何の問題もない。

今更”世界”の一つや二つ滅ぼすことに躊躇なぞ微塵もないのだから。

 

 

セイレーン下層端末個体【テスター】

 

他の自律個体と違いカグヤへの執着が無いと自身では思っているが、ただ単にその複雑怪奇な感情を機能が表しきれてないだけである。

ゆえに感情表現が豊かな自律個体は口を揃えていう。

他陣営を含めても最上位にヤバイ無自覚系サイコヤンデレ、だと。

 

*1
※かつてエルフの神は自身の名を捨てることで太陽神に使者の召喚を願い出ている

*2
KAN-SEN陣営と一戦闘すれば無くなる程度の戦力





実はセイレーンで一番拗らせていたのはテスターであったとうオチ。
テスターの優先順位ではカグヤ一個人よりも転移世界の存亡は軽いものです。
ヤンデレ気質であるが愛情を求めている訳ではなく、何かしらであれカグヤの意識が向いてくれていれば
それが憎しみであれ嫌悪であれ本人は満足する。
但し一度カグヤから意識されない、無視される立場になれば
どのような手段を用意てでも意識を向けられようと暴走する可能性あり。

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