異世界にレッドアクシズの名を刻む!   作:有澤派遣社員

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パーパルディア編再開です。


皇女、カム着火インフェルノ

 

[神聖ミリシアル帝国 港町カルトアルパス]

 

商人や貿易商が集まるとある酒場、以前グラメウス大陸の世界ニュースで大盛りあがりしたのも記憶に新しい。

今日も世界ニュースの情勢報告を聞きながら、

皆で各種色々な酒を飲んでいるが実は全て”とある共通点”がある。

 

「この鉄血産ビールうめぇな!」

「サディア産ワインもいけるねぇ」

「重桜産の清酒とやらは凄いな、見た目水なのに奥深い酒だ……」

「かぁ〜!おれは北方連合産のウォッカとやらが気に入った!」

「こっちはクワ・トイネ産の清酒か、流石に重桜産には劣るが値段が格安だな」

「ロウリア産とクイラ産の酒も値段の割に旨い、前は雑味が強かった感じだったのにこれは最早別物だな」

 

そう、彼らはロデニウス大陸帰りの商人が大量に買い込んだアルコール飲料を飲み比べていたのだ。

なお大量の酒を購入するさいに鉄血の運送会社が気を利かして厳重に梱包して運送コンテナに詰めてくれたが、

そのコンテナが重すぎて船に載せれなかったという珍事も今は笑い話である。

 

「しかしグラメウス大陸への渡航許可が下りなかったのは悔しいな〜」

「一応戦地みたいなところだからな、向こうも気を張ってるんだろ」

「トーパ王国や文明圏外国の船籍は一部許可されてるみたいだからこうやって北方連合の酒も飲めてるがな!」

「でだ、ここに集まったのは酒を飲むためだけじゃないだろ?」

「当たり前だ!さっさとレッドアクシズの新情報吐いちまいな!」

 

ここに集まった者らの興味は今話題のレッドアクシズの情報だ。

文明圏外国への安全な渡航ルートは物好きしか知らないため今や秘匿情報となっている。

無論最新鋭の魔導船やらであれば強引に突破は出来るだろうが、

道中何があるかなんて分かったものではない。

実際に今回のロデニウス大陸に向かった船団も海賊や海魔に襲われ破損したものがある。

しかし実は被害を受けたのは第三文明圏海域であり、文明圏外海域では一切の被害を受けていなかった。

 

「いや、もうレッドアクシズ様々だよ。

前は海賊共が根城にしてた島が今やバカでかい灯台が建ってるぜ」

「連中マジでやり手だわ、まさか海賊どもをまとめて雇うとはなぁ」

 

海賊といっても色々だ。

無駄に殺生はしない一族で海賊稼業を行って稼いでいたようなものから、人殺し上等な犯罪者崩れのようなどうしようもない奴らまで様々だ。

故にレッドアクシズ各国は前者の海賊達を全て抱き込み、後者の海賊を一掃することにした。

前者の海賊達からすれば薄汚れた犯罪者が海にのさばっているのは看過できなかったが、

数が多すぎて排除出来ずに獲物を横取りされるのも多々あった。

そして海賊=凶悪犯の図式が当たり前になり肩身がより狭くなる。

元々広大な海に囲まれた世界での大航海時代を知るレッドアクシズの各陣営としては全て海賊を敵に回して結託されても苦労が増えるだけであることは経験則として知っていた*1

だからこそ抱き込めることが可能な前者の海賊を私掠船として雇い、海賊同士での殴り合いになるように仕向けたのだ。

無論私掠船側が圧倒的に少数のため装備はレッドアクシズ側がテコ入れした。

博物館に飾ってあった旧式砲をコピーして搭載、それはそれは圧倒的な戦力で次々に犯罪者海賊を討伐していった。

ただここで問題なのは渡した”博物館に飾る旧式砲”がこの世界基準ではかなりヤバイ性能であったことか。

ロイヤル製後発式ライフル砲【アームストロング砲】。

最大射程4km、威力はパーパルディアの最新式魔導砲に一歩劣る程度。

これが左右に2門に前方1門の計5門搭載。

仕組みこそ旧式のままだが材質と製造方法は最新式、普通にそこらの第三文明圏国の海軍を相手にできる性能である。

船に関してもロウリアの木造船をレッドアクシズ側が改修した”なんちゃって木造船”である。

普通にオーパーツレベルの船を渡された雇われ海賊らは野心に火が付きかけたが、

隣に並んだロウリア国旗の付きフブキ級量産型駆逐艦を見て一生逆らわないことを心に決めた。

また弾薬は全てレッドアクシズもしくはロデニウス大陸の各国が無償で提供すると約束されていたため、

彼らは遠慮なく練習でも撃ちまくった結果、技量は直ぐに上がった。

片や弓矢と接舷しての近接戦の帆船、片や最大射程4kmの火薬式大砲を搭載した見た目木造船、実際はディーゼル駆動船。

勝ち目なんて最初からなく、海賊船を一隻沈める毎にボーナスも出るということでそれはもうひどい有り様となった。

そして本人らの海賊行為も給料と報酬が払われることでやる必要がなくなり、海賊被害は激減した。

中には正式に海軍へのスカウトを受けた者もいる。

 

 

そして商人らは知らないことではあるが海魔に関してもレッドアクシズ側の影響が出ていた。

簡単に言えば船を襲わなくなった。

元々船団を襲うような知能のある海魔は魔法帝国の生物兵器が野生化したものが多い。

そして生物兵器である彼らは本能的にKAN-SENと人型セイレーンを異常に恐れた。

船団を襲うとKAN-SENやセイレーンがすっ飛んでくる。

知能の高い彼らはすぐにリスクとリターンが見合わないことに勘づいた。

ソレに何故かセイレーン側からは討伐した他の知能の低い海魔やらの死骸が提供されることもあった*2

彼らは学んだ。

襲えば討伐され、襲わなければご褒美に餌をくれる。

その結果、主要航路の海魔達は移動するか逆に船団に近づいた格下の海魔を餌にするようになったのだ。

こうしてロデニウス大陸周辺の文明圏外国海域のほうが第三文明圏海域よりも安全となったのだ。

 

 

「すげぇな、レッドアクシズの話題だけでひと稼ぎできそうだわ」

「そのレッドアクシズなんだが、どうやらムーと繋がりを持ったらしい」

「………まぁレッドアクシズも科学文明国なら当然か」

 

ムーと国交を初めたことにさして驚きはなかった。

寧ろ当然の流れだとは思っていた、内容を聞くまでは。

 

「どうやらムー国はレッドアクシズに対して技術支援要請を前提とした国交を結んだらしい」

「はぁ!?んは馬鹿な!?」

「おいおい流石に冗談……、いや前の時計の話か!?」

「ああ、マジらしい。しかもかなり本腰入れての使節団派遣も近いうちにするつもりって話だ」

 

それが事実なら情勢は大きく揺れそうだ。

そう皆が思案をしていると世界ニュースから速報が入ったと慌てた様子でアナウンサーが喋りだす。

 

『只今速報が入りました。

以前報道しましたグラメウス大陸の動向について北方連合側から通達があったそうです。

………グラメウス大陸の南西部に異種族連合時代から続く国家の存在を確認!?

また大規模の魔獣の群れと山間部にて封印されていた龍型の魔獣を討伐……!?

ここからは声明文書となります!

〘今回の西方方面への調査完了をもって北方連合はグラメウス大陸における解放作戦を暫定的に完了したものとする。

これをもってグラメウス大陸は人類のものへと奪還出来たことをここに報告するものとします〙

なんと!?これは驚きの報告です!

まだ北方連合からの報告であるため不鮮明ではありますが、

後日正確な情報をお伝えできるように現地派遣員からの報告を纏める予定です!』

 

…………マジで!?

酒場は絶叫の嵐が吹き荒れるのであった。

 

 

 

■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇

 

 

[皇都エストシラント 第一外務局監査長室]

 

Sideレミール

 

間借りしている執務室で3枚(・・)の手紙を片手に私は今生最大級の怒りに震えていた。

 

「き・さ・まぁーー!!!!ふざけるなぁーー!!!!!!」

 

ドン!!!

 

感情にまかせて執務机を叩き割らんばかりに殴りつけた。

目の前に佇む文明圏外国の物輸担当部長が死にそうな顔で立っている。

ふざけるな、死にそうなのは我が国のほうだぞ!?

貴様の怠慢でこちらがどれほどの不利益を被る羽目になると思っている!?

 

「お、落ち着いて下さい、レミール様……!」

「この状況が落ち着けるかぁ!?

よもや皇室印の手紙に気付かぬとは、もはや逆賊として処刑しても誰も文句を言わんわ!?」

「それは、そうですが……」

 

必死に宥めようとしてくれるエルトにも八つ当たりをしてしまう。

いかん、冷静になれ、冷静に、冷静に………、なれるかぁーー!?

 

「貴様!ことの重大性を理解できているのか!?」

「ヒィ!しかし、たかが文明圏外国の……」

「百歩譲って文明圏外国からだから後回しにしていたというのは許してやる!数も多いだろうからな!

だが仮にも皇室印の手紙を一ヶ月以上放置とはどういうことだぁーー!!!!」

「ヒィィィ!?!?」

 

縮こまる男に護身用のピストルを向ける。

こんな無能、視界に入れているだけでも不愉快だ!

 

「………クビだ!いや、国外追放に処す!パーパルディア人民としての全てを剥奪する!」

「そ、そんな!?」

「イヤならこの場で処断してくれる!鉱山奴隷落ちでないだけ温情だと思え!

さっさと出ていけぇ!!!!!」

 

鉱山奴隷落ちは死刑囚を含めた重犯罪者に課せられる”死の有効活用””緩やかな処刑”とも言われるほどの重罪刑だ。

鉱山奴隷として三年以上生存すれば不正が疑われるといえばどれだけ過酷かは想像に難しくはないだろう。

項垂れながら男が退室したのを確認して乱暴気味に座る。

 

「………大丈夫ですか?」

「大丈夫に見えるか……?ホントにどう弁明しよう………」

 

心配そうに覗き込むエルトに弱音を吐く。

サディアは時間にはあまり厳しくない、むしろ寛大に許すのが紳士の度量などと書かれていたような気がするが限度はあるだろう……。

 

「とにかく早く返事を送らねば!遅れた理由は……、書かないで謝罪だけにしよう」

「仕方ありません、正直に理由を書いたらそれこそ心象を悪くします……」

 

あの男!やはり今からでも首を落とすべきか!?

………いや、もう人を殺すような命令をしたくない。

それに下手に処刑でもすれば目立ってしまう、あまり大事にはしたくない。

 

「とにかくリットリオ様への返事を……、いや先に会談場所の確保……?

それ以前に移動手段をどうする……!?もうやだ、胃が痛い……!」

「落ち着きましょう、今レミール様が倒れたら私は貴女を連れてどこかに高飛びしますよ?」

「………その時はせめて専属侍女のルーナだけは一緒に頼む」

「善処はしますが確約はできかねます。だから倒れないでください」

 

くそ、なんでこんなに追い詰められないといけないのだ……!

やはり過去の行いか?今になって恨み辛みが襲ってきてるのか!?

もうやだぁ……!

タスケテクダサイ、ルディアス様。オジヒヲオネガイシマス、リットリオ様。

太陽神様、皇室の御先祖様方、どうかパーパルディア皇国の未来にご加護を……!

私は祈るような思いでリットリオ様へのご返事を書くのであった……。

 

 

*1
海賊連合艦隊なるものを結成されて当時のロイヤルやアイリスの海運経済が大打撃を受けた

*2
ただ単に死骸の処分に困って投棄場扱いされただけである





戦争も始まってないのにレミールが胃痛で倒れそうになる小説なんぞウチだけだろなぁ〜。

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