異世界にレッドアクシズの名を刻む!   作:有澤派遣社員

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書きたいことが表現しきれない……


海上に浮かぶ城

〜時は少し遡りギム侵攻日早朝〜

 

[マイハーク港]

 

Sideブルーアイ

 

まだ日が上がり始めた早朝、港と近くの浅瀬では慌ただしいく凄まじい騒音が鳴り響いている。

 

「物資の積み下ろし急げ!時間無いぞ!」

「装甲車両の移動の邪魔だぞ!早く退けろ!」

「フェン隊長より通達!ヴァンツァー部隊、先行するとのこと!」

「ツェッペリンちゃーん!こっちこっち!」

「搭乗予定のKAN-SEN両名確認!リフトオフ!」

 

ゴーレムを吊り下げた鉄竜達ががけたましい轟音を鳴らしながらギム方面へと飛んでいく。

あまりの騒音に周囲から民が飛び出てきて唖然としていた。

 

「す、凄まじい光景だ……」

 

レッドアクシズからの援軍が来るとは聞いていたが想像以上の事態に頭が追いつかない。

昨日までレッドアクシズの戦力に疑問を抱いていた提督のパンカーレ殿も港外に並ぶ”城の群れ”に絶句したまま立ち尽くしている。

朝日が昇り始め、その10隻の船影がよりハッキリと見えてきていた。

我々クワ・トイネ海軍の軍船が玩具に見えるような巨大な鉄の船、あれがレッドアクシズの軍船!

あれ程の船であればもしかすると……!

 

「ブルーアイさん!そろそろ移動をお願いします!」

「わかりました!すぐ向かいます!」

 

眠気も吹っ飛んだ、私は興奮も冷めやまぬまま移動用の鉄竜に乗り込むのであった。

 

 

 

■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇

 

 

 

[クワ・トイネ領海]

 

Sideシャークン

 

「いい景色だ。美しい」

 

ギム攻略と合わせるように出港した東方征伐海軍はロウリア王国建国以来最大規模の艦隊だ。

これ程の艦隊であれば例え列強国家相手であろうと……。

いや、確かパーパルディアには砲艦なるものがあるとか聞いたな。

なんでも船を直接攻撃できる魔導砲なるものを搭載してるのだとか。

そんなことを考えているとクワ・トイネの方角から飛んでくる1匹の飛竜らしきものが見えた。

 

「何だあれ!?」

「飛竜、か?」

 

なんだあれは?飛竜とは似てもに使わない外見(※FI282です)、耳障りな音を鳴らしながら近づいてきて艦隊の周囲を旋回し始める。

………気のせいか?黄色いデカイ雛のようなものが乗っていたような?

 

『こちらはレッドアクシズ所属、指揮官のカグヤ・エムブラです。

あなた方はクワ・トイネ公国の領海を侵犯しています。

これ以上の侵犯を犯すのであれば実力で排除します』

 

鉄竜から女の、いや、少女の声がする。

レッドアクシズ………?確か噂になっていた新興国家か。

舐められた思ったのか、怒りから近くの船から怒声とともに弓矢が放たれているが届いてはいない。

すると旋回をし終わった飛竜モドキが来た方角へと戻って……!

 

「何だあれは!」

「で、デカイぞ!」

「城が、海に浮いている……?」

 

な、なんだアレは……!?

慌てて望遠鏡で覗くと艦隊が向かう遥か前方には城としか思えないほどの巨大な船影が確認できる。

それも1隻ではない、城並のが3隻とそれよりかは小さい船影が複数存在している。

そしてかろうじて見えたのは赤い旗に書かれた十字状の紋様であった。

 

 

 

 

[鉄血戦艦”フリードリヒ・デア・グローゼ”艦橋]

 

Sideカグヤ

 

【艦艇顕現KAN-SEN】

・戦艦フリードリヒ・デア・グローゼ

・戦艦ウルリッヒ・フォン・フッテン

・巡洋戦艦オーディン

・重巡洋艦プリンツ・ハインリヒ

・軽巡洋艦マインツ

・軽巡洋艦ケルン改

・駆逐艦Z23改

・駆逐艦Z25

・駆逐艦Z26

・駆逐艦Z36

【同伴KAN-SEN】

・重巡洋艦ローン(オーディンに同伴)

・空母ペーター・シュトラッサー(ウルリッヒに同伴)

・軽空母エルベ(ハインリヒに同伴)

 

「………これで下がってくれれば御の字だけど」

 

私は先程まで使っていたマイクを置くと、ケルンから通信が入る。

 

『指揮官、FI282の回収完了しました。

敵船団は以前と前進中です』

 

「報告ありがとう。フリードリヒ、もう少し様子見をする。速度を落として面舵、側面を向けて」

「わかったわ、全艦面舵、速度落とせ」

 

艦隊の進行方向が僅かに右にそれ初め、敵艦隊の進路上の壁になるようにする。

 

「フリードリヒ、最終通告として威嚇射撃を許可、副砲で敵艦隊の目の前を狙って」

「ええ、お安い御用よ」

 

フリードリヒが指を僅かにふると同時に発砲音が鳴り、水柱が発生して敵船団の先頭が盛大に海水を浴びていた。

どうだ?これで退くか?

だがそんな期待は虚しくも裏切られた。

 

「敵船団増速を開始したわ」

『こちらオーディーン、ロウリア方面より飛竜の群れを確認、数は200強』

「…………っ、戦艦は主砲の発射をするな!それ以外は火器自由で敵船団に砲撃開始!先頭集団から押し込むように沈めろ!飛竜は一匹たりとして逃がすな!」

『『『『『jawohl(ヤボール)!』』』』』

「…………」

「”カグヤ”、無理しちゃだめよ」

 

響き渡る大小の砲声に後悔の念に苛まれていると、フリードリヒが後ろから抱きしめてくれた。

 

「フリードリヒ……」

「カグヤ、我らは貴女の剣であり盾。その優しさは我らには過分なものよ」

「………ゴメン、ね」

「でも、その優しさこそが我らを引き付けて止まないものでもあるわ。

だからこそ、自分を見失わないで」

「………うん」

 

抱きしめているフリードリヒの腕を握りながら、その温もりに身を委ねた。

砲声が止む気配は、まだない。

 

 

 

 

[鉄血巡洋艦戦艦”オーディン”艦橋]

 

Sideローン

 

「(ピキーン!)指揮官とフリードリヒが浮気してる気配!!!」

「浮気って君”だけ”の伴侶でもないだろ?」

 

オーディンが呆れた様子でツッコむが無視。

ああ!この感情、やはり嫉妬こそが私の渇望を満たして……!

いや、駄目、却下、嫉妬する状況は構わないが最後は私でなければ許さない(・・・・・・・・・・・・・)

カグヤは私の全て、あの人がいるから私はKAN-SENとして存在できている。

………愛人ぐらいは嫉妬心を満たすためにも仕方なく許容するけど、それ以上は決して許さない!!!

 

「ローン、ローン!やめて、空気が軋んでる!」

 

おっと、少し我を忘れてしまっていた。

笑顔、笑顔……よし!

 

「ごめんなさい、少々手持ち無沙汰で」

「一応指揮官代理に任命されてるんだからホント頼むよ!」

 

ふふ、半泣きのオーディンもかわいいわね。

ああ、甘美な砲声の音。どれだけの命が散っていっているのかしら。

………傷心してるあの子を後でいっぱい慰めてあげなくちゃね♡

 

 

 

 

Sideシャークン

 

「あ、ああ、そんな……!」

 

我が国が誇る大艦隊が、最強の飛竜騎士が、海の藻屑となっていく……!

アレは一体なんだ!理解出来ない、今ほど自身の判断を呪ったことはない!

最早接近さえすれば勝機があるなどとは微塵も思っていない。

私の首で責任をとることになろうと、これ以上の犠牲を出す前に撤退させねば!

 

「撤退だ!旗を上げろ!撤退!」

 

せめてこの情報を本国に伝え……

 

「将軍!危ない!」

 

副官が私を突き飛ばしながら共に海へと落ちていく。

それと同時に巨大な爆発が先程まで乗っていた船を木っ端微塵に吹き飛ばした。

その光景見ながら海に落ちた私は意識を失った。

 

 

 

Sideカグヤ

 

「残存敵船団、大半が後退し始めたわ」

「全艦へ、砲撃中止。ケルン、駆逐艦達を連れて生存者の回収を急いで」

『jawohl、お任せを』

 

………結局半数以上の船を沈めることになった。

先程グラーフ・ツェッペリンから作戦完了の連絡があり、ギザの方は敵兵団の損害は2〜3割未満で済ませられたらしい。

………せめて生存者を一人でも多く回収してあげないと。

 

「エルベ、回収した生存者を貴女の艦に集めるから艦艇を顕現させて」

『わかったわ!』

「1時間後に生存者の回収を終了、それを持って作戦の第二段階を完了とします」

 

身勝手なお願いですが、この戦争で死んだ者たちよ。

どうか恨むのであればは彼女達ではなく私を恨んでください。

 

 

 

[鉄血重巡洋艦”プリンツ・ハインリヒ”艦橋]

 

Sideブルーアイ

 

先程まで起きていた光景を反芻しながら私は呆然としていた。

 

「ブルーちゃん!どうしたの?」

「はっ!いえ何でもありませんプリンツ・ハインリヒ殿!」

「ハインリヒか”ハイン”でいいよ!」

 

キャッキャッと明るく振る舞う姿と先程までの惨劇のギャップでどうも現実感がない。

 

「ではハインリヒ殿と……、本当にこれ程の巨大な船を貴女一人で動かしているのですか?」

「正確には船体は私で他の武装は饅頭とオフニャ達の補助があってこそだけどね!」

 

フフーン!と胸を反らせた勢いで、ポヨンと動いたモノから目を逸らしながら質問を続ける。

 

「では先程通信で言っていたエムブラ殿が言っていた『艦艇を顕現させて』とは?」

「あー、なんて言うのかな?んー?………簡単に言えば私達KAN-SENは船を自在に出し入れできるのよ!」

「は?どういう……?」

 

意味がわからず聞こうとすると艦橋の外から眩い青白い光がして思わず目を瞑る。

 

「えっと、ああいうこと」指差し

「………」

 

………いつの間にかハインリヒ殿の船の隣に真っ平らな見た目の11隻目の船がいた。

ただでさえ完全勝利と言える眉唾な戦果なのに、……コレ?

大丈夫か?報告しても信じて貰えるの?

報告書になんて纏めればいいのか頭が痛かった。

 

 

 

 

■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇

 

 

 

 

[ロウリア王国 王都ジン・ハーク]

 

Sideハーク・ロウリア34世

 

ロデニウス大陸統一への第一歩を踏み出した夜、戦勝の吉報がきていたはずが………、

私は何を聞かされているのだ?

 

「ギム攻略は失敗、逃げ帰った兵によれば魔法を放つゴーレムが出現したとか……」

「アデム将軍は行方不明ですが本陣が爆発したとの報告が上がっています。

恐らくは戦死されてい………」

「東方征伐海軍は半数に満たない1500隻が帰還、船員に状況を確認するも錯乱している者が多く要領を得ません。シャークン提督は未帰還で……」

「飛竜も出撃した400騎近くが未帰還、現在残った飛竜を急ぎ王都防衛のため引き上げさせて……」

 

荒唐無稽の報告ばかりが上がる、だが事実として敗北している。

ここまで一方的に負ける要素など微塵もなかったはずだ!

パーパルディアの使者も此方を見限りさっさと帰国してしまった。

何故だ、何故こんなことに……!

 

「とにかく!今は敵の次の動きだ!」

「現存する部隊で工業都市ビーズルの防衛をするしか……」

「海上からの侵攻か、もしくは地上からの侵攻か……」

「情報がなさ過ぎる………!」

 

自然と周りのものがこちらに視線を向け始める。

あるものは縋るように、あるものは心配そうに、あるものは覚悟を決めて私の決定を待っている。

………玉座とはこれ程に重いものであったか。

 

「ビーズルが落ちれば次は王都だ、ビーズルの防備を固めることを優先せよ」

「海軍はどうしますか?」

「再編を急がせて港の防衛にあたらせる。諸侯軍にも再度招集をかけろ。

そしてレッドアクシズなるもの等の情報を少しでも掻き集めるのだ!」

 

後世には私はとんだ愚王として名を残すことになるだろう。

故にこの身が朽ちようともロウリアが滅びるようなことだけは避けなければならないのだ。

 

 

 

 

[クワ・トイネ公国 ギム防衛陣地]

 

Sideツェッペリンちゃん

 

作戦の後始末も完了した我々はギザの住人から歓待を受けている。

それはいいのだが……。

 

「酒だー!酒もってこい!」

「クワ・トイネ万歳!レッドアクシズ万歳!」

「この勝利に、カンパーイ!」

「「「「イエ~イ!!!」」」」

 

まったく、大人のくせに子供のようにはしゃいで!

ハメを外しすぎ!規律!規律がなってない!

我はWAPの女性隊員に挟まれながら搾りたて果実ジュースをクピクピと飲む。

 

「まぁまぁ、おおめにみてよ、ね?」

「そうよ、祝の席なんだからね!」

 

笑いながら我のほっぺをプニプニするな酔っ払いども!

チラッと他の面々達にも目を向ける。

同志ランディは部隊員や獣人の兵達と肩を組みながら歌詞がちぐはぐな歌を歌っている。

グレンとウォルターはモイジ団長と三人一緒に飲みながら話に花を咲かせている。

ボッシュはクワ・トイネ産の麦酒に舌鼓しながら大勢の人達と話をしている。

………でも、こんな風景も悪くはない。

大人の我は「騒がしいのは好かん」とWAPの上に座って星見酒をしている。

 

「大人の我も大人気ない、騒がしいのが嫌いなだけでこういう明るい場は好きなくせに……」

 

大人って面倒くさい、そう思いながらジュースのおかわりを頼むのであった。

 

 

 

 

■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇

 

 

 

 

[鉄血軽空母”エルべ”甲板 仮設収容所]

 

Sideとあるロウリア兵

 

「あんた達!朝ご飯ですわよ!動けるやつは自分で取りに来なさい!」

 

材質が解らない白い壁でできた小屋からでると肌寒い風とともに空腹を誘ういい匂いがする。

”自分のものではない右腕”の感触に安堵しながら歩き出すと、中央の空けたところで

二頭身の猫モドキや雛モドキがせっせと大鍋と食器を並べ始め、他の兵達が規則正しく並んで待っていた。

 

「うめぇ……!」

「身に染みる……!」

「俺らって捕虜だよな?」

「いいじゃねぇか、ありがたく貰おうぜ」

「生きててよかった……!」

 

ロデニウス沖での海戦で地獄を経験して、運良く生き残ったら敵に捕まり今に至る。

酷い扱いを受けるかと思ったが実際にはかなりの好待遇を受けている。

怪我人は治療も受けれており、手足を失った者には魔法で動いてると思われる義手・義足まで用意してくれていた。

 

「手足が無いと生活大変でしょ!大したもんじゃないから貰っときなさい!」

 

そういったエルベ殿(この船の責任者らしい)に泣きながら感謝しているものも多かった。

無論、そもそも自分達を地獄に突き落とした張本人が何を偉そうに!と罵る声もあったが、そこはシャークン将軍が諌めて下さった。

 

「我々は戦争をしていたのだ、相手を責めるのは間違っている。

責めるのであれば諸君らを指揮した無能な私を責めてくれ」

 

そう言って頭を下げられたため、大半の者は渋々納得していた。

ただどこにも馬鹿な奴らはいるものだ。

エルベ殿が見麗しい美女と知って下卑た考えをした連中が10人ほどで徒党を組んで襲おうとした。

結果は惨敗、エルベ殿に近づく前に黒い武装した2メートル近い巨体の……猫?のような獣人*1に取り押さえられていた。

………話に聞くとその獣人達よりエルベ殿1人のが強いらしいのでどのみち失敗はしていたのであろう。

なお馬鹿共は見せしめとして半日近く磔にされて猫モドキ達にくすぐりの刑にされてた。

磔が終わってからもシャークン将軍やエルベ殿に感謝していた連中に目をつけられて肩身の狭い思いをしている。

 

「オカワリ、アルニャー」

「ナラブ、ピィ!」

 

………もう少し欲しいのでおかわりしようかな?

 

 

 

Sideエルベ

 

私は自力での移動が困難な重症者を集めたプレハブコンテナの扉を開ける。

そこにはシャークン将軍殿が先客としていた。どうやら自分を庇った副官の様子を見に来たらしい。

回収した捕虜の中にまさか司令クラスの大物がいたのは驚きだったが、理知的な方で色々と助かった。

 

「では彼は助かるのですね!」

「ええ、彼に限らずここにいるものは全員助けますわよ。

本陣であればもっとちゃんとした設備で治療できます。

そうすれば副官殿の視力を回復させることができますのよ」

「……!感謝を!」

 

………やっぱり悪い人ではありませんわね。

戦う相手が必ずしも悪とは限らない、その意味がようやく理解できましたわ。

彼らを家族の元に返すためにも、さっさとこんな不毛な戦争を終わらせて差し上げてあげましょう。

 

 

*1
警備用武装オフニャ

本家のクロンシュタット着替え〘突入開始ッッ!〙にいた奴ら。

強化型オフニャの派生型という設定。




魔王編までは急ぎ足で行く予定です

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