異世界にレッドアクシズの名を刻む!   作:有澤派遣社員

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ムーの使節団、ロデニウス大陸へ


黒い流星

[ムー アイナンク空港]

 

Sideマイラス

 

不定期に行っていた文明圏外国視察団派遣を改め、

レッドアクシズ使節団となった今回の文明圏外への派遣は定員が数年前の倍以上とかなりの規模となった。

 

「マイラス、久しぶりだな!元気にしてたか?」

「ラッサン!お前もメンバーに選ばれたのか!」

「ああ、上司に『行かなければボーナスカットだ、行け』なんて脅されてな……」

「それは、お気の毒に……。しかし今回はアタリだぞ!

なんせ目的地はロデニウス大陸、今話題のレッドアクシズの本拠地だ!」

 

興奮しながら話しているとラッサンは胡散臭そうな顔をする。

あれ?反応が予想と違うな?

 

「レッドアクシズねぇ〜?ホントに凄いのか?」

「……報告書は読んでないのか?」

「???………報告書て何の?」

 

首を傾げるラッサンを見て、はぁ〜と溜め息をつく。

おそらくラッサンが所属する部署の上層部に”反対派”の奴がいるな……。

現在ムー軍部はレッドアクシズとの交流に対して【賛成派】と【反対派】に分かれて睨み合っている。

賛成派は以前のレッドアクシズ訪問の際に直接あった者や独自に情報を集めてその高い技術力を認めている派閥。

反対派はレッドアクシズの存在を頭ごなしに否定し、利権に固執するいわゆる保守派閥だ。

はっきり言って老害爺どもとその取り巻きなのだが、しかしその分政界にも顔が聞く連中が多い。

そのため、レッドアクシズに対しての正確な情報が途切れ途切れになってしまっているのだ。

そう考えるとラッサンの上司は賛成派だから無理矢理今回の派遣にねじ込んだんだな?

 

「俺はこの目で見たから断言するよ、レッドアクシズは凄い。

技術力でいえばミリシアルに匹敵、もしかするとそれ以上だぞ?」

「………そこまでか?ホントに?」

「行けばわかるさ、さぁ!はやくラ・カオスに乗るぞ!」

 

懐疑的なラッサンの背を押して搭乗口へと向う。

そして使節団の搭乗を確認したラ・カオスが目的地である文明圏外に向けて大空へと飛び立った。

後に解ったことだが、今回のメンバーでレッ

ドアクシズの事前調べをしていたのは半々ぐらいであり、

メンバー間での熱意の温度差もあった。

だが確信できる、余程の愚か者か妄想癖でもなければ技術力の高さをすぐに感じられると。

エムブラ殿に会えたらしっかりと挨拶をせなば………あっ。

 

「そうだラッサン、実はレッドアクシズは美人さん揃いで責任者の方も若い女性なのだが……」

「何!ホントか!ぜひお茶にでも……」

「命が惜しくば禁欲に努めろ、口説くなら命を張れ」

「何故に!?」

 

万一にもエムブラ殿を口説こうものならラッサンは”不幸な事故”に会うかもしれない。

悲痛な文句と質問攻めするラッサンを無視しながら紅茶を飲むのであった。

 

 

 

■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇
 

 

 

 

[文明圏外海域上空 ラ・カオス内]

 

Sideラッセル

 

長い空の旅にも飽きてきたが、

ようやく目的地であるロデニウス大陸へと到着できるな。

マイラスの奴め、美人だらけだけど口説くなとはよく分からんことを言いやがって!

しかし文明圏外か……、なんでこんな辺境まで来て何が得られるというのだ?

軍内部でのレッドアクシズにまつわる話となると………

 

・4カ国からなる同盟軍事組織、最高責任者は20歳前後。(若すぎる、ホントか?)

・巨大な空母を保有、その大きさはラ・カサミの倍以上。(大きさ盛りすぎだろ)

・垂直離陸するトーチカに乗って来た。(いや、意味わからん)

・海軍主力の構成員がほぼ女性。(国内の男女比率どうなってんの?)

・無人遠隔操作単葉機を実用化、オンソクキなるものもあるらしい。(無人?嘘だろ?オンソクキて何?)

・陸軍では機械動力の大型ゴーレムが主軸。(嘘乙w)

・他、荒唐無稽な話の数々………

 

どこまでがホントかはわからないが、美人だらけというマイラスからの情報から女性が多いのは確定、か?

ふと隣のマイラスに目をやると窓に顔を押し付けていた。

………なにやってんだコイツ?

 

「おいマイラス、どうした?」

「………ホゲェ~」(唖然)

「……?マイラス?聞こえてるか?」

 

窓を横から覗き込む、そこには………

 

ラ・カオスに負けない巨大な黒い翼竜が飛んでいた。

 

………はぁ!?なんだあれ!?

デカい、デカ過ぎる!?ラ・カオスより遥かにデカイぞ!?

あんなデカさの竜種が存在するのか!?

しかも骨格からして飛竜でも風竜でもない!?それにあの黒い体は金属か!?

 

「おい、マイラス!”アレ”なんだよ!?」

「知らない!知らない!!知らない!!!!」

 

必死に首を振りながらも観察をやめないあたり職業病だな……。

他の乗員も気付いたのか戦々恐々と黒竜を見て怯えている。

てか、あんな巨体に体当たりでもされたら一撃で墜落するぞ!?

 

「おいどうする!?なんとかしないと死ぬぞ俺ら!」

「……あ、待て!心当たりがある!」

 

心当たり?そう思っているとマイラスが使い込まれた手帳をめくり始める。

 

「あった!竜の首辺りの黒十字は鉄血公国の紋章、あれはレッドアクシズのモノだ!」

「マジかよ……、でもそうか、だからラ・カオスも進路を変えてないのか……」

 

おそらく操縦席の無線ではやり取りをしているのだろう。

あ〜、焦った………。

安心していると黒竜の左翼と右翼の前に赤い魔法陣みたいのが現れる。

何ぞや?と見ていたら魔法陣を突き破るように二機のレシプロ単葉機が出現する。

あの魔法陣は何?単葉機を実用してる?てかあの二機は何処から出てきた?

………やめてくれ、もう驚き疲れて頭がパンクしそう。

頭を抱えそうになった時、誰かと眼があった(・・・・・)

何と?と思うより先に黒竜の首上にそれはいた。

うつ伏せ気味の姿勢をし青みがかった灰色の長髪を靡かせる人型。

そして目の錯覚か、髪と同じ瞳と絶世としか形容できない女性の顔が見えたような気がした。

この距離で顔なんて確認できる筈もないのに、まるで取り憑かれたかのように必死に確認しようとしてしまう。

しかし無情にも黒竜はコチラから離れていき、代わりにレシプロ単葉機がラ・カオスの空中先導を始めた。

離れていく黒竜はまるで”黒い流星”のように幻想的な姿に見えた。

 

「なあ、マイラス」

「どうした?俺は単葉機の観察に忙しんだが?」

「俺、命張って口説くわ」

「……頭大丈夫か?」

 

さぁな、俺はもう手遅れかもしれん。

 

 

 

■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇

 

 

 

[同海域低空 "機竜"型艤装上]

 

Sideアウグスト・フォン・パーセヴァル

 

「機内の彼、私を見てたのかしら?」

 

まさか、さすがに普通の人間の視力では無理であろう。

今回は可能な限りインパクトある演出をしたいと上層部からの指示により、まだ試行段階であった機竜(この子)のお披露目が決定した。

鉄血では以前より可能性の模索として”ビーストモード”の飛行型の研究がされていた。

艦船形態での装備拡張は時間と調整に時間がかかるため、生体艤装の拡張性に目を付けた形である。

相性の問題で空母KAN-SENに限定されて進められていたがこれが予想以上に難航。

最大速度も時速50〜60㌔と飛行船ぐらいの機動性が限界であり、浮かぶ的状態でしかなかった。

大型ジェットエンジンを外付けするプランも勿論出たが、通常の航空機に比べ質量重量が桁外れで燃費が劣悪過ぎて役にたたなかった。

こうして飛行型の研究は下火になるかと思われたが……、

思わぬ解決策がセイレーン側から提案された。

 

マイクロ波プラズマジェットエンジン

 

大気圏内での使用に特化したプラズマ推進機構であり、極端な話空気と電力があれば飛ぶジェットエンジンだ。

無論問題が2つあった、まず必要な推力の電力消費量が中規模の発電所と直結しないと駄目なぐらいの大食らいなのだ。

コチラの問題はすぐに解決できた。

KAN-SENであればメンタルキューブからのエネルギー供給で十分に賄えたのだ。

しかしもう一つの方は致命的な問題で、そもそも鉄血の技術力を持ってしても製造と艤装との調整が不可能であったことだ。

そのため製造と調整を一応はまだ停戦中のセイレーンに完全に委ねばならず、このことで大いに揉めた。

結果として改修場所は海上要塞で行うこと、我々KAN-SENが全面的に賛同したことで艤装改造計画は始動した。

そのため要塞に鉄血空母KAN-SENがほぼ全員いる状態で異世界に転移、

一時航空戦力が消失という大惨事に主導していた上層部の数名が本気で自決を考えたと言っていた。

 

「それにしてもこの機動性に運動性、とてもいい気分……。

無理を推して派生型プランをカグヤにねじ込ませたかいはあったわね」

 

本来であれば大鳳の式神形態のような空中空母のプランで統一する予定であった。

実際ツェッペリンとシュトラッサーは防御性能と艦載機運用を重視したほぼ同型の形状をしている。

対して私、というよりは"この子"がだが、そのプランに難色を示した。

せっかく大空を自在に飛べるのならそれに振り切った性能を追求したいと進言した。

私と"この子"が目指したもの、それは唯一無二の存在である【天空の女王】への反逆。

つまりは大鳳と同様の成層圏領域への挑戦と対抗戦力になることである。

現状セイレーン以外の全ての陣営で大鳳の式神形態の対応策は皆無といってよい。

ユニオンでさえ"M.I.D.A.S"を使用した広域攻撃でしか有効な対応策はなく、力場の展開所要時間の関係上で成功率もあまり高くないとされている。

ならば私が初めての対抗戦力となってみせよう。

そのために機竜形態での艦載機運用能力の大半と防御性能を捨てて機動性と運動性に振ったものにしたのだ。

試験段階でも速度であればセイレーン戦闘機をも振り切れるほどになった。

理論上は成層圏にまで届く性能はある、必ずや成層圏という絶対領域へと至ってみせる……!

 

「私、いえ、私達(・・)意外と我儘なの」

ゴガァーーー!!!

 

力強い"この子"の咆哮を聞きながらクスクスと一人笑う。

低高度域での最高速度試験を実施しながら海上要塞へと進路を向ける。

海面上には機竜が通ったあとが解るほどに波が立っていた。

 

 

 

■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇

 

 

[クワ・トイネ ダイダル基地]

 

ダイダル基地、城塞都市エジェイ近くのダイダル平野に建設されたレッドアクシズの大規模陸上基地である。

元々植物の生えづらい不毛な地域であったため特に揉めること無く*1建設された。

現在はレッドアクシズ各陣営のみならずクワ・トイネ公国、ロウリア新共和国(・・・・)の習熟訓練場としても利用されている。

※地理的な関係上、クイラ王国からは遠いため合同演習以外では鉄血特区の基地を利用させてもらっている。

そして滑走路も大型輸送機が離発着できるものがあったため、

ムー国使節団の受け入れはこの基地から行うことになった。

 

 

Sideマイラス

 

ラ・カオスから降りた場所は異世界でした。

そう思いたくなるほどに圧巻された。

右を見る、ラ・カオスが玩具に見えるような巨大な輸送機が車両や物資を降ろしている。

左を見る、以前見た空飛ぶトーチカみたいな垂直離着陸機が何機も鎮座している。

そして正面を見る、地面に敷かれたレッドカーペットにはレッドアクシズ指揮官のエムブラ殿と三人の女性。

一人は黒を基調とした軍服を纏い、赤のメッシュが入った白髪の女性。

もう一人は白服に白の上着を羽織った、お淑やかさを感じる黒髪の淑女。

そして最後がピッチリとした黒いドレスに黒いマントと杖を身に付けた、青髪に赤眼の貴族令嬢。

そして両サイドには何機もの鋼鉄のゴーレムが立ち並び整列していた。

 

「ようこそ!ダイダル基地へ!皆様を歓迎します!」

 

満面の笑みを浮かべるエムブラ殿と周りとのギャップに頭がショートしそうになる。

 

やべぇ、とんでもないところに来てしまった!?

 

驚愕する自分の心境は奇しくも、ラッサンを含めた使節団全員の心の声と同じであった。

 

ムー使節団、ロデニウス大陸に到着

 

 

*1
どっかの将軍「いや、ワシ猛反対したぞ!?」





鉄血空母KAN-SENは全員自身の艤装の航空戦力化が完了。
正規空母はドラゴン型

・アウグスト
外見はMHのバルファルク 全長50m

グラーフ、ペーター、ツェッペリンちゃん
外見はナイツマのヴィーヴィル 全長80m
(ツェッペリンちゃんは小型で全長30m)

軽空母ヴェーザー、エルベはグリフォン型 全長は20m前後


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