申し訳ないです。
若干急ぎ足で申し訳ないですが、これでムー使節団の話は終わります。
[ロデニウス大陸北部近海 サディア・グローリア号]
Sideマイラス
エムブラ氏から事前にこの客船についての話は聞いてはいたが、
思い描いてたのと実際に見るのとはエライ違いなのだと痛感する。
ムーのどの軍艦よりもデカい豪華客船、まるで水上に浮かぶ白亜の宮殿のようだ。
無論船内はもっと凄い、見たことはないが我が国の王城より豪華なのではと思えるほどに豪奢な内装。
そして………。
「マイラス、ここは天国か?」
「ラッサン、鼻の下が伸びてるぞ」
「無茶言ってくれるな」
会場で給仕や接待をする美女達、案内役のオーディン殿曰く全員KAN-SENらしい。
以前エムブラ女史とともに訪問してきた四人や案内役の三人も相当だったが、まさか他のKAN-SENらも勝るとも劣らない美人揃いとは………。
視線を反らしてはチラリと視線を戻すを繰り返す同僚に溜息が出るが、正直自分も男だから気持ちは痛いほどわかる。
他の使節団の男連中も鼻の下を伸ばしながらお酌を受けたり、
飾られた絵画の説明を聞きながらそれとなく口説こうとしていた。
「こちらサディア産ワインです、どうぞお召し上がり下さい」
「これはトレント殿、ありがとうございます(ヒャッホウ!最高だぜぇ!)」
「ニュルンベルクさん、こちらの絵画は?」
「こちらは鉄血公国の旧皇城周辺を描いたものです。歴史文化財として保存されていて観光も出来るんですよ」
「ほう、ニュルンベルク殿の国の風景画なのですね。
是非今度は貴女と一緒に実物を見てみたいですな(( ー`дー´)キリッ)」
「そ、それは、そのぉ〜(どうしよう、断ったら失礼だよね!?なんて答えるのが正解なの!?)」
なお使節団唯一の女性は最初こそそんな同僚らを白い目で見ていたが、
今やイケメン麗人から声をかけられその対処にアタフタしている。
「どうしたレディ?少々熱っぽいようだが?」グイッ
「あわ、あわわ……!(近い!顔が近い!)」
「ふむ、無理をしては体に障る、こっちに休めるとこがあるからオレが案内してやるよ」(手を握って誘導開始)
「ふえ、ふぁい!(この人女の人なのに……、凄いドキドキする!)」
「???(顔が真っ赤だがホントに大丈夫か?)」(無自覚でイケメンムーブしてる)
確かジャン・バールといったか彼女?
身長は170を確実にオーバーしてる長身で男性陣と並んでも違和感が無い。
そして仕草というか物腰がなんというか男前過ぎる。
口調の荒々しさと気遣いの良さがマッチしてそこらの男衆よりも女性受けが良さそうだ。
アイリスという宗教国家のKAN-SENであり、アズールレーンというレッドアクシズとは別の陣営所属らしい。
つまり対立陣営の客人であるはずだが、周りからは妙に慕われているようにも見える。
興味本位で案内役ではあったオーディン氏に聞いてみたのだが、苦い顔をされてしまった。
何故かと思ったが、おおよその内容を聞いて納得するとともに興味本位で聞いたことを後悔する。
オーディン殿の所属である鉄血公国がアイリスを併合するために侵攻。
その結果、アズールレーン側の自由アイリス教国とレッドアクシズ側のヴィシア聖座に二分化、内乱状態になる。
ジャン・バールはヴィシア聖座の代表だった人物で短い期間であったが同胞であったそうだ。
鉄血陣営である彼女としては色々複雑だっただろうに……。
「申し訳ない、無粋な質問をしてしまいました……」
「いや、知らなかったのだから仕方ない。
それに本来であれば感傷に浸る資格さえ我らには無いさ。
当事者のジャン・バール達は気にするなとは言っているがな」
苦笑しながらこちらを気遣うオーディン氏にさらに申し訳なくなる。
ふと隣で料理を食べていたはずのラッサンが見当たらないなことに気づき、周囲を見渡す。
会場の壁際、席に座る青みがかった灰色の長髪をした黒いドレスの女性に声をかけているようだ。
遠目で見ても分かるくらいにガチガチになって必死に話を続けようとしており、女性は微笑を浮かべながらそれを聞いている。
ラッサン、アイツまで何を現を抜かしてるんだ………。
「マイラス氏どうなさった?」
「いえ、知り合いがおそらくオーディン氏の同僚にアタックを仕掛けてるようでして……」
「ふ〜ん、誰にだ?………!?」
呆れながら指を指した方向を見てオーディン殿が石化したように固まる。
「………よりにもよってアウグストの奴に声をかけたのか、彼は」(ーー:)
「なんです?そんなに不味いことなので?」(;´Д`)
「こういうのもなんだが我が鉄血KAN-SENでも屈指の実力を持つ問題児だな。
『抗い続けたその果てに無惨に敗北する姿にこそ至上の価値がある』というのが彼女の持論だ」
「……え?どういうことです?」
「ようする心の折れた状態の人間に喜びを覚えるサディストということだ。
しかもその苦難を乗り越えて己の糧に出来るのが当たり前と思っているあたり質が悪い」
………ラッサン、お前はいい奴だったよ。
心の中で親友へ敬礼をおくると会場のアナウンスが流れる。
『皆様方お待たせしました。
レッドアクシズ指揮官カグヤ・エムブラ、ご入場です』
アナウンスの終わりと同時に会場の両開き扉が開く。
白に紅のラインが入ったストラップレスドレスを着たエムブラ氏が黒いドレスを着たローン氏と共に歩いてくる。
………ローン氏の背後でなんか金属の尻尾みたいな物体がぷらぷらと揺れているけど何だあれ?*1
首を傾げているとこちらに気づいたエムブラ氏がこちらに歩いてくる。
「マイラスさん、登場が遅れて申し訳ありません」
「いえいえ、エムブラ氏らの可憐なお姿を拝見させて貰っているのですからお気になさらず」
「そ、そんな、可憐なんて」(〃ω〃)
頬を赤くして恥ずかしがる姿に思わずドキリとしてしまうが、隣のローン氏からの威圧混じりの笑みで正気に戻る。
……尻尾みたいのの先端がコチラに向いてるのは気の所為だと思おう!(´;ω;`)
「あらあら、マイラス様お久しぶりです」ギソウプラプラ
「お久しぶりです!」(;·∀·)
怖い恐いコワイ!この人の地雷ポイントがおそらくエムブラ氏関係全部なのがヒドイ!
内心悲鳴を上げていると側にいたオーディン氏が溜息をつきながら一歩前に出てくる。
「いい加減にしろ、ローン。悪ふざけがすぎるぞ」
「……は〜い」プイッ
不貞腐れてそっぽを向くローン氏、ありがとうございますオーディン殿!
目を輝かせて喜んでいると事態にイマイチ気づいていないエムブラ氏が話を始める。
「マイラスさん、此度の視察はどうでしたか?」
「非常に興味と意欲がそそられるものでしたよ。
本国に戻り次第、必ずやご厚意に報いることができるようにします」
「ありがとうございます、今後の為にも早期での国交樹立を願っています」
「それは勿論です。しかし本当によろしかったのですか?」
「へ?何がです?」
コテンと首を傾げる姿になんとも言えぬ感情が迸るのを気合で耐える。
「
「それについては重桜政府直々の提案が大きく反映されてますので問題ありません。
私としても決して過剰な支援ではないと思いますし」
あっけからんと答えるエムブラ氏に若干頭が痛くなる。
今回の視察でクワ・トイネを訪れた際に重桜政府の使者(後から聞いたがかなりの重鎮らしい)からお話をしたいと言われたのだ。
内容は簡単で
それだけならこちらも感謝を述べるだけだったが手土産の内容を聞いて一同絶句した。
【重桜政府からの手土産内容】
・単葉機開発に必要な技術資料。
・重桜KAN-SENが使っている単葉機、戦闘機『零戦五二型』爆撃機『彗星』の設計図。
・コンゴウ型巡洋戦艦1隻とフブキ型駆逐艦2隻の実物と運用や製造に関わる資料一式。
………まだ国交樹立してないんですけど!?
というよりも向こうの価値観では本気で大したモノではないのか?
軍事機密クラスの情報に一部艤装が未搭載とはいえ戦艦だぞ?
そんなポンッと渡せるものなの?
「大変有り難いですが、これ程のモノを簡単にお渡しになってよろしかったのですか?」
「別に問題はありません、
ニッコリと意地悪な笑みを浮かべるエムブラ氏に首を傾げた後にはたと気付く。
ヴァンツァーと呼ばれた機械巨兵、グラ・バルカス帝国にも匹敵する艦船、艦砲に大砲の火力披露。
以前話に聞いたKAN-SEN達の根幹にして物理法則さえ捻じ曲げるオーバーテクノロジー、
セイレーン技術と判断できるようなものは一切啓示されていない!?
逆に言えば今回見せられたのは殆ど科学技術
愕然としているとエムブラ氏からグラスを手渡されたため、それを受け取り
「マイラスさんなら気づきましたよね?」
「いやはや、……今頃気付くとは私もまだまだですね」
衝撃の連続で初対面の時のことをスッカリ忘れさせられていた。
人型と艦艇を両用するKAN-SENの存在、その艦艇が変化した巨大な炎の鳥。
おそらくコチラに到着する寸前にであった金属の黒龍と映像に映っていた巨大な四足獣もKAN-SENが関わっているのだろう。
艦艇や飛行機技術については明確な資料と実物があるため理解させることはできる。
しかし彼女達でさえ手に余るとされるオーバーテクノロジーはどうだ?
正直実物を見ても信じられないのに頭の硬い連中は世迷い言と断じるのではないか?
「今後とも長いお付き合いをお願いします」
「はい、正式に国交を樹立した際にはより一層のご支援を約束します」
「いや〜、これ以上戴いてもご恩をお返しできるかどうか、はは」
有り難い申し出ではあるため断ることもできないのがなんとも………。
しかしグラ・バルカス帝国の脅威を考えれば手段を選んではいられないのも事実。
(貰ってばかりでは第2列強国の名折れ、レッドアクシズとは対等であるためにも一層奮起せねばな!)
決意も新たにシャンパンの入ったグラスに口をつけるとドタドタと駆け足気味の足音が聞こえる。
パーティ会場で走るのは社交的にも安全的にもあまり褒められたことではない、一体誰……ブホォ!?
後ろを振り向いて私は思わずシャンパンを吹き出す。
自分越しに後ろの光景を見たエムブラ氏もギョッとした表情で固まる。
天真爛漫な笑顔のとんでもナイスバディな女性が手を振りながら走っている、それはまだいい。
しかし問題はその状態である。
「せんせー!アンカレッジかわいい?」
「アンカレッジちゃん!ストップ!ストップ!走るのダメ!色々はみ出るっす!」
後ろから追いかけてくる短髪の女性の言う通りである。
走ってる勢いでバルンバルンと上下に揺れるモノが今にも布からこぼれ落ちそうな状態であり、
スリットの深いスカートからは露出した太ももが大きく動く度にし、下着らしき紐が見え隠れして……!
「アンカレッジ!?危ないから走っちゃダ……!」
「え?、あっ?」
勢いを殺しきれずに女性がバランスを崩して倒れそうになり、
さらにその先にはグラスやボトルの乗ったテーブルが……!
咄嗟に体が動く、位置的にも間に合うのは自分しかいない!
テーブルと女性の間に体を滑り込ませて倒れてきた体を抱き止める。
しかし悲しいかな貧弱な自分では女性を支えきれずに一緒に倒れ込む。
幸いテーブルからは離れられれた、これなら大事には………。
「きゃっ!?」
ドタン!
ボイン♡
「フォフ!?」
倒れると顔一面に柔らかで暖かいものがあたる。
え?あれ?これって、まさか……!
ナニが顔を覆っているのかを理解した私は鼻血を吹き出しながら意識を手放したのであった………。
自分も、男なんです、許して。
使節団歓待晩餐会にてトラブル発生。
ムー使節団代表であるマイラス氏が計画重巡洋艦アンカレッジを庇い、負傷?
現場にて出血が認めるも本人からは怪我ではないと申告あり。
おそらくは今後の関係構築に亀裂が入る可能性を考慮していただいたものと推測。
トラブルに見舞われながらもコチラを気遣い庇う姿に同席したレッドアクシズ関係者は感銘を受けていた模様。
彼のような紳士がいる国と良好な関係が築けることは今後の新世界進出に大きな意味を持つことになるであろう。
〜レッドアクシズ各国トップ達の反応〜
【重桜】
"主上"「ふむ、素晴らしい御仁がいる国ですな。
……予定していた”手土産”とともに例の派遣の件も準備を繰り上げて急ぎなさい」
側近「かしこまりました、急がせます」
【北方連合】
"主席"「なんと器量のある人物!素晴らしい人材であるな!」
委員「「「まったくですな!」」」
【サディア帝国】
"女帝"「ただの技術士官と思っていたが素晴らしい紳士ではないか!
機会があれば余が直接会ってみたいものよな!」
秘書「向こうのご迷惑になりますから独断で行かないでくださいよ」
【鉄血公国】
"皇帝"「……使えるな、今回の件を民衆へと大々的に報じて侵攻派の連中の牽制にしろ」
情報局長「解りました、急ぎ手配します」
帰国後暫くして、晩餐会の一件が大々的に拡散されていることを知ったマイラスが3日ほど自室に閉じ籠もったことは極小の知人らが知るだけだあった。
マイラス「モウ、ソトアルケナイ、コロシテ」
ラッサン「(色々察した)……強く生きろ」ポンポン
・補足
ムー国側としても国交樹立はほぼ確定。
世論の操作と過激な反対派の処理が完了次第、正式に発表予定。