又はパーパルディア軍人の憂鬱
ライザのアトリエコラボ楽しみですね!
[工業都市デュロ 軍港]
Side ポクトアール提督
悠然と進む150門級と80門級数隻の威容と空を縦横無尽に飛び交うワイバーンオーバーロードの編隊。
そして軍港から溢れるなほどに停泊する魔導戦列艦の中でも一際目立つ艦影している最新竜母【クーロイ】。
眼前に広がる大艦隊、これを見て敗北を考えるような酔狂な者は九割九分いないだろう。
………残念ながら私はそんな酔狂な一分側の人間、なのだが。
「はたしてどれだけの艦が帰ってこれるものか……」
「あの巨大艦、出てきますかね?」
「国防の一大事だ、出てこないはずがあるまい。
寧ろ出てきてもらわねば困る、そうでなければ……」
「ここデュロか最悪皇都が、ですか?」
「君も同じ懸念か、一級戦力が抜けた防衛艦隊など一瞬で吹き飛び都市に
射程10kmの至近弾の余波だけで戦列艦が悲鳴を上げるような大口径砲、
どの程度連続して放てるかは未知数だが間違いなく大惨事だ。
「………考え得る最悪の未来ですな」
「帰ってきて国が滅んでました、では笑い事で済まない。
しかし敗軍の将に耳を傾けてくれる者は少ないものなのだ……」
「ポクトアール提督……!」
涙ぐみ悔しがる副官に申し訳なくなる。
貴重な交戦経験者と言えば聞こえはいいがようは負けて皇国の威信に傷をつけた恥晒しなのだ。
皇軍の将軍シウス殿もレッドアクシズへの警戒を呼びかけているが反応はイマイチと聞いている。
アルタラス王国の件での敗北も勝利間近の油断したところの奇襲による損害というのが周りの認識なのだ。
上層部が此度の敗戦の情報を渋っているのも原因だが、
所詮は文明圏外国と見下してる者が多いのが1番の問題だ。
「フェン王国への懲罰艦隊、アルタラス王国の二の舞いならねばよいが………」
「さすがに他国に戦力を回している余裕はないのでは?」
「密偵によるとそれらしい船は居ないらしいが何処まで当てになることやら……」
どうか一人でも多くの者が生き残れることを願うことしか、今の私には出来なかった。
[皇都エストシラント エストシラント港海軍基地]
Side将軍シウス
「だから!大艦隊の密集陣形では駄目なのだ!互いに射角を遮らないように援護ができる小艦隊編成を複数作るのが妥当なのだ!」
「しかしだね、キミィ?そんな弱腰な編成をしては格好が……」
「そんなことに気を遣っていられるような相手ではない!」ドンッ!
会鍵室のテーブルを力の限り殴りつけると、
的外れな意見をした将官が短い悲鳴とともに黙る。
しかしその目には嘲りが消えておらず、一部の将官からも忍び笑いがこちらへと向けられている。
クソ!危機感がないのかこいつ等は!?
アルタラス王国での失敗以降、自身の評価は下降する一方であった。
だがそれは仕方が無いと割り切って次こそ勝つために信用できる連中とで対策案を出し合った。
それもこれも全ては屈辱を晴らすため、あの機械動力船を仕留めんがためにだ!
なのに危機感の無いコイツ等のせいでそれを果たせないかもしれない。
そんなことを思っていると海将バルス様が溜息をつく。
「はぁ…、いい加減にしろ!此度の戦争は我が国の威信を賭けたものだぞ!
勝つための努力を笑うなど、貴様らはそれでも軍人か!?」
会議室に沈黙が降りる、バルス様は俺の意見に賛同してけれるのか……?
「調べた限り艦の性能は向こうのが上だ、そこは認めねばならん」
周りがざわめく、馬鹿どもが!今更か驚くことか。
「だが数であれば我らが優位だ。
ならばそれを活かすための戦法を取るのは当たり前のことだろう?」
「それは、そうですが……」
「ならば問題あるまい、シウス将軍の案を採用する。
戦列艦4隻から5隻と補助艦艇で小艦隊を編成、竜母艦隊は複数の小艦隊の中心に配置、
航空戦力は今作戦の生命線だ、何としても死守しろ」
「「「「はっ!」」」」
会議の流れはこちら側に傾いた、もう馬鹿共が口を挟む余地はない。
見ていろレッドアクシズ!道連れにしてでも撃滅してくれる!
[皇都エストシラント 海軍基地 倉庫内]
Sideシルガイア
深夜、バルスの奴に指定された倉庫の一室で待っているとドアが、ココンココンと独特のリズムで叩かれる。
「俺だ、待たせてすまん」
扉の鍵を開けるとバルスが疲れた顔で立っていた。
あまりみたことがない姿に驚きつつもお互いにテーブルへと向かう。
「顔色が悪いが大丈夫か?」
「ああ、少々気疲れが抜けぬだけだ」
溜息をつきながら座る姿はいつもより老けて見えた。
海軍のトップとしての重責か、それとも……。
「例の資料、やはり焼失してしまったのか?」
「恐らくはな、もしかしたら襲撃事件自体が証拠隠滅のためだったのかもしれん」
「さすがにそれは……」
「それがありえん話ではない程の劇物だったのだ……」
資料の内容については汚職の証拠としか聞いてなかったが、皇室を敵にしてでも揉み消したいようなものだったのか……。
「最近監視されているような視線も感じている、どうやら何処かで嗅ぎつけられたらしい」
「そうなのか!?」
「ああ、気をつけはいるが……、恐らくは詰んでいるのだろうな……」
「なんでだ!?暗殺に気をつけるのは大変だがまだ時間を掛けて暴いていけば!」
「………今回のロデニウス大陸への誅伐艦隊派遣、結果はどうなると思う?」
「どうなるって、あれだけの過剰戦力で遠征するのだから勝てるだろ?
寧ろ遠征費用と支配体制が整うまでの出費で皇国が傾かないかを心配するくらいだが……」
「………おそらくだが、かろうじて辛勝か最悪敗北するだろうと考えている。
勝とうが負けようが大損害は避けられぬのだ……」
「なぁ!?」
負ける?皇国史上最大規模の大艦隊がか!?
「そんな馬鹿な!?戦列艦だけでも400隻を超える大艦隊だぞ!?」
「その様子だとアルタラス王国海戦の内容には詳しくなさそうだな」
「ああ〜、そうだな。箝口令が敷かれていたしな」
「現在のロデニウス大陸にはレッドアクシズという連合組織がいるのだがな、そこはムーと同等かそれ以上の科学文明国の集まりなのだ」
それは新聞に〘非魔法文明の蛮族組織〙と載っていたのでそうではないかと思っていたが、第二列強国以上だと!?
「以前ムーの機械動力船【ラ・カサミ】を仮想敵にした議場演習を行ったのだがな、楽観視した内容でさえ戦力比は10対1という数字なのだ」
「そこまで不利なのか……!?」
「ワイバーンによる導力火炎弾がどの程度有効なのかで多少上下するが大凡は変わらんだろう……。
そしてこれは個人的な伝で調べた内容だが、ムーはレッドアクシズに技術支援を目的とした同盟の話しを積極的に進めているようなのだ」
「………!?」
ムーが、第二列強国が文明圏外の国に同盟を申し入れてるだと!?
「ようするに、どう転ぼうが俺は大損害を出した責任を取らされて辞任に追い込まれるだろうな……。
今までこの地位に胡座をかいていたツケが回ってきたのだろうが、皇国の大事にとは運が無いよ」
「バルス……」
胡座をかいていたなんてとんでもない、こいつはどこまでも真っ直ぐに自分の地位に責任を持って務めてきたのだ。
正直こいつほど真面目な将官はいないと言っても過言ではないだろう。
「もしものときは、皇国を頼む……」
「………しがない清掃員に言う言葉じゃねぇぞ」
先の見えぬ状況に男二人で無為に悩むことしか、今はできなかった。
[皇都エストシラント 皇都防衛隊 陸軍基地]
Side魔信技術士パイ
空は快晴、絶好の出港日和。
今頃はエストシラント港から誅伐艦隊が盛大に出港している頃だろう。
本来であれば我々陸軍もパレードの一つでも行っているのだろうが、今は正直それどころではない。
レミール様の襲撃事件以降、軍部はどこも慌ただしくなっている。
特に
「今結構な数のワイバーン飛ばしてる、誅伐艦隊の見送りかな?
まったく!レッドナンタラの奴ら、今に見てなさいよ!」
第三文明列強国であるパーパルディア皇国を本気で怒らせたのだ、誅伐艦隊は間違いなく圧勝してみせる!
皇都防衛隊の中には今回の外征に出れないことを悔しがる者も少なくないが、
我々の領分は皇都の守護、おいそれと外征に参加なぞ出来るわけがない。
勝ち戦で戦功を稼ぎたいのだろうが、竜母からの離発着は簡単に身につくようなものでもないらしいからどちらにしろ無理であっただろう。
「どうか海軍の皆様方、皇族に弓を引いた蛮族に鉄槌を……!」
皇軍主力がいない皇都の安寧は我ら皇都防衛隊が必ずや守ってみせます!
[海上要塞ヴァルハラ 北区 臨時捕虜収容所]
Sideレクマイア
捕虜扱いになってはや1ヶ月、今日もコーヒーが美味い。
最初は泥水みたいな見た目に抵抗があったが、これが結構イケる。
あまり広くない施設内だけで自由は制限されているが満足な食事と寝床が提供されたいるのでそこまでストレスではない。
検閲済みの情報誌であれば好きに読めるのでそれを片手にコーヒーを飲む。
席の対面ては皇軍のお偉いさんが副官とともに情報をノートに纏めている。
ここを出るときに没収されるだろうに勤勉だねぇ〜。
「北方連合、グラメウス大陸で採掘された魔法資源の輸出先を検討、か。
奴隷もっと寄越せの皇国と奴隷絶対に許さない北方連合では相性が最悪だ。
外交交渉で絶対にやらかして断交になる未来しか見えない。
しかし他に魔法資源を買い取ってくれそうなところとなると、どこだ?
リーム王国やトーパ王国もそこまで必要ないだろうし、文明圏外国も同様だろう。
神聖ミリシアル帝国の中央世界の国々は
そうなると候補はフィルアデス大陸ではパンドーラ大魔法公国、ムー大陸のニグラート連合やマギカライヒ共同体か?
こう考えると結構多いな、あ〜あ!勿体ねぇ!
待てよ?この情報上申すれば小遣い稼ぎできるんでね?
レッドアクシズは相当な辺境から来たらしいのでフィルアデス大陸より西の情報に疎いかもしれない。
ムーが打診する前になら情報料ぐらい貰えるか?ゲヘヘ
そんな下心全開の妄想をしていると慌てた様子の皇軍兵が食堂に入ってくる。
「おい一大事だ!」
「なんだ?騒々しい」
「静かにせんか、食事中だぞ」
そうだぞ、優雅なモーニングタイムが台無し……
「皇国が!」
「レッドアクシズに宣戦布告しやがった!」
「「「「「何ぃ!?!?!?!?」」」」」
オイ馬鹿か!?
待て待て、オレらはどうなるんだよ!?
…………まさか見せしめに殺される!!??
その結論に至ったのはオレだけではなかったようで食堂は大パニックとなった………。
ついに錬金術がアズレンにも………
より混沌とした技術体系が……!