異世界にレッドアクシズの名を刻む!   作:有澤派遣社員

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話の流れがサクサク行き過ぎてるかもしれませんがご了承下さい。



王都急襲

 

 

[工業都市ビーズル 城壁監視塔]

 

Sideとあるビーズルの衛兵

 

ギムの敗戦から早2日、日中から休まる間もなく城壁の門を兵達が行き来している。

昨日は事前連絡もなく飛竜騎士が100騎も駐留することになり場所の確保に一苦労した。

最初はの再進行のためなのかと思ったがどうやらビーズルの防衛のための戦力らしく、俺は疑問を抱いた。

明らかに集められた兵力が過剰なのだ、下手すると一昨日のギムに投入した戦力とほぼ同等になるほどだ。

俺は疑問を同僚達数名と食事中にに打ち明けたらそのうちの一人が渋々と話してくれた。

 

「頼むからこのことは絶対に他言するなよ。

ギムでの戦いには兄貴も出陣してたんだがな、憔悴仕切った顔で帰って来たんだよ。

何事かと思って問いただしたらなんかトンデモナイ化け物どもがいたらしくてな、それ以上は話してくれなかった」

 

その話を聞いて同僚達とともに大げさなと笑ったが、今の現状がその話を裏付けているのではないか?

ギムで一体何があったのだ?

そんなことを考えていると北風にのって聞き慣れない断続音が聞こえる。

 

「何だこの音?地鳴りか?……あれは何だ?」

 

ビーズル北側の荒野に立ち上っている……土煙か?

その土煙が段々と王都の方へと向かっている?

 

「この距離でと考えると相当早いな。一様報告はしておくか。

ん?……なんだ?鳥か?」

 

報告のために魔信を使おうとした視界の端、遥か空の彼方に鳥のような影が見えた気がした。

 

 

 

[王都ジン・ハーク 王城会議室]

 

Sideパタジン

 

「ようやく証言を纏めれたが、これは……」

 

すでに夕刻に差し掛かる頃、俺はパンドール将軍、王宮魔導師ヤミレイ殿らとともに頭を抱えていた。

国王からの命によりレッドアクシズについての情報を多方面から掻き集めていたが、簡単に調べたのだけでも御伽噺のようなものばかりであった。

 

《敗走した兵達からの証言》

・十字紋様の紅い旗を見た。

・10倍の数の飛竜相手に無双する鉄竜。

・毒煙と爆裂魔法を放つ鉄のゴーレム

・そんなゴーレムを運ぶ奇妙な飛竜。

・海上に建つ鉄の城が魔導兵器を撃ってきた。

・その威力は一撃で船を1隻〜3隻を木っ端微塵に吹き飛ばすほどだった。

・飛竜を駆る雛を見た。

 

《クワ・トイネと直前まで取引のあった商人達からの証言》

・主だった道路が黒い石で塗り固められてとても快適に進めた。

・ちょくちょく二頭身の猫や雛のヌイグルミが働いているのを見た。

・珍しいヌイグルミだと思い娘への土産にと大金を出して交渉したが「レッドアクシズの所有物のため売れない」と断られた。

・そのヌイグルミ達がゴーレムに乗って農業をしていた。

・港に巨大な鉄の船が港に停泊していた。

・その船に合わせて現在マイハーク港は大規模な改修作業をしている。

 

この中のどれだけが事実なのかはわからないがマイハーク港の件は気にかかった。

 

「鉄の船に港の大規模な改修?もしや海上に建つ城とはこれのことか?

そしてその城のような船の出入りのために港を改修する予定……辻褄は合うか?

パンドール殿、ヤミレイ殿の見解を聞きたい」

「正直信じられない……否、信じたくないものばかりであるが話半分でも今回の敗戦に対して十分納得できる情報かと……」

「これだけの魔導兵器が使われながらも全く魔力反応がないのが気がかりですな……」

「まだまだ情報の精度が足らないか……」

 

こんな御伽噺のような連中が何故いきなり現れたのだ?

せめてアデムかシャークンのいずれかがこの場に居てくれれば裏付けもできたのだが……。

 

「引き続き情報を集めなければならんな」

「飛竜による偵察を行うか?」

「今や飛竜は虎の子の戦力だ、無闇に浪費するわけにいかんのでは?」

「背に腹は代えられない、少しでも情報を……」

 

ドン!

 

会議室の扉が乱暴に開けられ何事かと振り向くと、そこには顔を真っ青にした守兵が息を切らして立っていた。

 

「監視塔より緊急連絡!こちらに向かってくる地竜の群れを確認したとのこと!」

「なんだと!!!」

「馬鹿な!?ビーズルはどうした!?」

「まさか、ビーズルを無視して荒野から進軍してきたのか!?」

「守備隊に緊急招集!出せる飛竜を全て上げろ!」

 

まさか王都に直接仕掛けて来るとは……!?

だが好都合だ、ここで時間を稼ぎビーズルの戦力で背後を取らせれば勝機はある!

 

「ビーズルに魔信をとばせ!王都に敵出現、至急増援を求める、とだ!」

「わかりました!」

「パンドール将軍!王城からの指揮を頼みます!」

「心得た!パタジン殿は?」

「恐らく敵はレッドアクシズのものです。

前線に出て少しでも情報を集めます」

「……!どうか御身を大事になされよ」

「わかっています、出陣するぞ!」

 

パンドール将軍が後ろにいれば正面の戦いに集中できるというものだ!

なんとしても有用な情報を集めてみせる!

決意も改にオレは城壁へと駆け出すのであった。

 

 

 

[王都ジン・ハーク前 大型装甲輸送車、簡易指揮所内]

 

《レッドアクシズ陸戦戦力》

【KAN-SEN】

・天城(指揮統括)

・赤城ちゃん(補佐、航空予備戦力)

・樫野(無人機操作担当)

・飛鷹(航空支援担当)

・隼鷹(航空支援担当)

 

【車両部隊】

・大型装甲輸送車   1両(WAP4機搭載可能、指揮車兼用)

・WAP用輸送車 2両(WAP2機搭載可能)

・無人装甲車   6両

・無人戦車    4両

 

【WAP部隊】

・90式     2機(ウォルター、他一名)

・150式    2機(グレン、ランディ)

・グリレゼクス  2機(ボッシュ、他一名)

・ルフトローバー 2機(多連装ロケット砲装備)

 

Side天城

 

『敵飛行戦力を確認、数推定100』

『城門より騎馬隊の出陣を確認、数推定400』

『ビーズル監視部隊より定期連絡、敵戦力の出撃は未だ確認できず』

『無人車両部隊の展開完了』

『ヴァンツァー部隊、全機リフトアップ』

 

私は指揮所の椅子に座りながら各所からの通信内容を処理していく。

事前に予想した敵戦力からの大きな変動はなし、まずは制空権を確保しましょう。

 

「隼鷹に飛鷹。敵飛行戦力を撃破し、制空権を確保せよ」

『こちら隼鷹、了解です』

『こちら飛鷹、了解した』

「制空権確保が完了次第、地上部隊は行動を開始。可能な限り敵戦力を誘引せよ(・・・・)

 

 

Side隼鷹

 

指示を受けた私は飛鷹と共に大型輸送車のコンテナ上に立っていた。

ああ、目障りなハネトカゲが一杯飛んてるわ!

頑張って早く終わらせて大事なオサナナジミに、カグヤに褒めてもらわなくちゃ!

ふふふ!姉妹や恋人、家族に親戚を名乗りでてる子はいるけどオサナナジミは私だけ!

やっぱり私達は……!

 

「隼鷹、妄想に浸るのは終わってからにしろ」

「はいはい、わかってますよ。

さぁハネトカゲども、惑い朽ち果てろ!」

 

飛鷹とともに巨大な絵巻を開くと、飛行甲板が書かれた絵が顕になる。

その甲板の絵から手乗りサイズのミニ烈風5機が浮き出るように発艦していく。

そして暫くするとミニ烈風が激しく燃えると同時に巨大化、本来の烈風へと姿を変える。

突然現れた合わせて10機の烈風に驚いたのかハネトカゲどもの隊列が大きく乱れた。

 

「まだまだ行くぞ!」

「ほーら!お代わりよ!」

 

さらに合わせて10機の追加で発艦を行い烈風計20機による蹂躙戦が始まろうとしていた。

 

 

 

Sideターナケイン

 

「こいつら、どこから現れたんだ!」

 

王都に近づく敵を討つために出現したが、突如現れた鉄竜に隊列を掻き乱されていた。

出撃前の情報では敵は地上戦力しかいないと言っていた筈なのに!

混乱していると相棒の飛竜が怯えだし降下を始めたではないか!

 

「グルルル〜!」

「おい!待てよ!これ以上隊列を外れ……!」

 

ドドドドド!!!

 

ビシャともビチャともした赤い液体が俺や相棒に付着した。

あれ?上にいる筈の先輩達はどこに?

隊長?なんで真っ逆さまに下へ向かっているんですか?

……………ああ、撃墜されたの…、か?

あの一瞬で?これだけの飛竜騎士達が?

周りを見渡すと既に飛んでるのは半数を下回ってるように見えた。

クソ!クソ!!クソが!!!

こんな馬鹿なことがあってたまるか!

 

「相棒!頼むよ!上昇してくれ!奴らに一泡吹かせてやる!」

 

相棒に俺の決意が届いたのか一気に上昇を開始する。

ちょうど敵騎の真下を食らいつける位置だ!

この千載一遇のチャンス、仕留めてみせる!

 

「当たれぇ!」

 

相棒から放たれた導力火炎弾が鉄竜の下腹に直撃した。

やった!当たったぞ!

だがその喜びも直ぐに襲った衝撃で吹き飛んだ。

 

「ギッ〜!」

「相棒!」

 

横合いから敵騎に攻撃され相棒と共に墜ちていく。

しかもどうやら攻撃に成功した鉄竜は無事だったようで、未だに墜ちてくる気配はなかった。

間違いなく直撃のハズだったのに、悔しいな……。

墜落した衝撃が全身を襲うと同時に俺は意識を失うのであった。

 

 

 

Side飛鷹

 

「………爆装していたらやられてたかもしれんな」

 

先程の飛竜の攻撃は完全に意識外からであった。

爆装していたなら誘爆は避けられなかったはずだ。

これは言い訳出来ない、相手を格下と侮っていた証拠に他ならない。

とりあえずは飛行している敵戦力は無い、制空権は確保できたと判断してよいだろう。

 

「慢心していた、帰ったら改めて鍛え直そう。

こちら飛鷹、制空権は確保した」

『解ったわ、ご苦労さま』

 

さて、こちらは空からプレッシャーをかけ続けるとしよう。

 

 

Sideランディ

 

『制空権確保を確認、地上部隊前進開始』

 

とうとう天城姐さんから指示が入ってきた。

今回は敵戦力の誘引が目的のため対人特殊装備(催涙弾)による攻撃は無しだ。

………ヨシ!覚悟決めるぞ!気合いれろ!

 

『全機前進!足元の無人車両を間違っても蹴飛ばすなよ!』

 

………以前やらかしたな、気をつけよ。

俺はガトリングガンの銃身を騎馬隊に向ける。

他のヴァンツァーや無人車両からも機銃やマシンガンでの攻撃を開始する。

瞬く間に騎馬隊が倒れていく………。

後方からはゾロゾロと歩兵も現れ始めた。

ここは連中の”家”だ、どれ程の犠牲を払おうと死物狂いで突っ込んで来るだろう。

だからこそ、手加減はできねぇ!悪く思うなよ!

 

 

 

Sideヤミレイ

 

なんだ、何なのだあれらは!?

 

「どういうことだ!?あのゴーレムからも!飛竜や地竜からも!魔力が全く感じない!?」

 

理解出来ない!あれらは魔法を使わずに起こっているというのか!?

 

「ヤミレイ殿!我等はどうしますか!?」

「ここからでは魔法の援護も出来ません!」

「城壁の弓兵や魔術師は既に敵の飛竜達に攻撃されて壊滅です!」

「………城壁に居ては狙い撃ちにされる!我らもパタジン殿とともに出陣するぞ!」

「「「「ハッ!!!」」」」

 

混乱していたとはいえ、この時もっと考えるべきであった。

敵は何故、一気に城壁まで進軍してこなかったのか?

周りを飛ぶ飛竜達が城壁や監視塔など優先して攻撃していたという事実。

………その答えはパタジン殿と合流して王都から出たと同時に理解することとなった。

 

「な、何だアレは!?」

「巨大な、鳥?飛竜!?」

 

耳を劈くような轟音とともに我らの頭上を通り過ぎていく鉄竜よりも一回り巨大な鳥のような物体が王城へと向かっていくのであった………。

 

 

 

■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇

 

 

 

[2発式ジェット輸送機*1 格納庫内]

 

【KAN-SEN】

・鬼怒

・能代

・龍驤

【王城制圧部隊】

強化骨格歩兵 一個小隊(30人)

警備用強化オフニャ 20体(コンテナ積載)

 

Side鬼怒

 

『目標上空の安全確認!降下態勢に入る!』

 

アナウンスとともに後部ハッチが開き風が吹き荒れる。

大型のコンテナが投下されると次々に陸戦隊の者たちが降下していく。

 

「……いくぞ。能代、龍驤」

「ええ、さっさと終わらせましょ」

「行きます!」

 

"あて"が空から敵陣に斬り込むとは、セイレーンとの戦いのときには思いもしなかったな。

他の陸戦隊が落下傘を開くなか、あてらは龍驤の出した艦載機"九九式艦爆"に同乗して急降下していく。

ある程度城に近づいたところで降下速度を落とし、地面にあたる寸前に艤装に収納した。

龍驤は「私達を乗せて急降下着地なんて楽勝です!」とは言っていたがさすがだな。

少々勢い*2があったがあてらKAN-SENであれば問題程度だ。

近くにいた敵兵達が唖然とコチラを見て固まっている。

 

「角が生えてる?」

「あ、亜人か?」

「お前らどこから……ガッ!」

 

”敵”を前にしてこの体たらく、練度は大した事はないな。

喉笛を切り裂かれた兵が倒れてようやく向こうも状況を理解したようだが遅すぎだ。

すでに能代が抜刀して切り込み、龍驤が徒手空拳で鉄鎧が砕ける勢いで兵を吹き飛ばし始める。

 

「もうおっ始めてるよ」

「おいおい、俺ら要るのか?」

「馬鹿言ってないで援護しろ!」

「「「「トツゲキ、ニャ〜!!!」」」」

 

陸戦隊達も到着したようだ、この戦争に王手をかけるとしよう。

 

「あての指揮官を苦悩させた代価を払ってもらおう」

 

”鬼”という存在がどれ程恐ろしいものかをその身に刻んでいけ!

 

 

 

 

[王城内廊下]

 

Sideランド

 

辺りからは悲鳴と喧騒が響き段々とこちらに近づいてきている。

………よもや直接王城に空から侵入するとは、彼等は我々の常識がつくづく通用しないな。

 

「ランド隊長、敵の勢いが止まりません」

「このままでは大王様が……!」

「解っている。とにかく急ぎ兵を集めろ。

なんとしても時間を……」

「そんな時間、あげないです」

 

横合いから不意にかけられた少女の声に驚愕し振り向く。

そこには黒布を被った白髪の小柄な少女が立っていた。

 

「何奴!」

「レッドアクシズ、綾波です」

 

アヤナミと名乗る少女は自身と同じぐらいの大きさの大剣のようなものを取り出しこちらと相対する。

咄嗟に剣を抜きながら部下に視線で合図を送ろうとして信じられない光景に固まる。

すでに数人の部下と侍女達が倒れ伏し、代わりに右眼周りを仮面で隠した黒髪の少女がいた。

 

「いつの間に……!」

「よそ見禁止、です」

 

首筋に冷たい感触が添えられる。

ぬかった、まんまと囮に引っかかるとは!

 

「……殺さんのか?」

「別に、恨みはありませんから。剣を捨ててください」

 

言われた通りに剣を地面に落とすと、ホッとしたような表情をした。

………僅かに勝算が見えた、その甘さが命取りだ!

体を大きく捻りながら右袖の紐を引っ張り、現れた隠し剣で少女の喉元に突き刺そうとする!

少女の顔が驚愕に固まっている、反応出来ていない!

隠し剣の先端がそのまま首を貫……

 

ボゴン!

 

腹部に走る激痛、そして衝撃とともに体が吹き飛ぶ。

蹴られた?あの態勢から?これ程の勢いで?

意識を失う瞬間に見えた少女の表情は何とも言えない気まずそうな顔であった。

 

 

 

Side綾波

 

やべぇ、驚いて手加減無しで蹴ってしまったのです。

暁が慌てて蹴られた人の様子を確認してくれてるです。

 

「………生きてます?」

「呼吸は正常なので内臓破裂とかはしてないでござる」

 

よかったです、鎧をつけてなかったら体が足型に陥没してたやもしれないです。

 

「ヤクザキックで危うく18G指定になるところだったです」

「気を付けてくだされよ、ホント……。てかなんで名乗り出たので?」

「……さっきシチュエーションなら出ないといけない気がして?」

「ゲームのしすぎでござるよ……」

 

綾波達が地上ルートで潜入した目的は城内の探索。

ここの王様の居そうな場所とかを把握するのが目的でしたので今更バレても問題はないです。

 

「兵は縛り上げて、侍女さん達は……そのままでいいですね」

「そろそろ龍驤殿達が目的地に着く頃合い、急ぐでござる」

 

さて、ここの王様にカチコミにいくとするです。

 

 

 

[王城玉座の間]

 

Sideロウリア

 

ああ、夢の終わりが近づいてきている。

我が夢、ロデニウス大陸の統一。

そのために亜人排除政策と人間至上主義で結束を促した。

そして列強の後ろ盾を得て軍備も増強、強大無比の力も得た……、はずだった。

レッドアクシズ、何処ともしれぬ連中が現れたことで全てが狂っていった。

御伽噺、神話の具現の如し力を持ちながらもクワ・トイネやクイラと同盟を結んだ者等。

何故だ、何故ロウリアではなかったのだ?

彼等の力があればロウリアは列強をも……!

 

ドーン!

 

重厚なはずの扉がまるで板切れのように外れて転がる。

そしてその先頭になる者達を見て驚愕した。

竜人と亜人らしき見麗しい女性達、亜人に美意識を感じたことのない余でさえ思わず見惚れてしまった。

そして納得するしかなかった。

ああ、最初からこの結末しかなかったのだな。

亜人排除を政策にした時点でレッドアクシズはロウリアの味方などになり得なかったのだ。

竜人の少女が一歩前に踏み出し此方に視線を向けてきた。

 

「貴方がロウリア王ですね」

「いかにも、余がハーク・ロウリア34世である」

 

竜人の少女が魔信のようなものを余に手渡そうとする。

 

「これは王都中に貴方の声を届けられるものです。

我々は貴方に降伏の宣言と身柄の確保を要求します」

「………受けよう、但し一つだけ条件がある」

「なんでしょうか?」

「ロウリアを、民を虐げるようなことだけは……どうか……!」

 

どの口が言うことかと、思わず自嘲しそうになる。

だが余の命を引き換えにしても、これだけは……!

 

「それを決めるのは我々ではありませんのでお答えしかねます」

 

返ってきた言葉は無慈悲なもので……

 

「ですが、これだけは断言してあげます」

「……?」

「我らの"殿"は人類の守り手!決して無辜の民を虐げるようなことをしたりはしません!」

 

先程までの無機質な声と打って変わって嬉しそう話す竜人を見て呆然としながら他の者らを見る。

角を生やした者達も何度か頷き、雰囲気も柔らかくなっていた。

"殿"と呼ばれる人物ここまでの全幅の信頼を寄せるほどの存在なのだろうか?

 

「貴殿がそこまで断言する"殿"とやらに興味が尽きんな」

「なら丁度よいです」

「なに?」

「身柄の確保ののち、直接合っていただきますので」

「それは、なんとも……!」

 

楽しみなことだ、と思いながら余は魔信らしき物体を手に取った。

 

 

 

[王都前荒野]

 

Sideウォルター

 

『ロウリアの兵らよ、余はハーク・ロウリア34世である。

余は現存、レッドアクシズの者たちと………』

 

時間的には予定通り、か。

機体の戦闘モードを解除して索敵モードに変更する。

俺達に群がろうと迫ってきた大半の兵達は突然のことに混乱しているようだが、

指揮官クラスの奴らは状況を察したのか停戦するように呼びかけている。

 

『………余の名の下に、ロウリアはレッドアクシズに降伏するとこをここに宣言する。

………このような愚かな王についてきてくれこと、感謝する』

 

泣き崩れるもの等も何人かいれば、悔しそうにこちらを睨みつけている者もいる。

少なからず遺恨は残るだろう、戦争をする以上は仕方ないことだ。

 

「全機、突入部隊とロウリア王の回収のため前進する。

最後まで気を抜くなよ」

『了解した、やれやれやっと終わったか』

『………キツイ、なぁ』

「ああ、だが俺達が戦うことで守れたものもある、そうだろうランディ?」

『そう、だな。悪いウォルター』

「別に気にするな。ロウリア兵達が道を開けてくれている。

間違っても蹴飛ばすんじゃない……」

『あっ!』

『え?うぉぉ!!!』

 

………何やら凄まじい金属のぶつかるような音が聞こえたが?

カメラをまわすとバックしていた無人戦車がランディの機体の右足を引っ掛けて転倒させていた。

 

『こちら樫野!操作を誤りました!ご、ごめんなさい!』

『お〜、頭がシェイクされた……。ヤベ、腕部の関節がイッたなこれ』

「………はぁ」

 

よもやこの戦争での一番の損害が味方との追突事故とは……。

………改めて連携訓練を多めに取り入れたほうがいいな。

 

 

 

中央暦1639年

 

ロデニウス大陸を激震させたロウリアとの戦争はロウリア王自らの降伏宣言をもって終わりを迎えた。

身綺麗な格好に着替えたロウリア王はランド近衛隊長を伴いレッドアクシズの者たちに囲まれながらも、自らの足で彼らの駆る鉄箱へと乗り込んでいった。

その堂々とした姿に「負けども大王は変わらず」と王都民は涙を流して惜しんだという。

 

宣戦布告から僅か一週間で終結したこの戦争は後に「一週間戦争」と言われるようになる。

周辺諸国にもロウリアの敗北とともにレッドアクシズの名が少しづづ認知され始めていた。

カグヤ達が転移して3ヶ月目、ロデニウス大陸は大きな転換期を迎えようとしていてた。

 

 

 

 

■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇

 

 

 

 

 

[トーパー王国 世界の扉付近海域]

 

Sideピュリファイアー

 

散歩がてらちょっと遠洋してきたらなんじゃこりゃ?

他の所に比べて空間が綻んでいる……ような?

正確にはここから北側の大陸の方角かな?

 

「ん〜、なにかあるのかな?

とりあえずカグヤに報告しに帰りますか」

 

最近カグヤの様子があまり良くない。

理由は人間相手に戦争をしていること、だけではない。

彼女の半身と化した"スサノヲ"との繋がりが完全に絶たれていることも影響している。

KAN-SENは艤装を完全に損失したとき、自己を保つことが困難なほどの喪失感におそわれる。

今のカグヤはその状態に近い、欠けた半身の喪失感をKAN-SEN達と触れ合うことで誤魔化そうとしていた。

なのに人間との戦争で自身が戦えないことに後ろめたさを感じ始めてしまい、精神的負担が増えてしまった。

 

………やっぱり私直々に一人残らず焼き払ってやればよかった。

 

元の世界でもスサノヲ本体はユニオンが接収したが、実は艤装としての繋がりは残っていた。

というよりオブザーバーが上手く誤魔化していた。

アズールレーンの指揮官やKAN-SENは気付いていたが黙認していたようだ。

 

「たく、私が言えた義理じゃないけどオブザーバーの奴は何を梃子摺ってるのよ?」

 

カグヤを安心させるためにも早く来なさいよ。

ブツブツと文句を垂れながら帰路へと着くのであった。

 

 

*1
外見は自衛隊のCー1

*2
※強化骨格装備の軍人が死を覚悟する程度の勢いです。




最後にも出てきましたが次はトーパ王国、それと近海の国との話を書く予定です
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