ここから色々な箇所で話が同時並行するため、
時系列が解りづらくなるかもしれません。
あらかじめご容赦を
《パーパルディア皇国よりの宣戦布告文書》
此の度、シオス王国経由でパーパルディア皇国からの宣戦布告文書が届いた。
〘フィルアデス大陸の覇者たる我らパーパルディア皇国に弓を引きしロデニウス大陸の蛮族共へ。
皇国民全てから愛されるレミールを殺めんとした蛮行、断じて許すわけにいかぬ。
しかし我らも無意味な流血は望まぬ、以下の要求を全て飲むのであれば寛大なる心で貴様らを許すものとする。
・襲撃事件に関わった可能性のある全ての罪人を受け渡すこと。
・レッドアクシズ並びにそれに属する文明圏外国の王族、族長一族の公開処刑。
・上記の完了後、パーパルディア人民を支配階級とした新政治体制の受け入れ。
・各国の人口比率1割以上の奴隷献上を即日決定すること。
・国土全ての資源、財産の所有権の放棄
上記の要求が最低条件とする。
これが受け入れられぬのであれば、滅びろ。
余が親愛するレミールを傷つけた報いを受けろ。
パーパルディア皇国皇帝ルディアス〙
このような内容であった。
これに対してサディア帝国代表"女帝"は、
『襲撃事件自体、我らは無実である以上このような理不尽極まる要求は受け入れられない』
と発言し、サディア帝国主導のもと断固とした態度を示すと発表。
これを受けサディア帝国は本土戦力をロデニウス大陸ロウリア新共和国へと派遣することを決定。
さらにこれに合わせてサディアKAN-SEN全艦が帰投、現地にて合流する予定。
鉄血、重桜、北方連合からも各租借地への防衛戦力を派遣することを決定。
またレッドアクシズからもサディア帝国への支援として鉄血機動艦隊が派遣されることが決定していると発表した。
[シオス王国 租借跡地改めパ皇駐屯予定]
Sideシオス外務大臣
まったく、呼んでもいないのに遥々下見に来るとは暇なのか?コイツは?
「大臣自ら出迎えとは、わかっているではないか」
「勿論です、此度の誅伐艦隊派遣はパーパルディア皇国の御威光を示すもの!
我々も微力ながらご支援をさせてもらえるなど、光栄の極みです!」
「はははっ!実によい心掛けだ!まったく、他の蛮族共も貴国くらいの器量があれば滅びずにすんだものを……。
では、駐屯時には食料や日用品の無償提供を頼んだぞ」
「かしこまりました。あとこちらは少なからずですが……」
懐から鍵を取り出す。
国で管理している個別金庫を開けるための、所謂ワイロだ。
………はぁ、決して安い金額ではないが機嫌取りのためにもやらねばならん。
「これはこれは、すまんねぇ〜。今後も頼むよ」
ニタニタと笑みを浮かべながら去っていく陸軍の将官に心中で嫌悪する。
正直言えば駐屯の件を蹴ってコイツをさっさと叩き出してやりたいが、
我が国に自衛できるだけの戦力が無い以上、それはそれでサディア帝国に迷惑がかかる。
相変わらずやりたい放題の皇国の態度を見て、改めてサディアの方と付き合っていきたいと心底思った。
租借地からの撤退時も食料などは迷惑料として置いていってくれたし、今回の戦争が終われば改めて租借地提供の件を再開してくれると約束もしてくれている。
(これではっきりした、我々が"友"とすべきはは"西"ではなく"東"だな。
国王陛下も他の大臣も反対はすまい)
提供する酒と食料、日用品の準備に皇国兵が起こすであろう横暴への迅速名対応案、やらねばならんことは山積みだ。
しかしそれも誅伐艦隊が敗北するまでの短い期間、頑張ろう。
"その時"が来たら先程の陸軍将官はどのような無様を晒すか、それを楽しみに仕事へと戻るのであった。
[フェン王国 首都アマノキ 天ノ樹城]
Side剣王シハン
パーパルディア皇国とレッドアクシズの開戦。
それは初めて天城殿が我が国に訪れた時に企て、軍祭にてその力を見て確信へと至った。
レッドアクシズの助力を得られれば、我が国を横暴極まるパーパルディアから守れると。
しかし、そう都合よく進むはずがないと気付くべきであったな……。
「………つまり海上戦力は出せぬ、と?」
「はい、その通りです」
沙霧殿からの感情の籠らぬ発言に、側近らが激昂する。
「何故だ!?重桜は海上戦こそ最も得意とする国であろう!?」
「そうだ!それが何故わざわざ陸上戦に執着しておるのだ!?」
「では、逆に聞きます。貴国の保有する海上戦力はいかほどで?」
「それは……」
側近の一人が言い淀む、軍祭で壊滅した海軍の建て直しはまだ進んではいない。
今までの軍船をまた造ろうと、最早役に立たぬのは目に見えている。
そのため重桜などから最新の船を融通してもらおうと資金繰りをしていたところで今回の事態だ。
ようはただたんに間に合わなかった、それに尽きる。
「再建中ゆえに、ほぼ無しと言ってよいな……」
「そうでしょうな、そして我々も即応できる海上戦力は千歳殿と千代田殿しかおりません」
「増援は……」
「到着はまだ掛かりますな」
「ではご姉妹方だけでも出撃を……!?」
「本気で言っているのか?」
沙霧殿が殺気と侮蔑の籠もった目で側近らを見る。この馬鹿者共め……!
「よもや彼女らだけ戦わせて自分らは高みの見物か?」
「………今のはコチラの身勝手であった、申し訳ない」
姿勢を正し頭を下げると、周りの側近らも慌てて頭を下げ始める。
沙霧殿の言われた通りだ。他国の、それも女性を矢面に立たせて自分らは陸から見てるだけなど許容されるはずがない。
こちらの誠意が少しは通じたのか、沙霧殿は溜息をつきながら殺気を収めた。
「………こちらとて戦わぬ訳ではありません。ただ出来ることであれば彼女らの手が血に染まるのは最小限にしたいのです」
「………貴方は、彼女らを疎んでいたのでは?」
先程失言をした側近がまた問題になりそうなことを言い、思わず血管が浮き上がりそうになる。
しかし沙霧殿はばつの悪い顔をして「成る程……」と納得している、どういうことだ?
「どうやら誤解されているようですな……」
「誤解も何も……、貴方はKAN-SENらを否定する【軽侮派】の筆頭ではないのですか!?」
「一様言っておきますが、私はKAN-SEN達を疎んでいる訳ではありません。
【軽侮派】というのは軍部や政治においてKAN-SENを特別扱いする【崇拝派】の考えを否定する、というものです。
ようするに、彼女らを"象徴"ではなく"人"として扱うように法で定めようとしている一派なんです」
周りがざわめく。彼女らが特別扱いされているのは何となく察していたが、どうやら根が深い問題だったようだ。
「そもそも軽侮派という言い方自体、崇拝派が勝手に呼び始めたのが定着してしまったものです。
………彼女らは比較的身軽なほうなので分かりづらかったでしょうが、長門様など本国で自由を束縛されている方々は少なからずいるのです。
………彼女らは十分に国に尽くしてくれた、故に"人権"を保証することで未来の選択肢を増やしたいと願い、我々は立ち上がったのです」
………若いというのに立派なものだ。
いや、若いからこそ自分の信念を貫こうとしているのか。
自国のために他国の善意を利用しようとした自分が恥ずかしくなった。
「すまぬな、君という男のことをもっと知るべきであった」
「いえ、昔から誤解されやすいようで慣れております」
「ははは!真面目だな!」
「恐縮です」
ああ、この者であれば信用できる。
「兵の指揮権も必要か?」
「いえ、指揮権までは不要です。こちらから作戦指示はしますが最終決定は貴方方に委ねます」
「解った、頼むぞ”重桜の若獅子”よ!」
「………こそばゆい呼び方をなさらないで下さい」
少し顔を赤らめる似つかわしくない姿に堪らず豪快に笑ってしまうのであった。
《フェン王国防衛作戦》
・今回の侵攻に対し海上での撃滅は軽空母KAN-SEN2名では戦力不足であると判断。
・またパーパルディア皇国陸軍の主力である陸竜、リンドヴルムは軍馬よりも鈍足であるため進軍速度は遅いものと推測。
・早期決着の必要性も皆無のため、租借地防衛隊は縦深防衛を提案、フェン王国からも住民の安全を確保出来るのであればと了承。
・本作戦にあたり一部避難に非協力的な地域があったが、剣王シハン自らが出向きこれを説得、無事避難は完了した。
・これによりフェン王国西側を完全に無人化、またフェン王国の全戦力を中央へ集中させた。
[アルタラス王国 王都ル・ブリアス 王都港]
Sideルミエス
パーパルディアがレッドアクシズへ宣戦布告。
この衝撃の情報は瞬く間に周辺国に広がり、緊張が走った。
お父様達も緊急対応のために連日会議で難しい顔をしている。
こんな時、何もできない自分が恨めしい!
王城に居るのが辛くなり、お邪魔になるのは理解しつつチェシャー様の元へ向かう。
港にはみ出しながらもギリギリ接舷している鉄船の上で私は思わず弱音を吐いてしまう。
「再びくるかもしれない国難に、自分がいかに無力かを痛感するの……」
「そんなのとないにゃ!ルミエスちゃんが無力なんてことないよ!」
「しかし……!」
「そもそも!ルミエスちゃんがいなければチェシャー達がこの国に来ることもなかったんだよ!」
「それは、単に運が良かっただけで……」
「その運命を引き寄せたのはルミエスちゃんにゃ!
あの場で”逃げる”ことより”戻る”ことを決断したのも、含めてね?」
満面の笑みで言い切るチェシャー様に私も精一杯の笑顔で返すと、いつまでも下を向いてられないと顔をあげる。
島から離れた位置ではモナーク様とプリマス様の鉄船が北側の海を警戒するように佇んでいた。
そうだ、今の私達にはこんなにも心強い味方がいるではないか!
いつまでもクヨクヨしていてはチェシャー様や彼女らに申し訳がない!
両手で頬をパン!と叩く、チョット強くやり過ぎて涙が出たが気にしない!
「王城に戻ります、私の"戦場"は"ここ"ではないので!」
「その調子にゃ!ガンバ!」ヾ(〃^∇^)ノ
「はい!行ってまいります!」
チェシャー様達に誇れる立派な女性になって見せます!
《皇国軍情報局より緊急通信》
情報局より各方面へ通達。
アルタラス王国に潜入中の密偵より有力な情報が入手出来た。
〘王都港にて超巨大機械動力船を確認、以前監査軍がフェン王国で交戦した艦と特徴が一致。
アルタラス王国防衛のために遠洋する様子はなく、ロウリア方面へ向かう様子は無し。
また他にも4隻の大型機械動力船も確認、同じく遠洋する様子はない。
レッドアクシズ側は情報伝達の遅れにより戦力の再配置に失敗している模様。
フェン王国の軍祭にて超巨大機械動力船が2隻公開されたという情報からも、
ロウリア方面の蛮族どもの戦力は半減以下になっている可能性が高い。
情報の重要性を理解できない蛮族らしいミスである。
故に!今こそ蛮族に鉄槌を下す最大のチャンスであると思わ……〙
通信はここで途切れたため記録は無し。
恐らくは魔信の出力が安定しないために途切れたものと思われる。
レッドアクシズの戦力は最早脅威にあらず、我が皇国の勝利は間違いないだろう!
・用語補足
重桜にて度々問題とされているKAN-SENに対する扱いについて派閥が出来ている。
【崇拝派】
重桜における最大派閥、正確にはいくつかに枝分けれしているが割愛。
KAN-SENを象徴として扱い、極端なものだと俗世に関わらせないようにすることを是とする派閥。
純粋に敬意から崇拝する者から、そのほうが都合が良いと判断している者まで様々。
【軽侮派】
崇拝派がつけた詐称。正確には【人権派】と呼ぶのがただしい。
KAN-SENに人権を保証しようと尽力している新鋭派閥。
比較的若い世代が多く、政治基盤はあまり強くない。
また崇拝派の情報工作で誤解が広まっており、民衆からの受けは落差が大きい。
ただし風の噂では"主上"から支援を受けていると言われている。