異世界にレッドアクシズの名を刻む!   作:有澤派遣社員

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フェン王国戦、これにて終了です。

今年ももう終わりになりますね。
来年も頑張って更新していきますのでよろしくお願いします。



フェン王国防衛戦④(終)

 

[フェン王国 南海岸付近]

 

Sideベルトラン

 

……………は、はは、今見ている光景は、現実、なのか?

我々の戦列艦が、栄えあるパーパルディア皇国軍の艦隊が小さな人影に翻弄され、撃ち抜かれ、叩き斬られ、押し潰されて、爆発していく………?

 

「そんな、馬鹿、な……」

 

へたり込むヨウシに絶望に打ちひしがれる部下達。

そして後方から大きくなり始めたゴーレムの駆動音………。

装備の大半を失い、マスケット銃を持っていない兵も目立つ。

空には聞き慣れない音を出しながら飛ぶ飛行機械が縦横無尽に飛んでいる、竜騎士は全滅。

そして…………

 

「「「----!」」」ギラリ

「「「----!」」」ギロリ

 

目の前には岩陰や砂浜から飛び出してきた無数のフェン王国兵士の姿。

このようなところに数百人規模の待ち伏せなど、すべて向こう方の思惑通りになっているのだと痛感する。

フェン王国兵士は相当に殺気立っており、疲弊した我が方の兵が完全に萎縮してしまっている。

 

 

ドーン!

 

 

遠くで残り少ない戦列艦がまた爆発炎上する、もはや万策尽きた………。

仮にこの場をしのげたとして、その後はどうする?

艦隊は壊滅、装備もない、士気は最悪。どう考えても立て直しは不可能だ。

そうとなれば残る選択肢は二つ、玉砕するか、もしくは……!

 

「ベルトラン陸将!降伏を!勝ちの目はありません!」

 

ヨウシの言葉に思考を停止させる。降伏、それしかないが、しかし!

 

「降伏だと?この私が!?我らが皇国軍がか!?」

「それが最善です!いえ、もうそれしか生き残る術はありません!」

「そんな、ことを…!そんなことになれば我らは生涯の生き恥を……!?」

「生きていれば挽回の目はあります!しかし死ねばそれさえないのですよ!?

どうか、ご決断を!勇気と蛮勇を間違えてはなりません!」

 

……………生きてさえ、死んでさえいなければ、チャンスはあると信じよう。

 

「………降伏の、合図を」

 

 

 

■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇

 

 

 

[フェン王国 南海岸付近]

 

Side沙霧尚哉

 

「ん?隊旗を振っているようだな……?何だあれは?」

『降伏、でしょうか……?』

 

中央に集まり、必死に隊旗を左旋回させながら武器を地面に置き始めている。

 

「そうだと思われるが……。万一もある、陣地に通信を繋げる」

『了解です』『待機します』

「こちら沙霧、確認したいことがある」

 

 

 

■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇

 

 

 

[フェン王国 ゴトク平野 野戦陣地]

 

Side???

 

沙霧殿から通信が入る、予定通り海岸線まで追い詰めていたはずだがなんだろうか?

 

「こちら仮設陣地指揮所、どうされましたか?」

『む?貴殿か。パーパルディア兵が隊旗を左回しに振っているがどのような意味か?』

 

心中で舌打ちをする。

プライドの高いあの連中が降伏するとは予想外だった、ヤケを起こして全滅するかと踏んでいたのだが……。

 

「……左回し、ですか?」

『間違いなく左回しだ』

 

口元が吊り上がりそうになるのを必死堪える。

まだだ、沙霧殿は勘がいい、ここで怪しまれては全てが水の泡だ……!

 

「はて?心当たりはありませんが(・・・・・・・・・・・)……?

もしや何かしらの魔法儀式なのでは?」

『……武器も降ろして必死の形相だが?』

「恐らく油断させての時間稼ぎ、では?急ぎ反撃を。

「そこまでだ、イルガよ」

……!?」

 

バッと振り返る、馬鹿な何故この場に……!?

 

「剣王、様……」

「もはや言い逃れ出来ぬぞ?」

 

数名の護衛を引き連れたシハン様と千歳殿、千代田殿が入口を塞ぐように立っていた。

 

 

Side剣王シハン

 

「申し訳ない"若獅子"殿、パーパルディアが行っているのは降伏の合図に間違いありませぬ。

お手数ですがご対処願いたい」

『解りました、受け入れの準備を頼みます』

「うむ、側近が度々すまぬ」

 

通信を終え、改めてイルガへと向き直る。

よもや此奴が"内通者"であったとは、もっともあり得ぬと思っていたのだが……。

 

「何故だ?パーパルディアは汝の兄、クシラの仇であろう?」

 

軍祭にて監査軍と交戦し海に沈んだ水軍部将クシラの腹違いの弟こそが目の前に立つ男、イルガだ。

そして先の会合にて沙霧殿に対し無礼な言い振舞いをした側近でもある。

 

「………いつからお気づきに?」

「お主が妙に沙霧殿達を調べているのに違和感を覚えてな。

調べてるうちに貴様が何人かと秘密裏に会っているのも把握できたということだ」

「そう、でしたか……流石です」

 

アッサリ認めたな、多少は誤魔化すかと思ったのだが……?

 

「密偵も匿っているようだな?そのものらの身柄も……」

「彼らならもう死んでます」

……なんだと?」

 

一瞬口封じかと思ったが、イルガの瞳に宿る黒い感情を見て違和感の正体をようやく理解した。

 

「成る程、目的は"復讐"だったのか?」

「ええ、馬鹿な連中でしたよ。兄が死んだおかげで家督を継げれたと言ったら簡単に信じましたからね。

密偵の集めた情報を改竄して流しても全く疑われませんでした。

そして連中を王国まで誘引したのも、重桜の方々のお力添えがあれば鎧袖一触に出来ると踏んだからです。

………海戦を断られたことだけは予定外でしたが」

 

その件に千歳殿が僅かに反応し、千代田殿が申し訳なさそうな顔をする。

 

「御免なさい、私達が鉄竜を呼び出せると自慢したのを聞いたから……!」

「千代田殿、貴女に非はありません。私が勝手に貴女方を利用しようとしたのです。

寧ろ罵倒されても文句が言えぬ立場です」

 

うやうやしく謝罪するイルガの姿に溜息をつく。ここまではっきりと”復讐のために他国を巻き込んだ”と公言されては擁護は不可能だ。

 

「イルガ、貴様を国外追放とし身柄を重桜へと委ねる」

「………はい、覚悟の上でした」

 

イルガが腰の刀を地面に置いたのを確認して部下が身柄を拘束、連行していく。

 

「刀を、兄上の墓前に、お願いします……」

「………短気を起こしおって、馬鹿者が」

 

すれ違いざまの言葉に思わず本音が溢れる。

側近の中でも比較的若くして内政分野にて頭角を現にし、今後のフェン王国を支えるに足る人材だと亡き兄上も自慢しておったというのに……!

………嘆いてばかりもいられぬ。早急に捕虜の受け入れ準備をせねば、な。

 

 

 

《フェン王国防衛戦 報告資料》

 

・今回の戦闘におけるフェン王国側、重桜側の人的損失はナシ。

※陣地設営時、不注意による事故での軽症報告が上がっている程度である。

 

〘確認できたパーパルディア側の被害〙

・大型戦列艦 9隻

・通常戦列艦 62隻

・小型戦列艦、他 89隻

・航空戦力運用艦 14隻

・推定死者数 8万人強

 

〘戦闘結果〙

完勝と言える結果ではあったが、幾つかの問題点も浮き彫りとなった。

 

・現地での防諜対策、租借地提供国家に対して情報漏洩に関する明確な罰則や対策案の掲示などが必要である。

 

・対人戦における過剰殺傷が目立ち、今後市街地での非戦闘員を巻き込んだ戦闘では無用の被害がでる可能性が高い。

・そのため、レッドアクシズにて試作された非殺傷対人兵装の制式化開発と採用は急務である。

 

 

 

■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇

 

 

 

[トーパ王国海域→グラメウス大陸海域]

 

【パーパルディア皇国海軍 北上艦隊】

 

〘艦隊指揮 トーリク将軍〙

 

・超フィシャヌス級120門級戦列艦「ヘベリス」(旗艦)

 

・フィシャヌス級100門戦列艦 2隻

 

・80門級戦列艦 8隻

 

・50門級戦列艦 14隻

 

・砲艦・輸送船 35隻

 

 

Sideトーリク将軍

 

ククク、ようやくここまで来れたな。

ドミディア様からの命を受けてこんな辺鄙な場所に向かうはめになった時はどうなるかと思っていたが……。

予想されていた海魔の脅威もなく、比較的穏やかな船旅であった。

この先に蛮族どもの貿易のために開放している港(・・・・・・・・・・・・・)とやらがあるらしい。

他国を含めて多くの物資が行き交いする港を襲えば楽々と蛮族国家に打撃を与えることができる。

そして、事前に略奪行為の許可も貰っている、金品に奴隷にと選り取り見取りだ。

噂では目が眩むような美女が小規模の常駐艦隊を指揮しているらしい。

シシシッ!是非ともオレのものにしてやりたいなぁ!

遠からず実現する事実に舌舐めずりしていると、副官から報告が入る。

 

「将軍、先頭の艦より連絡です」

「なんだ?まだ到着には早いだろ?」

「いえ、それが、そのぉ」

「なんだ!はっきりしろ!」

「前方に一隻の鉄船を確認したらしいのですが、海魔に囲まれて身動きがとれぬようでして………」

 

なんだと?それは都合がいい。ここで拿捕出来れば後々役に立つやもしれぬ。

仮に沈めてしまったとしても問題はない。

 

「艦隊を鉄船を囲うように移動させろ、拿捕する!」

「はっ!」

 

………ツイてる!オレは今最高にツキが回ってきている!

しばらく進むと機械動力船と思しき巨大船が、100門級戦列艦サイズの海魔数匹に纏わりつかれている光景が見えてきた。

正直何故沈められていないのか不思議な光景だが、あれでは動くこともできまい。

オレは部下が持ってきた拡声魔信器を手に取り、勧告を始める。

 

「あーあー、こちらはパーパルディア皇国軍艦隊。お困りのようでしたらお助けしますが?」

 

もちろん嘘だが、相手の反応を見るためにも一応取り繕わなければな。

すると向こうからも拡声器越しらしき声が聞こえる。

 

『いえお気遣いなく、この子達と戯れてるだけですので』

「ほ〜……て、んん?なんと?」

 

女の声であることに下卑た笑みが出る前に理解不能な発言に疑問が頭をよぎった。

戯れてる?海魔と?副官とともに望遠鏡を取り出してよく確認する。

………黒服の美女がホントに海魔の鼻先を擦ったりしてる。

まあそんなことはいいとしよう。よく見れば中々の美女ではないか!

 

『あ、ちゃんと事前勧告しないと、んん。

こちらはレッドアクシズKAN-SEN【ローン】、貴方達は北方連合の主権領域を侵犯しています。

速やかに退去を、さもなければ実力で排除します』

「これはこれは、この数に囲まれて強気な態度とは可愛いですなぁ。

ですがご安心を、降伏してくれれば丁寧に(・・・)扱ってあげますよ?」

 

周りの部下とともに下卑た笑いを上げる、あんな美人を殺すなんて勿体無………。

 

『フフフ、そうですか?ではちょっとだけ本気(・・)でいきましょうか』

 

周りにいた海魔が一斉に水中へと潜り、機械駆動船が軋みを上げながらその形を変質させ始め、

それに吊られて視線がだんだんと水平から見上げるようなものに変わる。

 

 

『それでは遠慮なく、貴方方を”放生”してさしあげますね?』

 

 

美しい柔らかな笑みとともに˝死神˝が放つ極大の殺気が辺りを支配した。

 

 

 

 

■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇

 

目の前に現れた非現実的な光景に、

 

ある新兵は放心し神への祈りをするように膝を折った。

 

ある兵士は生を諦め抵抗をせずにその命を散らした。

 

ある兵長は絶望しフリントロック銃を取り出し自らの頭を撃ち抜いた。

 

ある砲撃手は死に際まで己の役割を全うし絶命した。

 

ある将軍は最後まで命乞いの声を上げながら無様に死んだ。

 

水中に潜った海魔は海面から沈んできた˝餌˝に一切手を出さない。

絶対強者(・・・・)のおこぼれを貰おうなどという命知らずはいなかった。

 

■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇

 

 

 

[グラメウス大陸海域]

 

Sideローン

 

「あーあ、まだまだ未熟ね。ごく少数とは言えあんな無様な死を選らばせてしまうなんて………。

彼らの”放生”が良きものになるよう祈りましょう」

 

己の不甲斐なさにため息をつきながら彼らの沈んだ海で祈りを捧げる。

どんな聖人も悪人も、死ねば平等なのだから。

 

「………さーて、帰りますか♪」

 

いいかげん暇つぶしに海魔と戯れるのもアレなので帰路につくこととした。

 

 

パーパルディア北上艦隊、全滅

 

 

生存者、無し

 

 

 




本作オリジナルキャラ紹介
【イルガ】
年齢30代前半 フェン王国人の男性。
亡き海軍部将クシラの腹違いの弟、武に強い兄と対象的に政治面で頭角を表すも今回の件で追放処分、重桜が身柄を預かっている。

【トーリク】
年齢30代後半 パーパルディア皇国の男性。
秘密結社”ノースフェイス”の支援を受けている将軍。
欲深く、違法な奴隷取引などにも手を染めていた。
北上艦隊の指揮を取るが戦死。
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