今後も宜しくお願いします。
カグヤの過去編ダイジェストになります。
物心ついた頃の私の記憶に、両親との思い出はなかった。
ただ朧気ながらも自身と同じ黒髪の母らしき女性がベッドに寝込みながら「ゴメンね……」と泣いてる姿、悔しそうにする父の姿が僅かに記憶にある。
幼少期に父の恩師である"先生"の経営する施設に預けられて、他の孤児達とともに過ごした。
父親はいるのに会いに来てくれなかったため、それを理由に「捨てられた混ざりモノ」と虐められたこともあった。
父は自分を愛してくれていないのだ、だから会いに来てくれないのだ。
そう嘆いていたとき、"先生"が説いてくれた。
「君の父上は真面目で不器用な男でね、軍人の男手一人で女性の君を立派に育てるのは難しいと思ったのだよ。
だから、父上の育ての親である私に預けたのだ。
君は間違いなく愛されている、大丈夫だよ」
"先生"の言葉に私は喜んだ、それで我儘と解っていても父と会いたいとお願いする。
「勿論だ、いい加減あの仕事人馬鹿を引き摺りこんででも連れて来るとしよう」
そう言って"先生"は母の故郷での約束をする時の仕草である"指切り"をしてくれた。
私は喜んだ、父は愛してくれていたのだ!会いに来てくれると!
だが、運命はとても残酷で……。
約束の日に来たのは父の部下と上官、僅かばかりの遺品だけだった。
「申し訳ありません、お父上は純血主義の過激派が起こしたクーデターから市民を護るために……!」
「遺体と兵舎は燃えてしまったため、これだけしか……!」
そう言って渡されたのは大きな軍用コートと儀礼用の帽子、そして父と母の写真が納められたロケットペンダント。
呆然としながらも、反射的に御礼をすると軍人さん達が耐えられないと涙を流す。
"先生"も涙を流し私に寄り添ってくれる。
私の目からは涙は流れず、ただ空虚な思いだけが、残った。
そして、不幸は雪崩のように襲ってきて………。
「ゴホゴホッ!すまない、君を、置いていくことに、ゴホ!……なってしまう」
数年後、"先生"も病に倒れ、そのまま還らない人となってしまった。
孤児院の皆が大泣きする中、私は泣くこともなく黙々と葬儀の手伝いをした。
そして新たに来た施設長は、
「なんだねコイツは?こんな薄汚い混ざりものが居るとは、前任はとんだ変わり者だったようだな」
自身だけでなく"先生"まで悪く言うオジサンが、私は大嫌いだった。
しかし施設の長はコイツで、私は施設で完全に孤立することになった。
この頃にはもう、何をされても何も感じなくなっていた。
「はやく、らくになりたい……。しねば、みんなにあいにいけるのかな……?」
そんな風に思っていた頃に、施設のある街で【セイレーン】の大規模空襲が起きた。
皆が避難する中、私は施設に一人残る、いないモノ扱いを受けていたので特に苦労しなかった。
「しぬなら、ここで………」
空を見上げると無数の黒い飛行機が"ナニカ"を落としていいった………。
…………いたい、うごけない
「あらあら、避難が間に合うようにしてたはずだけど……、運がない子ね」
…………だ、れ?
「生きてるの?可哀想に、中途半端に死にかけて……!
嘘、まさかキューブ適性者?」
………よく、みえない
「これは、勿体無いわね〜。なら、ちょっと実験体にしてしまいましょ」
………?
「どうせ死ぬなら、私の役に立ってね?」
………あつい、やだ、からだが
「………すごいわね、まさかここまでナノマシンに適合するなんて」
………………あ
「これは面白い素材ね、フフフ」
…………………………
「じゃあね、せいぜい実験体としていいデータを出してね?」
…………なぜか生き残ってしまった。
保護してくれた軍人さん曰く、殆ど外傷もなかったらしい。
あの苦しみは幻だったのかな?もう二度と死にたいとは思えないけど。
あと施設長はろくな確認もせずに私の死亡届けを出していたとして何かしらの処分が下るらしい。
私の身柄は暫く父の上司だった人が預かることになり、基地の一角で暇を持て余していた。
この時、綺麗なお姉さんと可愛い少女と出会った。
「あれ?基地に女の子……え!?」
「!?、あらあら、これはスゴイ拾い物ね」
彼女らこそ、私が初めてあった鉄血KAN-SEN
暫くして、私は指揮官(見習い)に任命された。
どうやらKAN-SEN達の指揮に関わる”適性”があったらしい。
現在アズールレーンから離反した鉄血・重桜が創り出した組織、レッドアクシズには適性のある指揮官が不在だった。
ようは飾りでもいいから適性者の旗頭が必要らしいのだ。
………そうか、私、必要とされてる、のか。
胸に熱いものが宿る、初めて私という個人が必要とされている……!
それからは周りの協力を受けながら必死に学んだ。
鉄血公国ではビスマルクやケルンから軍事についての基礎知識を叩き込まれ、
軍人さん達には護身術や銃器のイロハ、兵器の素晴らしさを熱心に教えてもらった。
地味に一番心躍ったのはナイショ。
母の故郷である重桜に渡ると重桜のトップ、"主上"から励ましのお言葉をもらいすごい緊張した。
重桜KAN-SENの重鎮、三笠様から直々に案内されてたら観光感覚になってしまい、あとで赤城からお小言もらったりもした。
私という指揮官が現れたことで静観していたサディア帝国が合流
、特にリットリオにはいたく気に入られたような気がする。
レッドアクシズ派閥となったヴィシア星座代表であるジャン・バールは荒っぽい言動とは裏腹に知的で紳士的な女性で、密かに憧れの人であった。
最初は何も解らず、何も出来ずに皆に迷惑ばかりかけた。
それでも皆は私のことを見捨てずに、友人や家族のように接してくれた。
純粋に嬉しく、心の空虚感が満たされていく。
だがそれと、同時に心に過るのは大事なモノを喪った時の恐怖。
だからこそ、あと一歩がなかなか踏み出せず、KAN-SENらもそれを察してか踏み込んで来る者はいなかった。
そんなどことなくギクシャクした関係が続いていた頃、鉄血研究所にて全く新しい試みがされていた。
KAN-SEN開発計画、カンレキの有無に左右されないKAN-SENの建造。
その研究過程で偶発的に建造できた試作第一号、名を【ローン】。
しかし人型の顕現はできたが、肝心の艤装や艦艇の顕現が成功しておらず艦種さえ不明と難航。
指揮官と会わせれば何かしらの進展があるのでは?と期待されて研究所に案内された。
同伴した綾波と
瞳に宿る暗い光り、ソレが何なのかを私は知っている。
自身の根底が揺らいで、存在価値を信じられなくなってる者の眼だ。
他の研究者らからも状況の確認をしていたが、大半が期待外れ、落胆というものだ。
仕方ないとはいえ内心憤慨しながら再びローンに会いにいくと、自身の解体処分を懇願された。
「存在価値がない兵器に意味はありません」
「…………そんな、馬鹿なこと、言わないでよ」
涙を流して彼女の手を握りしめた。
他の誰がなんと言おうと私は貴女に価値がないなんて絶対に認めない!
そう思った時、青白い光があたりを照らす。
何事かと思っていると、握っていた手に黒い装甲が覆われていく。
二人してパチクリと見入っていると、ローンの後ろから大きな影が伸びてくる。
恐る恐る見上げると、巨大な生体艤装が大きな口を開けて咆哮をあげた。
ギシャアアアー!!!!
…………ローンて、艦種戦艦だったんだ。
驚きと鼓膜への甚大なダメージにより、私は気を失った。
KAN-SENとして覚醒したローンはそれは凄かった。
まさに戦鬼、そう呼ぶに相応しい戦果を叩き出した、アレで重巡艦種とかウソやろ………。
戦闘時以外でも駆逐艦KAN-SENたちのためにお菓子を作ったり、他KAN-SENのお手伝いと積極的に活動している。
ただ、問題なのはの………
「ふふ、指揮官さん♪」
グイグイと距離を詰めてくることが精神的に、キツイ!
あと経験豊富なビスマルクや赤城、リットリオの意見よりも私の意見を尊重し過ぎるのも悩みのタネだ。
………でも、ちょっとだけ、嬉しかった。
………………また、大事なモノを持っても、大丈夫だよ、ね。
ローンという存在が、私にとって掛け替えのない存在になったのはこの頃であった。
カグヤの過去話、続きは暫くしてからの予定です。
百合百合な展開?そんなものは書けん!(泣)