[海上要塞ヴァルハラ 指揮官私室前]
Sideローン
ロウリアとのゴタゴタが終わりもうすぐ一ヶ月、カグヤも本調子とは言えないが少しづつ良くなっているようだ。
今日もカグヤの心を癒やしてあげようとしていたのに……
「あらあら、大鳳おはよう」
「おはようですわ、ローン」
扉の前で大鳳とバッタリと出会ってしまった。
………お互い考えていることは同じか。
「指揮官への起床の挨拶なら私がやっておきますから、どうぞお帰りを」
「いえいえ、ご多忙な秘書官殿にこのような雑務は相応しくありませんわ〜」
その場に
「廊下の空気が軋んでた」
「全力で回れ右した、命大事」
「孔雀とキメラのスタンドが見えた、です」
「チ、チビってなんていないわよ!」
大鳳と牽制の仕合をしていると、ふと部屋の中から違和感を感じた。
「……なんか部屋の中、気配がしないですか?」
「ええ、しますね。指揮官様以外の気配が……!」
大鳳がワナワナと震えながら怒りを顕にしていた。
ふふ、私もちょっと平静でいられないかも。
私はノックも無しに勢いよく扉を開けた。すると……
「かひゅ!」
「うぇ!」
駿河と島風がこちらに振り向いて顔を真っ青にして震えている。
この二人が何故この場にいるのか?それはベッドを見ればすぐに分かった。
「すぅ~すぅ~」(満足げな寝顔)
「んん、うみゅ」(ちょっと暑い)
彼女らが世話係をしている信濃がカグヤを尻尾で包みながら同衾しているではないか。
大鳳が二人に詰め寄っている。
「あら〜、これはどういうことかしらぁ」(ビキビキ)
「ひぇ〜、駿河殿〜」(涙目)
「あの、これは、その、あ〜」(頭をフル回転中)
私はそんな三人を無視してベッドの横に立つ。
そしてカグヤを信濃と挟むようにベッドに入り込む。
「ちょっと、ローン!あなた何して!」
「フカフカで温かい……」
フフ、実は前から信濃の尻尾には興味があったのよね。
あの綺麗で立派な尻尾を布団か枕の代わりにしたらさぞ極上だろうな〜、と。
さらにはカグヤと一緒になんて最高ね!
「なんて羨ましい……!」
「駿河殿〜!お気を確かに〜!」
「………(チーン)」(諦めて気絶した)
大鳳が悔しそうに歯噛みをしてるのを後目に二度寝と洒落込むのでした。
Sideカグヤ
まさか信濃に抱きしめられながら寝てたなんて……!
ううぅ〜!恥ずかしくて顔から火が出そう!
「ローンも悪乗りしてないで起こしてよ〜!」
「あら?なにか悪いことがあったかしら?」
そんなニマニマとしながら言われても全然説得力無いよ!
「申し訳ありません指揮官様。大鳳がもっとしっかりしていれば……」
「いや、泣き真似しながらなんで服の下に手がいってるの?」
「大鳳も指揮官様の温もりを感じたく……」
くるりと同室してるはずの島風達を見るが駿河の看病で手一杯、信濃はまた寝てる。
こ、この場に味方は居ないの!?
するとジャストタイミングで扉が勢いよく開く。
「下僕!やっとトーパ王国から返答きたわよ!」
おお!ドイチュラント!ナイスタイミ……
(邪魔するなという無言の圧力)×2
「………(冷汗ダラダラ)。じ、邪魔したわ、また後で来るわね?」
「待って、置いてかな……いや、違う!トーパ王国から返答がきたの?」
「ええ、はいこれ」
ドイチュラント、他国からの重要文書なんだから雑に投げないでよ……。
(共通語解読中)………ふむふむ色よい返事だね、コッチのことは風の噂レベルだろうに。
「カグヤ、どのような内容?」
「是非要らしてほしいって」
「編成はどうします?」
「んん〜、挨拶と調査許可を貰う程度だしあんまり大所帯だと迷惑だよね。
ピュリ姉は確定として……、ドレイクとシアトルは長期任務の予定無かったよね?」
「ええ、大丈夫ですね。カグヤと旅行……はぁ、二人が羨ましいわね」
「いや、遊びに行くわけじゃないからね?」
「開発艦組は指揮官様を大変慕っておりますから、喜ぶでしょうねぇ」
本来アズールレーン陣営側の開発KAN-SENがレッドアクシズに全員いる理由は様々だ。
サン・ルイ、ジョージア、ドレイクは自身の能力を最大限引き出せる環境を求めて。
ネプチューン、モナークは同陣営への反抗心から。
シアトルとガスコーニュ、シャンパーニュは興味本位から。
チェシャーとアンカレッジは私への純粋な好意から。
一応はアズールレーンからの派遣戦力が名目なため、
情報収集をしていた者もいたがそれは仕方ないことだ。
「さ、いい加減お仕事始めるよ。ロデニウス大陸の平穏のためにも、ね」
「「了解」」
トーパ王国、世界の扉、魔王伝説、神話の戦い、そして奇妙な空間の綻び。
……なんだろう、フラグが乱立してるような気がしてならないんだけど。
[クワ・トイネ 蓮の庭園]
Sideカナタ
戦争が終わり、平和になっても我々に休む時間などない。
今日も新制度の制定や新技術の報告やらで休まる暇も無いほどに忙しい。
だが確実に、我が国は成長をしていると実感できる。
彼女達レッドアクシズがたった一週間でロウリアを降伏させ、ロウリア王が退位する運びとなった。
最初は虚偽報告ではないかと疑ったものも多かったが、
エムブラ殿がハーク・ロウリア34世と共にマイハークに訪れたことで吹き飛んだ。
またかつてのロウリア王を知っているものからすれば別人と思ってしまうほど態度が丸くなっていた。
よもやあの者から亜人排除と奴隷化の件で頭を下げられるとは夢にも思わなかった。
「今しばらくは貴族共の説得に時間がかかるであろうが、必ずやクワ・トイネやクイラに迷惑のかからない形に落ち着かせよう」
退位した後は隠居を考えてるなどといっていたが、あれは貴族どもを裏で手綱を引く気だな。
万一にもレッドアクシズとの関係が悪化しないようするためとはいえ、難儀なものだ。
難儀といえばノウ将軍もそうだな、彼はレッドアクシズに対して懐疑的であった。
そのレッドアクシズがギム防衛と王都攻略を成功させたことで要らん対抗心を燃やしてしまった。
それでエジェイで演習を行ない、結果として籠城もままならずに降伏するとこになった。
弓矢の届かない遥か遠方より催涙弾なる非殺傷兵器による広範囲攻撃を受けて指揮系統が崩壊、
演習だというのに逃げ出す兵がでる始末だ。
「毒魔法なぞ卑怯だ!」と自身でも苦しいと分かる言い訳をしたが、そのあとの草原で行われた火力実証試験でヴァンツァーと自走砲による一斉射を見て僅かばかりの自尊心も吹き飛んだ。
エジェイを更地にするのに半刻とかからないと解り、ノウ将軍もレッドアクシズを認める形で収まった。
またこの演習にはクイラとロウリアの軍人達、大物としてはパンドール将軍なども観戦に来ていた。
後にパンドール将軍は「先の戦争、レッドアクシズの最大限の配慮に心から感謝する」とか語ったそうだ。
「ロウリアだけではない、我々も変わっていかねばならん時は近い、か」
手にした資料には〘ロデニウス三国〙と書かれた大陸統一思想の勘案があった。
[フェン王国 首都アマノキ]
Side土佐
重桜とよく似た景色を持つ和の国フェン。
その王城の一室で国主である"剣王"シハン殿と対面していた。
「よくぞ参られた、貴殿らレッドアクシズの者とこうして話せる日が来るのを心待ちにしておったぞ」
「歓迎ありがとうございます、剣王様。
レッドアクシズ代表、天城と申します」
「同じく、補佐の土佐と申します」
国交交渉の代表に任命された天城の護衛として同伴したが、やはりこういう場は肌に合わん。
そんなことを考えながら天城に視線で促されて布で包まれた長物を差し出す。
「こちらは感謝の品となります、重桜刀というものです」
「ほう、貴国にも刀があるのですな。……!」
刀を抜いて刀身を見たシハン殿の顔が驚愕に染まる。
今回持参した物は指揮官の私物であり、そこらの数打ちではなく"主上"への献上品にも劣らぬ逸品物だ。
陽炎のような刃文と刀身に彫り込まれた乱れ桜の紋様、正直私が欲しいくらいだ。
「なんとも、言葉で表すことを躊躇うほどの美しさよ」
満足気に刀をしまい、側近に手渡すと本題へと移り始める。
「貴国は我が国との国交を望んでいるのだな?」
「はい、その通りでございます」
「ふむ、では提案なのだが我々に貴国の"武"を見せてもらいたい」
「と、申しますと?」
「実は2ヶ月後に我が国で軍祭というものを開くのだが、そのときに貴殿らの鉄船の力を直に見てみたい」
「………解りました、一度報告に戻り次第正式な返事をさせてもらいます」
「うむ、楽しみにしておる」
私と天城が離席をしようと襖を通ろうとしたところで天城が足を止める。
「シハン殿」
「いかがなされた、天城殿?」
「
「……、
………やはり狸爺だったか。
一国の長としては当然ではあるが、やはり好かんな。
Sideシハン
レッドアクシズの使者が去っていくのを王城から確認しながら溜息をつく。
見麗しい年若い獣人の女性だと侮っておったやもしれん。
まさかこちら思惑はお見通しとは……。
「だが我が国も生き残るため、最善を尽くすしかないのだ」
そのためにも此度の軍祭でレッドアクシズの力を見極める。
儂はパーパルディアからの書簡に拒否の返事を書くのであった。
[ロウリア王国 王都北の港]
Sideリットリオ
「うーむ、ロウリア経由でもまともな返事が帰ってこないか……」
「お力になれず申し訳ない」
「いや、シャークン殿が悪いわけではあるまい」
「そう言っていただけると助かります、ではこれで失礼します」
シャークン海将が退室したのを確認して溜息をつく。
よもやなしの礫とはこれではレッドアクシズ
サディア帝国の外交力を評価してもらっての大任だというのに困ったものだ。
「こうなれば直接乗り込んで挨拶に向かうしかないな」
チラッと海図に目を通す。
その視線の先はフィルアデス大陸、第三文明圏列強パーパルディア皇国へと注がれていた。
[トーパ王国 世界の扉]
Side????
ふん、家畜の分際で我に逆らうとは身の程知らずめ。
もうすぐ復活なされる魔帝さまのためにも、少しは奇麗にしておかねばならんな。
忌々しい太陽神の使者の末裔どもを駆逐し、再び世界に我が名を轟かせる!
「待っておれトーパの民ども、この魔王ノスグーラが再び恐怖を刻んでやろう!」
全ては魔帝様の意のままに!全てを踏みにじってくれよう!
[トーパ王国 王都ベルンゲン]
Sideカグヤ
「………ではこれより城塞都市トルメスへ向かわせて貰います、ラドス王」
「うむ、有意義な調査になることを願っておるよ」
笑顔で見送ってくれたラドス王に頭を下げて退室する。
まさか国王に直接会うとは思ってなかったので少しばかり緊張した。
ニーベル城を出るとシアトルが軍用ジープの上に立って手を降っている。
「し〜き〜か〜ん!はやくー!」
「はーい!すぐ行くよ!」
ジープの周りには人集りができて、さらにシアトルの声ですごい注目されてるんだけど、まぁいいか。
いざトルメスへ!
次回、ノスグーラ死す