海戦も大詰め!
ロデニウス大陸へと侵攻を開始した大誅伐艦隊は今や大混乱に陥っていた。
未開の蛮族共相手の楽な戦いだと高を括っていたものが大半であり、こんな一方的な敗北に陥るとは夢にも思っていなかった。
ごく一部の将は警戒し覚悟を決めていたが焼け石に水、混乱を収めるにはあまりに非力であった。
そんな状況で中央の艦隊が食い破られたことはトドメであり、小艦隊群は航空戦力に追い立てられながら南西側と北東側へ別れて潰走。
しかし命からがら逃げてきた彼らに待っていたのは理不尽なまでの絶望であった。
[ロウリア海域 海戦南西側]
【サディア帝国 第二打撃艦隊】
・戦艦ローマ(艦隊旗艦)
・戦艦コンテ・ディ・カブール
・重巡洋艦トレント
・重巡洋艦トリエステ
・重巡洋艦ボルツァーノ
・駆逐艦アルフレード・オリアーニ
・駆逐艦ヴィンチェンツォ・ジョベルティ
・駆逐艦ニコロソ・ダ・レッコ
・駆逐艦エマヌエーレ・ペッサーニョ
※陣形は単縦陣
Sideローマ
「追い立てられたウサギが来たな、砲撃準備」
『『『『了解』』』』
自身の381mm三連装砲3基9門・152mm三連装2基6門、コンテ・ディ・カブール320mm三連装砲2基・同連装砲2基、トレント以下他の重巡洋艦も自身の砲である203mm連装砲4基全24門を哀れなウサギの群れへと向ける。
「この無粋な戦から解放してあげましょう。全門一斉射!」
無数の砲弾が敵艦隊の
特に381mm砲弾と320mm砲弾は戦列艦を遥かに超える水柱であり、大量の水を被った戦列艦のマストがへし折れる。
この砲撃を見た殆どの艦が逃亡ルートを北西、シオス王国方面へと変更し、一部戦意を喪失した、或いは自走が不可能になったのかマストを畳んで停止する艦もいる。
『停止した艦がいますが、どうします?』
「………味方に見捨てられたか、致し方ない拿捕するぞ」
『了解しました』
しかしそこそこの数になるな、場合によっては南に待機してるインペロあたりに来てもらわんと回収しきれんな。
「しかしこっちに逃げてきたのは半数未満か、マルコ・ポーロの奴めやり過ぎてないだろうな?」
[ロウリア海域 海戦北東側]
【サディア帝国 第三打撃艦隊】
・戦艦マルコ・ポーロ(艦隊旗艦)
・戦艦ジュリオ・チェザーレ
・重巡洋艦ザラ
・重巡洋艦ポーラ
・軽巡洋艦ドゥーカ・デッリ・アブルッツィ
・軽巡洋艦ジュゼッペ・ガリバルディ
・駆逐艦ポンペオ・マーニョ
・駆逐艦マエストラーレ
・駆逐艦リベッチオ
Sideマルコ・ポーロ
ドン!ドン!ドン!ドオン!!!
「ふふふ、ふふふふ♪撃って撃って撃ちまくりますわよ!」
自慢の406mm3基9門と副砲152mm2基6門を左舷へと向けながらゴミクズどもを蹴散らしていく。
あ〜!やはり火力!火力こそ至高ですわ!
『マルコ・ポーロ!やり過ぎです!』
「ふん!やり過ぎなものですか!これは“因果応報”というものですわ!」
ジュリオからの苦言に鼻で笑って返す。
パーパルディアについてはそれなりに下調べしたが、もう溜息がでるほど“幼稚”であった。
自国の維持のために他国を攻め落とし、増長して周りから搾取のみをする。
強国としての矜持もなく、くだらないプライドに執着する俗物!
かつての大エウロア帝国の悪習のみが色濃くある大国なぞ存在する価値もない!
故にこの状況は因果応報、自業自得というもの!その命をもって慢心と愚行を償いなさい!
「さぁ、死にたくなければ無様に逃げるか降伏をなさい。
無論、そんな時間はあげませんけどねぇ!」
容赦なく砲撃を叩き込む、さあ無様を晒して死んで行きなさいな!
恨むのであれば強者と驕った自身の脆弱さを恨め!
[ロウリア海域外洋孤島 竜母艦隊旗艦【ヴェロニア】]
Side海将バルス
…………悪夢か、これは?
『先行した戦列艦隊より矢継ぎのように悲鳴が響いてます!』
『竜騎士編隊からの通信途絶!全滅の可能性大!』
『あ、ああ……!がぁあ!?』
『チクショウ!またか!?取り押さえろ!』
『通信内容のせいで精神に異常をきたす者もでてます!ど、どうすれば!?』
「………艦隊指揮艦以外の通信を切れ、意味をなさぬ通信は遮断せよ」
『それは……、いえ解りました』
意気消沈した通信整理担当に申し訳ないと思いつつも魔信を切る。
周りの副官や補佐官が怯えたような顔でこちらの様子を伺っている。馬鹿者、お前らがその体たらくでは下の者に示しがつかんぞ!
「狼狽えるな!それても誇りあるパーパルディアの軍人か!?
前衛艦隊の撤退を援護する!竜騎士隊の出撃を急がせよ!」
「出せる騎を上げ始めてはいますが、どれほどの意味があるかは……」
「少しでも敵の砲撃を撹乱させればいい!無理に接近する必要はないと周知しろ!」
「「「は、はっ!」」」
ようやく覇気を取り戻した副官達が慌ただしく敬礼して去っていく。
ムーが技術支援を請う相手、負け戦だとは思っていたが、ここまで一方的とは……!
既に自身の首だけでは済まぬほどの損害が出てしまっている。
何としてもこれ以上の損害を抑えねば我が国の海軍そのものが崩壊しかねん!
しかし立て直そうにも悲鳴混じりの通信は情報内容が錯綜しており正確性に欠けているが、
信頼出来そうな報告だけでも超大型鉄船の数が4隻以上、大型鉄船が5隻以上観測されている。
速度も速いらしく振り切れないという報告とともに通信が切れてしまっている。
まさか巨艦のくせに足まで速いとは、まさに化け物だ。
「竜騎士隊でなんとか撹乱せねば撤退もままならん……!まだ間に合うと思いたいが……ん?」
ふと、空を見上げると雲と青空しかない風景にシミのような“黒”が見えたような気がした。
普段であれば気にしないような些細なことだったが、“黒”が見えた方角を注視していると言い様のない悪寒が奔った。
だんだんと“黒”が大きくなっているような気がして目を見開く、これは……!?
「全艦に通達!敵襲だ!空からくるぞ!」
[ロウリア海域外洋上空]
【レッドアクシズ対パ皇派遣 鉄血空中機動艦隊】
・空母型機竜形態ペーター・シュトラッサー(旗艦)
・空母型機竜形態グラーフ・ツェッペリン
・機動特化型機竜形態アウグスト・フォン・パーセヴァル
・制空戦型幻獣形態(モデル:グリフォン)エルベ
・制空戦型幻獣形態(モデル:グリフォン)ヴェーザー
【旗艦同乗者】
・レッドアクシズ指揮官 カグヤ・エムブラ
・秘書官兼補佐官 綾波
Sideペーター・シュトラッサー
眼下に見え始めた孤島の周辺に展開する大小様々な帆船艦隊、そしてその上で上空待機してると思しき飛竜の群れ。
恐らく大規模編隊を組んでの出撃準備中だったのだろう。少々タイミングが遅かった、或いは早かったか。
「エムブラ指揮官、どうする?」
「ペーターの意見は?」
「あの程度の戦力なぞ鎧袖一触、取るに足らん」
「ならペーターの判断に任せる、責任は私が持つから」
「Jawohl」
全艦に通達、行動を開始せよ。我らの指揮官に勝利を。
[ロウリア海域外洋上空]
Sideとある新鋭竜騎士
『上空待機している全騎に緊急通達!二時方向より敵襲!高度は不明!』
艦隊からの緊急通達の曖昧さに思わず苛つく。
「高度不明てなんだよ!?あと数は!?正確な情報よこせ!」
『言葉を荒げるな、情けない』
「親父……」
『我らはパーパルディア皇国が誇る竜騎士だぞ!この程度のことで狼狽えるな!』
「……ああ、わかったよ」
………言葉では強気な態度だが付き合いの長い俺にはわかる、親父も相当焦っている。
俺を叱りつけることで浮足立つ部下を落ち着かせることが目的だろう。
少しばかり聞きかじった被害報告だけでも状況が切迫してるのはなんとなく解る。
文明圏外国にはありえない海上戦力、さらには敵の飛行機械とやらは相当な強さらしい。
ムーが保有する飛行機械“マリン”に対抗して造られたオーバーロード種、その性能は既存のワイバーンを凌駕している。
勝てない筈がない、なのに現実には被害報告しか聞かない状態、敵は一体どんな奴らなんだ……。
『正面に飛行物体確認!……は?待て待て!?何だ“アレ”!?』
先鋒の部隊からの悲鳴混じりの報告に困惑していると聞き慣れない音が聞こえ始める。
キーンというかゴーというか言葉にしづらい音、どこから……?
ゴッッッッ!!!!
………は?視界の横を“ナニカ”が……?
ドンッッ!!!!
凄まじい衝撃波ともにワイバーンごと吹き飛ばされる。
耳が痛い、これ鼓膜が逝ったな……。
そんなことを考えながら海へと真っ逆さまに落下していった。
[ロウリア海域外洋 竜母艦隊付近]
Sideアウグスト・フォン・パーセヴァル
上空から急降下、進路上の飛竜編隊を衝撃波で吹き飛ばしながら竜母艦隊へと接敵する。
「さあ、ねじ伏せるわ」
海面ギリギリのところで翼を展開して巡航形態から機動形態へと移行、翼の付け根に搭載した105mm連装副砲2基と翼上対空砲、対空機銃をもって帆船の群れを薙ぎ払っていく。
戦艦KAN-SENの艦艇であっても無傷ではやり過ごせないだろうという火力が申し訳程度の金属板で補強された程度の木造船に防ぐことができるはずはなく、射線上の船が木っ端微塵になって吹き飛んでいく。
さらに射線上から外れていた帆船もすれ違い時に発生した衝撃波でマストがへし折れる。
または船体そのモノが破損して横転、転覆していった。
ただ一度の通過で竜母艦隊は大パニックになる、しかし"魔女"はその光景を見て妖しく微笑む。
「ふふ、抗いなさい。その上で無惨に敗北するがいい」
その敗北から這い上がってこその“人類”でしょ?
"魔女"は容赦しない、手を抜く事こそ相手への侮辱だと思うがゆえに……。
[ロウリア海域外洋上空]
Sideヴェーザー
アウグストのヤツ、一人で突撃していったわね……。
まぁ性能を考えれば正しいのだろうけど、思いっきりがいいことね。
「エルベ、前方の竜騎士編隊左翼を頼む」
『了解ですわ!ヴェーザーもお気を付けて!』
「無論、格下相手と慢心するほど愚かではないわ」
空中戦は寧ろ相手のが“一日の長”、今回の戦闘では敵の動きを参考にすることもあるだろう。
グリフォン型という性質上、通常航空機には出来ない機動も出来るようになる。
「例えばこんな風に、ね!」
直進していたところで翼を制御して空中で"ドリフト"機動を行う。航空機であれば不可能な急制動、人間であれば内蔵が破裂する程のGが発生する。
しかしKAN-SENであれば少し辛い程度だ。ならば存分に使って問題ない、わね!
相手もこちらの機動に驚いているのか動きが単調になっている。
「加減はしないわ、恨みは受け止めてあげる」
翼から羽根が落ちるようにミニチュア戦闘機が8機、ハラリと出てくる。
そしてミニチュア戦闘機が一瞬光、実機サイズの【BF-109T艦上戦闘機】へと変化する。
突然出現した航空機に敵編隊が大きく崩れる、このまま各個撃破してあげましょう!
[ロウリア海域外洋上空]
Sideグラーフ・ツェッペリン
前方で戦闘を開始したヴェーザーとエルベを確認しながら自身も
実戦検証を開始する。
「では始めようーーー我らの
翼と胴体の間にある飛行甲板から実機サイズの【Me-155A艦上戦闘機】10機、【BF-109G】4機を発艦させていく。
自身よりも上空にいるペーターからもほぼ同数が発艦して眼下のワイバーンへと攻撃を開始する。
ペーターはワイバーンが上昇できない安全高度を維持して戦域情報の収集と指揮に専念するようだ。
ならば私はこのまま直接戦闘に参加するとしよう。
「我が新たな躯体、どれ程のモノか試させてもらおう」
胴体両脇に抱えた特大サイズのマイクロ波プラズマジェットエンジン2基が唸りを上げて出力を上昇させる。
自身が発艦させた艦載機を引き連れて敵ワイバーン編隊へと突撃を開始した。
仕事が忙しくなって暫く更新が困難になります。
一様3月中には一話更新できるようにする予定です。
申し訳ありませんがお待ち下さると幸いです。