異世界にレッドアクシズの名を刻む!   作:有澤派遣社員

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ヴィシア星座、参上!


最後の仕上げ

 

[シオス王国 王城外務省執務室]

 

Sideシオス外務大臣

 

執務室のテーブルの越しに立つ申し訳なさげな職員を見ながらため息をつく。

 

「……で?今度は何かね?」

「……酔っ払ったパーパルディアの将校が高級ホテルの調度品を巻き上げたらしいです」

「ほんとアイツら碌な事やらんな!?」

 

苦情管理する職員からのくる連日の報告にそろそろ倒れそうだ……。

あいつら!来てたった5日足らずで既に100件超えだぞ!?

しかも許容出来ない金銭被害が発生している報告だけで"コレ"なので実際の被害はさらに多いだろう……!

 

「とりあえず国民にはもうしばらく耐えてもらうしかないか。

金銭的な被害はコチラで負担するから……ああ、胃が痛い……!」

「ご、ご愁傷さまです……」

 

全員が全員好き勝手してるわけではないようだが、やらかす奴らの規模が……!

はぁ〜、アイツらさっさと帰ってくれんかねぇ……。

そろそろサディア帝国の艦隊がパ皇の艦隊を薙ぎ払ってくれている頃だろう。

 

「朗報、まだかなぁ………」

 

そろそろ儂の胃が限界なんだがのぉ、この3日間で1〜2年は老け込んだ気がする……。

連中が帰った後にロデニウス大陸で暫くお暇貰うとするか……。

ロウリア新共和国にあるらしいサディア風高級ホテルが楽しいだなぁ、と現実逃避しながら書類の束を処理していくのであった。

 

 

 

■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇

 

 

 

[シオス王国 パ皇陸軍駐屯地付近 酒場]

 

Sideとあるパーパルディア陸軍部隊長

 

「ぎゃははは!酒だ!酒もってこい!」

「なんだこのしけた料理は!?もっとマシなもの出せ!」

「女連れてこい!女!」

 

下品な笑い声と下卑た欲望が籠もった声が聞こえてきて同僚らとともに不機嫌な顔になる。

 

「アイツら、またか……!」

「いい加減にしてほしいぞ……」

「恥ずかしくなる……」

 

ここは属国ではない他国、シオス王国に土地を間借りしている立場だというのに、なんであんなに好き勝手にできるのか?

しかし程度の違いはあれどシオス王国を見下してる連中が大半を占めているのは確かだ。

寧ろ我々のような考えの連中のが珍しいというのが嘆かわしい……。

こうなると真面目にやってるコッチがなんかバカバカしくなってくる。

 

「しかしレッドアクシズか……。実際どの程度なのだ?お前らは調べられたか?」

「駄目だ、碌な情報が入らん」

「こっちもだ、てか陸軍の上層部も把握してないんじゃないか……?」

 

………おい、まさかだが上層部は海軍から少しでも情報を共有されてはいないのか?

いや、それとも徹底的に隠さんといかん程の情報なのか?

 

「………絶対に何か裏があるぞ」

「しかしどうしようもあるまい、我々は命令通りに敵を討つだけだ」

 

今回の作戦はルディアス皇帝からの勅命、どう足掻いても進むしかない。

正直貧乏くじだけは引きたくねぇなぁ〜、と思っていると外が騒がしいことに気付く。

 

「なんだ?騒々しい」

「海岸の方に向かってる連中がいるな」

 

何事かと考えていると、バンッ!と音ともに開き戸が開かれ部下の一人が慌てた様子で入ってきた。

 

「隊長!た、大変です!」

「どうした、落ち着……」

「正体不明の鋼鉄船が数隻が海岸に接近中です!」

「なぁ!?」ガタンッ!!

 

思わず腰が浮き上がる、馬鹿な!海軍と交戦中ではなかったのか!?

いや、まさかシオス王国へと派遣できるだけの戦力を無理矢理捻出してのか……!?

不味い!コッチに残ってるのは80門級戦列艦数隻が精々、あとは輸送船ばかりだぞ!?

 

「海岸に向かう!ついて来い!」

「「「はっ!」」」

 

………行ったところで何が出来るのか、とも思うがな。

海岸まで向かう結構な人集りが出来ており、我が軍だけでなくシオス王国民の姿も多く見受けられる。

遠くの方角に見慣れぬ形の船が見えている、部下から望遠鏡を受け取り覗き込む。

 

「………比較がないから解りづらいが、相当デカいな」

「はい、120門級よりも大きいかと」

 

帆は見当たらず、形状も戦列艦とは似ても似つかない。

砲塔はデタラメにデカいが砲門数は少ないな、一撃の火力を重視しているのか?

それと砲塔が前にしか向いてないようだな、あれでは戦いづらいのではないか?

 

「あの形状、まさか旋回砲塔なのか……!?」

「旋回砲塔?なんだそれは?」

「砲塔自体が旋回して狙いをつけれる第一と第二列強国の最新技術です。それとあの船の形状、ムーやミリシアルの軍艦が似たような形状だったと記憶しています」

「なん、だと……!?」

 

博識な若い部下が言葉を震えさせながら言った言葉に絶句する。

つまりあれは、ムーやミリシアルの軍艦と同等の可能性があるということか……!?

海軍の奴ら、そんな連中と戦って勝てる見込みがあるというのか!?

いや、まさか、勝つ可能性が低いから、陸軍の輸送船団を一時切り離して置いていったのか……!?

そんなことを思考しながら望遠鏡越しに凝視していると、鉄船の砲塔がゆっくりと動き始める、そして………。

 

『こちらレッドアクシズ義勇軍艦隊代表、ジャン・バールだ』

 

遠方から女性の音声が海岸に響き渡った。

 

 

 

■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇

 

 

 

【派遣義勇軍艦隊(匿名希望改めレッドアクシズ)】

 

・戦艦【ジャン・バール】(旗艦)

 

・戦艦【ガスコーニュ】

 

・戦艦【シャンパーニュ】

 

・超巡洋艦【ブレスト】

 

・重巡洋艦【サン・ルイ】

 

 

[シオス王国海域 派遣義勇軍艦隊旗艦【ジャン・バール】]

 

Sideジャン・バール

 

「単刀直入に言おう。パーパルディア海軍は敗退した。

我々は混乱で正確な情報が来ていない可能性を考慮し、シオス王国に滞在するパーパルディア軍への即時撤退を呼びかけるために参上した。

シオス王国にこちらへの連絡手段が用意されている。正式な返答はそちらから願う。

こちらも無用な戦闘を望んではいない。賢明な判断を期待する。

無論、戦いたいのであればそれに応えよう。但し……」

 

手を翳すと380mm四連装砲1基が旋回を始め、海岸へと向けられる。

 

「相応の覚悟をしてもらおう」

 

ドドドッーン!!!!

 

手を振り下ろすと同時に4発の砲弾が発射され海岸手前に着弾。

見上げんばかりの水柱が立ち、瀑布となってあたりに散らばる。

さて、これを見てまだ戦おうという愚か者ばかりでないことを祈るとしよう。

もしくは………。

 

「いや、流石に他国を盾にするようなロクデナシ共ではない………よな?」

〘一概に否定出来ないと推測します〙

〘可能性は無いとは言い切れません〙

 

ガスコーニュとシャンパーニュから洒落にならない思考通信を受けて口元が引くつく。

いやいや、仮にも軍人だろ?そんな海賊かならず者みたいな思考にはなら、ない………よな?

いかん、不安になってきたぞ。

 

〘仮にシオス王国を盾にするような行動に出てきたらどうしましょうか?〙

〘シオス王国から救援要請を受けたとして対応するにしても方法が限られますね〙

 

ブレスト、サン・ルイの意見ももっともだ。

砲撃戦になっても負けることは万一にも無いが、結果的にシオス王国が焼け野原になりましたでは本末転倒だ。

こんなことなら陸戦隊でも連れてくるべきだったか?

そんなことを考えているとレーダーに低速の飛行物体と帆船らしき物体が複数映り始める。

 

「竜母艦隊の撤退してきた連中か……。各艦へ、レーダーに反応した物体にはこちらから攻撃はするな」

〘〘〘〘了解〙〙〙〙

 

低速飛行物体、ワイバーンはこちらを無視するかのように一直線にシオス王国へと向かっている。

連中が正確な情報を伝えてくれると期待するとしよう。

 

「さて、頼むから馬鹿な決断だけはするなよ……」

 

 

 

■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇

 

 

 

[シオス王国 パ皇陸軍臨時会議所]

 

Sideリージャック陸軍中将

 

海岸にレッドアクシズを名乗る巨大鉄船が現れて一時間後、大型テントに幹部や参謀、部隊長代表の緊急招集を掛けたのだが……。

 

「これより緊急会議を始めるが……、なんでこんなにも空席があるのかね?」

 

席に座っていないのが目立つ程度に空席が多い。側近の一人が溜息混じりに報告をする。

 

「………一部の将校と連絡が取れず、又は酔いが抜けず役に立たない状態です」

「………あとでその愚か者共の名前を上げておけ!」

 

全く!好き勝手やるのは少しくらい目を瞑るが仕事も疎かとなるなら話は別だ!

相応の罰を覚悟しておけよぉ!馬鹿どもがぁ!

 

「とにかくここに居るもので始める!まずは蛮族共……レッドアクシズを名乗る連中の言ったことの真偽は?」

「飛んできた竜騎士達から言質が取れました。どうやら戦列艦艦隊は壊滅的な被害が発生した模様。

また竜母艦隊も巨大な神竜と幻獣の襲撃を受けて旗艦ヴェロニアが沈没、その後殆どが降伏。

離脱できたのは自分ら含めても少数とのことです」

「なんだとぉ!?」「そんな馬鹿な!?」「あ、ありえん!が、しかし……」

「現状が物語ってるな……」「身の程知らずの蛮族ではなかったのか!」

「逃げ帰ってきた者がいる、その事実こそが全てだ」「少なくとも敗走しているのは確かだ」

 

側近からの報告に会議場がざわつき、取り乱す者はいるが頭ごなしに否定する者はいない。

………丁度よく頭の悪いヤツらがいないのですんなり進みそうだな、あれ?意外に丁度良かったのではないか?

 

「皆のもの落ち着け!とにかく我々に取れる手段は言われるがまま撤退か断固とした徹底抗戦か」

 

会議場が沈黙する。皆本心としてはあんな化け物みたいな鉄船を相手にはしたくない。

だが率先して撤退の進言、言い方を悪くすれば敵前逃亡をするとは言えない。

何せ今回の作戦はルディアス皇帝からの勅命、皇国の威信を掛けたもの。

《敵に恫喝されたので逃げ出しました》なんて確実に国賊として処刑されかねない。

私とてこんな責任なんぞ負えない、命が惜しいというより私一人では足らん。しかしこのまま徹底抗戦となってもまず勝ち目はない。

最悪シオス王国を盾にするか?いや、そもそも"盾"として機能するのか?

それに現在食料や水をシオス王国に頼ってる現状では籠城戦が不可能、そもそも作戦そのものが破綻している。

シオス王国を相手にしながら化け物鉄船まで相手にするなど現実的ではない。ただの恥の上塗りだ。

どうすればいいのだ……!?

八方塞がりの状況に皆して頭を抱えていると、慌ただしい様子の兵がテントに入ってきた。

 

「将軍!一大事です!」

「馬鹿者!会議中だぞ!一兵卒如きが入ってきていい場では……」

「そんな場合ではありません!皇都より緊急連絡、大規模な反乱が発生!クーデターです!」

 

青褪めた兵が発した内容に会議場が凍りつく。

 

「クーデターだと!?」「確かな情報なのか!?」「一体何処の馬鹿だ!?」

「詳しい内容は!?」「反乱の首謀者は!?」

ドンッ!!!「静かにせんか!で、他には?」

「い、いえ通信中も不自然に雑音が入るなどありまして……、通信が突如切れてからは再度通信を試みましたが繋がりませんでした……。

念のためデュロに通信を入れ繋いでもらおうともしたのですが向こうも同様に繋がらないとことです」

 

………レッドアクシズの欺瞞工作か?或いは本当にクーデターか?

仮に欺瞞工作だとしてどうやって行っている?魔信がデュロには繋がって皇都に繋がらないというのは流石に無理があるだろう。

まさか皇都にレッドアクシズが攻め込んできたのか?

いやまさか!?クーデター自体がレッドアクシズの工作である可能性が!?まずいぞ!?

 

「すぐに皇都に向かう!準備を急がせろ!」

「よ、よろしいのかね?まだ不確かだが……」

「どのみち撤退するかどうかの状況だ!仮に本当にクーデターが発生していたら戦争どころではない!」

「……確かに」「言い方はアレだが渡りに船か」

 

よし、これで《恫喝されてからの敵前逃亡》から《緊急事態による戦略的撤退》には出来る!

 

「シオスの外務大臣に至急、沖にいる連中との連絡を繋ぐように伝達しろ!私が直接話す!」

 

 

 

■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇

 

 

派遣義勇軍艦隊より緊急連絡、シオス王国に駐留していたパーパルディア皇国軍は順次撤退することを了承。

ただ妙に撤退を急ぐような、鬼気迫るような様子など所々に不自然なところが見受けられた。

そのためシオス王国側に調査を依頼したところ、パーパルディア皇国皇都にてクーデターが発生している可能性あり、とのこと。

至急対応をされたし。

 

 




次はパーパルディア皇国内の話になる予定です
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