できればパ皇戦が落ち着いてから出したいので、急がねば……(涙)
[皇都エストシラント 市街地上空]
Sideとある皇国陸軍竜騎士隊隊長
まさか地上を逃げる相手に追跡で手一杯とは……!
周りへの被害を気にせず導力火炎弾を撃ち込むも狭い路地に逃げ込まれたせいで、建物の壁や天井に当たってしまい効果がない。
「おい!地上の連中はどうした!?足止めに出たのではないのか!?」
「向こうが非常識に速すぎるんです!こうなれば大通りまで追い込むしかありません!」
部下の提言に舌打ちしつつもそれしかないかと半ば諦める。
この先は大通りで陸軍の部隊が待ち構えている予定だ。
他の路地に入るのにも一度大通りに出なければならず、仮に建物の中に立て籠もるならそこを包囲して叩けばよい。
一番美味しい手柄を地上の連中に取られるのは癪だがこれで連中も詰みだ、どうにもなるまい。
「……仕方ない、このまま追い込むぞ!絶対に見失うなよ!」
「「「了解!」」」
[皇都エストシラント 市街大通り封鎖線]
Sideとある皇国陸軍守備隊隊長
あ〜、面倒くさい事態になりやがったなぁ。
"上"から急ぎ部隊を招集して通りを封鎖しろと言われて来てみたがすでに先客がいるしゃねぇか。
しかもこんな市街に地竜を二頭も連れて来やがって、邪魔で仕方ねぇ……。
「おいおい、指揮系統どうなってんだ?てかどこの連中だ?」
「どうやら聖都パールネウス所属の連中みたいです」
「………なんで余所者の聖都の連中が我が物顔で出張ってきてんだよ?」
「パラディス城に入城したドミディア公に命じられてでは?」
副官からの淡々とした考察に思わず頭を掻きむしる。
"上"の連中め、点数稼ぎのために俺等を派遣しやがったな………!
面倒事押し付けやがって!そもそもクーデターなんぞ起こしてくれやがった時点でこっちは頭抱えてんだぞ!
これ以上面倒事を増やすんじゃねぇ!
「はぁ〜(クソでか溜息)………。仕方ない、連中の指揮下に入るぞ」
「よろしいので?」
「そもそも男爵の俺が爵位上の連中を指揮出来ない以上選択肢がねぇよ、なんかあっても責任取りたくねぇし」
「………それもそうですね、手柄は彼らに譲る方向で?」
「だな、あぁ〜タダ働き確定かよ……」
すでに向こうも配置を完了してるようだし下手に口出ししても責任押し付けられるだけだ。
ならもう連中の後方に陣取ってテキトーにやってさっさと撤収したほうが楽だ。
タバコに火をつけて一服していると頭上を一騎の飛竜がこちらに合図を送りながら通り過ぎる。
「おお?もうお客様のご到着か?」
「早いですね、馬にでも乗ってるでしょうか?」
「馬鹿いえ、クソ狭い路地裏で馬なんぞ走らせれるかよ」
だが城からの距離と竜騎士隊が梃子摺っていることを考えると《狭い路地裏を最低でも馬以上の速度で逃亡している》ということになる。
………いやいや可笑しいぞ?さすがに可笑しい!?
相手はホントに人間か!?亜人だとしても速すぎるぞ!?
何箇所で黒煙が上がってるのを見る限り、竜騎士隊はまったく周りに配慮せずに導力火炎弾を放ってくれていた(マジでフザケンナ)にも関わらず逃走を許したということにも疑問が出てきた。
………マジで化け物が出てくるんじゃねぇよな?
そんなことを思っていると前方の部隊が慌ただしくなってきた。
「お、見えてきたか。さてどんな奴らだ?……はぁ?」
「………自分の目がおかしくなったのでしょうか?緑髪の女性が鉄塊と人間三人背負ってるのですが?」
見えてきた目標は全部で五名、うち走ってるのは二名。いやいや、何事だ!?
そんな光景に目を疑っていたが、そんなものは序の口であった。
前方を走っている小柄な女性(少女か?)から青い光が放たれると、重い金属音と共に現れた巨大な足が石畳を踏み割った。
あまりに非現実的な光景に咥えていたタバコを落とし、副官と一緒に唖然とした表情で
ーーーーー辺りに響き渡る破砕と轟音ーーーーー
巨人が着地した衝撃音でようやく我にかえるも、巨人が凄まじい速度で大通りから港区へと爆走していく姿を見て後を追う気にはならなかった。
パールネウスの連中は大慌てで走り出しているが追いつけるはずがないだろう。
「………帰るか」
「賛成、一杯やりたい気分です」
任務なんぞ知るか、朝まで飲むぞ!ちくしょうが!
【騎士形態】
サディア帝国のKAN-SENがとる"
駆逐艦・巡洋艦クラスは10m前後、戦艦・正規空母クラスは15m前後になる細身の騎士のような姿をしている。
鉄血の【機獣形態】に比べると生体艤装依存から発生する極端な個体差や暴走の危険性が取り払われており、安定した戦力となっている。
しかしその一方で形態制御を完全にKAN-SENが行わないといけないため自律稼働はほぼ不可。
その影響で【機獣形態】に比べて長時間の稼働は難しく、単純な戦闘能力では劣る点も多い。
しかし人型故の可動域の広さ、瞬発的な動作と小回りの良さ、更には装備の拡張性など利点もある。
[市街大通り→港区]
Sideリットリオ
カラビニエーレが展開した騎士形態のため景色が先程以上の速度で変わっていき、風を切る音が凄まじい。
「ははは!どうだい!?素晴らしいだろ?」
「「「…………」」」(チーン)
どうやら色々とあり過ぎてキャパオーバーしたのか、三人とも気を失っている。
取り敢えずレミールと三人を機甲騎士の掌の上に降ろし辺りを見渡す。
先程まで追跡していた竜騎士達はこちらを警戒してか接近してくる様子はない。
大通りも人払いが完了していたようで直接的な人的被害を出さずに合流予定ポイントまで一気に行けそうだな。
そんなことを思っていると機甲騎士の首下で操作に集中しているはずのカラビニエーレから通信が入る。
『リットリオ!後方から高速飛行物体接近!かなり速い!推定時速500km!』
「なんだと?」
肩部装甲まで上がり後方を目視で確認する。
城の方角から発光する不明物体がこちらへと真っ直ぐに向かって来ているようだ。
「迎撃は任せろ、カラビニエーレはレミール達の安全と操作に集中してくれ」
『了解しました!』
接近する不明物体に向かって艤装の砲塔郡を向けるが、市街地での流れ弾、誤射を考えると主砲は被害が大きくなる。
仕方なく副砲と対空砲のみを放つが、不明物体は僅かな回避運動を行いながら直進をやめない。
というより対空砲には目もくれていない、防御力に相当の自信があるようだ。
不明物体が眼前と呼べるほどに接近してきて詳細が解るようになってきた。
全身を覆う彩飾過多な鎧、いや形状的には全身プロテクターに近いか?
背中から出ているのは炎?まさか噴射推進装置か?
『はっはっはっ!魔力もなく魔導砲を放つとは、珍妙な存在もいたものだな!』
不明物体から耳につんざく不快感を感じる拡声音が聞こえる。どうやら中には人が入ってるようだな。
しかしそうすると相当に大柄だな。もしや亜人か?
そもそもパーパルディアの技術力であんなモノが作れるとは思えん。そうなると北方連合から報告が上がっていた"未知の技術を保有する敵性存在"とやらの関係か?
そうなるとあまり悠長な対応は出来んな。しかし艤装とはいえ主砲の砲撃で万一にも市民への被害を出すわけにはいかない。となれば……。
「出し惜しみは無しだ」
自身の艤装をキューブへと変換し、右手へと収束させていった。
[市街大通り上空]
Sideレオノス
魔力反応もなくつまらん相手と様子見を決めていたが、まさかこれほど予想の範囲外の切り札を持っていたとは!
魔帝様の魔導兵器である二足歩行兵器に比べれば些か小柄だがその分脚が速いな。
魔導アーマーの噴射装置へと魔力を回して一気に加速する。
魔法生命体として完成形であった【ノスグーラ】は性能こそ問題なかったが製造面で問題を抱えていた。
その為製造面での問題を解決しようとした量産型モデルが開発されるも予想以上に性能面の低下が目立った。
そこで量産型モデルの性能を偏らせることで部分的にオリジナルに近づけようとして製造されたのが自分だ。
魔力の体内循環効率を高めたことで身体能力と対魔法防御はオリジナル並になり、再生能力においてはオリジナルを超える性能を得た。
しかしその代わりに体外への魔力放射が困難になったため大した魔法を使えなくなった。
しかしこの
かざした両掌へと魔力が集まり、光弾を次々に金属ゴーレムに向けて発射する。
この魔導アーマーがあれば魔帝様が誇る対空魔光砲に匹敵する火力をこのように使えるようになるのだ!
『ははは!このままなぶり殺しにしてやる!』
"お荷物"を守るために金属ゴーレムは両手が塞がっており、先程まで放たれていた鬱陶しい魔力無しの攻撃も無くなっている。
このまま一気に畳み掛けてくれる!
しかし背中部分へと着弾するが、装甲が破壊される様子がない。
距離が空いていて威力が減衰したか?ならばもう少し詰めるか。
金属ゴーレムの挙動に注意しながら接近、場合によってはこのまま取り付いて肉弾戦を仕掛けるのも……ん?
『何だ?青白い光?』
金属ゴーレムの右肩上、先程魔無しの砲撃を行っていた奴の周囲に青白い光が集まりナニカを形成し始めていた。
瞬間、自身の防衛本能が警鐘を鳴らす。あれは致命的なモノだ、と!
推進に回していた魔力を全て腕部へ!魔力障壁最大出力!
多重の障壁を展開したと同時に巨大な"青緑の結晶"が視界を埋めつくす。
障壁が接触した瞬間に弾けていくのを見て目を見張ると同時に自身の肉体強化を最大にして迫ってくる"青緑の結晶"の先端部を両手で挟み込む。
『グゥオオオオ!?!?』
凄まじい速度で周りの景色が前へと流れていく。
両手で挟み込んだ"青緑の結晶"は止めきれず僅かな速度とはいえ鋭利な先端が少しづつ近付いてくる。
止めきれないことに焦りを感じるも唐突に"青緑の結晶"の勢いがとまり、自身だけが後方へと吹き飛んでいった。
ドゴォォォン!!!!
大通りの石畳を薙ぎ払いながら落着、ろくに受け身も取れずに地面を転がっていく。
ようやく勢いが止まり立ち上がった頃には金属ゴーレムは遙か先、追跡を再開しようにも魔力を使い過ぎてすぐには動けそうもない。
『………クソっがぁぁぁ!!!!!』
魔力もない劣等種に土を付けられ事実よりも、一瞬でも"追えない理由が出来てよかった"などと思考した自身に苛立つ。
『この屈辱!忘れはせんぞぉ!』
怒りの籠もった自身の叫び声だけが辺りに響き渡るのであった。
[港区付近]
Sideリットリオ
「………仕留め損なったか」
『え?あれで仕留めきれてないんですか!?』
「おそらくだがな、僅かにあの耳障りな叫び声が聞こえた」
聞こえた」
『無駄に頑丈なヤツですねぇ……』
カラビニエーレが感心とも呆れとも取れる感想を呟くのを聞きながら顕現した“右腕部”と“大剣”をキューブに戻して格納していく。
【部分顕現】自身含め僅かなKAN-SENができる小技のようなものだ。
先程の場合だと自身の騎士形態の右腕部と青緑の結晶でできた刃を持つ大剣だけを顕現させながら前方へと突き出したのだ。
周りの影響を考慮して
人型セイレーンと大差ない大きさの目標とはいえ腕が鈍ったか?いや、あれをモロに受けて生き残った相手を称賛すべきか?
「やはり異世界とは面白いものだな」
次会うときがあれば少し話でも聞いてみたいものだな、そんな事を思いながら僅かに笑みを浮かべるのであった。
因みに計画艦は航空戦艦キアサージから始めました。
皆さんは誰から始めました?