情報量が、情報量が多い!?
[港区船着き場]
Sideとある新人守衛
平時に比べて数の少ない停泊する帆船、いつもなら賑わっている貿易港も今日は人が疎らだ。
特に今日は風も強く肌寒い、同期と共につまらない警邏をするも正直やる気はゼロだ。
「だりぃ〜、今日くらいどっかでサボろうぜぇ〜」
「……だな、どうせバレやしないか」
いつもは目敏い上官も皇城の騒ぎへの緊急対応会議の真っ最中だ、サボりを咎めたりする者はいない。
どこかいいサボり場所はないかと辺りを見回していると、船着き場のほうにポツンと一人立っているオッサンを見つける。
確か古株の清掃員だったか?停泊している船をじっと見つめているが……?
「よぉ!オッサンも一人寂しくサボりか!?」
「む?君らか、別にサボってる訳ではないよ。この船が少々気になってな」
「はぁ〜?ただの交易船だろ?」
「なんか変なところがあるか?」
相方と一緒に停泊する船を見る、特に変なところはないような気がする。
あえていうなら船籍を表す国章がないから何処ぞお貴族の個人所有船だろうが………ん?
「……待て、なんで国章の無い船がなんで貿易港にある?個人所有の船なら停泊する場所が違うぞ?」
「あ!そうじゃねぇか!誰だ許可した奴!?」
トラブル回避のため他国船と自国船は停泊箇所が違うし、荷物の降ろす予定がない船がこんなところに停泊されたのでは他の荷降ろしする船の邪魔だ。
それに貴族の船なら無駄に豪華になってるはずだがそのような装飾は見受けられない。
怪しい、とりあえず何かしら後ろめたいところがある船なのは確定だろう。
「やっぱりあやしいよね?でも清掃員の俺には何も出来ないから……」
「なるほど、それで様子見してたのか」
「それにもう一つ。丁度船が泊まるところから見てたんだが誰も降りてきてない」
「はぁ?誰も?」
「そう、誰もだよ」
なおさら怪しさ満点となった船を改めて眺める。
船自体はパーパルディアでもよく見る形状の船だが、何か引っかかる。
少し離れている他の船を見る、そしてもう一度怪しい船を見る。
「………なぁ?なんか全然揺れてなくねぇ?」
相方の一言にオレとオッサンがハッ!とする。
そうだ!この船、殆どというか
今日は潮風が強くそこそこ海が荒れている。他の停泊している船は揺れているのにこの船はその様子が無い!?
"一仕事"確定だチクショウ!どこのどいつか知らんが恨んでやる!
「くそ、めんどくせぇが仕事するぞ……」
「へ〜い、かったりぃな〜」
「君たち、もう少し真面目に仕事をしなさい……」
呆れ顔のオッサンの説教にイラッとしつつも不審船に近づこうとしたところで、市街地の方から変な音が響き始める。
「ん?なんだ?妙に規則正しい音だな?」
「なんか鎧着て走ってるような感じ……?」
「……なぁ、なんか揺れてないかね?」
オッサンの言う通り、変な音に合わせたかのように地面が断続的に揺れ始める。
………イヤイヤ、まさか、な?
「まるで巨人が走ってるみてぇな感じだな」
「そんな訳……」
ないだろ。と言いかけたところで音が響かなくなり、突然日が陰る。
思わず上を見上げようとしたと同時、凄まじい衝撃音と揺れが辺りを襲う!
ズッドォン!!!!
「うぉ!?」「何だ何だ!?」「……!?」
一昔前の貴族が着ていた見た目重視の全身鎧のようなのような美麗さ、それでいて女性的な印象を受ける細い手足と腰。
思わず魅入ってしまうほどであったが、青白い光へとなって徐々に溶けていく。
まるで幻のように消えた姿につい先程まで存在した現実かどうかを疑ってしまう。
故に自分と相方は見逃してしまったが、オッサンが何かに気付いたように指を差す。
「おい!誰か船の方へ走ってるぞ!」
指差した方へと目を向けると人らしきモノを担いだよ2名が不審船へと凄まじい速度で走っている姿でかった。
Side古株の清掃員改め シルガイア
先程までの巨人の存在を忘れさせるほどに自分の頭に血が上っていた。
クーデターなどという愚行で皇都が慌ただしいこの非常時に白昼堂々と人攫いとは……!
しかも攫われている人物の服装的にそれなりの身分の人物だろう、なんということか!
義憤と僅かにある愛国心から体が動き出し、綺麗な緑の髪を靡かせる人物へと駆け出す。
「あ!?」「オッサン!?」
新兵等が呼び止めているような気がしたがそんな余裕はない!
まだ船のタラップは降りていない、船に乗り込まれる前に飛び掛れば足止め位は出来る!
向こうも抱えてる人間が邪魔で見えていなかったようだ、向こうが気付いた頃には飛び掛かれるところまで接近できた。
「……!?」
《b》「うぉー!!確保ー!」《/b》
ガシッ!と相手の腰へ抱きつき押し倒そうとするも何故かビクともしない。
馬鹿な!殆ど勢いも殺せていない!?
いやいや可笑しいだろ!?身長的にそこまで差はないし、腰の細さ的に体格はむしろ自分のがいいはず!
それどころか、そのまま引きづられてる!?
「まったく!レディに無遠慮に抱きつくとは!死にたくなかったら絶対に手を離すなよ!」
聴き入るような女性の美しい声、え?この人攫い女なのか!?
人間を複数人抱える女性も押し倒せないことに少なからずショックを受けてると浮遊感を感じる。
………恐る恐る前を見ると、船の
激突する!?と思っていると自分たちは船へぶつかることなく
次々に起こる事態に目を白黒させていると手の力が抜けてしまった。
「あ…?」「あっ」
驚く人攫いの女の声を最後に何か硬いものへと顔面から落ちて気を失った。
Sideリットリオ
偽装のための展開さていた帆船の立体映像へと飛び込み、その下で待機していた“レオナルド・ダ・ヴィンチ”の船体へと着地する。
抱きかかえていたレミールとエルトを一度降ろし、先程顔面から着地した人物へと駆け寄る。
額と鼻から出血はしてるがそこまでヒドイ傷ではないとこに安心するも、扱いをどうするか悩む。
………仕方ない、彼も連れて行くとしよう。
増えた客人を担ぎつつ潜水艦のハッチへと足早に向かい中へと入っていく。
「レオナルド、メディカルポッドの準備は?」
『準備万端だよ!』
「トリチェリ、沖の様子は?」
『だ、大丈夫、退路は確保できてる……』
「よし、ならすぐに出航!」
『りょーかい!偽装解除、しゅっぱ〜つ!』
港区に停泊していた不審船が空気に溶けるように崩れていくと水面から半身を露出した潜水艦“レオナルド・ダ・ヴィンチ”が姿を現し前進を始める。
突然消えた帆船と現れた珍妙な物体に港にいた者達が慌ただしくなる。
しかしクーデター騒ぎで指揮系統が混乱していたがために現場から警備の上層部にこのことが通達された頃には影も形もなくなっていた。
またこのような良くわからないことで責任を取りたくないと海軍側が口裏を合わせて揉み消してしまったがために、陸軍側が捜索していた皇族誘拐犯の足どりが途絶。
そのため捜索を指揮していた数名の首が"物理的"に切られたことになった。
[潜水艦“レオナルド・ダ・ヴィンチ”艦内]
Sideカラビニエーレ
特に追撃もトラブルもなくパーパルディアの支配海域を離脱、まぁ向こうも潜水する兵器の概念もないので当たり前だけど。
艦内キッチンにてカモミールティーと茶菓子数種をお盆にのせて
本来であれば狭い潜水艦に客室みたいな余裕のあるスペースは無いのだが、そこはKAN-SEN独自の強みである。
外装や根幹となる機構部分の改変は手間が多いのであまりやれないが、内装や部屋割りくらいは簡単に変えられる。
さらには搭乗人員分の寝床や通路が実質デッドスペースなのでそこを繋げて一つの部屋にすれば客人が不便しない程度の快適さは確保できる。
「リットリオ、ハーブティーと軽食を持ってまいりました」
「入ってくれ」
扉を開けると要救助者の同行人であるエルト殿が物憂げな顔で座っており、リットリオが私が持ってきたティーポットと茶菓子を受け取る。
「ありがとうカラビニエーレ。………レミール様の容態は?」
「火傷と裂傷の方は時間をかければ問題ありません。しかし……」
「あまり芳しくないか?」
「右眼視神経の損傷がひどく眼自体を治せても視力は戻らないかもしれません。また投与されていた薬の過剰投与による影響で何かしらの後遺症が残る可能性もあります」
私の報告を聞いたエルト殿の顔がさらに曇る。
「もっと早くにお助けするべきであった……!」
「……あまり気に病むな、我々も最善を尽くす」
………気丈に振る舞うリットリオも精神的に余裕がなさそう、
暫くそっとしておいてあげようと思い静かに部屋を後にする。
救出作戦自体は成功ではあったが、なんとも後味の悪い結果となってしまった。
しかしあそこまで容態が悪いとロウリアにある基地の設備では不十分、おそらくサディア本国まで連れて行くことになりそうね。
そうすればもっと専門的な設備も充実している、そうすればきっと……。
今回でクーデター編は終わりとなります、急ぎ足で申し訳ない。
また新たな派遣先が決まったためまた暫く更新が止まるかもしれません。
え?派遣先?惑星ルビコンというところです。
グレネード砲とガチタンの素晴らしさを布教できるように頑張っていこうと思います!