異世界にレッドアクシズの名を刻む!   作:有澤派遣社員

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パーパルディアとの和平交渉回


恋は盲目

 

皇都エストシラントの港には多くの野次馬が集まりお祭りのような騒ぎとなっていた。

港の警備隊だけでは対処に難儀するほどであり、海軍からも緊急で出向した者達が警備や人員整理に駆り出されるほどだ。

しかしそんな者達も業務に集中出来ているかと言えば、否である。

誰もが港に停泊しようとする“3隻の鉄船”へと視線を向けており、大半の野次馬は興味半分怖いもの見たさ半分といった感じである。

しかしムー国やミシリアル帝国の軍艦を知っている者は驚愕し、特に先のロウリア海戦から帰還した者は青い顔で眺めている。

そんな中、出迎えを命じられた者等は「所詮は文明圏外国の格下」と侮っていたことを激しく後悔し、慌てて可能な限りの歓迎準備をする羽目になっていた。

そんな中、鉄船から折り畳まれた階段が降りてくる。

いよいよかと出迎えの者らが気合を入れ直したところで、先頭で降りてきた"存在"に目を奪われた。

青紫の美しい長髪を靡かせ、ルビーの如き紅い瞳。

唯一露出した太ももと厚手の軍服を着てなお存在を主張する胸、まさに極上の女体と呼びたくなるほどである。

続いて降りてきた白髪の幼い少女2名も将来誰もが羨む美人になるのが容易く想像できるほどの可憐さ。

そんな少女2名に挟まれる形になった人物。

海を思わせる蒼い瞳に艷やかな黒髪に両耳には枝のような黒い角、白を基調とした軍服に赤と黒の大柄なコートを袖を通さずに纏った若い女性。

出迎えた者らは見惚れ、思わず下卑た情欲が湧きかけた。

しかしそんな浅はかな欲望も続いて降りてきた者らを見て消し飛んだ。

両手に不釣り合いなまでに巨大なガントレット、背中のオーバーサイズのマントから見え隠れする金属の尻尾の様なもの。

さらに目元を隠す仮面のようなモノをつけた白髮の色白な女性が複数人、その亜人らしき存在に続く。

こちらに向けてくる視線は鋭利な刃物そのもので、近くにいた警備兵などは反射的にサッと視線を逸らす。

出迎えの者らはそんなことは出来ないので冷や汗を流しながら必死に作り笑みを維持していた。

 

レッドアクシズより和平交渉使節団、到着

 

 

 

 

■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇

 

 

 

 

[皇都エストシラント 城前大通り]

 

Sideカグヤ

 

ガタゴトとトレント、マエストラーレ、リベッチオらと共に豪華な馬車に揺られそこそこの時間が過ぎる。

こういうレトロな乗り物は重桜で乗った人力車以来だろうか?

 

「外務局の方ではなく皇城で会談を行いたいとは予想外だったね」

「向こうなりに敬意を払っているというアピールもあるのでしょう。正直ここまでの歓待を受けるとは思ってませんでした」

 

トレントも想定していた状況との違いに警戒すべきなのかと悩んでる様子。

向こうから提案されたのは、皇城にて新皇帝が直々に見届人となって今回の会談を進めたいとのことだ。

パ皇側としては精神的に優位な場所であり、こちらとしては要求内容が直接新皇帝の耳に入るので会談がスムーズに進むかもしれない。

謁見の場ではないにしろ新皇帝に直接会えるのも悪いことではないだろうし、こちらの顔を憶えて貰って損はあるまい。

しばらくして城門を潜ると馬車が止まり、扉が開かれ御者から声がかけられる。

 

「到着しました、どうぞ」

「ありがとうございます」

 

馬車の扉から外を覗くと城の入口までレッドカーペットが敷かれ、左右には捧げ銃をした兵士が並んでいた。

………思わずそっと馬車の中に引っ込む、え?なんかおかしくない?????

 

「ねぇ、サディア的にこれは?」

「ち、挑発ともとれるけど……」

「微妙ですぅ……」

 

マエストラーレ、リベッチオの反応も困惑が強い、トレントも判断に困っているのか無言で思考にふけている。

しかしいつまでもこのままというわけには行かない、反対側の窓を覗くと後続の馬車からストレングス達が降りてきてこちらが降りてくるのを待っている。

毒を食らわば皿まで、だ!女は度胸!

緊張しながらも馬車から降り、レッドカーペットの上を歩いていく。

整列する兵士達の視線は私やトレント達よりもストレングス達がに向いているようだ。

異様に巨大なガントレットにマントで隠しきれていない尻尾と明らかに人型から外れているストレングス、揃って目元を隠すバイザーをつけてるエクセキューター達、奇異の視線を向けるのも仕方ないか……。

入口の前には着飾った男性が立っており、こちらへ芝居がかった一礼をする。

 

「ようこそ、美しきレディ達!城内の案内人は栄えある臣民統治機構副長ケダンが務めます!」

 

これでもかとキラキラとした笑顔をコチラへと向ける彼に若干引いてしまったのは内緒である。

 

 

 

■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇

 

 

 

[パラディス城内 通路]

 

Sideケダン

 

資産運用で成り上がった歴史の浅い伯爵家、そこの次期後継者であり【成金坊や】と陰で言われてるのが私ケダンだ。

正直自分には父上のような商才は無いに等しい、母上譲りの美貌と丈夫な体くらいしか誇れるものはない。

臣民統治機構の副長、パーラス殿の副官になったのも親のコネと組織運用の資金勘定ができるから任されてる。

口に出して言ったことは無いが自分は女が嫌いだ(・・・・・)

女遊びに興じてるのも女を下に見て、身体の関係を持つのも自身が優越感に浸れるから。

昔はそうではなかったが、近づいてくる女がどいつもこいつも家の資産目当ての内心こちらを見下している名家の令嬢ばかりだったのが原因だ。

女なんて金をチラつかせてテキトーにあしらって捨てる、そんな程度でよいと本気で思っていた。

だがしかし!私はあの日!自身のくだらない価値観が変わった!

 

「美しき麗人の"女神"!彼女という運命と出会ったのです!」

 

万感の想いを込めて叫ぶ、通り過ぎる使用人や兵士が変なモノを見るように急ぎ足で去っていくがまったく気にならない!

 

「自然の美しさを表したような緑の髪!輝く赤薔薇の如き瞳!あの美しき麗人の姿が"心"に焼き付いて忘れられないのですよ!」

「へ、へ〜、そんなに綺麗な人だったんですねぇ……」(リットリオォーーー!?)

「そ、そうね!あはは……」「………(アセアセ)」

「………はぁ」(カグヤ達の露骨な反応に呆れる)

 

………ふむ、やはり愛しの"女神"はレッドアクシズの関係者だったか。

トレントと呼ばれている女性の服飾に"女神"の服飾と共通点がいくつもある。

ならば彼女らと交流をしていけば"女神"にもう一度会えるかもしれない。

それにレッドアクシズから来た客人らはいつも感じてる女性への嫌悪感が何故か湧き上がらないので話していても気分がいい。

しかし自分の役目はあくまでも案内人、残念ながら目的の場所に着いた以上は一旦中断せねばならない。

 

「まだまだ貴女方とお話に興じたいですが、ヘリオガ皇帝陛下をお待たせする訳にもいきません。どうぞこちらです」

 

本来であれば国家戦略を議論する大会議室、おそらくパーパルディア建国以来初めて他国の人間が足を踏み入れる場所。

ヘリオガ皇帝陛下は今回の会談を相当重要視してるようだ。

自分の安全が担保されるなら国の行く末なんてものには正直興味ないが、せいぜい上手くこの情勢を利用させてもらおう。

再び、愛しの"女神"と出会うために!

 

 

 

■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇

 

 

 

[パラディス城内 大会議室]

 

【和平交渉会談参加者】

〘パーパルディア皇国側会談参加者〙

・第3外務"新局長"タール

・進行補佐 バルコ ニコルス メンソル

・見届人 皇帝ヘリオガ 宰相ドミディア

・護衛兵 20名

 

〘レッドアクシズ側会談参加者〙

・指揮官カグヤ・エムブラ

・進行補佐 トレント

・記録係 マエストラーレ リベッチオ

・随伴護衛 ストレングス以下セイレーン7名

 

 

Sideドミディア

 

カイオスの後任、やはりカイオスほどの優秀さはないか。

やれやれ、もう少し頭を使って発言をしろというのに……。

 

「こ、このような荒唐無稽な要求受け入れられません!?」

「そうですか?妥当な要求内容かと思いますが?」

「こんな馬鹿げた賠償金がか!?」

「今回出撃した艦隊の運用費に現在お預かりしている捕虜達の治療費と保護費諸々、妥当な要求額です」

 

年端もいかぬレッドアクシズのお飾り女(カグヤ・エムブラ)のほうが余程毅然とした態度だ。

改めて渡された紙(かなりの高品質に驚いた)に書かれた内容を見る。

 

【和解条件内容要約】

・今回の開戦の要因となった《皇都にて発生したテロ行為のレッドアクシズ関与》の撤回。

・今回の戦闘行為で発生した賠償金として純金100㌧相当を要求。※他希少金属での代用可

・現在文明圏外の各国と結ばれている不平等条約の改正。

・奴隷の献上要求、又は輸出の強要の全面禁止。

・今回の交渉とは別にアルタラス王国、フェン王国への賠償金交渉を行うこと。

・海軍をはじめとした外征可能な軍備の大幅縮小。

・上記の内容が履行されているかの確認としてレッドアクシズ側からの常駐する相談役兼監査官派遣の容認。

 

確かに法外な賠償内容だが、しかしあからさまな内政干渉の項目は少ない。

半壊した海軍の再建を取りやめて軍備縮小と合わせれば丁度よかろう。

文明圏外国どもが頭に乗るのは腸が煮えくり返る思いだが、レッドアクシズを滅ぼす算段が立てれない以上仕方あるまい。

条約改正と二国への賠償金交渉は長引かせ、奴隷も属領から捻り出せば暫くは持つだろう。

監査官とやらは上手く抱き込めればまだまだやりようもある。

そもそも今まで我が国(パーパルディア)が行ったことに比べれば手ぬるいくらいなことにこの馬鹿共は気付いてるのか?

これ以上醜態を晒して相手の心象を悪くするより、早々に要求を呑んで後から譲歩を交渉するのがマシだ。

役立たず共には任せられんと思いどのように会話に切り込むかと考えていると、ヘリオガが声を上げる。

 

「見苦しいぞターラ、会談の場だというのにただ否定するばかりでないか」

「ま、真に申し訳ありません!」

 

ほう?まさかあのヘリオガが自分から意見を言うとは、皇帝としての自覚が芽生えつつあるというのは……まぁ悪いことではない。

私はともかく他の連中に利用されるようでは困るからな。

 

「レッドアクシズの方々、ご不快になられたようであればどうか赦してほしい」

「いえ、そんなことはありません」

「そちらからの要求内容については前向きに検討します、但しこちらからも条件を出させてもらう」

 

ほぉ?譲歩ではなくこちらからも条件を出して間接的に譲歩させる形にするか。

下手に要求を譲歩させるよりも条件次第では相対的にプラスになるかもしれん、悪くはない考えだ。

別に断られたとしても痛手はない。しかし、どのような条件を出す気………

 

「カグヤ・エムブラ、ボクは、その……」

 

……ん?ここまできて言い淀むとはどうしたのだ?

 

「あ、貴女を!常駐する相談役、いえ!我が国の后に迎えたいです!」

カグヤ「え?」トレント「は?」マエ・リベ「「???」」

「「「「ええええ!?!!?」」」」(多数)

「ヘリオガーーー!?!?!?」

 

亡き兄君といい、ルディアスの小僧といい、なぜこうも“一目惚れ”に溺れるのだたわけが!?

 

 




たぶんパーパルディアの皇帝は歴代揃って色恋沙汰起こしてそう(偏見)
なおドミディア本人は人恋ではなく“権力”に一目惚れしてます、血は争えぬ!
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